強引極まる理屈と承知で【犬夜叉】と【神のみぞ知るセカイ】を比較してみます

 若木民喜氏が週刊少年サンデーに連載中の【神のみぞ知るセカイ】(以下【神のセ】と略します)。2008年4月に連載が始まったこの作品は、現2012年1月3日現在で171話(作品の性質上FLAGと呼称している)を迎え、コミックスも第15巻を数え、アニメは深夜枠ながら2010年に第1期、2011年には第2期が地上波で放映され全24話製作されました。

 今やサンデーでもおそらく上位レベルの人気にのし上がったと思われるこの名作に関して、今更ストーリーやキャラの紹介はいたしません。今はフリー百科事典ウィキペディアで検索すれば、必要十分な情報を得ることができるご時勢ですからねぇ(^^;)↓。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E3%81%AE%E3%81%BF%E3%81%9E%E7%9F%A5%E3%82%8B%E3%82%BB%E3%82%AB%E3%82%A4

 さて、丸2年半以上も拙サイトを放置しておいて、なぜ今こんな事を書く気になったかと申しますと。

 @【神のセ】連載1年目から興味を持ってYahoo掲示版にトピを作り、連載の追っかけをしてたこと
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=GN&action=m&board=552018448&tid=
a1ybcclzl14na1vbfc0a4na4dfa4becna4ka5bba5aba5a4a1wa1y&sid=552018448
&mid=1&type=date&first=1
(↑お暇な方はどうぞ)
 A原作者の若木氏が熱烈な【めぞん一刻】ファン出身で、前作【アルバトロス】連載当時から高橋留美子氏と同じ雑誌での連載を物凄く喜んでいたいわば「我々のお仲間」に属する人物であること
 B【神のセ】FLAG1で登場するヒロイン(というより今や妹キャラだが)のエルシィが、過去の留美子長期連載におけるヒロインの要素を受け継いでいると思われること
 C昨年8月に一つのファンブログと出会い、爆発的に“歩美萌え”トランス状態に陥ったこと(アンタいったい幾つだよ…とお笑い下さい)があります。

 主人公桂木桂馬を協力者(バディー)として「駆け魂狩り」を行うため、地獄界から派遣されてきた悪魔っ娘エリュシア・デ・イート・ルーマ、通称エルシィ。この娘、設定年齢300才以上だというのに凄い天然で、人間界の精神年齢だと7〜10才くらいじゃないのかと思えるのですが、それはさておき「空を飛ぶ(ラム)」「箒を常に携帯し掃除が趣味(響子)」「妙な料理を作る(あかね)」てな具合に、過去のるーみっく3大長期連載作品のヒロインからあまりに分かりやすい記号を受け継いでいるんですね(^^;)。
 若木氏の出自を辿れば、おそらく高橋氏公認の設定なんでしょう。アニメ化された第1話でのエルシィの飛行音は28年前の青春が蘇りましたよ。

 以下、もしもこの文章を読んでいる方がまだ【神のセ】を未読なら、まずは何も言わずにコミックス全15巻を読破してください。絶対損はしません(12月中旬に第15巻が発売されました)。【犬夜叉】を愛した読者なら「嫌いになれるわけがない作品だ」と保障します。
 ジャンル的には一件「ラブコメ」に属しているように見えますが、コミックス第7巻でディアナが女神設定を引っさげて登場してからは、趣を大きく広げて「冒険ファンタジー」的要素を加え、今や「大河ロマン」に発展する雰囲気も漂っています。

 そろそろ本題に入りましょう。
1.まずは主人公の比較
 【境界のRINNE】が連載3年目を迎えた今になっても、なお筆者は【犬夜叉】は高橋氏の最高傑作だと確信しています(いやあの、RINNEが劣るというつもりはないですが、なにかこう…ウィニングラン的な雰囲気を感じてるんですね)。それ以前のラブコメ、シリアス、SF、伝奇と多岐に渡っていたるーみっく作品の全要素を集結させ、各界にいたキャラクター達をいわばオールスターキャストで登場させて、群像劇を描いたわけです。

 で、最終的にコミックス56巻、連載期間12年を要した高橋氏の最長連載となった次第ですが、「回顧録1」に書いたように、主人公犬夜叉とヒロインかごめのキスシーンはついに一度も描かれることなく最終回となりました。

