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中国雲南省梅里雪山,香格里拉(シャングリラ)撮影旅行記(2)
      

― 徳欽にて梅里雪山ほか撮影 ―

 今日・明日(10/23-24)は,徳欽に滞在して,雪山の写真を撮る時間がたっぷりとってある。

 徳欽(デーチン)は,徳欽県の県都で人口8千人ばかり,宿をとった場所は町から8kmほど先の飛来寺という名の梅里雪山がよく見えるメコン河東岸の山腹にある。緯度が奄美大島とほぼ同じであるが,標高が3400m,大陸性気候でもあり,朝晩はかなり冷え込む。ホテルのベッドには電気マットが敷かれているし,時間を限ってではあるが暖房が入る。


 10/23 
 06:30~08:00 ホテルの前の道路を渡った崖上から梅里雪山の朝焼けを撮影。
外気温:1.3℃ 冬用下着に厚手のズボン・シャツにセーター更に防寒上着・ゴアテックスの合羽ズボンにマフラー・手袋の重装備で出かける。
 厚い雨雲が南から北に流れ,時折ピンク色に染まった山頂をのぞかせるものの,撮影は不調。今朝は撮影練習・リハーサルをしたものとして諦めて帰還。
 
 09:00 朝食

 10:00 バスで,瀾滄江沿いに北へ向かい,渓谷やチベット村の撮影に出発する。
道路は「云蔵道路」(「茶葉古道」唐時代から20世紀中頃まで交易路として盛んに利用された、雲南地域より塩、茶、銀製品、食料品、布製品、日用品など、チベット地域より毛織物、薬草、毛皮など)と呼ばれ暫く先でメコン河に下り青海省西寧やチベット自治区ラサに通じているという。
 雲が切れてきて,対岸に梅里雪山の峰〃が姿を現してくる。梅里雪山の麓には深い谷が刻まれている。谷の名は瀾滄(ランツァン)江,はるかカンボジア,ベトナムに達するメコン河の上流である。両岸は高さ千メートル以上の断崖が向かい合っている。我われは東岸の崖上の道を北へ向かって車を走らせていることになる。
 
 対岸の渓谷沿いにいくつかの美しい村々(下流側から順に「西当」・「永宗」・「明永」・「布」・「斯農」)が点在する。胡桃の樹に囲まれた家々の屋根には,どの家もトウモロコシが干してあり,その黄色い屋根がなんとも美しい。チベットの伝統的な食べ物に大麦を炒って粉にしたものをバター茶で捏ねたツァンパ(麦こがし)があるが,温暖なこの辺りではトウモロコシからもツァンパを作るらしい。
 1991年の京都大学学士山岳会登山隊の遭難事件を思い起こす。17名が雪崩に巻き込まれ,その後6年経ってから遺体や遺品が次々と発見された明永氷河と明永村もはっきり眼にすることが出来る。

         
屋根にトウモロコシを干した斯農村の家々       メコン河の流れと段丘上の村落


梅里雪山主峰と明永氷河と明永村

道路がヘアーピンカーブを描いて瀾滄江へ向かって急下降する地点で,Uターン。
ここからはるか北のほうに雪をいただいたチベットの山(達明永雪山というそうだ)が遠望できる。

次第に,はっきりと姿を現してきた梅里雪山の峰々をカメラに収めながらホテルに戻る。

午後は,フリータイム。日没まで雪山を撮り続ける。

梅里雪山(メイリーシュエシャン)は,雲南省北西部に聳える長さ30km南北に連なる山群の総称である。そこには6000m以上の頂きが6つある。最高峰は、これまで多くの人命を奪い取り今なお未踏の処女峰カゴボ峰、チベット語で「カワカブ(白い雪)」(6740m)と呼ばれている。梅里雪山の周辺には,金沙江(長江の上流),瀾滄江(メコン河の上流),怒江(サルウイン河の上流)の三つの大河が70kmから100kmの間隔で並行して流れ,「三江併流」と呼ばれる大峡谷地帯を形成し,2003年に「三江併流」という名の世界遺産に登録されている。

     
梅里雪山全景                            朝陽に輝くカワカブ
左よりメツモ(6054m),ジャワリンガ(5470m),マーベンゼンデウーショ(6000m),            
カワカブ(6740m),スグドン(6379m)                                            

