− Volkswagen Maniacs 2004 Summer −

<第二期ステッカー制作記>

1.何故、再びステッカーを制作することになったかと申しますと...

 VWマニアクスは、けっしてステッカー屋さんではないのですが(爆)、なぜか、またステッカーを製作することになってしまいました。ことの発端は、突然発表になったVWフェストin茂木。そこにブースを出展することになったGTI倶楽部&VWマニアックスとして、なにか記念になるようなものを作ろうということになりました。キーホルダー、携帯ストラップ、その他いろいろな案が出たのですが、結局行き着いたところはステッカー(笑)。この日程で、成功が期待できるのは、実績のあるステッカーだろうと。またしても、安直ないきさつでスタートしてしまったのでした(爆)。

 しかし、経緯はともあれ、こだわりで定評の「小技プロデュース」で(笑)デザインから製作まで一環で請け負うことになり、そうなったからにはハンパなものを作るわけにはいきません(どっかで聞いたようなセリフ爆)。今回も、必要以上に燃えて、こだわりのステッカーを作ってしまいました...しかも、何と12種類も...大丈夫かなあ、そんなにぃ、と不安になりつつ...。

2.まず、今回の企画ですが...

 前回のステッカー販売以来、皆様から頂戴したご要望などを踏まえ、幹事が集まってどんなステッカーを作ろうかと企画を練りました。その中で出てきた要求条件は、

   (1)貼る位置を先に決めて、そこにピッタリくるようなステッカーをデザインして欲しい。
       ・・・前回、どこに貼ったら良いですか?という質問が予想以上に多かったから。

   (2)多少なりとも実用になるステッカーをデザインして欲しい
       ・・・前回のは、象徴的なものだったので。今回は実用性も取り入れて。
          って言われても、「赤ちゃんが乗ってます」みたいのですか?
          「オジサンが乗ってます」ってのは、どうでしょう(爆)?

   (3)FESTの記念になるような限定バージョンが欲しい
       ・・・う〜ん、わかるけど、これはストライクゾーンが狭そうだなぁ。

 っという感じの要求事項がまとまりました。これを具体的なデザインに落とし込まないといけません。前回よりも高いハードルです(笑)。早速、戻ってメーカーさんに日程を問い合わせてみたところ、「今週中に原稿を出せば、FESTに間に合う日程で作れます」とのこと。えっ?今週中って、あと4日しかないぢゃないですか(^_^;。冷や汗タラーリです。

 慌てて、適当な草案を作って幹事のみなさんに「どの案が良いでしょうか?」と意見を求めたところ、驚くべき返答が...なんと、異口同音に「全部やりましょう」という答えが返ってきたのでした(悲爆)。日程が、あと4日しかないってのにぃ...。

3.っで、具体的なデザインはというと...

 それからの4日間、連日の半徹夜でデザインに取り組んだのですが、こういう仕事は追いつめられて気合いを入れてやった方が意外と冴えてくるもの。アドレナリンだか、ドーパミンが、どーぱどーぱ出まくって(笑)、思いのほかスラスラと筆が進み、自分でも「なかなかイケてるなあ」と思える仕上がりにできました(自賛爆)。実は、締め切り日に一旦原稿を出してから、あとで細かな直しを入れたり、原稿を差し替えたりとか、すったもんだを経て最終的なデザインが落ち着いた次第です。とにかく短期決戦で、大変でした。

 今回は、凝った図柄を避けて色数も抑えた中で、素材感や印刷色に拘るという表現手法を目指しました。素材や色と、図柄とがうまく融合して、相互に引き立て合うようなデザインが目標です。また、貼り付ける位置を想定したデザインですから、実際に車の窓やボディに貼り付けた状態でのカッコ良さを追求しました。ステッカー単体でカッコ良さを追求してしまうと、ボディに貼り付けた際にかえってそこだけ浮いてしまう感じで馴染まないことがあります。今回は、ステッカー自体が目立つことよりも、車を引き立てるようなデザインとしています。

 具体的に、まずセキュリティステッカーで拘ったのは、その訴求内容です。ありがちな「CAUTION!」とかの表現は、一見注意を引きつけて警告を促せるかに思えますが、よく考えると、これは一体誰に注意を促しているのでしょう(爆)? これから車上荒らしをしようとしている泥棒さんに向かって「注意!」を促すのはあまりにも間抜けに思えます。また、「ALARM」とか「ShockSensor」というのも、表現が直接的すぎて、ちと滑稽(こっけい)です。