 これに対し【神のセ】は180度異なります。なにしろ連載第1回(FLAG1)から主人公桂馬は最初のヒロイン歩美とキスするんだから。そもそも作品設定が「恋愛を使って心のスキマを埋め、そこに潜む駆け魂(古悪魔)を追い出す」というパターンで進むため、次々と登場する美少女(年上お姉さんも年下後輩も含む)達は、そのループにおけるヒロインとなり、桂馬とキスすることで一段落する。
 数えてみるとコミックス14巻まで連載4年間で桂馬が女子キャラとキスした回数は実に15回に及ぶ(15人目の倉川灯に至っては一人で何回もやってて確認が面倒だから1回に数えたくらい^^;)。

 そんなもん、どこに共通点があるんじゃぁ!と一見思えるでしょう。そのとおり、あまりに異次元だと見えますね。

 犬夜叉は「過酷な過去を抱えた妖怪と人間のハーフで超硬派でそのくせ熱愛体質」だったのに比べ、桂馬は「恋愛シミュレーションゲームヒロイン10000人攻略達成の落とし神だが現実女子とは手を繋いだことさえない」という特殊な存在。「ん?」と感じたそこの貴方、それですよそれ。舞台はまるで異なるけれど、異色ぶりという点でキャラの強さが際立ってるのです。

 まぁ結果だけみると桂馬は犬夜叉より弥勒にずっと近いかもしれない(なにしろ出会ったおなごには「私の子を産んでくだされ」を言うのがポリシーだった奴だからなー^^;)。でも皮肉な事に連載中の弥勒のキスシーンは1回だけ(しかも意識失ってた)で、犬夜叉は桔梗と2回口づけしてるところが面白い。

 桂馬とのキスで心のスキマが埋まり駆け魂が追い出されてエルシィが勾留すると、その後の影響を回避するため地獄界がその女子の記憶を操作して、女子達は桂馬との恋の記憶を失うわけです。これで桂馬は「演技で恋に落とした事への代償」として「相手の女の子が自分のことを忘れてしまう」という痛みと孤独を負い、攻略する相手が増えるほどにそれが積み重なっていくんですね。
 実はこれ、「妖怪とのハーフゆえに異質のものを見る視線に晒され続けた」犬夜叉や、「いつか自分自身を飲み込む風穴の恐怖を抱え続けた」弥勒の抱えていた試練と同一線上に存在する類のものなわけです。

 硬派の犬夜叉と軟派の弥勒は、かごめが間に入ることでいつしか戦友になっていく。珊瑚という特別なおなごと出会った弥勒に、「おまえが死んだら珊瑚はどうなる」と言った犬夜叉には、長年死線を走り続けた相棒への強い意識があった。仲間を得た彼の想いはそれだけ大きかったわわけです。

 【神のセ】は桂馬以外の男は亮くらいしかマトモに顔も描かれないので、到底同性の友人ができそうもないのですが、彼の境遇を知るエルシィやその級友ハクアが協力者として次第に絆を強めていく。一見ハーレムラブコメのようで実はそうじゃない。異性間に「友情」は存在しうるかというのは判断が難しいですが、同性キャラがほとんどいないからという理由で友情描写皆無というにはなにか寂しいもんです。設定上ではエルシィもハクアも「300才以上」ってことになってるので、本来なら17才の人間である桂馬との間に生じる好感情は恋愛というより友情に近いような気もするんですね。

 現時点で桂木桂馬という主人公簡単に表現すれば、「2Dギャルゲー女子を相手にするゲーマー時や攻略対象の3Dリアル女子を相手にする時は弥勒だが、攻略中でない3Dリアル女子を相手にする時は犬夜叉」みたいな奴なわけです。

 まぁこういう風に、こじつけまみれではありますが(^^;)、【神のセ】の連載がかなり佳境に入っていると思われる今、思いつく度に【犬夜叉】との比較を試みていきたいと思います。
2.次にヒロインの比較
 【神のセ】は既述のとおりヒロインローテーションを特徴にする作品なので、誰が本来のヒロインなのかを決める時点で難しいのですが、一応ヒロインの定義を「主人公と関わる頻度が最大で、友達以上恋人未満状態を作品の連載期間とほぼ同期間継続する女性キャラクター」とすれば、エルシィは「恋人」というより「妹」になってる現状から別格扱いにすべきと考えます。

 圧倒的に女性キャラが多くてしかも桂馬と攻略関連で関わったのは15名。ここから絞り込んでいく手段はまず「桂馬の記憶の保持」。これまでユピテル女神6姉妹の宿主となった女子はその条件を満たすため、残るとみていいでしょう。すなわち月夜(長女ウルカヌス)、かのん(次女アポロ)、天理(三女ディアナ)、栞(四女ミネルヴァ)、結(五女マルス)、そして歩美(六女メリクリウス)。

