朝日連峰縦走(その2)
3日目 6月6日
コースタイム;狐穴小屋5:40〜竜門小屋8:20/9:00〜西朝日岳10:30/11:00〜大朝日小屋12:50/13:50〜小朝日岳15:00〜鳥原山16:30〜鳥原小屋16:50


期待通り最高の天気になりそうだ。
夕べは星がとてもきれいだった。例によってモコモコさんは夜中まったく起きなかったらしい。

Oさんは5:00に小屋を出発していった。我々はOさんにだいぶ遅れて小屋をでてからも、写真を撮って体操をして水を汲んでとのんびりしているため5:30出発。我々が出発するときにちょうどOさんは、雪堤状の残雪を登りきり、天狗から来るときの小屋への近道となる登山道に出て三方境に登っているところだった。

朝早くて雪が硬くなっているので苦労したことだろう。Oさんが作ってくれたステップをありがたく使わせてもらい30分ほどで天狗からきたとき、登山道が直接小屋へ行く道と三方境向かう道とに分岐する地点に着く。三方境へ登り北寒江山へ。



狐穴小屋からの以東岳
前日見えなかった分を補って余るほどの素晴らしい眺めに出会えた。
何も言うことはありません。
雪堤状の残雪から登山道へ 狐穴小屋と以東岳とモコモコさん
出谷川中俣沢源頭
いつかはここへ詰め上がってみたい
お世話になった狐穴避難小屋
眺め、豊富な水、きれいさどれをとっても連峰中最高の小屋だと思う。


 北寒江山、寒江山と進むと、いままで以東岳中心だったのが大朝日岳方面の眺めのよさに劇的にかわる。月山、飯豊の眺めも素晴らしい。

 寒江山から南寒江山では相模山の展望が素晴らしい。岩井俣沢源頭は沢、窪といたるところにまだ雪渓が残っている。本当に今年は雪の量が多い。 あまりの素晴らしさに、排○の欲求が高まってしまった。モコモコさんに「竜門までがんばれない?」と聞かれたが、この素晴らしいい眺めをみながらしたいのだ。ということで藪をかきわけ進んだ。

 解放感と眺めを堪能?したあとモコモコさんさんのところに戻るとモコモコさんが怒っている。どうしたのか訳を聞くと最初は日焼け止めを塗っていたりと休憩がとれて良かったが、天気のよさにバカ虫が活動を始めてモコモコさんにまとわりついてきて不快指数がドーンと上がったらしい。

すっきりしたところで竜門まで稜線をのんびり歩く。竜門小屋手前からまた残雪がでてきて、夏道よりも残雪上を歩くほうが長いところもある。竜門小屋直前に小さな池があり、どうやらケロンパの産卵場らしく数匹のケロンパがうごめいている。そのそばをトンビが飛びすぎていく。ケロンパを狙っているらしい。
ちょっと寄り道(道草をくいすぎたか)しすぎたか。ようやく竜門小屋に到着。相変わらずバカ虫が多いので小屋の中で休憩をする。

竜門小屋も建て替えられてきれいになったが、狐穴小屋の方がいいと思う。軽く行動食をつまんで水場を探しに行くことにする。モコモコさんはすでに靴を脱いでくつろいでいるので、一人で出かける。結構な時間をかけて探してみたが、チョロチョロという感じのところがあるだけである。水筒一杯にするには相当根気の要る作業になりそうだ。昨夜は狐穴にしてよかったと思う。

小屋に戻るとモコモコさんが出発の支度をすませていた。ちょっと長居しすぎた。バカ虫をまとわりつかせ竜門山へ向かう。途中日暮沢からのコースが合流する。このコースも大分残雪があるようだ。 竜門山はそのまま通過して、西朝日岳に向かう。気温がぐんぐん上がり日差しも強いので、日焼け止めをさらに塗る。腕時計の温度計は30℃近くを示していて昨日と20℃以上の違いがある。そのためか暑さがこたえる。




