久しぶりにいわゆる朝ドラを初回から最後まで見た。『まんぷく』と『べっぴんさん』もときどき見てはいたけど、ここまで熱心にはならなかった。
在宅勤務で朝、自宅にいられたことが大きい。もちろん、内容がよかったから見続けた。
『エール』は音楽ドラマ。半ばミュージカルのような場面もあった。昭和の流行歌が好きな私にはお誂えの作品だった。
よかった点と思うを挙げてみる。
- 小学生の時からの仲間が支え合い、ともに成功する3倍のサクセスストーリー
- 随所に散りばめられた色褪せない名曲の数々
- 初恋を成就して添い遂げるという幸福な恋愛物語
- 戦時歌謡で名を成した音楽家の戦後の葛藤と復活を正面から描いたこと
- 戦争の残酷さを、前線も被災地も、朝ドラとは思えないほど、激しく描いたこと
- 個性的で、的確に配置され、物語を盛り上げた脇役たち
「エール」、「応援する」とはどういうことだろう。支援とは違う。励ましとも違う。
その人がその人なりに活躍することを心から願う気持ち
応援は実際の行動を伴う支援とは違う、活躍を願う心の姿勢。だから、言葉だけで直接に表わすよりも、音楽に乗せて歌うことは応援に相応しい。
ドラマでも、サトーハチローーや菊田一夫が作った歌詞について多くは語られなかった。それでよかったと思う。主役や「歌」ではなく「音」だったのだから。
メロディや編曲の良し悪しを説明することは私にはできない。ただ、古関裕而の音楽は格調高いとよく言われていることは知っている。
西洋音楽の基礎を独学した上で作曲された大衆音楽は「凛々しい」という言葉が似合う。「船頭可愛いや」から「オリンピック・マーチ」まで手がけた幅の広さも、彼の才能が堅く広い地盤に立っていたことを示している。
新型コロナ感染拡大のせいで撮影ができず、2週間、10回分が短縮された。このせいで消化できなかったエピソードが残ったことは惜しい。
光子の晩年、梅と五郎の家庭、ケンの成長、杉山と村野の関係、戦後の廿日市、などは、どれも話の芽が出たところで止まってしまった。唯一回収できた伏線は小山田との確執だったというのは、最終回に志村けんの笑顔が見られたことは良かったとしても口惜しさが残る。
他にも、実際に老成してから古関裕而が出演していた「家族対抗歌合戦」の話も取り上げていれば面白い一話になったと思う。
最後にもう一つ。本作を見てよかったことは、薬師丸ひろ子と菊池桃子、私が十代の頃に好きだった二人の女性が母親から老母までを演じていたこと。私も彼らと同様に歳を重ねたことに気づかされたけれども、それ以上に、二人が30年以上第一線で活躍していることは、うれしいことでもあるし、すごいことでもある。彼らの活躍は私への「エール」になった。
とりわけ菊池桃子は関内家の母である大女優、薬師丸ひろ子に負けないくらい、古山家の母親をしっかり演じていた。同い年のファンとしてとてもうれしかった。
追記
フィナーレのコンサートを観た。
森山直太朗が歌い出したとき、藤堂先生が生きて帰ってきたような気がした。
15分では足りない。『うたコン』でまるまる特集してほしい。紅白歌合戦での特集を期待する。
もう一度、光子の「うるわしの白百合」を聴きたい。