 次に「桂馬との関わりの期間」を見ると、出会った順序は天理、歩美、かのん、栞、月夜、結。ここで少々ややこしいのは天理と桂馬の出会いが作品設定上10年前で、近所に引っ越してきて再会したのが月夜と出会った後という点。連載の進行上、桂馬と一番関わりが長いのは歩美だけどその10年前に天理は桂馬と出会ってたわけです。

 こうなると甲乙つけ難いので、【犬夜叉】が作品設定上かごめと桔梗のダブルヒロインであった事に習って歩美と天理の二人を対象にして比較してみます。

 【犬夜叉】はかごめが戦国時代にタイムスリップして、桔梗に封印されていた犬夜叉と出会うところから始まりました。連載1年近くで裏陶の野心によってかごめの中で眠っていた桔梗の魂が分離され、それまで一つの体で犬夜叉と関わってきた桔梗とかごめは別々のキャラクターとして独立し、その後連載10年近く(作品設定上では数ヶ月間ですが)恋敵キャラ同士として行動することになりました。

 この展開を【神のセ】と比較した時に少々驚きました。天理は10年前に桂馬を助けるため、魂状態で浮遊していたユピテル6女神の三女ディアナと体を共有し窮地を脱して以降、ずっとディアナと一緒に暮らしてきたわけです。ディアナは天理が鏡に映った姿で現れ天理と会話し、場合によっては体を入れ替えて行動できる(入れ替わると頭上に天使の輪が浮かぶ)。

 つまりこの状態は【犬夜叉】でいうなら「桔梗がかごめと体を共有したまま目覚めた」ようなもの。これは可能性として想像すると極めて難しい状況でしょう。体は一つでも人格が二つとなれば、同じ男に惚れたら極めて面倒なことになる…むしろ体が分離されたおかげで、桔梗は紛い物の生とはいえ、数ヶ月間を生前の補完のために行動し、かごめと和解したとまではいえなくても、かごめの力を認め、最終的には犬夜叉に看取られて天に還ったわけです。

 【神のセ】では現にディアナ自身が桂馬を好きになってしまったことから罪悪感に苦しむ(FLAG167)という展開になってます。「女神のエネルギーは宿主の愛情」のため、宿主の桂馬への好意が増大するほど女神は力を取り戻す。ユピテル6女神は太古の天界と地獄界の戦争で古悪魔を封印した存在であり、全員揃って再度地獄界を封印できれば、女神たちは宿主の体を離れて宿主を解放できるし、桂馬も地獄界と交わした契約を満了できるという設定です。
 ところが他の姉妹が頭上の輪だけでなく背中の翼まで復活したのに、ディアナには翼が戻らない。つまり宿主の天理が性格的に極めて消極的で桂馬を「見つめていられるだけでいい」ような子のために、天理を飛び越えて桂馬を好きになってしまったディアナは罪悪感のため取り戻せるはずの能力を取り戻せないでいると…なんと厄介な。

 大御所高橋氏でさえ解決に10年を要した桔梗とかごめの確執。これを若木氏は「類似の身の上が6人」という超過密状態で描いているのです。凄いですよまったく。
 ただ他の姉妹は桂馬の攻略成功によって目覚めているので宿主との意思共有期間がうんと短い(かのんでさえせいぜい一ヶ月前後)分、ディアナほど苦悩してるわけではありません。フィオーレに刺されて宿主ごと表舞台から退場しているアポロを除き、ウルカヌスとミネルヴァとマルスは「桂馬の取り合い」を遠慮なくやって張り合ってる。姉妹といえど共通のエネルギー源争奪はシビアです(^^;)。

 さてもう一人のヒロイン歩美はどうか。1月4日現在、FLAG172までに描かれた内容を見る限り、メリクリウスは姉たちのように桂馬に固執していません。むしろ「歩美はすでにあきらめた男のために悩み悲しんでいる非効率な存在」と結構キツい事言うくらいで。歩美は天理と正反対で積極性の権化みたいな子なんだけど、誰より友達思いの性格のために、桂馬が再攻略に動いたちひろを酷い言葉で「ふった」ことに怒り、冷戦中の状態です。

 【犬夜叉】で分離独立した桔梗は当初、生前に果たせなかった想いを遂げるために犬夜叉と心中しようとし、怒ったかごめがそれを阻止して三角関係が先鋭化する(コミックス第8巻)。この展開が【神のセ】ではディアナの苦悩、ちひろの心の傷による歩美と桂馬の対立という多重構造で一段と複雑化しています。若木氏はかつての憧れの漫画家の最高傑作をも凌駕する難解なストーリー展開に挑戦しているんですね。

