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聴覚障害者の為の
 映画字幕協力事業
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 聴覚障害者のための映画字幕協力

 聴覚障害者にとって、映画は楽しいものですが、音声が聞こえないため、その楽しみも激減してしまいます。海外の映画については、字幕があるものの、日本映画や、マイナーな映画には字幕が付いていません。字幕を付けて頂くように映画の制作会社や、配給会社などに言っても高額な予算が必要となり、字幕映画はなかなか普及しません。
 そこで、「彩caps」として、字幕の無い映画でも、字幕を付けて、聴覚障害者にも楽しんでもらおうと、活動をはじめました。また、2006年度は、日本財団さまから助成を受けることが出来ました。

字幕製作の流れ

 字幕の概要としては、著作件の関係で、映像に合成する事が出来ない為、配給会社と打合せの上、映像の隣または、下に台詞を投影する方法で行っています。

製作手順

1.台詞の制作
 ワードや、一太郎、PDFなどの電子媒体のデータがあれば、テキストデータとして変換します。
 台本等の紙媒体であれば、テキストデータおこしを行います。
 何もない場合は、ビデオ等の映像から台詞を聞き、テキストデータをおこします。
 それぞれに作業の負担が異なるため、時間がかかることもあります。
2.台詞の確認と擬音の挿入
 台詞に配役名を付け、映像を見ながら、実際の台詞と合っているか確認します。
 画面に登場しない台詞や、チャイム、電話の音、サイレン音、音楽などの擬音を文字化します。
 数字は縦表示の場合は漢数字、横表示の場合は、英数字に変換します。 また、必要に応じて、ルビを挿入します。

 ♪(チャイムの音)
 A子/はぁ〜い。
 ♪ドンドン!(ドアを強くたたく音)
 A子/だ、誰ですか?
3.台詞の加工と前ロール作成。
 長い台詞など、読み切れないものは要約をしたり、不要な部分はカットします。
 1行の表示文字を加味し、一度に表示する文字数で改行をいれます。
 場面の転換が早い、会話が頻繁に入れ替わる場合は、同時に表示するように、文字をつなげて加工します。
 現場のスクリーンの大きさ、会場の広さを考慮し、文字の大きさを調整するため、会場の様子が分からない場合は、一行の文字数の設定のバリエーションを用意します。

党の臨時大会があって東京に行ってきました。新聞で十万円募金の決議は読んだでがんす。専制政府の弾圧が激しくなり離脱する者が増えとるんです。 党の臨時大会があって
東京に行ってきました。
新聞で十万円募金の
決議は読んだでがんす
専制政府の弾圧が
激しくなり離脱する者が
増えとるんです。
未加工 加工
4.練習
 台詞の表示タイミングを計り、実際に映像(台詞)に合わせて文字を表示させます。ここで、誤字や脱字などの最終チェックを行います。また、文字を消すタイミングも練習します。



映画字幕奮闘記 協力事業履歴 日本財団助成に関する履歴 購入品
試行錯誤の一回目 2002/11/30 2006/03/07 審査結果通知を頂きました プロジェクター
 
プロジェクター
タイミングがずれる 2003/02/22 2006/04/27 助成金(330,000円)授与
使いなれたIPtalkへ 2005/01/22 2006/05/01 プロジォクター購入
プロの目は見逃さない 2005/07/03 2006/05/06 パソコンを購入
縦書き表示への挑戦 2005/08/21
静止型表示の盲点 2006/05/13 パソコン

ノートパソコン
非表示の時間 2006/08/09
一行文字の設定 2006/08/12
縦書き横書きの表示位置 2006/11/12
パソコン一台への挑戦 2006/12/02


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映画字幕奮闘記


 ■試行錯誤の一回目

 はじめての行ったのが、2002年11月30日「ふじみ福祉フォーラム21」で上映された「折り梅」でした。このときは、事前にビデオテープと台本を頂き台詞をパソコンで入力。試行錯誤で準備時間もかなり係りました。
 その中での工夫点などを記します。

◆発言者の表記
 私たちは聞き分けている声も聴覚障害者には解りません。
 そこで、台詞の先頭に名前を入れることにしました。

  政子,巴さん・・・!あんたに会いたかったのよう・・・
  俊介,また弁当?
  祐三,ばあさん呼んで来い


◆ルビの表記
 また、難しい漢字にはルビを付けてました。
 
   む      やまぎわ      たく かど  わか
 お向かいの山際さんのお宅の角よ、判ります?