 泥棒をはね除けるほどの凝ったセキュリティシステムを本当に搭載しているとしたら、そのセキュリティシステムの詳細な仕様をわざわざ書き連ねる必要はありません。逆に考えれば、むしろ控えめでシンプルな表現の方が、泥棒にとっては意味深に思えて、手をつけたくなくなるはずです。で、「IMMOBILIZER」とだけ書こうかとも思ったのですが、それでは簡素すぎて逆に自信がないみたいです。控えめでありながら、どことなく凄みを感じる表現として、「ADVANCED IMMOBILIZER」としました。

 また、チャイルディッシュになりがちな絵やマークなどはできるだけ描かず、三角形の「!」マークだけのスッキリとした図柄にしました。その上で、贅沢に2色刷りをつかって「!」マークを赤で表現しました。せっかく2色刷りにするのだからと、つい貧乏根性で外形線も赤くしたり等しがちですが、そういった余計なことを考えずに、惜しげもなく「!」マークだけを赤にしたところが、シンプルなカッコ良さにつながったと思います。なかなか良くまとまったかなあ、という感じなのですが、どうでしょう?

 つぎに、FUELステッカーです。FUELステッカーは、透明素材に印刷することで、文字以外の部分はボディカラーが透けて見えるデザインです。このため、ボディカラーとのマッチングにも気を遣いました。すなわち、印刷色が1種類ではステッカーが判読しにくくなる場合があるので、濃色系の車と淡色系の車用に、2種類のカラーバリエーションを持たせました。これによって、様々なボディカラーの車に対して、しっくりくる色が選べるようにしてあります。

 また、それぞれを2色刷りにして、しかもメインとなる「PREMIUM〜」の部分ではなく、あえて「EXTRA TUNED」の部分を色づけすることで、単なる注意書きにとどまらない表現内容にしています。日本語で表現すれば「特別にチューンされたエンジンのため、必ずハイオクガソリンを使用して下さい」という内容になります。ツボを押さえた訴求内容とシンプルなデザインと渾然一体になって、車全体を引き立てるようなイイ雰囲気をかもし出せたと思うのですが、いかがでしょう?

 こちらは、型番形式(VIN=Vehicle Identification Number)と生産工場を示したステッカーです。マニアックスの企画にふさわしい、マニアックな訴求内容にしてみました。車に貼るステッカーは見た目のカッコ良さが最も重要なわけですが、一方で、そこに表現された訴求内容もとても重要だと思うわけです。例えば、出所不明の、訳の分からない文言を勝手に作り出してみても、独りよがりでちょっと気恥ずかしくなります。また、一般的過ぎる内容では在り来りでダサイですし(笑)、かといって誰も分からないようなオタクな内容では近寄りたくないオーラが漂ってしまいます(笑)。

 VINは、例えばスターレットをKPと呼んだり(古っ!)、スカイラインをR32と呼んだり、あるいはBMW3シリーズをE46と呼んだりするのと似ています。高年式のVW車では、セキュリティの意味も含めて、フロントウィンドウ下部のガラスの内側にもこのVINを表示してあります。また、生産工場は、その車の産まれた地ですので、ドイツ車のドイツ車たる由縁そのものです。これらは、ほどほどにマニアックでありながら、れっきとした裏付けもあり、その車のアイデンティティになります。これは、ステッカーの訴求内容として、とてもふさわしいものだと感じます。

 このVINと生産工場の表現を車種ごとにあつらえることで、在り来りでない、特別な雰囲気を感じさせるステッカーとしました。また、そのプレミアムな感じを単に文字内容だけでなくデザイン全体で表現するため、今回はあえてコストの掛かる切り文字の手法を始めて採用してみました。外形サイズは、ウィンカーの下にぴったりと納まる大きさにしてあり、貼り付けた状態で最も引き立つようにデザインしてあります。

      

 ちなみに、VW車のVINは、メンテナンスノートの裏表紙か、スペアタイヤのハウジングにあるラベルで確認できます(高年式車は、上記のようにフロントグラスの下部に直接見えるように表示されています)。VINの意味合いは、2〜3桁目の「VW」がフォルクスワーゲン車を表し、7〜8桁目が車種を表します。車種の桁「1J」はゴルフ4、ゴルフ4ワゴン、ボーラを表し、これはエンジン形式によらず共通です。また、「3B」はパサート、パサートワゴンを表します。現行パサート系は、マイナーチェンジの前後B5、B5.5と表現されますが、その全てがVINにおいては「3B」です。「6E」はルポGTIです。

 生産工場は、各車種が製造されている代表的な工場の名前を表記しました。大半の車がその工場で生産されています。ゴルフ系はモーゼル工場、パサート系はエムデン工場、ルポGTIはウォルフスグルグ工場ですが、一部年式等によっては別の工場で生産されている場合もあります。ご自分の車の生産工場等の詳細をご確認されたい場合は、こちらのサイトが参考になると思います。全てドイツ語ですが、主立った情報は表に整理されているので理解可能です。