大朝日岳に続く稜線。
とうとう自分の足でここまでこられるようになった。
岩井俣沢源頭
ここもいつか遡行してみたい。

竜門小屋へ向かう途中、巨大雪庇の残骸
亀裂のあまりの深さと大きさについ覗き込んでしまう。
さらに先に進むと一段と巨大な雪庇の名残


西朝日岳に着くと袖朝日に向かう稜線にはやはりまだ雪がついていて、亀裂が大分深く大きくなっている。山頂の指導標に近寄ろうと大きめの岩に体重をかけようとした瞬間その岩が転がった。あわてて逃げたので事なきを得たが、怪我したほうの足で乗っていたので危ないところだった。雪が消えたばかりでまだ岩が安定していないようだ。気をつけなければ。

山頂は結構な風が吹いて肌寒いくらいになっているせいかバカ虫が少し少ない。眺めのよさと行動食をとったためまた長い休憩となる。

 西朝日岳をくだりはじめるとすぐに雪渓となる。傾斜は結構あるが、雪が柔らかいので特に問題はない。それよりも思った以上に水場がないので2人とも水が不足してきた。朝日連峰は水に不自由しないというイメージがあるが今回は水不足である。

そろそろ節水しないとなと考えているとモコモコさんから「おおおっ、これはいい」との言葉が発せられる。雪渓の融雪水を汲めるようになっている。 早速水を飲んで汲む。助かった。水を飲んだら体が軽くなったようだ。体が水不足を訴えていたのだ。


西朝日岳への縦走路は黄色い花がたくさんさいている。その隙間には、まだまだ小さいウスユキソウが生えている。ちなみに空にある黒い物体はバカ虫。こんなところで邪魔するとは、、。やはりこいつらいやな虫だ。 西朝日岳からここまで残雪上を歩いてこられた。雪が柔らかいので、下るときはちらほらとしかでていない夏道を拾うよりも楽である。西朝日岳から奥は袖朝日岳へと続く稜線。


金玉水までは引き続き時々夏道の残雪歩きである。もとから期待していないが、やはり金玉水は雪に埋まっている。

暑い中ふーふーいいながら大朝日小屋に到着。小屋にはOさんがいてちょうど山頂を往復してきて休憩を取り終わったところだとのこと。

もちろん我々も休憩の体制に入る。その前に大朝日岳の山頂往復どうしようかなとモコモコさんに相談する前にモコモコさんから「山頂には行ったことあるから私いかな〜い。」といわれる。モコモコさんは1度行っていようがいまいが山頂にはあまり興味ないのだ。山人もこの暑さにやられていたのであっさりと山頂往復は中止し、携帯電話がつかえるかチェックする。

携帯が使える。ということで今夜は鳥原小屋泊りとなりそうだ。バカ虫が今まで以上に寄ってくるので小屋の中に避難する。文字通りの避難小屋になってしまった。 しかしこのバカ虫の多さからすると、今シーズン朝日の沢ではメジロアブも例年以上に多くなるような気がする。

小屋の中は湿っぽい感じがした。小屋の日記を読み返してみると冬に1Fの窓の一部が開いていて床一面雪だらけだったと書かれていた。その影響かなとも考えてしまった。
また、小屋の中の床には断熱板を敷き詰めた上にござが敷いてある。多人数のとき詰め込めるように個人マットをひかせないようにするためか?小屋の快適さ等は個人的にはやはり狐穴が断然上だと思う。100名山の功罪か?


 休憩を済ませてタクシー会社に連絡をとろうと小屋の外に出ると、今朝日暮沢をでて竜門経由できてこのまま日暮沢におりるという健脚の方に出会う。この方とおしゃべりがはずんで20分ほど話しこんでしまう。
 話はつきないが、そろそろその方も降りないといけない時間で井戸端会議も解散となり、我々はタクシーの予約を入れる。温泉に入る時間を確保できるような時間に迎えを頼む。山から電話がかけられる便利な世の中になったな〜としみじみ実感。

 タクシーの予約がとれて一安心でやっと出発。かれこれ1時間も留まってしまった。この調子で行くと鳥原小屋へ着くのは17:00頃になりそうだ。
 大朝日小屋から少し歩くと雪渓が現れる。ちょうど夏道の溝ができてしまっているところが始まるあたりから銀玉水の標識が建っているところまでびっちりついている。

雪が柔らかいので苦労もなく降りられるが、早朝やこれから雪が硬くなると傾斜が強いので大変になることが予想される。銀玉水の標識があるところで雪が途絶える。期待はしていなかったが、銀玉水もまた深い雪の下であった。

