てぃだ~風ぬ想い~、夏川りみ、ビクター、2002


待望の新作。初のフルアルバムという触れ込みだけれども、前作の「南風」もカバー曲が大半とはいえ、堂々としたアルバムだった。

今回のアルバムでは、「涙そうそう」で確立した地歩をどう発展させるかという商業的な課題もあるのだろう。人気のよりどころである沖縄民謡、あるいは民謡風フォークなどを押さえながら、いわゆる癒し系女性ヴォーカルとしての今後を試みるようにいろいろな雰囲気の曲が入っている。

何といっても夏川りみは歌がうまい。強烈に個性的な声というわけではない。そのかわりに正統派といっていいうまさ。細すぎず太すぎず、高すぎず低すぎず、何を歌ってもうまい。こういう目立ちにくい非凡さは派手な個性や、つくられた天才があふれた現代ではあまり流行らないかもしれない。着実にファンは増えているようだし、ぜひもっと脚光を浴びてほしい。

個々の曲でいえば、「芭蕉布」がいい。この曲はライブで聴いたときも背中がぞくぞくするような感動があった。古い曲なのに彼女が歌うと古めかしさがなくなり、懐かしさがさりげなく残る。ずっと前に見た沖縄の風景や、石垣島の青い空、民俗園で見た芭蕉布よりもっと素朴なミンサー織りのことなど、いろいろなことが思い出される。

新しさにこだわらず、70年代のフォークソングなども聴いてみたい。


碧岡烏兎