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| ポアトウ・ヴァンデー地方のロマネスク Poitou et Vendée Romanes |
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| 肥沃な牧草地や潤沢な沼地が果てし無く続くこの地域にも、 サンチャゴへの巡礼路が通っていたために、多くの宿場町や聖 堂が昔の雰囲気を今に伝えている。 ポアティエの町は、特に旧市街が美しい。多くの歴史的な建 築と古い街並が調和しており、石畳の露地を歩く楽しみは格別 である。 冬のヴァンデーを旅する楽しみの一つが、大西洋岸で捕れる 牡蠣である。港町サーブルで食べた生牡蠣の味は、忘れられな い独特の風味であった。 |
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県名と県庁所在地 1 Vienne (Poitiers) 2 Deux-Sèvres (Niort) 3 Vendée (La Roche-sur-Yon) |
旅の途中で見つけた美しい村 Angles-sur-l'Anglin Vienne |
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| ショウヴィニー/聖ピエール教会 Chauvigny/Église St-Pierre |
| 1 Vienne |
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ポアティエの東10キロにある美しい 城下町で、サン・ピエール教会は城塞と 同じ高台に建っていた。 半円アーチの窓を持つ鐘塔や祭室後陣 を見た時には、手付かずのロマネスクが 残っているという期待に震えた。 堂内に一歩踏み込んだ途端に、それは 強烈な感動に変わった。赤を主体に彩色 された柱や柱頭や天井が、不思議な空間 を演出している。 特に祭壇を囲む列柱の柱頭には、怪奇 な獣や悪魔などを中心にした、見事な彫 刻が彫られていた。それらはロマネスク ならではの、とても幻想的なモチーフば かりである。 写真の彫刻は「人間を喰う龍」で、他 にも怪鳥が人を食べる場面も有った。 受胎告知や三博士礼拝など、聖書の場 面も有るが、主役は悪魔、人面獣、ライ オンや正体不明の動物がほとんどで、こ れらを収集すればロマネスク動物図鑑が 出来そうである。 |
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| サン・サヴァン/聖サヴァン修道院付属教会 St-Savin/Église Abbatiale St-Savin |
1 Vienne |
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サン・サヴァンはショウヴィニイから ほど近く、ガルタンプ河畔に建つ教会は その美しい影を川面に写していた。身廊 の天井いっぱいに描かれた、フレスコ壁 画が私達の目的だった。 天井はかなり高く、肉眼では壁画の詳 細は見えない。椅子に仰向けになり、持 参した双眼鏡で鑑賞した。写真は望遠レ ンズを駆使して撮影した「ノアの箱舟」 である。 天地創造に始まる旧約聖書の物語が、 半円形の天井に絵巻物の様に描かれてい た。アベルとカイン、ノアの物語、アブ ラハムやイサク、ヨセフなど、モーゼの 十戒に至るまでの多彩な人物が登場し、 各々幾つもの場面を構成している。 何故旧約だけを題材にしたのか、とい う疑問を感じたのだが、これは調べてみ る必要が有るだろう。 いずれの場面も、豊かな想像力と確か なデッサンによって描かれており、ロマ ネスク壁画の真髄とも言える格調高い傑 作に深い感銘を受けた。 |
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| ポアティエ/ノートルダム・ラ・グランド教会 Poitiers/Église Notre-Dame-la-Grande |
1 Vienne |
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ポアティエは歴史的な魅力に満ち溢れた町で、ロ マネスク教会だけでも、旧市街にはサン・ティレー ル、サント・ラドゴンドなどのほかに、写真のノー トルダム教会が在る。 12世紀に建築された聖堂は、サンチャゴへの巡 礼路教会であった。祭室の一部が15世紀、身廊の 一部が16世紀の再建だが、聖堂全体にロマネスク の雰囲気と魅力とが溢れるばかりに満ちている。 身廊の柱や天井は彩色されており、輝くばかりの 至福を巡礼者に与えたに違いない。地下祭室である クリプトには、フレスコ壁画も残されていた。 写真のファサードは荘重な彫刻に飾られていて、 見るものを圧倒するような説得力を持っている。三 連アーチのすぐ上の彫刻をよく見ると、「アダムと イヴ」や「受胎告知」「訪問」など、ロマネスクの 主題として著名な場面が、技巧に富んだ彫りで描か れている。 一見すると余りスマートなファサードには見えな いのだが、これは決して装飾過剰なのではなく、充 実した図像の集積であるのだと気付くと、何やら荘 厳な光が射して来るように感じられてくる。 近年、教会全体の石が洗われて真っ白になってい るが、この当時が妙に懐かしい。 |