ここから熊越まで一気に下る。バカ虫がますます増えてくる。小朝日岳の登りの前に休憩しようとすると、バカ虫が大挙してくるので逃げるように歩く。水もまた不足してくる。水の素はたくさんあるのだが・・・・。振り返るとY字雪渓が良く見える。

熊越に着いて沢を覗くと、黒俣沢黒倉沢はびっちり雪渓で埋まっている。




大朝日岳
金玉水は、、、、、完全に埋まっています。
Y字雪渓
銀玉水は、、、、、完全に埋まっています。


いよいよ小朝日岳の登り。傾斜はきついがその分標高を稼いでくれ、よく踏まれていて登りやすい。しかし岩には数多くのバカ虫がとまって待っており、我々が歩いていくと「やや、これはこれは。」といっていちいち挨拶に来るのだ。

もー、うっとうしい!!!の一言。このようなときは、モコモコさんを「仲間が遊ぼうよーって言ってるんだよ」とからかうと、「もーこんなの仲間じゃないもん!」と言って暴れるので、それを見て楽しむことで気持ちを紛らわすのです。

小朝日岳からは鳥原山へと続く稜線が見える。新緑が柔らかそうでなんだか優しい感じだ。ところどころ付け替えられたばかりのような登山道を行くことあり、残雪を行くところありと盛夏では暑いだけのようなコースもなかなか楽しい。


熊越から黒俣沢黒倉沢を見下ろす 少し雪が硬くなってきているので、慎重に下りトラバースする。



さてあと30分ほどで鳥原山というところで問題発生。鳥原小屋で水が得られるかどうかということである。
途中ちょろちょろであるが雪渓の融雪水を汲めるところがあったので、水汲みをする。ちょろちょろなので汲むのに時間がかかったたが、これで安心して小屋に入れる。

鳥原山頂を中心にぽっかり残雪がなくなる。このあいだは傾斜が緩く、修復したばかりの様子の登山道で足に優しい道となっている。 鳥原山頂で今日を振り返り小屋へ向かう。

鳥原山直前からの大朝日岳周辺の展望
こうして振り返ると歩いてきた小朝日岳からの稜線にもまだずいぶんと雪がついているのが良く分かる。

小屋へはあとわずかだが、お腹が空いてきた。モコモコさんに何か食べようと言うと、あともう少しだから頑張ろうと言われてしまい、山頂を後にする。

下り始めてすぐにまた登山道は残雪に覆われて古寺鉱泉への分岐まで残雪上を歩く。湿原の手前でどうにも空腹に耐えられなくなり、とうとう行動食を口にする。

 食べている間に「げろげろ、げろげろ、・・・・」とケロンパの大コンサートが開かれているのが聞こえる。
鳥原湿原でもケロンパが大騒ぎなのだ。湿原も雪消えの直後といった様子で水芭蕉がようやくポツポツ咲いてきた状態。いいところである。

ここまでくると小屋は目と鼻の先。


湿原へそして今夜の宿へ 湿原でしばしケロンパのコンサートを鑑賞する。


どんな小屋かワクワクしながら行くと、小屋のすぐ近くの残雪に覆われてる沢が登山道のすぐそばで直径1mくらいの大きさでぽっかり口をあけていて豊富に水が流れている。

よかったー。これで水を気にせずにすむ。
手が切れるかと思うほど冷たくてきれいな水をがぶ飲みして、顔・手・腕などをバシャバシャ洗って(本当は全身を洗いたかった。)から水を汲んだ。

小屋へ入るとOさんが1階から2階へ引越しをしている最中だった。2階のほうが明るく暖かいからということだ。
とてもきれいで狐穴小屋と同じくらい快適な小屋である。我々も2階にお邪魔させてもらう。

早速我々の(アルコール)燃料を冷やしに行き、到着が遅かったのですぐに夕食の準備にかかる。

Oさんと朝日最後の夜に乾杯する。明日は白滝に下山するだけ。コースタイムで2時間30分ほどだ。Oさんはそこからさらに林道歩きを3時間する予定だったらしいが、タクシーの相乗りを勧めたところ快く受け入れてくれた。
朝日縦走の楽しさをかみしめながら食事をし、最終日に備えて寝ることにする。明日は余裕をもって5:00出発ということになる。今までで一番行程が短いのに一番早起きだ。明日も晴れそうだ。


