山を滑る

(1)山スキー
 ゲレンデから離れて、地図を頼りに、登り、そして滑るスキーのことで、主にテレマークスキーと山スキーがあります。テレマークスキーについて述べる前に、この2つをいっぺんにまとめた山スキー((1)では山スキーというのは「山スキー」と「テレマークスキー」のこと)について書きます。山スキーを経験すると、ゲレンデスキーは山スキーができない時にスキーの腕前が落ちないようにする、練習のようなものです。そして、これはスキー場の人からすれば反論があるかもしれませんが、山スキーに比べたらゲレンデスキーは平気で転べます。ゲレンデでは、よっぽど危険な転び方をしない限り、転べます。

ゲレンデにない風景が見れます


山スキーというもの
 2013年5月 至仏山

 なお、ツアースキーの時期は主に1-5月(場所により11−5月)で、12-3月くらいは、寒いので、ゴーグルがよく、それ以降は逆に暑くゴーグルでは曇ってしまうので、サングラスが有効です。下の左の写真などは半そでの人もいます。

2002年八甲田テレマークスキー Wさんよりいただいた写真

 ゲレンデは藪などが刈りはらわれているので少ない雪でも滑れますが、山スキーですと、藪よりも雪が積もらないと滑りずらい(滑れないことはないかもしれませんが…)です。ですので、ゲレンデでは滑れても、雪が少ないのでゲレンデ外に出て山スキーはできないという場合があります。山スキーに必要なのは、ある程度の傾斜、積雪、植生、幅です。この中で、厄介なのが植生で以前は小さな低木で楽に滑れたのが、様子が変わってしまうこともあります。古い記録は当てになりません、ガイドブック、ネット、etc.総合的に見て、行く場所を判断しましょう。失敗例(2015年2月北八ヶ岳

確かにスキーのコースとして利用された時もあったのでしょうが、スキーで来ている人には会いませんでした。
2015年北八ヶ岳


 Yさんよりいただいた写真 Wさんよりいただいた写真

 ゲレンデスキーが足の靴全体を板に固定し、歩くというのが非常につらい作業であるのに対し、山スキーでは、かかとが固定されておらず、かかとを板からあげることができます:下右図。その結果、すり足で歩くようにして足を前に持っていくだけで、雪面を歩くことができます。
 登ることについても山スキーは、シールという毛皮状のもの(下左図、一番右側にいる人が右手で持っているのが、シールをつけたスキーの板です、赤いのがシールです)を使います。これを板の滑走面に貼れば、前には進むけど、後ろには進まないという状態ができるのです。その結果、登る時には、シールをつけて、滑り降りる時にはシールをはずす(シールをつけたままでは滑らないことはないですが、スピードは出ません)ということにより、山の中でリフトがなくても、スキーで登れ・滑れるようになるのです。ゲレンデスキーの板でカニ歩きのようにして登る方法もありますが、非常に疲れます。
 ちなみに、山スキーでもリフトを使用しないということはなく、当然、使えるものは使います。白山書房から「リフトで登る日帰りスキー特選ガイド」佐藤明著という本が出ています。

(2)2つのツアースキー
 テレマークと山スキー((2)以下、山スキーというのはテレマークを含まない)のどこが違うかといえば、
 山スキーのほうが機械的で、テレマークはシンプル(以前はそうでしたが、近年機械的なテレマークも出ています)
1.山スキーのほうは、留め金(ボタン)を押すことによって、かかとを固定したり、自由にしたりできます。それに対して、テレマークは自由のままで、固定することはできません。
2.山スキーは、かなり簡単にスキーアイゼンなどをつけることが可能ですが、テレマークはスキーアイゼンが使えない機種が多いようです。
3.テレマークスキーは、かかとが自由なため、テレマークターンという独特のターンに習熟しなければなりませんが、山スキーはシール登降の技術と雪山に対する知識という2点を除けば、案外すんなりとゲレンデから転向できる傾向が高いです。
4.テレマーク、山スキーの両方とも、かかとを自由にできるのですが、テレマークのかかとの自由な時と、山スキーのかかとが自由な時の状態は微妙に違います。この点があるので、テレマークスキーでアルペン滑りをすることは可能なのですが、山スキーのかかとが自由な状態で、アルペン滑りをするのは難しいです。というのも