 それから、FESTの記念ステッカー。こちらは、素材感と印刷色を最大限に活かすようなデザイン表現としました。意識して素材感に頼る図柄としているため、モノクロの原稿ではパッとしない雰囲気に見えてしまいますが、実際の素材に印刷を行ったときに一番引き立つことを見込んでのデザインです。またこのFEST記念ステッカーには、丸形のVWマークをセットにしてみました。このマークは、リア・ナンバープレートの封印缶、またはリアハッチの鍵穴にピッタリ納まるサイズにデザインしてあります。

 さらに、今回は欲張って、このFEST記念ステッカーと上のVINコードのステッカーについては、2種類のカラーバリエーションを作ることにしました。ひとつは、前回VWMステッカーで大好評のうちに完売したミラー素材、もう一種類は今回初挑戦のホログラム素材です。

 そして最後は、シートポジションメモリーです。これは、とにかく実用本位のステッカー。見やすく分かり易いデザインに徹しています。このステッカーは、私としては本当に自信を持ってお奨めできる一品です。このステッカーの効能については、こちらをご覧下さい。

4.拘りの材料選びは...

 今回、も材料選びにはかなり拘りました。メーカーさんに見本帳を持ってきてもらい、技術的なアドバイスを貰いながら、選定を進めていきます。今回も、仕事関係のメーカーさんに、全面的にご協力頂いてます。

  

 上の写真は、左がリンテック社スーパーステックの見本帳、右が日栄化工社NEタックの見本帳です。っで、最終的に選んだ、拘りの素材は以下の通りです。

1.セキュリティステッカー、FUELステッカーには、リンテック社製スーパーステックの透明PETフィルム材を用いました。基材に50ミクロン厚のものを用い、印刷後に25ミクロン厚の同じ素材でラミネートします。

2.型式ステッカーおよびFEST記念ステッカーのミラータイプは、同じくリンテック社製スーパーステックのアルミ蒸着PETフィルム材を用います。前回のVWMステッカーのときは曲面への追従性を意識して薄目(25ミクロン厚)の素材を選定しましたが、今回はよりしっかりした材質感を持たせるために50ミクロン厚のものを使います。また、印刷後に16ミクロン厚の透明PETフィルム材でラミネートします。

3.型式ステッカーおよびFEST記念ステッカーのホログラムタイプは、日栄化工社製NEタックのスペクトラシーンを採用しました。基材に50ミクロン厚のものを使い、印刷後に16ミクロン厚の透明PETフィルム材でラミネートします。

4.シートポジションメモリーは、リンテック社の白色PETフィルムです。

5.次にインクの調色、これまた大変で...

 今回、印刷色の選定で最も拘ったのが、ホログラム地に印刷するシャンペンゴールドの色です。このインクの色合い如何で、ステッカーの出来上がりのイメージが決まってしまいます。前回のミラータイプのような刷り直しはしている場合じゃないので、一発で決める必要があります。

 このシャンペンゴールドは、色見本などで選ぶのではなく、いろいろなインクを組み合わせて混合して、独自の色合いを創り出してもらいました。イメージを伝えて調色をしてもらうのですが、これが実に大変。でも、メーカーさんがこの拘りつき合ってくださり、調色した印刷サンプルを作ってくれました。上に写っているのは、前回のVWMステッカーと、その幻の金バージョン(前回サンプルで5枚だけ作ったもの)です(笑)。

 ゴールド、クリアー、白などを混合してはみたものの、イメージにはほど遠い感じです。ゴールドと透明だけでは、メタリックの粒子が斑(まだら)になってしまい、均一な色合いが出ません。白を混ぜると、今度は透明感、キラキラ感がなくなってしまい、のっぺりとした感じの色になってしまいます。

 っで、再挑戦で今度はシルバーをベースにして作ってもらった、2回目の印刷サンプルが上の写真です。だいぶんイイ感じになってきましたが、イエローを混ぜたのではレモン色のようになってしまって、軽々し過ぎる感じです。っといってゴールドを混ぜただけでは赤味が強すぎます。っということで、この2回目の調色サンプルを参考にして、3回目に突入です(爆)。

 こちらが3回目の印刷サンプル。もはやどれがどれか、写真ではよく分からない状態です。@は黄色みがやや強く、Aは赤味がやや強くなってます。Bは色目自体がやや薄い感じです。これらを比較しながら、最終的には@にさらにもう少し調整を加えて、オリジナルのシャンペンゴールドを完成させました。