◆擬音の表記
 車のブレーキ音、ドアを開ける音など、大切な音があります。
 このときは、( )かっこでくくって表示しました。

 げんかん       おと
(玄関のチャイムの音)
 ハーイ!


◆表示の仕方

 字幕は、画面の下に2行20文字表記をしました。
 画面に重ねることは、著作権に触れる恐れや、一般の方が見るときに邪魔に成らないようにと配慮しました。また、表示はスクロールではなく、フラッシュでの表示としました。

◆設備
 パソコンは、ノートパソコンを使用、大量のデータを保管する事と、プログラムの関係で、メモリーは多めものを使いました。(PV800M RAM 381MB) 
 ソフトは、Ecriture(エクリチュール)というフリーソフトを使用。
 排出タイミングや、自動ルビ付け機能があり、
 プロジェクターは、エプソン製のELP-730、2000ルーメンの物を使いました。
 明るさとしては、若干暗めでしたが、字幕が目立ちすぎてもいけないので、よし としました。(それ以上は持っていません)

そんなこんなで、第一回目は、緊張で終了しました。

 ■タイミングがずれる!

 文字の排出タイミングはとても大変でした。ビデオを繰り返しみて、言葉にあわせて表示したり、無音の時は消したり。得に、健聴者としては、台詞が発生したと同時に文字が出ないと、とても不快感を持つことがわかりました。

     皆さん、おはようございます。
     排出タイミング

 同日は、事前の台詞とタイムデータで、自動送出しましたが、時々タイミングがずれたり、時間とともに、コンマ数秒ずれる事があり、最後まで気を抜けませんでした。
 さらに、ビデオを何度も見直し、タイミングを入れ、間違えると始めからのやり直し。
 (何度もみて、台詞も覚えてしまいました。)

 ■使いなれたIPtalkへ
 「排出タイミングが、ずれる」この問題が大きく成り、補正を行いながらの作業と成ってしまいましたが、これでは、とても大変。何故ずれてくるのかを原因を探してみました。

 1.32mmフィルムの速度とVTRの速度が微妙に違う。それが、加算される。
 2.フィルムが切れた場合、数コマを切ってつなげる時があり、フィルムによっては長さが異なる。

 などがあると考えられました。
 そこで、タイムスタンプを入れていく方法ではなく、普段、私たちが使っているIPtalkで行うことが出来ないかと再検討を行いました。

◆IPtalkの欠点

当初、字幕時にIPtalkという方法もあったのですが、いくつかの問題点がありました。
 1.文字が流れる。
   字幕はパッと出て、パッと消えなくては成りません。
   スクロールで流れる文字は使えませんでした。
 2.タイミング(タイムスタンプ)が保存出来ない。
   時間に合わせた文字の排出が出来ませんでした。
 3.ルビが付かない。
   ふりがなを付ける場合は、「映画(えいが)」という様に横に入力するため、文字が多く表示されるため、切り替え回数が多く読みにくくなります。

◆IPtalkの改善


 しかし、IPtalkの開発者の栗田氏が、様々な要望に応えて改良を続けていました。

 1.文字が流れる。
   「静止型表示」の機能を追加。1行がパッと表示されるようになりました。

   

 2.時間流し機能の追加
   事前にタイミングを入れて送信が可能になりました。
   ただし、現場でタイミングがずれることが解ったので、この機能は使わなくなりました。

 3.ルビ機能の追加
   ルビ機能が付いたため、ふりがなを付けることが出来るようになった。

   

