ブルターニュ(南東部)の古代巨石文化
           Mégalithique Civilisation
                de Bretagne sud-est
      
      
  英国の古代巨石文化を
 代表する遺跡がストーン
 ヘンジだとすれば、ブル
 ターニュのカルナック列
 石群はフランスを代表す
 る遺跡であろう。
  モルビアン湾を中心と
 して広く分布する巨石群
 の存在は、全く解明され
 ない謎として興味深い。
  日本庭園の石組にも似
 た立石の美しさを、古代
 の人々も知っていたのだ
 ろうか。

    
カルナック列石群
      
Alignements
     
Carnac (Morbihan)
       

       
       
     カルナックケルレスカン列石
       Carnac
/Alignements du Kerlescan

                           Morbihan
       
   約3kmの長さで3,000
  個近いメンヒルの列石が10列
  〜13列に並んで海岸まで続い
  ている様は、とてもこの世のも
  のとは思えない。ましてや、1
  個1個の石を、何千年も前に人
  間が立てたのであるから、ピラ
  ミッドにも匹敵する古代の謎で
  ある。
   メネック、ケルマリオ、ケル
  レスカンという三つの列石群が
  縦に連なっているのだが、空か
  ら見なければ全貌は見えない。
   石の列はこの状態のまま、何
  と3Kmも続いているのである。
   写真はケルレスカンの列石だ
  が600個の立石の内のほんの
  一部にすぎず、全体を想像する
  のは難しい。

   私達はブルターニュのこの不
  思議ランドがすっかり気に入っ
  てしまい、隅々まで歩き回った
  ものである。  
    

   
    
     カルナックケルマリオ列石
       Carnac
/Alignements du Kermario

                              Morbihan
     
   カルナックの三つの列石群の中
  では、中央部に位置している。
   背の高い先端の尖った石も多く、
  全体の印象は何とも凄絶である。
   立石の数は約1030個で、写
  真のような列石が10列並んでい
  る様は、想像力を超越したミステ
  リーの世界だといっても過言では
  ないだろう。

   新石器時代から青銅器時代にか
  けての遺跡であり、その時代の人
  々が何らかの目的で、信じられぬ
  程の労働力を駆使して建造した石
  造遺構なのである。
   太陽の出入りに関係がある、と
  いう説が有力なのだが、その程度
  の目的のためとしては余りにも規
  模が大き過ぎるのである。もっと
  次元の異なったプロジェクトが存
  在したに違い無い。
   この列石の東端に、形の見事な
  ドルメンが隣接して残っている。   
      

   
    
     カルナックメネック列石
       Carnac
/Alignements du Menec

                              Morbihan
     
   三つの列石の中では、最も海岸
  に近い場所に位置している。
   列石最南端の一部は、カルナッ
  クの町の住宅に隣接している。
   立石の数は1100個と言われ、
  1Km以上の長さで11列に並んで
  いる。人間が構築可能な範囲を遥
  かに越えた規模で、ピラミッド同
  様、巨石をどのような方法で運搬
  し、どういった手法で立て、何の
  ために築造したのかが全く解明さ
  れていない。
   現在は遺跡の中に立ち入ること
  が出来ないのだが、以前は石に触
  ることが出来た。石の持つパワー
  を感じるためには、何とか石の近
  くまで寄って、その大きさを実感
  してみたいものである。
   石を並べることから生まれる意
  味合いはその方向性だろうが、よ
  く見るとかなり湾曲しているので
  意味はかなり薄れてくる。並べる、
  という行為そのものに、何らかの
  意味があったのだろうか。   
      

   
    
     カルナックマニオの大メンヒル
       Carnac
/Menhir Géant du Manio

                              Morbihan
     
   ケルレスカンの列石に隣接して、マニオという深
  い森
(Bois du Manio)がある。森の入口に車を停め、
  しばらく歩いたところに少し開けた場所があり、そ
  こに写真のように見事な立ち姿のメンヒルが立って
  いる。
   森を抜けた途端に目に飛び込んで来る立石の姿は、
  とても衝撃的であり、やはりメンヒルというのは石
  そのものの存在感と神々しさに満ちており、立って
  いることそれ自体が何とも魅力的である。