  
           カワカブに五体投地で祈りを捧げる巡礼者    神女峰 世界でもっとも美しい山の一つといわれている
                                         名山である,主峰カワカブの妻で左側に二児を抱えている。 
                          頂に光を受けて聳える姿はまさに女神


午後九時半過ぎ再び停電し,翌朝も回復せず。ホテルばかりどんどん増えるが,電力供給がそれに追いつかないらしい。準備してくれたローソクは品質が悪いのか,芯が直ぐ炭化してしまって役立たず。

 11時45分,屋上に上ってみると満天の星。カワカブの方角を見当つけて星空撮影に挑戦する。外気温1.5℃,屋上に通じる階段で寒さを凌ぎながら1時間がんばる。だが,デジタル現像時の不手際で,完全な写真が撮れず失敗。おまけにバッテリーを多量に消費してしまい,停電が長引いたら明日の撮影に影響しないかどうか心配である。

 翌朝(10/24)は快晴の好天。

 5時半起床。6時20分にホテル屋上へ,既に4,5人が三脚を据えている。まだ暗い空にカワカブがぼうっと浮かんでいる。長時間露出で梅里雪山の撮影を開始している人もいる。わたしもカワカブが一番よく見える場所を選び,日の出の瞬間を待つ。7時過ぎ,ピンク色の光がカワカブの頂点に降り立つ。いつの間にか集まってきた中国人から歓声があがる。光は輝きを増しながら山肌を下り,メツモ,ジャワリンガ,スクドン,マーペンゼンデウーションの峰々を覆っていく。その間わずか10分間くらい,夢中になってシャッターを切り続ける。誠に贅沢なことではあるが,空には一片の雲も無く山の写真を撮るにはすこし面白くない。せめて二つ三つ雲があったほうが良いのだが・・・・・・・。

― 白馬雪山峠にて黄葉と白馬雪山撮影 ―

 集合時間前に,梅里雪山全景をカメラに収めようとして仏塔の建つ広場に行った。そこでは,これから五体投地をしながらラサまで行くという巡礼者がカワカブに向かって祈りを捧げていた。巡礼者にあったらいくばくかの施しをするのが慣わしとなっている,わたしも持ち合わせの10元を差し出すと,祈りを捧げている姿を撮ってもよいとポーズをとる。幸い広角レンズを装着したカメラを持っていったのでパンフォーカス気味に撮ったのが上の写真。
「ジャナパシ(ありがとう)」と言ってホテルに戻る。

 9時 白馬雪山峠へ向かう。
道々,梅里雪山の峰々がきっかりとその雄姿を見せてくれる。徳欽迎賓台,谷間の黄葉した唐松林などを撮影しながら標高4300の峠へと高度を上げていく。
 白馬雪山第二峠を越えた辺りからの白馬雪山と黄葉の絶景は今日一番のハイライト。バスの中でお弁当を頬張った後,各自思い思いの場所でしばし自由撮影。標高は4000mを楽に越えている場所なので,酸素ボンベを口にする人が何人もいる,あまりあちこち動き回らないほうが良さそうだ。小さな流れは氷結していて長い間,車外にいると寒さを感んじる。それに空気が乾燥しているのか,手が荒れるし,唇がカサカサしてくる。
午後2時を回った頃から,先ほどまでの青空から一転して曇り空に変る。山の天気はめまぐるしく変る。そろそろ帰り時。



白馬雪山の主峰ジャラジャニ(5640m) 典型的なカール地形が美しい

 18時20分ホテルへ帰還。
空は黒い雲に覆われ,夕焼けの撮影は絶望的。
またの停電を懸念して,早めにバス&シャワーを使う。
夕食後は,荷物の整理をしながら就寝までゆっくり過ごす。
 

― 梅里雪山に別れをつげてシャングリラ→昆明→広州→帰国 ―

10/25 
 午前6時目覚めると外は霙混じりの小雨。朝焼け撮影は絶望的,またベッドにもぐりこんで7時過ぎに起床。
今日は,梅里雪山に別れを告げて,一気に昆明まで戻る日である。