これらのことから、IPtlkによる字幕を行うことにしました。


 ■プロの目は見逃さない

◆監督さん、ごめんなさい

 字幕の表示場所は、画面の下。パソコン内での表示は、画面下に白文字を行表示させ、背景は黒に設定しました。そして画面に重ねて表示する方法をとりました。
 しかし、上映が終わった後、監督さんから「画面の発色がよくない」とぼやいていました。他のスタッフや、お客さんは気が付かなかったのですが、監督さんだけ(実は、私も)は気が付きました。
 原因は、プロジェクターの重ね合わせです。
 背景を黒に指定しても、プロジォクターの光がうっすら写り、映画全体に発色を低下させてしまいました。
 プロジェクターには、「コントラスト比」というものがあり、これが少ないと黒でもうっすら光が映り込んでしまうのです。

◆対策

 画面比較

 文字を上部で表示し、プロジェクターの向きを下げることで、映り混みを避けました。

 ■縦書き表示への挑戦

秩父事件を題材として、「草の乱」では、歴史的な映画ということもあり、字幕を縦表示にしました。
当然ながら、数字も漢数字としました。
フォントは、毛筆体を利用することで、内容に合ったものになったと 思います。

草の乱写真

画面左に2行縦表示 (詳しくはこちら

  

 ■静止型表示の盲点

 IPtalkを使った1行の一括静止型表記。
 ところが、字幕は、2行、3行表示をする必要がありました。

◆一気に流す
 実際に長文の台詞では、長くしておくと自動的に改行されるので、一気に流すと改行されて表示されました。
 しかし、単語の途中で改行されてしまい、読みにくく成るため、加工しました。
原文 わしの家は丸井という屋号で代々続いた商家だった
未加工表示 わしの家は丸井という屋号で代
々続いた商家だった
単語の途中で「泣き別れ」が生じて
しまった。


◆加工して流す
 実際に長文の台詞では、長くしておくと自動的に改行されるので、一気に流すと改行されて表示されました。
 しかし、単語の途中で改行されてしまい、読みにくく成るため、加工しました。
加工文 わしの家は丸井という屋号で□代々続いた商家だった あらかじめ、文字数を確認し、
□(スペース)をいれて加工した。
加工済表示 わしの家は丸井という屋号で□
代々続いた商家だった
単語の途中「泣き別れ」がなくなった。

 ※ □はスペース

 ■非表示の時間

◆会話を消す
 台詞がある場合は、文字を出すのは当たり前だが、沈黙や話しが終わったときに、次の文字を出すか、
消すかという判断が難しい。
 また、何秒間ほど出しておくべきなのかという点も難しい。
 このため、映画を繰り返し見て、台詞のタイミングを測り、消す場合は台詞が言い終わってから、約3秒後
に、文字を消すようにした。

 ■一行文字の設定

◆文字数
 字幕で表示される文字の一行辺りの文字数は、15〜20文字程度が良いと言われます。
 文字放送では、15文字。これは、TVの走査線や解像度の問題で、漢字が正しく表示されない事や、
読みやすさなどを考慮したものです。

◆文字の大きさ
 映画字幕においても、この様な形をとっていますが、会場の大きさや、スクリーンの大きさによって
文字が小さすぎて読めなかったり、する場合があります。 
  
1行23文字の例 1行16文字の例

これは、実際の会場で映し、最後列で目視確認が必要に成ります。

◆事前の準備
 まず、会場の広さが解っている場合は、計算により、算出出来ます。>算出方法はこちら
 また、会場の様子が分からない場合は、事前に文字数別前ロールを準備します。

 例:15文字表示
  法定の何十倍もの利子をつけ 
  返せなくして地所を取り上げる
 

 例:17文字表示
  法定の何十倍もの利子をつけ返せなく
  して地所を取り上げる、そんな


 例:19文字表示
  法定の何十倍もの利子をつけ返せなくして
  地所を取り上げる、そんなあこぎな商売が


 しかし、実際は、一回の送信で2行を表示させるため、一行は次のようになります。

 例:15文字表示の場合
  法定の何十倍もの利子をつけ  返せなくして地所を取り上げる
  そんな あこぎな商売が    あるもんですかい

 


