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TIBA  SAWARA  &  IBARAGI  ITAKO

 

利根川下流水運施設遺構ほか見学 (pageー2)

 
 さて,次は本日の主目的地である「横利根閘門」へ。
 
佐原の町を抜けて国道51号利根川に架かる水郷大橋を渡って右折するとすぐ左手にに見えて来たのが,本日(というかわたし)のメインである「横利根閘門」!
 

 おおっ!赤レンガが水に映えるヨーロッパの運河を連想する素敵な閘門だ。

 閘門とは、水位が異なる川と川の間に設置して船が航行できるように水位を門扉で調節する施設。パナマ運河の閘門と同じシステムである。
 
 横利根閘門は,1900年(明治33)に始まった利根川改修第2期工事の一部として霞ケ浦と利根川を結ぶ横利根川の利根川合流口に造られたもので1921年(大正10)の完成。

大小8つの門扉を開閉させる合掌扉(いわゆる観音扉)複閘式と呼ばれる構造で総延長127・4メートル・幅10.9メートル。舟運確保のほか利根川が増水した時に霞ケ浦に逆流するのを防ぐ役割も果たしている現役の閘門である。

 1994年,傷みの激しい部分を修復するとともに人力で開閉していた閘門の一部を自動化するなど改造を行った。2000年,国の重要文化財に指定された。

 
 
 
 

下流側ゲート
(背景に見えるのは横利根水門)

上流側ゲート
(背景に見えるアーチ橋は水郷大橋)

 このあたり一帯の地盤は,ブヨブヨ豆腐みたいなものだ。そこに高い水密性の要求される閘門を築造するのは並大抵のことではなかったと思う。
 軟弱地盤に石材を放り込んで基礎を造り”かたわく”をも兼務するレンガを積んで内側に無筋コンクリートを充填していく工法が採用されたと言う。
 それにしても
      締め切りはどうやったの?
      施工中の排水は?
      不同沈下は? 
 当時の技術者の苦労が偲ばれると共に偉大さに頭が下がる。

 日本に残存するレンガ造り閘門では最大規模で,通船用の水路は幅11m,長さ91m,両側に木材の防舷材が設置されている。関東地方では最後に造られたレンガ造りの閘門・水門と言われている。古びたレンガが80年の歴史を感じさせる。  
   
二重門扉構造
門扉巻き上げ機
 外側と内側に開く鋼鉄製二重の門扉とした複閘式閘門である。
 壁の隅や水門取り付け部などには花崗岩のブロックが使われている。構造的な理由もあるだろうが,当時の技術者の美的センスもなかなかのものと感心する。

 当初は手巻き式であった。当時の船頭さんたち皆,相当の力持ちだった?

横利根閘門ふれあい公園

横利根川と利根川の合流点付近

 閘門の両側は,緑地を生かした水辺広場・ピクニック広場・展望広場・芝生広場・休憩広場などがある「横利根閘門ふれあい公園」として整備されている。岸辺では大勢の人が釣り糸を垂らしていた。
 横利根水門から利根川との合流点(閘門から600m下流)を見る 。
右岸側は浚渫作業などの基地として利用されている。
   
 
 
「水生植物園」でいま満開のハナショウブを鑑賞。400品種150万本が咲き乱れているそうだ。圧巻!圧巻!
(入園料 500円ただしあやめ祭り期間中は700円)

 ところで,わたしは,アヤメ(菖蒲)・カキツバタ(杜若)・ハナショウブ(花菖蒲)の見分け方が,いまいち分からない。本に書いてあるの見て分かったつもりでいても,いざ実物を前にするとあやふやになる。今回も同じ。
 そこで,忘れないようにここに説明図を載せることにする。

 写真の腕前はプロに近いAさんから,花やら背景,光線の具合など撮影のノウハウを教えて貰いながらバチバチとシャッターを切るが,さて出来栄えは?
 それにしても暑い! あつい! アツイ! 
折りよく東屋があり,皆,水分を補給しながら小休憩した後,次の目的地 潮来に向かう。

    水生植物園のウェブサイト

 ここ,水生植物園のあるところは,利根川の左岸つまり北岸なのでてっきり茨城県かと思ったが,実は千葉県佐原市である。地図をよく見ると,さっき見てきた横利根川と利根川本流と常陸利根川に挟まれた三角地帯が,佐原市の飛び地のような格好で存在している。
 このあたりの利根川本流は,以前は一小水路または沼沢であったのを人工的に開削・拡幅したと言うことがよく分かる。
      

 本日の最終見学地である潮来に移動。
 中央径間だけが斜長橋となっている潮来大橋で常陸利根川の北岸側に出て,潮来の町に入る。
案内のS君は,狭い,曲がりくねった小路をものともせずにドンドン飛ばして行く。このあたり何度も行ったり来たりしてあちこち遺構をさがして歩き回ったんだろうなあと感心する。

 潮来の前川十二橋めぐりで有名な
”前川”は,江戸時代の水運に利用された霞ヶ浦(北浦)の下流鰐川と常陸利根川を結ぶ水路である。ここに仙台河岸や,津軽河岸があり,流通基地として盛えたらしい。

 探訪の締めくくりは,潮来市牛堀町の
権現山公園。見晴るかすほどの広大な低平地の中にポツンと標高25m位の小高い丘が,常陸利根川が西浦から発するあたりの左岸にある。ここからの水郷の眺め,とくに夕日がきれいだと言われている場所である。
本日はやや霞がかかっていて眺望は今ひとつの感じであったが,霞ヶ浦(西浦),常陸利根川,横利根川,利根川の位置関係がよく分かる格好のビューポイントであった。 

 16:30 ここで解散。利根川下流をめぐる新しい発見のあった一日であった。
 前川の千石橋近くの道端に津軽屋敷や仙台河岸跡を示す石碑がある。 
   
   
仙台河岸跡石碑付近の旧家 前川の水路


権現山公園から霞ヶ浦(西浦)を望む
(手前は牛堀集落と常陸利根川に架かる北利根橋)

 権現山公園は,牛堀が水運の要として賑わった江戸時代にも水郷の町並を見おろす美しい風景で人々を魅了したことだろう。
 かの葛飾北斎もここを訪れ,「富嶽三十六景」の中の「常州牛堀」という絵を描いているそうだ。
 晴天の日には筑波山と富士山を同時に見渡すことができ,ここからの風景は茨城百景にも選ばれている。
 
 
 

28 JUNE 2005

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