   カルナックの列石群は見方を変えれば、3000
  基のメンヒルが立っているとも言えるので、たった
  一基のこのメンヒルなどさして珍しくもないのだが、
  独立している立石の存在感はまた格別である。
   ここでは並べることにではなく、立てることにそ
  の意味合いが有ったのだろうか。
   ドルメンの様式は島(英国)と大陸(フランス)
  でかなり異なる部分があるが、メンヒルは一石であ
  るためにほとんど差は無い。しかし、メンヒルが連
  なった列石が、島ではRowと呼ばれる小さな石の列以
  外にはほとんど事例が見られないのは不思議である。

   このメンヒルの近くに、方形に石の並んだ一画が
  ある。サークルは多いが、四角というのは珍しい。
  何らかの祭祀の場であったのだろうか。
     

      
      
     マヌ・グロドルメン
       Mané-Groh/Dolmen (Allée couverte)

                              Morbihan
     
   カルナックの列石遺跡周辺には、数多
  くのドルメンやメンヒルが集中している。
   写真のドルメンは、クルッキュノのド
  ルメンから程近い森の中に在る。全体像
  は飛鳥の石舞台にとても類似しているよ
  うに見えた。発想の貧困はいかんともし
  難く、その形からは石舞台と同様の、古
  墳つまり墳墓なんだろうという発想しか
  生まれなかった。
   写真は入口と思われる正面からの眺め
  であるが、奥の部屋への通路がかなり長
  いのが特徴である。羨道式墳墓というも
  のを、アイルランドで見た経験があるが、
  形式は全く同じだ。
   フランスでは、この通路式ドルメンを
  
Allée couverte(屋根付通路)と呼ぶ。
   森閑とした樹林の中に組まれた石の示
  す、神秘的なたたずまいとその重量感が、
  古代からのメッセージの存在を感じさせ
  るのだが、錆付いたアンテナでは、具体
  的なものは何一つ受信できない。  
     

   
    
     クルッキュノドルメン
       Crucuno/Dolmen

                              Morbihan
     
   マネ・グロのドルメンに程近い小さ
  な集落で、このドルメンは村の中央の
  一軒の住宅に密接して残されている。
   巨大な平石が屋根石として用いられ
  ており、かなりの重量感に満ちた迫力
  が感じられる。
   壁の支石の高さは2m以上あり、ひ
  とつひとつの石がどっしりと据えられ
  ていて、分厚い屋根石をしっかりと支
  えている。
   実際現代に、これだけの石を運び、
  据えるためには、どれだけの重機と人
  員が必要となるのだろうか。
   書物に載っているドルメンの古い写
  真では周辺に何も写っていないので、
  どうやら住宅は近年になって建てられ
  たらしい。どういう事情があったにせ
  よ、古代遺跡に密接して家が建ったこ
  とは理解に苦しむ。
   もっとも、この周辺にはドルメンや
  列石群が密集しているので、それを避
  けていたら人間の居住する場所など全
  く無い、というのが現実のようだ。   
     

     
     
     ケルゼロメンヒル列石
       Kerzerho/Menhirs Alignements
 
                           Morbihan
     
   カルナックからカンペール方面へ
  国道165号線を少し走った辺りで、
  国道を横切るようにして大きな石が
  数列並んでいるのに気が付く。
   ケルゼロのメンヒル列石である。
   カルナックに比べれば規模は小さ
  いが、それでも石の数は1100個
  以上有るという。
   ここでも車を止め、かなり先の方
  まで歩いてみたが、石の高さは全て
  3〜4mあり、近寄るほどに石の示
  す重量感に圧倒される。
   この内の1個の石ですら、それを
  運び垂直に立てるだけでも、想像が
  つかぬ程の労力を要求されるだろう。
   どんな人達が、どのような目的で
  立てたのだろうか。
   全部の石がこちらを向き、謎が解
  けずに困惑する我々を嘲笑している
  かの様にも見えた。
    

    
     
     モワンヌ島ペンアプのドルメン
       Île aux Moinnes/Dolmen de Près-Penhap

                            Morbihan
           
   ブルターニュのモルビアン湾に浮
  かぶ島々には、多くの伝説と遺跡が
  残されている。
   その一つここモワンヌ島にも、巨
  石文明を代表する多くの遺構が見ら
  れる。
   島の南ペンアプ集落近くの丘の上
  に、この堂々たるドルメンが在る。
  湾を望む景勝の地であり、墳墓なの
  か祭祀なのかという重大な命題に至
  る前に、石の存在そのものに感動し
  てしまっていた。
   やや崩落気味だが、二つの部屋を
  持つドルメンである。傾斜した石が
  スリリングであり、最も大きな石を
  天井に使用することから生まれる緊
  迫感がたまらない。
   一体何を意識し何を目的にして、
  古代の人々はこんな不思議な造形を
  生み出したのだろうか。   
    