山スキー テレマークスキー

下手な図ですが、上の左図のように山スキーは、つま先がちょうつがいのように回転するlことによってかかとが上がるのに対し、テレマークスキーは上の右図のように、つま先が回転せず、ブーツを曲げることによってかかとが上がるのです(ちなみに、そのひとつ前のかかとがスキーの板から上がっている写真は山スキーではなく、テレマークです)。テレマークスキーのほうが固定されている面積が多いので、かかとが自由の時はテレマークスキーのほうが安定します。斜面を登る時も、テレマークは自然な形で登ることができます。

 今度、購入したテレマークビンディング(ボレー スイッチバックテレマークツーリング)は、歩行モードと滑降モードがあり、歩行モードにすると、山スキー靴のようにつま先から靴が上がる設定になっています(一般的にはO1というビンディングが普及しています)。その良さを実感したかったので、西山までの登りは、敢えて滑降モードのままで行きました。なので、F川さん、動いていないリフト前の斜面は、まごついていましたが滑降モードなためで、歩行モードで登ったら、登れていたのです。O1もそうですが、使うと、ずいぶん楽で、今回二度目の斜面は一度目に比べて、登れる斜面が違いました。ただO1は、個人的に「シンプルでないので、山スキーみたい」でやめてしまいましたが、こんどのボレーのビンディングはシンプルなので好きです。

ビンディングにあるレバーを
 左に移すことによって
   
山スキー靴のように
 つま先から靴が上がる設定になっています

 ワックスの重要性:2003年12月に参加した講習の初日、自分のスキーは最後の二時間ほどまるで進みませんでした。緩斜面でしたが、直滑降で、スケーティングができました。そして初日の夜、ワックスがけをしたところ、翌日はきれいに滑ってくれました。ゲレンデでしたから、まだ良かったものの、リフトから遠く離れた自然の中でこんなことしていたら、しゃれになりません。めんどくさくても、ワックスがけです。
後日談:ワックスがけはしないよりした方が良いですが、たいていは簡易ワックス(塗るタイプ、スプレータイプ)、出発前にささっと。

 様々な理由から、山スキーから、テレマークスキーに変えました。山スキーのほうがテレマークスキーよりも険しいところへいけるのですが、自分はそれほど、険しいところに行かなくてというよりも、生き物のいるところがいいです(最近はそうとも思わない)。自分の目的は人を含めた「生態」を見ることです。どうも、自分はいわゆるアルピニズムというものに違和感を感じるようです。あと、ゲレンデで滑る場合、山スキー用の板だとゲレンデスキー用の板と概観はあまり変わらないくせに、流れ止めとかがついていて恥ずかしかったというのがあります。スキーの板をゲレンデ用と山用と2本も買うという方法で対処している人もいますが…

雪解けのブナ林(八甲田)


BCクロカン

 
 クロカンと違い、エッジがついてます  右が(BC)クロカンの靴

 BCクロカンは、いわゆるクロカンと違い、エッジがついてます。それ以外は、クロカンとそれほどは変わらないようでした。その他、クロカンブーツの特徴として、ローカット。靴が柔らかくて、ある面では操作をしずらい道具ですが、靴が柔らかいので、前につんのめくってもテレマークより足首を痛める可能性が低いです。
 逆に、細板革靴のテレマークとどう違うかといえば、靴とビンディングが異なる。クロカンと細板革靴の中間といった感じでしょうか。
 なお、クロカンは、スキー板裏にうろこ状に凹凸処理(参考:上写真 「クロカンと違い、エッジがついてます」)がされていて、少しくらいの登りならシールをつけずに登れる。その分、下りのスピードは少し遅い
 うろこは時と場所(小規模なアップダウンの連続)を選べば非常に便利、ただツアーで行く場合はうろこで統一しないと、行動にずれが出るので、余計な時間を作りたくなければ極力、うろこのあるなしを統一すべき。

