今年最高の満足感だった。いつもは買わない図録も買った。
今週は毎日早出したので、金曜日の午後、会社を3時半に出た。外はだいぶ寒い。
夜、昔の同僚と忘年会の約束をしている。それまでに三菱一号館美術館を観た。今週は「思いやりウィーク」で障害者手帳を見せると無料で観覧できた。期間限定とはいえ公立でない美術館で無料は珍しい。
珍しいといえば、この展覧会では画家のよく知られた画風とは一風異なる雰囲気の作品をいくつか見た。
クールベ、ジョーの肖像、美しいアイルランド女性。風景や動物をリアルに描くクールベが女性の、しかも顔だけを描いた作品は、私は初めて見た。
ルノワール、箒を持つ女。富裕でふくよかな女性を多く描いた印象があるので、生活感のある女性を描いた作品に驚いた。
ルノワール、幼年期。髪の長い 少女の作品が多いので、男児の肖像画ははじめて見た気がする。もっとも衣装は女児のもの。この絵を目の前に見た瞬間、思わず「かわいい」と声に出しそうになった。
モネ、サン=ジェルマンの森の中で。川や橋、池や睡蓮が多い中で紅葉の時期の森を描いた作品は珍しいのではないか。
ルオー、バラの髪飾りの女。苦しみや悲しみに喘ぐ人々を多く描いたルオーで微笑の女性は珍しい。
アンリ・ルソー、工場のある町。不思議な構図ではあるけれど、他のルソー作品ほど奇抜ではない。
メアリー・カサット、マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像。カサットに関しては作品が展示されていること自体が珍しい。
上にも少し書いたように、今回は肖像画に目が行くことが多かった。とくにその配色。
肖像画は描く部分が少ない。表情、衣装、髪、背景。シンプルな肖像画はこの要素だけで構成されている。ここに画家の個性が現れる。
クールベの作品では、白い服に茶色い髪の毛(解説では赤毛と書かれている)が対照的。
ルノワール「シュザンヌ・アダン嬢の肖像」ではオレンジの背景に水色の衣装、茶色の髪。ここでも対照的な色が各要素に使われていて顔の部分を引き立たせている。
ところが、ルノワールにはもう一つ、面白い作品があった。「庭で犬を膝にのせて読書をする少女」。背景は草花だけれど日差しを浴びて青味がかっている。その上、少女の衣装は水色。すこし離れてみるとすべてが水色の空間に溶け込んでいるように見える。人物と背景に同系色を使う裏技もあるらしい。
今回、見た配色ではルノワール「シュザンヌ・アダン嬢の肖像」が気に入った。オレンジとピンクの間の色。第七部を書くことがあったらこの色を基調にしてみようか。
とにかく素晴らしい展覧会だった。裏にある広場のイルミネーションも綺麗だった。
あまりに興奮したのでたどり着いた東京駅のキオスクでプレミアムビールを買った。片隅にある椅子に座り、今年最高の満足感を反芻した。
そのあとは昔の同僚と3人で忘年会。イタ飯居酒屋の後、ニュー新橋ビルの地下で「昭和のサラリーマン」を楽しんだ。