 ■縦書き横書きの表示位置

◆縦書き
 縦書きでは、画面の右か左に表示しますがどちらが良いのでしょうか。
 映画では、右の画面内に表示される事が多いのですが、画面の外に表示(著作権の関係上)するばあいは、左に表示した方が、読みやすく感じられます。
 理由としては、1行と2行とでは、文字の距離が画面から離れたように感じられるからです。
  
縦文字位置
映像と文字の間隔が変化比較

◆横書き表示
 横書きでは、画面の下に表示します。
 上に表示する場合は、放送などでは、「緊急」を示す文字になるので、下とします。
 文字は、左寄せか、センタリングになります。
 左よせは、読み始めが同じ位置なので読みやすいですが、短い文字の場合は中心に表示された方が読みやすいという意見も多くあります。
 
横文字位置
長文表示 左寄せ センタリング

 ■パソコン一台への挑戦

◆IPtalk9tシリーズの登場
 今までの字幕では、9iシリーズでは、縦書き表示が出来ず、9sシリーズでは、前ロールが出来ないという事から、Networkで二台のパソコンを使用してきました。
 このため、練習や文字の設定についても、一人で会わせることが難しかったのでが、新しく、IPtalkの入力用の9iシリーズと、表示用の9sシリーズが合体した9tシリーズのベータ版がお目見えしました。
 早速、定例会で試したところ大成功。
 あとは、個々が設定できるような要領を作成していくことが、今後の課題です。

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協力事業履歴

日程 会場 題目 備考
2002/11/30 富士見市/きらりふじみの ふじみ福祉フォーラム21「折り梅」
2003/02/22 富士見市/きらりふじみの ふじみ福祉フォーラム21「風の舞」
2005/01/22 上尾市/文化センター 「草の乱」上映会
2005/07/03 久喜市/総合文化会館 「草の乱」上映会
2005/08/21 志木市公民館 「草の乱」上映会
2006/01/14 戸田市文化会館 「草の乱」上映会
2006/05/13 三郷市/八潮メセナ 「草の乱」上映会 日本財団助成事業
2006/08/09 すぎとピア多目的ホール 「老親」上映会 日本財団助成事業
2006/08/12 入間市民会館 「草の乱」上映会 日本財団助成事業
2006/11/12 さいたま市「市民会館いわつき」 岩槻「草の乱」をみる会 日本財団助成事業
2006/12/02 さいたま市「ソニックシティ小ホール」 『草の乱』映画上映 日本財団助成事業
2007/02/25 遺跡の森館ホール(美里町) 『草の乱』映画上映 日本財団助成事業
2007/09/15 朝霞市民会館 ホール 「草の乱」上映会
2007/11/03 秩父市 吉田・やまなみ会館 『草の乱』映画上映 (予定)


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日本財団助成に関する履歴

2006/03/07 審査結果通知を頂きました。
 聴覚障害者に対する、字幕映画の協力として、日本財団に助成申請をしたところ、審査の結果、認められることになりました。
2006/04/27 助成金(330,000円)授与
 申請に対して、機器のみですが、助成が決まりました。
 パソコンと、プロジェクターは認められました。
2006/05/01 プロジォクター購入しました。
 ホールの投影ということもあり、ビジネス用のものではなく、できるだけ高輝度のもので、なおかつ、レンズ交換ができる機種を選びました。また、購入先についても、できるだけ安価のお店を探しました。
 機種は、エプソンのEMP-7950
 http://www.i-love-epson.co.jp/products/offirio/emp/emp7950_7900/index.htm
2006/05/06 パソコンを購入しました。
 パソコンは、表示用ということで、軽く小型の物。
 字幕表示ソフトの負担もあり、性能も重視しました。在庫限りで、かなり安価で買いました。
 機種は、HPのnc4200 オプション(メモリ、bluetooth、S出力)付きです。
 http://h50146.www5.hp.com/products/portables/nc4200/specs/cm37012x25640wlxp.html
 

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