素朴な疑問


前から思っている疑問。アマチュア・スポーツ選手に肖像権を保護する権利はあるだろうか。具体的に。ある高校野球選手が甲子園大会を前に「ぼくは楽しむために野球をしているのであって、テレビや新聞にでるのが目的ではありません」と言い出したらどうなるだろう。

新聞やテレビのインタービューを拒否することは可能だろうか。テレビ中継で顔を映さないように要求することは可能だろうか。本名を偽って出場することは可能だろうか。

犯罪の加害者は未成年や精神病患者なら名が伏せられる。しかし被害者は望んで被害者になったのでもないのに名前や住所、勤務先や学校までが報道される。アマチュア・スポーツでも活躍した人は、報道されることを望んでいるに違いないととりあげられる。

いったんスポット・ライトが点灯すれば、まぶたを開けられないくらい強い光を浴びせつけられる。そして持ち上げるだけ持ち上げておきながら、その名声がほころびたとたん、断罪するかのように叩きのめされる。

メディアを利用して、したたかに生きていけばよいというのは簡単だけれど、むしろ表舞台に間違っても出ないように生きていくことがまずもって賢い選択に思える。もうしばらく前になるが、『五体不満足』の著者がもてはやされたときには、他人事ながらはらはらしてしまった。結局、彼はその世界へみずから飛び込んでいったのだが。


碧岡烏兎