読書の現状ーゼミの周辺(2)

 若い人たちが本を読まなくなったと言われて久しい。確かに、出版物の売上げは1990年代半ばをピークに減少の一途を辿っており、一時は3兆円を超えていた総売上額も今では2兆円を下回っている。もっとも、盛衰が激しいのは、雑誌の売上げのようで、書籍に限れば、減少傾向は否定しがたいものの、雑誌のように激減しているわけではないようである。
 それでも、学生たちが本を読まなくなったという印象はぬぐえない。原因はいろいろ考えられる。読書以外の娯楽や出版物以外の情報源が増えたこと、教育現場で古典に対する尊敬が失われつつあること、法学部に限って言えば学説の地位が低下していること、等々。しかし、以上は印象や推測に過ぎない。
そこで読書にかかわるゼミを始めるにあたって、学生たちの読書の状況を知りたいと思い、ささやかなアンケートを実施してみた。2011年のことである。具体的には、自分が教えているクラス(学部・法科大学院、授業・ゼミ)の学生たちに質問票を配って回答してもらった。その結果が面白かったので、教え子たちに頼んで、やはり自分が教えているクラス(国立大学・私立大学、東京の大学・地方の大学)で同じ質問票を配ってもらった。
 その後、1年間の在外研究に出かけたことなどもあって、アンケートの整理には思わぬ時間を要することとなったが、最近に至ってようやく取りまとめが完了した。その結果は別に掲げた通りである(※)。ご協力をいただいた学生のみなさんと今は同僚となったかつての教え子の諸氏にお礼を申し上げる(外国との対比もおもしろかろうと考えて、ソウルの大学に勤務する教え子にもアンケートを依頼し、早々と回答を寄せていただいたが、諸般の事情によって掲載には至らなかった。大変申し訳なく思う)。
 私の「新書ゼミ」(と呼ばれることもある)に集まる学生諸君の読書量は、アンケートに現れる平均的な学生に比べられば、格段に多いだろうと推察される。そうした学生がまだ存在することは喜ばしいことである。
 しかし、ささやかな安堵もつかのま、最近になって気になってきたのは、「何をどれだけ」読んでいるかではなく、「いかに」読んでいるかということである。この点はアンケートでは確認しにくいので、別の方策を考えてみたい。

※アンケート結果は、こちら(外部サイト)の下の方に掲載されています。