    
     
     モワンヌ島ケルゴナン列石
       Île aux Moinnes/Alignements de Kergonan

                            Morbihan
        
   前述のドルメンから船着場へ戻る
  途中の草地の中に、この妙な石の行
  列が在る。
   環状列石にしては円形ではなく、
  かと言って直線でもない。全体はア
  ルファベットのU字形をしているの
  である。モルビアン特有の、馬蹄形
  をしたストーンサークルなのだと知
  った。
   干潮になると海底から浮かび出る
  U字列石が、どこかの島に在るそう
  なのだが、次の機会に残しておこう
  と思う。
   1m前後の石が大半だが、鋭く立
  っているので迫力が感じられる。日
  本の神社に伝わる「磐境」を思い出
  していた。この不思議な石の列も、
  或る種の「結界」をイメージして立
  てられたのだろうか。
    

    
     
     ガヴリニ島羨道ドルメン
       Gavrinis/Dolmen à Couloir

                        
Morbihan

       
   モルビアン湾に浮かぶこの島へは、ラルモー
  ル・バダン
(Larmor-Baden) という港から出る
  ツアー船に乗らなければならない。遺跡への入
  場時間に制限があり、個人では自由に見学が出
  来ないからである。
   羨道のような通路
(Passage)の付いたドルメ
  ンの上に、円墳のように小さい石が載せられた
  ケルン
(Cairn)とも見える。
   しかし、この遺跡最大の特徴は、内部羨道の
  両側に立てられている壁石、その表面に彫られ
  た模様に有る。内部の高さは1.5m程だ。
   写真は入口から見て右側4、5番目の石であ
  る。石は左右併せて29個、その大半に指紋の
  ような多重渦巻模様が彫られている。
   具体的な像は一つも無く、全てが抽象的な指
  紋ばかりである。装飾なのか呪術なのか、現代
  人の鈍感なセンスからは想像もつかない。
   が、入口から差し込む光に浮き上がった模様
  の、何と美しいことだろうか。
   ガイドの目を盗んで撮った写真だが、手持ち
  にしては奇跡的に上手くいった。
    

   
    
     キベロンマネムールのメンヒル
       Quiberon/Menhirs de Manémeur

                         
Morbihan

            
   キベロン湾の西に、蟹の爪のような格好をした
  半島が突き出している。それがキベロン半島であ
  り、先端の町がこのキベロンである。
   楽しみにしていたサン・ピエールの列石が、全
  く原形を無視した改造が成されていて失望した。
   キベロンの町で海鮮料理の昼食を楽しんだ後、
  半島を北へ車を進めていた時、家人がこのメンヒ
  ルを発見した。
   メンヒルはこの奥にもう一基立っており、いず
  れも海に面してキリっと立っていた。
   古代遺跡地図には載っていないメンヒルなのだ
  が、後で調べてみると小生の国土地理院の地図に
  はこの名前で載っていた。

   このメンヒルも他のものと同様に、正面から見
  るとかなり扁平なのだが、真横から見ると写真の
  ように鋭く尖った緊迫した姿に変容する。
   使用されている石は結晶片岩の一種だろうが、
  日本庭園の石組や板碑などの石碑に用いられる緑
  泥片岩にも似て、その風貌は魅力的だ。
   パイ皮のような材質が、こうした厚みが無くと
  も巾のある造形を可能にしたのである。古代の人
  々がこうした片岩の特質と魅力とを、きちっと把
  握し生かしきっていたことに驚かざるをえない。
    

      
    