 ビンディングのレバーを上げて、靴を入れればセットできます  セットしたところ

 専用の靴を履き、ビンディングのレバーを上げて、クロカンと同じように、靴つま先の棒状の部分を、そこにセットして、レバーを下ろせば、板に靴をセットできます。別のタイプのビンディングもあります。

BCクロカンで歩いているところ

 クロカンと同じように、非常に軽く、歩きやすいです。いわゆるスキーしかしたことのない方は、一度は体験してみてください。履いていないみたいに軽いです。
 【歩き方】
 出した足の、かかとにのる。
 歩くときに、数10cm滑らせる(クロカンの選手はこれが命)

BCクロカンで滑る
 (BCクロカン以外の人もいます)

 【滑り方】エッジがついている分、BCクロカンは、クロカンよりはるかに滑りやすく、(自分レベルで)中級者コースを滑れます。クロカンは(いわゆるスキーに比べたら)ほとんど滑れないので、体験しても(フリーヒールをしている人には)あまり価値はないと思いますが、BCクロカンは、挑戦していろいろ面白いかもしれません。板が軽いので、担ぐのも楽です(ザックに括り付ける場合、括り付けるためのひもが必要)。

 2016年12月購入
 BCクロカンと私
 スパッツ必要(ラッセルでもしなければハイキング用でも可だと思います)

自分のBCクロカンは、板が滑り重視タイプで、靴が歩き重視タイプです。
 クロカン板:MADSHUS Eon イオン
 クロカン靴:クリスピーのクロカンブーツ

bcクロカンと流れ止め:つけれる設定になっていないビンディングが多いし、そもそもBCクロカンは標高の低い雪斜面での遊びなので、あった方が安全だけど。
シールもないよりはあった方が良いけど、なくても大丈夫
 ・自分のBCクロカンのビンディングタイプは、少しかかとを上げた方が板にセットしやすい。無理に押しても壊れるだけ。
 「クロカンブーツは、スキー靴に比べて保温性が小さいですが、足裏に、カイロ等貼らない、入れない。微妙な感覚が失われる。通常靴下に加えて(ファイントラック)靴下を、履くなどして(合計2枚)対応すべき。BCクロカンは、板が軽いので、足を動かす動作一つ一つが、抵抗なくでき、起き上がるのも楽です。
・BCクロカンは、雪面が固い斜面は不向き(あまりゲレンデ向きではない)。
・BCクロカンは標高の低い所での遊びであり、クロカン靴で車も運転でき、車で移動しながら、車から良い斜面をみつけて、行くというのも可。靴を履き替えるというのは、小さなことですが、世界を変えることでもある(その後、夏の乗鞍岳の雪渓を、bcクロカンを背負いバスでなく自転車で行けば楽しい(左リンクは、まほろば倶楽部の動画)のでは、という話になりました。bcクロカンについては、まだまだいろんな遊び方ができそうです)。

アルペンスキー(いわゆるスキー)
 テレマークのほうが技術の習得が難しい。時間がたっぷりあって、技術の習得に時間がかかるので、TLTにビンディングを変えてみたものの、とりあえずは「テレマークありがとうございました」と思ったものの、テレマークのほうが(自分は)滑っていて楽しい。他には、滑ること自体を楽しみたかったらテレマークで、スキーを使ってどこかに移動したいのだったら山スキー(アルペン)でしょうか。急でない個所はテレマーク、急な個所はアルペン。

 それにしても、テレマークは、基礎の確認として、たまにアルペンもやった方が良いと思う。アルペンで確認しないと気がつきずらいというのはある。(テレマークでアルペン滑りでなく、アルペンビンディング・ブーツを使っての確認です。テレマークはいろんな要素があるので、基本動作を確認しずらい)。テレマーク一本に絞る、それが必要な時期もあります。改めて、テレマークに行き詰まったら、アルペンをするというのはありだと思う。
 テレマークほどではないが、アルペンも腿が痛くなる。そういえばそうだ。
 シール登降の最中、右足が突然滑降モードになってしまった。慣れないTLTなのでかかとのビンディングを反時計回りに回したかもしれない。反時計回りだと、簡単に滑降モードになる。
 クライミングサポートもストレス無く使えて、登りはテレマークの時よりも快調。でも、「引き抜きキックターン」をマスターすれば、もっと早く登れる。