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| ポアティエ/聖イレール・ル・グラン教会 Poitiers/Église St-Hilaire-le-Grand |
1 Vienne |
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城壁内にあるポアティエ旧市街の中心 であるノートルダムから、裏町の露地を 西南端まで歩いた所にこの教会は建って いた。 かなり修復されたファサードには少し がっかりしたが、壮大な身廊と荘厳な内 陣にこそ、この教会の真骨頂が在ったの だと、中に入って思い知らされた。 二段の半円アーチが仕切る側廊の付い た三廊式身廊と、周歩廊と四つの小祭室 の有る内陣の構造は、ノートルダムと共 に巡礼教会の様式となっている。 部分的に彩色が残っており、かつての 壮麗さが伺える。写真は翼廊部分の印象 的な柱頭で、二人の天使が舞うサン・テ ィレールの死の場面を表現している。 ロマネスク時代の落ち着いた美しさと 品位を保っているので、規模の大きさや 改修された痕跡は気にならない。 |
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| シヴォー/聖ジェルヴェ・聖プロテ教会 Civaux/Église St-Gervais-et-St-Protais |
1 Vienne |
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ポアティエの東南35キロ、ヴィエ ンヌ河の流れに近い小さな町である。 聖堂は方形で祭室が飛び出ており、 6本の柱が二列に並んで三廊式の形態 をしているが、まことに愛らしい規模 の建築である。 内部の壁や天井、柱や梁や柱頭の全 てが彩色されているので、初めはやや 違和感を感じてしまった。当初からの 色なのだろうか、という疑問が頭から 離れない。 柱頭の意匠は多様だが、怪物の表現 がショウヴィニイに似ているように見 えた。動物が渦を巻きながら、繋がっ ているところなどはそっくりである。 図像としてはこちらの方が下手くそだ が、どこか捨て難い味わいが感じられ た。写真で見るように、獅子と怪鳥と 龍が混ざったような怪物が人を喰うと いう壮絶な場面であるはずなのに、ほ のぼのと可愛いのである。 |
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| メイユ/聖イレール教会 Melle/ Église St-Hilaire |
2 Deux-Sèvres |
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ポアティエから西南へ国道を真っ直ぐ55キロ 走ると、地方小都市としての規模をもつメイユの 町に着く。緑多い静かで美しい町である。 町から少し谷へ下った辺り、緑に囲まれてこの 優雅な姿の教会が見えてくる。小祭室が五つ有る 後陣と鐘塔の光景は、一幅の絵を見るが如き美し さだった。 聖堂は三廊式の身廊、二つの小礼拝堂を備えた 翼廊、周歩廊のある内陣という構成で、ポアティ エとオルネイの中間に位置しているのだから、れ っきとした巡礼路教会であったのだろう。 内陣には数々の興味深い柱頭彫刻が見られた。 特に、羊・蛇・犬・鹿などを題材とした、特異な 彫像スタイルはこの教会ならではだろう。 写真は北側の入口で、ポアトウ地方の特徴であ るタンパンの無いアーチ門である。四重のヴシェ ールが飾りアーチを構成しているが、かなり摩耗 して図像の詳細が見えない。 馬上の騎士は戴冠しており、馬の右足で小さな 人物を踏みつけている。何かの物語かなと思った が、騎士はコンスタンティヌス帝でキリスト教の 「異端に対する勝利」を象徴しているらしく、美 しい像なのに妙に後味が悪い。 |
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| メイユ/聖ピエール教会 Melle/Église St-Pierre |
2 Deux-Sèvres |
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メイユの町には、ロマネスク時代の主要な教会 が三つ在る。聖イレール・聖サヴィニエン、そし てこの聖ピエールである。 写真は、後方から眺めた後陣と鐘塔で、全体に 均整のとれた、見事な建築だった。小祭室の窓の 上部に装飾アーチが彫られており、細部にも優れ た意匠を見る事が出来た。それぞれの窓ごとに違 った模様が彫られており、目立たぬ場所に贅沢を 施すという、何とも洒落た発想ではないか。 聖堂は典型的十字形で、三廊式の身廊、半円形 の祭室、翼廊の左右に付いた小礼拝堂、交差部の 塔と、構造はセオリー通りである。 手の込んだ装飾アーチに飾られた南門から身廊 へと入った。近年石を洗った形跡が見られ、柱が 円柱の束ね柱なので、その規模以上にスケールを 大きく豪華に見せていた。 柱頭の彫刻の中では、特に優れたものが二つ目 に付いた。植物の蔓と人物が絡まった像と、天使 が舞う埋葬の場面とである。人物が端正に彫られ ていてとても秀逸な彫刻なのだが、不思議なこと にこの聖堂にはこの二つしか無かった。 |