 08:50 ホテルを後にする。この頃から雨が雪に変る。標高4300mの峠越えが心配だ。何十回も峠越えをしているドライバー氏曰く「今の時期は,まだ凍結しないので安全に車を走らせることが出来る」と言う。

 峠へ向かって高度を上げるに従いユキも間断なく降りしきるようになる。今年はじめての大雪だという。でもバスは順調に走っていたのだが出発してから1時間半ほど,峠直下の標高4200m付近で,突然ストップ。先行車がスリップして路肩を外したらしい,今復旧中とのこと。
ところがなかなか動き出さない。20台ほどのバス,トラック,乗用車が列をなしてしまった。対向車もやってこない。先のほうで車が動くに動けない状態になっているんだろうか?
およそ一時間ほどしてやっと車列が動き出す。しかしほとんどの車がノーチェーン,ノンスノータイヤで渋滞気味で何かの拍子に一台が停車すると,後続の車もストップせざるを得ない,ところが雪道の坂道での再発進が困難になる。どうか先行する車よ停まってくれるな!,停まる時は追い越し車線を十分に空けてくれ!と祈りつつ当方のバスはじわじわと峠道を登って行く。


雪の峠道でストップした車の列
雪が珍しいのか,台湾からの観光客が雪合戦をして歓声をあげていた。

 12:30 冷や汗かきながらもやっとこさ,白馬雪山第二峠続いて第一峠を越えてひと安心。
前進も出来ず引き返すことも出来ず雪の峠道に一晩閉じ込められるかもしれないと思ったくらいであった。

 下りにかかった辺りで,「昆明→徳欽」という札を掲げた寝台バスとすれ違う。直線距離でも800kmくらいはある,ふたばんくらいかけて走るのだろうか?

 13時 標高3500mまで下り,雪が雨になる。往路で見覚えのあるチベット仏教寺院「東竹林寺」では仮面踊りが行われていて大勢の村人が集まっていた。

 14:10 「奔子蘭」着 往路とおなじ食堂で昼食。添乗員のAさんが日本から持参した「お蕎麦」を茹でてくれ美味しく戴く。なかにはお替りを所望する人もいたが,重たい品物そんなにいっぱいは持ってこれない,あさってには帰国できるそれまで我慢,我慢!

 16:30 「奔子蘭」から30km 谷合いに家々が点在する「幸福村」を崖の上から撮影。屋根に干したトウモロコシの黄色が鮮やかな本当に幸福そうな風景であった。

 17:15 「尼西」という集落でチベットの焼き物を造っているという道路沿いの店に立ち寄る。黒っぽい土鍋様の陶器である。

 18:20 シャングリラ着 雨は本降りとなった。標高3200mでは冷たい雨。友誼商店とかいうお土産屋に寄って40分ほどの時間を潰す。わたしは何も買うものは無い。お茶だけ戴いて苦痛の時間を過ごす。店員全員が日本語で対応するのには驚いた。そんなにも日本人観光客が沢山シャングリラを訪れているのだろうか?

 19:00~20:00 ホテルレストランで夕食

 20:30 シャングリラ空港

 22:00発のフライトで昆明へ

 22:40 昆明着 今回の中国国内便は往復4回ともすべて遅れなし と言うよりむしろ定刻より早めに出発し,早めに到着することが多かった。遅れるのが当たり前だった一昔前とは,こんなにも変ったのかとびっくり・感心することしきりである。

 10/26

 午前8時 昆明発のフライトで広州へ 9時50分定刻に到着。これから15時10分発の成田便まで長時間待ち合わせである。 またしてもお土産屋さんに連れて行かれ時間つぶし。空港敷地内にある中国南方航空直営ホテルの1階にある店である。 昼食は2階のホテルレストランで。久方ぶりの美味しい広州料理であった。
 
 広州 → 成田 はガラガラ。210数席の座席に50人足らずの乗客しか乗っていない。エコノミー席ながらおかげでゆったり,9日ぶりの日本酒をを味わいながらすっかり親しくなった同行者と談笑しながら無事帰国。
 成田着 19:40


 旅から帰った今,小林尚礼著「梅里雪山-十七人の友を探してー」を静かに再読している。

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