羽後交通のいすゞボンネットバスをサルベージ
海和さんが次に目をつけた廃車体は、再び秋田県の羽後交通のボンネットバスでした。状態はこれまでになく荒廃が進んでおり、また輸送の途中でハプニングもあり、今後がちょっと思いやられる物件ではあります。
(画像は一部を除き、海和隆樹さん撮影)
今回のボンネットバス
撮影:海和隆樹様(大仙市 2006.11.19)
今回引き上げられるのはこの廃車体です。
今までになく破損が激しいように見えます。
車体は、昨年の岩手県南バスと同様に北村製作所製、シャーシはボンネットのエンブレムが示すとおりいすゞです。ボディカラーがこの角度ではよく分かりませんが、東京都営バスの旧カラーと同じ色のようです。
いすゞの銘板
まず最初に、このバスの素性から探って見ましょう。
写真はこの廃車体から外したシャーシ銘板です。型式はBX140とあります。いすゞBX系は今も何両か保存車が残っている名車ですが、BX140というのはあまり聞きません。
参考文献をめくってみると、BX141というのを見つけました。BX91の後継モデルで、長さ、馬力ともに中くらいのクラスです。これと同じような車両でしょうか。
その後、海和さんが入手した資料によると、シャーシの型式はBX141で、ボディの型式がBX140であるということが判明しました。
逆サイドから
撮影:海和隆樹様(大仙市 2006.11.19)
逆サイドを見てみると、都営カラーがよく分かります。窓下には朱色の二本線があります。
しかし、フロントガラスは2枚とも割れ、前輪のフェンダは腐食からか外れ、ボンネットの先端もつぶれたようになっています。これを復元するにはどのくらいの手間がかかるのでしょうか。
後ろ姿
今度は後ろ姿です。
非常口のドアは外れてしまっており、そこから車内が見えますが、藁の置き場になっているようです。フレーム部分の腐食も目立ちますね。
作業開始
撮影:海和隆樹様(大仙市 2006.11.19)
さて、それではいつものようにバスをトラックに載せる作業を始めます。最初にボンネットの下のほうにワイヤーを結び付けます。
車内から見ると
こんな感じです。
多分、ボンネットバスの目からもこんな感じで、これから載せられるトラックが映っているのでしょう。
ワイヤーを結び終わり、いよいよバスを引っ張ります。
腐食が進んでいるので、慎重に作業が進みます。バスが前に進むというよりも、引きずっていく感じです。
枝に絡まって
これまでバスを守ってきた木々の枝が、このバスを行かせまいとしているかのように見えます。
エンブレムを外しておきます
ボンネットの先頭に残されていたいすゞのエンブレムは、念のため外しておきます。
これは銘板などとともに廃車体から外して別の場所に保管します。
なお、銘板を外しているのは、秋田県でキャブオーバーバスのオーナーでもある岡部さんです。
駄々をこねるボンネットバス
前輪が曲がっているせいか、このボンネットバスはトラックに載せられるのを嫌がっているように見えます。
よく秋になるとニュースに出てきますが、高原の牧場に放牧されていた牛が、麓の牛舎に帰るためにトラックに載せられようとするとき、こんな感じで嫌がるようです。
それでも人間の知恵と力によって、嫌がっていた前輪もまっすぐに直され、荷台の上に載せられてしまいました。
載せられてしまうともう観念したかのように、ボンネットバスは大人しくなりました。
記念撮影
そしていつものように、サルベージ隊の皆さんの勇姿です。
皆さん、お疲れ様でした。
対向車の注目を集めながら
仙台市に向かって旅立つボンネットバスです。
すれ違う観光バスは残念ながら羽後交通ではありませんが、右の端に方に見えるのは羽後交通の営業所だそうです。もしかすると、このボンネットバスが昔お世話になったことがあるのかもしれません。
ところが・・・。
アクシデント発生!
水沢ICを過ぎ、前沢PAの1kmほど手前で、ボンネットバスを積んだトラックの前輪がいきなりバースト。後ろを走っていた海和さんの4t車にまでゴム片が飛んできたそうです。
幸い前輪2軸なので、そのまま前沢PAまで走行。ここで休憩をかねることにしました。
ただ、スペアタイヤがないので、打つ手なし。そういう時、勇者がとる手段は「諦め」です。
そうこうしているうちに暗くなりました。スペアタイヤが届き、大型のインパクトレンチを使ってタイヤ交換です。
なお、バーストの原因はボンネットバスを積んだこととは関係ないそうですので、ご安心ください。
深夜の帰着
そんなこんなで目的地に到着したのは、夜1時を過ぎていました。
真っ暗な中で、定位置にボンネットバスを下ろします。隣にいるのは川中島バスから譲り受けた「メモリアルバス」です。
この場所がどこなのかは・・・ナイショです。