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| アングランド/聖ピエール・聖ポール教会 Ingrandes/Église St-Pierre-et-St-Paul |
| 1 Vienne |
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ポアティエの北30キロにあるシャ テイエロー Châtellerault の町から、 更に北へ5キロの所にこの教会はある。 ロマネスクの面影が壁面と鐘塔に少 しだけ残っているといった、ゴシック 様式の外観に拍子抜けしてしまった。 後陣や北側壁面などは全て、15世紀 以降に修復されたものらしい。 だが、外観からは想像も付かぬ程、 内部は完全なロマネスクであった。半 円横断アーチに仕切られた天井、アー チ列柱で仕切られた側廊と太い柱、そ して柱頭彫刻の数々。 特に柱頭彫刻はユニークなものがい っぱい揃っていた。奇妙な生き物ばか りを集めた空想動物園といったところ だ。写真の柱頭は、魔物によって拷問 される守銭奴で、壷の中にたんまり金 を貯めていたのだろう。江戸っ子は大 丈夫、宵越しの銭は持たないから。 |
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| メユーゼ/聖ニコラ教会 Maillezais/ Église St-Nicolas |
3 Vendée |
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この町からヴァンデー(Vendée)地方に 入る。ニオール(Niort)の西一帯に広がる、 大規模な湿地帯であるマレ・ポアトヴァ ン(Marais Poitevin)の中心の町として著 名である。 町の中心に建つ教会は、この地方特有 の意匠で飾られたファサードを持ってい た。左右に盲アーケードを配した、タン パンの無い扉口、幾重にも彫られた装飾 アーチ、連続する軒持ち飾りなど、均衡 の保たれた秀逸なデザインである。 様式化された造形のつまらなさは、そ こに創造性が欠如しているからこそで、 時代的な様式の中での試行錯誤は決して 単純なマンネリではない。 ファサードに彫り付けられた図像の数 々は、いずれも生き生きとした表現で、 新しい造形を試みた石工の情熱が、現代 にまで伝わって来るようだった。 町郊外の湿地帯の中に旧修道院の遺構 が残り、華麗で壮大な廃墟を見る事がで きた。 |
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| ニウ・シュル・ローティス/旧聖ヴァンサン修道院 Nieul-sur-l'Autise/Ancienne Abbaye St-Vincent |
3 Vendée |
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前出のマユーゼから北東8Kmの所に ある修道院だが、現在は一部が改造さ れ、入場料を徴収する博物館となって いた。だが、付属教会の聖堂や写真の 回廊には、11世紀創建当初のままの 姿が残されていた。 教会のファサードは、左右に盲アー ケードを配した扉口に装飾アーチとい うこの地方の定型だったが、壁一面を 繊細な模様のレリーフで飾っているの が印象的だった。門の柱頭彫刻はかな り剥落しており、それがかえって滅び 行く繊細な美しさを象徴しているよう にも見えた。 いかにも石を積んで構築したのだな と思わせる程荒削りな回廊の建築は、 かつての瞑想の場に相応しい静寂な落 ち着きと知的な美しさを秘めており、 今回のヴァンデーを巡る旅で最も心に 残った空間だった。 |
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| フーセ・パイレ/ノートルダム教会 Foussais-Payré/Église Notre-Dame |
| 3 Vendée |
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牧草地の中をニウから更に真北へ1 5キロほど進むと、いかにも牧歌的な 集落が見えてくる。そこがフーセ・パ イレだった。 11世紀創建の教会だが、聖堂の大 半がゴシック的に改修されてしまって いた。だが目的のファサードは、ゴシ ックの飛びアーチが後補されて見難く なってはいるものの、扉口・装飾アー チ・左右の盲アーチなど全てがほぼ完 璧に保存されていた。 盲アーチ部の彫刻は見事で、左が磔 刑、右がシモン家の晩餐と復活を描い ている。 写真は装飾アーチの一部で、十二使 徒や怪獣などが混ぜこぜに彫られてい て、何を表現したのかは判然としない が、特色ある表現の美しい彫刻だ。受 胎告知や天使、この地方でよく見る人 魚像や曲芸師などが、隙間無く彫り込 まれていた。 |
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| ヴーヴァン/ノートルダム教会 Vouvant/Église Notre-Dame |
3 Vendée |