 少々論点がズレました。キャラの比較に戻ります。既述Cのとおり筆者は“歩美萌えトランス状態”にあるので贔屓目にすぎましょうが、そこはどうせ【犬夜叉】でもかごめ贔屓だったんだからと思い切り開き直って二人の比較をします(^^;)。

 これだけ萌える以上二人には共通項があるはずだ、と妙に意地になって考えました。設定年齢では歩美はかごめより2つ年上のお姉さん。主人公との出会い方は、やや巻き込まれ型でもかごめは犬夜叉の封印の矢を抜き、歩美はその心のスキマを桂馬に攻略で埋められた。一見歩美は受動的に見えるんですが、実はそうじゃないのです。

 桂馬は「契約を守るべく行動しないと首がもぎとられる」という極限状態におかれ、命がかかってるからやむをえず「ギャルゲー理論」で歩美の攻略にかかる。実際FLAG1では「嫌われるようなイベントもプラスになってる」と強がりつつも内心「本当に嫌われてる可能性も高い」とビクビクものだった。けれど歩美の心のスキマは「上級生への気兼ねから心ならずも自分で怪我を装い走ることを止めたこと」にあった。それを見抜いた桂馬の眼力と「走れよ」という意味のスニーカーに、歩美は心を開き、桂馬に恋をしてスキマが埋まり最初の攻略が見事に成功したのです。

 桂馬がリアル女子の攻略の道に踏み出せたのは歩美が彼の攻略に応えてくれたから」だった。そう、これはかごめが犬夜叉を封印していた矢を消したことに匹敵するのですよ。たしかに歩美は桂馬によって心のスキマに潜んだ古悪魔を追い出され救われたけれど、それは同時に桂馬の命を救うことでもあった。連載第1話の主人公とヒロインの出会いはその作品の宿命をかなり決定づけるだけのインパクトを持つのです。

 かごめは犬夜叉が暴れ始めてからというもの、孫悟空の暴力を戒める頭の輪の如くの言霊「おすわり」でとりあえずの均衡状態を作り上げ、自らが粉々に砕いた四魂の玉の欠片を集める旅を始め、その過程で少しずつ犬夜叉との仲を絆に変えていく。長かった旅路は桔梗の天への帰還を経て、4年後に夫婦として完結しました。見事なハッピーエンド。

 歩美は地獄界の記憶操作で桂馬との恋を忘れてしまい、しばらく退場するのですが、FLAG29のラストで再登場します。親友ちひろを桂馬が攻略する最中で、「記憶はなくなっても想いを残す」状態で桂馬に手を差し伸べたわけです。かごめが連載の初期をぐいぐい引っ張っていたのに比べると登場頻度ははるかに少なかったのですが、昨年のFLAG153以降は猛ダッシュ、あれよあれよという間に、桂馬とのスキンシップ度も仲の進展も並み居る他のライバルキャラに追いつき、今やストーリー展開上の最重要人物です(さすがは非誘導弾ミサイルの異名を取る最速陸上少女!)。しかもユピテル6女神の末っ子メリクリウスを宿主として抱えてる。外見の可愛さも勿論ですが、これらの強靱なスキルが萌えの根幹です。

 かごめと歩美の共通項は「積極性と正義感と優しさ」。そして「男子との免疫のなさ=恋愛面のぎこちなさ」。これって少年誌のヒロインとしては必須条件かもしれませんけど、喜怒哀楽が明快でなにより読者が見ていて共感できる。ただ歩美の内面はかごめほど描写されていませんから、その心情は読者の方で推測するしかないのですが、筆者的には「主人公を支え、二人で大きなことを成し遂げる」だけの物凄いスペックを持ってるという点でよく似てると思うのです。

 かごめは犬夜叉と出会い、長い長い冒険の末に人間と妖怪の双方を苦しめてきた四魂の玉を消し去るという偉業を果たした。歩美は桂馬との仲を修復し支え合うことで、天界地獄界人間界の三界均衡を保ち平和を守るという可能性があるのです。