4日目 6月7日
コースタイム;鳥原小屋5:00〜白滝バス停7:00/8:30(タクシー)〜りんご温泉9:00/10:00(タクシー)〜左沢駅10:15/10:32〜山形駅11:15



今日はOさんと3人での行動。Oさんは山慣れた方で4:30には出発の準備を済ませている。それに比べて我々はというと、5:00ぴったりに出発準備完了。Oさんを見習わなくては。朝日を見納めてOさん先頭で出発。
朝起きたときガチガチに凍っていた残雪もあっという間に柔らかくなっている。快調に歩くOさんの後をモコモコさんが必死についていく。

ときどきモコモコさんに足の具合を聞かれるが、ここまで歩いてきても全く問題なし。

1時間くらいで最初の水場に着く。かるく休憩をとり再出発。ここからは朝日連峰らしく水筒いらずの登山道になる。小沢を何回か横切ったり急斜面のところがあったりするが、最近手入れされたらしくとても歩きやすい。

なんでも6月19日に鳥原山の山開きがあるらしいのでそれで手入れがあったのかなと思うが、いずれにしても地元山岳会の方には感謝感謝です.。

途中にある山の神には気がつかず、木橋に着く。ここまできたらあとわずか。散歩気分でもう1本木橋を渡って更につり橋を渡るとそこは林道。林道終点には軽トラックが1台止まっていた。山菜採りかな?

林道をてくてく歩くと白滝バス停。このバス停は夏山シーズンしかバスが通らないところだが、雨風がしのげるように掘建て小屋のようなものがあった。

タクシーの時間まで1時間30分もあるので、干し物をしたり、荷物整理をしたりそれでも時間が余るのでお湯を沸かしてコーヒーを飲んで待つ。

タクシーが時間通りに来て早速「りんご温泉」に向かう。
ここでも運転手さんに今シーズン登山者を乗せたか聞いてみると我々が今シーズン初の登山客らしい。
というのも林道が開通したのがつい先日だったからなのだそうだ。

朝日町の中心に近づくと本当は朝日が良く見えるらしいが、今はもやってしまってみることができない。
朝日町はさくらんぼではなくりんごの生産地で、山形で作るりんごのなかでも特においしいと評判である。

りんご温泉はそのりんごをお風呂に浮かべているとのことだが果たしてこの季節に浮かんでいるのだろうか。

白滝林道入り口
左は朝日鉱泉へ向かう林道


白滝から約30分でりんご温泉(入浴料金\300、備え付けはボディーソープのみでシャンプーなし)に到着。運転手さんに迎えを頼んでからお風呂へ。

4日分の汗を洗い流す。思った通り汚れがひどく3度洗いしたので湯船にたどりつくのに時間がかかる。そして気になるりんごは・・・・・・・・。
ちゃんと浮かんでいました。さらにこの温泉はアルカリ泉なので肌がつるつるになるのだ。もっとゆっくり入っていたいが、左沢線にあわせてお風呂からあがる。

玄関をでると、地元のおじさんに「朝日へいってきたのか?どこから登った?花はどうだった?」と聞かれる。残雪が多くてウスユキソウ、ヒメサユリやニッコウキスゲなどやっと伸び始めたところだと答えると「じゃあ花が咲くまであと1月くらいかかるな。」といっていた。

左沢駅でも駅長さんらしき人から「朝日行ってきたのか?」ときかれる。朝日は地元の方にとても愛されている山なのだと感じた。

さてここまでずっと一緒だったOさんとも、左沢線山形駅でお別れなので、左沢駅を出発してから無事下山してきたことに車内でビールで乾杯をする。

そして思い出深い寒河江市内に近づいてくる。西寒河江駅のあたりで昨年の今頃入院していた病院が見えてきた。本当は長井葉山までぶっちぎるといった大それた計画を立てたが、結局はまたここへ戻ってきてしまった。これも朝日連峰のにくい演出だろう。列車の窓からは霞んだ月山が見えてきた。あのころ、病院の3Fまで行って山の景色を眺めていた。「やっとここまできたんだな〜」、とモコモコさんにつぶやくと「長かったねー。でもうれしいね。」と返事が返ってきた。

たくさんの思い出をかかえて山形に到着。
Oさんに今までのお礼をいって朝日連峰縦走の幕をおろした。


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