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フーセの西北8キロにあるこの村は、フランス の格別美しい村々 (Les Plus Beaux Villages de France) に指定された、風光明媚な集落だった。 町外れには城砦や塔が残っていて、かつては城 下町として栄えたことが偲ばれる。 町の中央に建つこの教会は、翼廊の北端に扉口 が開けていて広場に面している。写真はそのファ サード全景である。大きな装飾アーチの中に、二 つの小さなアーチ門が作られており、大変美しい デザインである。ピレネーのオロロンも似た意匠 だが、あそこにはタンパンが付いていた。 ファサード全面が特異な彫刻で飾られており、 いつまで見ていても飽きない。ヴシェールには不 思議な動物や鳥や植物模様や曲芸師の連続図像が 彫られ、上部壁面には最後の晩餐や使徒の群像が 描かれるという、豪華な彫刻群である。 内部は端正な建築で、聖母の名に相応しく、柱 頭に彫られた受胎告知と御訪問の場面が、とても 清楚で美しかった。 それとは逆に、表に出て背後から眺めた聖堂の 姿は、後陣の美しさに比して、やや不細工な鐘塔 のお陰でとても男性的な力強さを感じさせた。 |
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| パルテネイ・ル・ヴュー/聖ピエール教会 Parthenay-le-Vieux/Église St-Pierre |
| 3 Vendée |
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ヴァンデーのロマネスクを巡るために3泊した ラ・ロッシュ La Roche-sur-Yon からは100キ ロ真東に位置する町で、パルテネイ (Parthenay) の西郊外にある、教会を中心とした小さな集落で ある。 西のファサードに扉口が付けられており、例の 通り、ここでも三連アーチの中央が門になってい る。他の二つは勿論盲アーチである。このタンパ ン部分に、馬上の騎士と踏みつけられる小人が描 かれていた。メーユのサン・ティレールほど完成 されたものではないが、全く同じ意匠のコンスタ ンティヌス帝だろう。ここでも小人が哀れだ。 もう片方の盲アーチの中の彫刻は、獅子と闘う サムソンの像だった。 聖堂は見事な十字形で、三廊式の身廊、翼廊と 二つの小礼拝堂、半円形の祭室、交差部の鐘塔、 などが静謐な均衡を保っていた。 多くの柱頭彫刻が見られたが、特に目を引いた のが写真の図像だった。この地方に作例の多い、 人魚の形をした海の精セイレンである。窓からの 光の中の陰影が、際立って幻想的だった。 |
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| キュルゾン/聖ローメン教会 Curzon/ Église St-Romain |
3 Vendée |
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ラ・ロッシュから真南に車を走らせれば、30 キロ程でポアトヴァン湿地帯の西端に達する。厳 冬の村は荒涼とした原野のような中に、孤立する が如き佇まいで静かに眠っていた。 不思議なことに教会の扉は開いており、クリプ トへと降りて行く通路の扉は、自分で開ける事が 出来るようになっていた。 ここでは教会の建築や彫刻にはほとんど見る価 値は無く、クリプトだけが目的だったので、冬季 のこの無人教会は開いていただけで幸運だった。 クリプトに降り、スイッチを見つけて点灯した 瞬間の感動をどう表現していいか判らない。 暗黒の中に浮かび上がった青白い円柱、柱頭、 アーチ天井、そして素朴な石積の壁。ロマネスク の幻影とでも表現出来そうなほど、プリミティヴ な美しさに満ちていた。簡素な柱頭の意匠は、ス トイックなシトー会修道院の回廊を見るようだっ た。中央に4本、壁に9本の円柱があるだけの狭 い空間に、ロマネスクのエッセンスがぎっしりと 詰め込まられているようにも思えた。 |
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| ラ・シェイズ・ル・ヴィコムト/聖ニコラ教会 La-Chaize-le-Vicomte/Église St-Nicolas |
3 Vendée |
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ル・サーブル Les Sables-d'Olonne で 生牡蠣を堪能した翌日、私達はラ・ロッ シュから5キロのこの隣村へと出かけた。 生憎の雨模様で教会の扉は閉まってい たが、幸運にも隣家の主人が在宅で鍵を 開けてくれた。 扉口は修復されており、壁面もややゴ シックの改修が目立っており、雨の降り も激しかったので、お誂えとばかり内部 の見学に専心することにした。 三廊バジリカ式の聖堂で、連続アーチ が仕切る側廊の上がゴシック窓になって いたため、柱頭彫刻の横から光が射して 思ったより明るかった。写真もその自然 光で撮影したのだが、ゴシックへの改修 を感謝したのは初めてのことだった。 猫や鳥の化物みたいな、謎の怪獣と人 間が絡み合ったような柱頭ばかりで、お 化け屋敷を覗くような楽しさだった。写 真の柱頭もその内の一つである。 |
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