スキーアイゼンの装着確認

 スキーアイゼンの装着が必要な場所ではありませんでしたが、TLTに変更してから未使用なため、確認のため装着。スキーアイゼンは装着できたものの、板を外さずに装着する方法はわからなかった。逆に、外すのは板を履いたままできた。クライミングサポートを使った時の効きも確認。「スキーアイゼンはアイゼンではなく、凍った斜面のトラバース」と指摘が入る、なるほど。

・夜間行動

トレースは明瞭ではありませんが、おおよそありました

 威守松小屋周辺で、限られた時間の中で救助訓練をするとなると、清水から夜、暗い道を歩くのが望ましいです。リーダーのホーム小屋であり、何度も行っているようなので、おそらくは問題ありませんが、問題は、天気が悪いときです。天気が悪い場合への準備もし、向かったところ、トレースもおおよそあり、問題なく威守松小屋に着きました。夜スキーを使って歩くのは初めてで、月も出ておらず、当然街灯もなかったですが、ヘッドランプの明るさでずいぶん周囲が見渡せ、暗闇の中に白い雪面、雪をかぶった木々の風景は、(ちょっと違うかもしれませんが)以前挑戦したナイトダイビングの記憶もよみがえらせ、行ってみて良かったです。
 確かに、夜間行動は危険ですが、時(天候が荒れていない)を選び、場所(行程が短く、行き慣れた場所)を選べば、楽しめるものだと思います。ただ、今回成功したからと言って、「夜間のスキー登山、解禁」とまではとても行かず、用心に用心を重ねて、時と場所を選んで、だと思います。

時と場所を選べば、夜でも

12:45 スキー板の裏に黒い粘着物が コンパスで樹液をそぎ落とすも

 2015年6月4日平ヶ岳山頂から、標高差約150m、距離2kmほど滑り、白沢山の登りでシールをつける段階で異変に気づきました。スキー板の裏に樹液?がこびりついていたのです。シールが着けられないので、約1時間コンパスなどで樹液?をそぎ落としましたが、本来のシールの接着力には及ばず、でもいつまでも落とす作業をしていられないので、出発。どちらかというとS野さんのシールの方が、接着力が悪かったですが、バンドで止めるなどして対応しました。なお、シールだと雪面への圧力が異なるのか、シールで行動しているときには、外しているときのように、樹液?はつきませんでした。
 「ブナの実」という説もありますが、平ヶ岳〜白沢山のコル間に、ブナは見当たりません。風で実が飛ばされた? なお、スキー板の裏に樹液?というのは、平ヶ岳だけでなく、このゴールデンウィークで、いろいろな場所で見られた現象のようです。PM2.5によるという説もあります。北朝鮮で起きた山火事という説もあります。現在の所、原因不明です。


おまけ
スノーシュー
 スキーが滑れない人が、Outdoorで、雪と遊ぶための道具。1日あれば、使いこなせるようになる、というか3分あればいいかもしれない。

 雪のあまり多くないとき、スノーシューで山を駆け降りるのは独特の楽しさがある。日本に以前から雪上を歩くためにある「わかん」よりいいのは「ファッション性」と「装着がきちっとできる」ということだろう。
 スキーの板のように場所をとらないし、重さも軽いので、他のものと組み合わせて使える。たとえば、アウトドアで、スノボをやる場合、スノボで登るのは大変なので、登りだけスノーシューを使って、帰りはスノーシューをザックの脇にくっつけて下りてくるとか
 使いこなすのが簡単なぶん、極めるおもしろさがない。

クロスカントリースキー (クロカン、XC)

 クロスカントリースキーは、「板がないみたいに軽い」でした。とにかくこの軽さは感動的でした。クロカンはエッジがないので、滑るときはストックをついてジャンプして方向を変えるか、足の向きを変えることでターンしました。板の滑走面に鱗がついている板で、歩く、駆け上がる、楽しさは確かにありましたが、滑ることにつきましては、自分はどうもジャンプして向きを変えるのが苦手で、滑るのは一苦労でした。

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