海抜3500mを越えるような高原地方ではスペイン人などの文化の影響が少なかったこともあり,占領時代以前の土着音楽に基づく音楽が豊富に残っています.一般にアンデス地方の音楽というとこのあたりの音楽を指すことが多いようです。
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◆ワイニョ(huayño), ワイノ(huayno / wayno), カルナバリート(carnavalito)
アンデス地方にインカ時代から伝わる2/4拍子の舞曲。民音に入るとまずこのリズムの花祭りから練習が始まります。実はワイニョがボリビア,ワイノがペルー,カルナバリートがアルゼンチンと異なった国のリズムではあるのですが,最初のうちは全部同じように思っておいてもさして支障はありません。しかし興味を持って聴いてみると奥深いリズムであることが次第に見えてくることでしょう。
代表曲:花祭り(カルナバリート) 谷間のカーニバル(カルナバリート)
コンドルは飛んでいく後半(ワイノ) テソリート(ワイニョ)
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◆モレナーダ(morenada)
主にカーニバルで踊られる2/4拍子の行進曲のような舞曲。男性は語源の「モレーノ=黒人」の顔を模したお面とウェディングケーキのような衣装を着て踊ります。この衣装が重く基本装備で20kg,重いものは30kg以上になりますが,現地の人々はそれをものともせずカーニバルの日は1日中踊りつづけます。ノリがよく思わず足がステップを踏んでしまうようなリズムで,あわせやすいことなどもあり学生の間で人気のあるリズムでもあります。
代表曲:ビバ・エル・カルナバル ラ・マリポーサ イリマニ オルーロ
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◆クジャワーダ(cullawada)
上記のワイニョに由来する糸つむぎの人々を表した2/4拍子の舞曲で,男性は手に糸巻きの独楽をもって踊ります。とても華やかかつにぎやかで聴いている人をも引き込むような音楽です。
代表曲:リンダ・ラ・パス グレコス・クリオージョス
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◆シクレアーダ(sicureada) シクーリ(sicuri)
語源のシークというのはケチュア語でサンポーニャのことで,それにより演奏される本来は祭礼的な意義がつよい音楽です。このシクレアーダでは一つのサンポーニャを二人で分けて交互に吹いて一つの楽器として用いるコンテスタード(contestado:スペイン語で交互の意)という奏法で演奏され,荒々しい原初的な雰囲気を作り出しています。ワイニョの一形式で街頭などでも思わず人を引き込むことの出来るくらい力強い音色が特徴のリズムです。
代表曲:ビバ・コチャバンバ パシリの別れ クジャキータ
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◆カポラール(caporal),サヤ(saya)
モレナーダ同様現在ではカーニバルで踊られることが多い2/4拍子の舞曲です.カポラールというのは植民地時代に黒人奴隷の中から選ばれた職長のことを指し,彼らが踊っていた踊りを真似て都会の人間が踊り出したのが元と言われています。足には鈴をつけて踊りますが,これは奴隷の鎖の音を表しています。
ちなみに現在サヤとして出回っている音楽は基本的にカポラールで,本来のサヤは現在ではアフロ・サヤ と呼ばれる太鼓と歌だけで演奏される複合リズムの黒人音楽だったりするのは余談。
代表曲:牧童頭 サイェーラ サヤ・デ・アモール サンベニートの祭 泣きながら
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◆ティンク(tinku)
ボリビアの北ポトシ地方で行われるケンカ祭由来の音楽です。このケンカ祭はケンカを行うことで隣村の女性を奪ったり,またそのケンカで出た血を大地に吸わせることで神様に捧げるという意味があるものです。ときには死者が出ることもあるほど激しいもので現在でも一部の地域では行われているようです。 2/4拍子で現代では8ビート風にポップな演奏にしやすいことから街頭演奏では欠かせないリズムです。
代表曲:サリリ イミジタイ セリア アグアス・クララス
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◆チュントゥンキ(chuntunqui)
ボリビアのポトシ地方のビジャンシーコ(クリスマス音楽)が発展して出来た2/4拍子に分類されるリズム。カルカスというボリビアの国民的グループによって発掘され現在ではコーラスグループのハーモニーを活かした曲がよく演奏されています。
代表曲:アモール・テ・バス スィン・エジャ 孤独の中で Siempre he de Adorarte
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◆ヤラビ(yaravi)
ペルーのリズムで,ヤラビは叙情詩という意味で葬送曲やミサ曲としても使われたそうです。ゆったりとした寂しげな曲調で世間一般に見るフォルクローレの叙情的なイメージを体現したリズムと言えるでしょう。
代表曲:コンドルは飛んでいく前半 エル・シスネ オリャンタイ
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