 「経緯」を語るとかごめと歩美にはまだまだ話題が出てきますので、また日を置いて追加したいと思います。
3.ところで【境界のRINNE】との関連にも言及
 【神のみぞ知るセカイ】の連載開始は2008年4月の少年サンデー21&22合併号。この時【犬夜叉】の連載はコミックス最終第56巻第3話(通算第551話「落下」)でした。
 まだ中学生の頃に【めぞん一刻】に猛ハマリしていたという若木氏ですから、響子さんの容姿をそっくり受け継いでいたかごめの最終シリーズ真っ只中に自作品の連載開始はさぞ感慨深かったことでしょう。(なんでも連載第1回の原稿締切日に急性腸炎になったそうですが>_<)

 【犬夜叉】の連載はこの年の6月、12年間に渡った長期連載の幕を閉じますが、最終回が掲載されたサンデー29号における【神のセ】はFLAG10で、3人目の攻略女子・中川かのん(連載当時は名字が西原になっていたらしい。作者の間違いだとか^^;)が「アイドルからスターになった」回でした。
 高橋氏は長期連載を終えて約10ヶ月の休養に入ります。やがて新連載【境界のRINNE】が始まったのは2009年4月、サンデー21&22合併号でした(奇遇にも神のセFLAG1と同じ号数で、ちょうど1年後ということになる)。その時【神のセ】はFLAG49で、エルシィの同級生にして悪魔学校首席卒業の秀才・ハクア・ドット・ヘルミニウムが、協力者雪枝さんの尽力で駆け魂隊歴2人目の駆け魂を一気に4つ捕獲するエピソードの進行中でした。

 ここで筆者は面白い相関関係を見出します。【境界のRINNE】の主人公・六道りんねは「死神の祖母と人間の祖父を持つ、人間なのか死神なのか少々曖昧」な3世キャラクターなんですが、一般的に死神といえば鎌が定番アイテムだよなぁと思えるのに、その鎌を使い始めるのは第18話(ライバル魔狭人を追って地獄界に進入し、魔狭人が使おうとした鎌を奪い取ったのが最初)。
 一方、【神のセ】のハクアは首席卒業の証として特別な鎌を持ち、その名字ヘルミニウムは「蘭」の意味で、【うる星】キャラ・ランちゃんに因んだものとされています。新悪魔という設定だから鎌を持ってるのは自然なんですが、彼女は作品への初登場がFLAG21であり、セミレギュラーとして定着するのはFLAG47以降。まさに【RINNE】の連載開始と同時期なんですね。(因みにりんねが初めて鎌を手にした第18話のちょっと前、第16話のサブタイトルは『ようこそ地獄へ!』ですが、この約2年後に神のセFLAG150で『Welcome Hell』というサブタイトルが出ています。)

 そこで筆者の願望混じりの推測。新連載の構想中に高橋氏は、【神のセ】のハクアというキャラが気に入って、りんねのキャラ設定に死神の孫という要素を与え、ハクアがストーリー上で重要な地位を固めていく頃に、彼女が常備する鎌をりんねの武器設定に追加したのではないかと。さらに後になって登場した女死神・鳳がラブリーな鎌を持っていて、主人公りんねに惚れ、桜と恋敵関係になる(まー桜の方はあんまりそういう意識をしていませんが^^;)のも、“高橋氏のハクア贔屓”を彷彿とさせるのです。
 昨年秋、FLAG161で駆け魂隊をクビにされたものの、単独で敵と戦う覚悟を決めて動き出すハクアが、しばらく本編で登場しなかった頃は、鎌研ぎ職人四代目三日月斎・霊不兎まで登場させて、一段と鎌に拘ってます(*^_^*)。

 この推測が的中していれば、先述したようにエルシィがるーみっく3大連載ヒロインの要素(飛行&箒&料理)を記号として持っている事と重ねると、両氏のファンである筆者にとって実に嬉しいんですね。
 最近のサンデー(2012年9号)では【RINNE】と【神のセ】が続いて掲載されていましたが、同じ地獄ネタなのに、【RINNE】はるーみっくセンス全開のコメディで、【神のセ】はシリアス路線急加速の深刻な展開になっており、鮮やかなコントラストを演出していました(でも両方とも鬼が出演)。【神のセ】は男性キャラが極端に少ないので、他作品なら男がやる役回りを女性キャラが演じます。ハクアは14回ぶりに登場、証の鎌が炸裂して実にカッコいい展開。私にはりんねが振るう鎌が“ハクアへの応援旗”に見えつつあります

 今後も【RINNE】と【神のセ】のある意味“連携”みたいな相互補完演出が出たら言及したいと思います。昔、自連載の熱烈読者の一人であった若木氏の連載キャラに、密かにエールを送る大御所高橋氏。こうして作家間でDNAが引き継がれていく事が、サンデーの良き伝統になってほしいと思う次第です。
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