     ケルヴィニャックトロア・ピエールのドルメン
       Kervignac/Dolmen de Trois Pierres

                         
Morbihan

        
   ロリアン Lorient の町の東方約
  10
Kmにある小さな村だが、その
  北に広がる森の中にこのドルメンは
  ひっそりと立っていた。
   落ち葉を踏みしめながら入って行
  った森は鬱蒼としており、さながら
  妖精たちの遊び場のようであった。
   ドルメンとしては最もシンプルな
  構造で、石も1.3m前後と小規模
  である。しかし、不思議な雰囲気を
  持ったドルメンで、今にも石が浮き
  上がりそうな錯覚を感じるほどの軽
  快なイメージを抱かせるのである。
   このドルメンを見る限り、墳墓と
  いうよりは、何等かの呪術的なモニ
  ュメントだったと考えるのが妥当な
  ようだ。羨道や部屋のついたドルメ
  ンとは、造立の思想が異なっていた
  のではないか、と思えている。
    

     
     
     ロクマリアケールケルカドレのドルメン
       Locmariaquer/Dolmen de Kercadoret

                          
Morbihan
       
   モルビアン湾入口の半島に有るこ
  の町には、数多くの古代石造遺跡が
  残されている。
   このドルメンは町外れの草原に、
  淋しくポツンと立っている。道路か
  ら近いのだが、案内が全く無いので
  付近の民家で尋ねてようやく行くこ
  とが出来た。
   写真は真横から撮ったもので、右
  がコの字形の開口部になっている。
   小さく見えるが高さは1.5mは
  あり、近寄って見ると個々の石が示
  す重量感には迫力が感じられた。
   この町には、世界最大のメンヒル
  の倒壊したものや、もっと大きなド
  ルメンなどが有るが、何故かこのド
  ルメンに最も心に響くインパクトを
  感じた。古代の人々の、清冽で高潔
  なメッセージが込められているから
  なんだろうか。
    

  
    
  
     プロードランマイン・グーアレックのドルメン
       Plaudren/Dolmen de Mein-Gouarec

                          
Morbihan
       
   ここはヴァンヌ Vannes の町
  の真北、たった17Km離れた場
  所なのだが、小麦畑や牧草地が
  続く全くの田園地帯である。
   このドルメンは広大な麦畑の
  はるか真ん中に有り、目を凝ら
  さなければ見えないし、畑をか
  なり横切らなければたどり着け
  なかった。
   トラクターで農作業中の老人
  に頼むと、構わず入って良いと
  言う。麦は踏んだ方がいいんだ
  ろう、などと話しながら畑を歩
  いた。
   通路式ドルメンだったのだろ
  うが、一部屋根石が失われたら
  しい。それでも、屋根石の残る
  部分は、原形の持っていたであ
  ろう緊迫感を留めている。
   こうした農地や牧草地に在っ
  た遺跡は、保存し易いが故に残
  ったのだという考え方もあり、
  ブルターニュやコーンウォール
  は開発の波から外れてしまった
  ことが幸いしたのだ、とも言え
  そうだ。
   
    

    
     
     メドレアックランプーイの列石
       Médréac/Alignements de Lampouy              

                          
Ille-et-Vilaine
       
   ディナン Dinan の南、モント
  バン
Montauban に近い丘陵地帯
  で、幾つかのメンヒル遺跡が集中
  している。
   ここは壮大な農場で、牛の放牧
  や小麦の栽培が行われている。
   
Le Clos du Rocher, La Grande
  
Épinée などといった列石も在る
  が、写真の
Les Longs Points
  呼ばれる列石が最も豪快で造形的
  であった。
   石は巨石が漫然と並べられたの
  ではなく、大きな石と小さい石、
  細長い石と太い石などの対比が作
  り出す妙味が、明らかに考慮され
  ているのである。
   このことは誠に驚きであり、何
  を意図したかは不明ながら、或い
  は直裁に造形美を求めたのではな
  いにせよ、ある美的な感覚が働い
  ていたことは間違いない。
   古代人の造形が何らかの“絶対
  的なるモノ”に近付く作業だった
  とすれば、それを美しいと感じる
  感覚が遺伝子となって今日に伝え
  られたのだろうか。  
    

   
     
     トルッセ妖精の岩のドルメン
       Tressé/Allée couverte de la Roche aux Fées

                          
Ille-et-Vilaine
       
   
   こんなに美しい森が他にあるだ
  ろうか、とすら思える程の瑞々し
  い新緑で、ドルメンの石までが緑
  に染まってしまっているかのよう
  に見えた。
   ディナンの東15
Kmに広がるメ
  スニルという森
(Forêt du Mesnil)
  で、妖精が住んでいるという話を
  信じてみたくなってしまいそうな
  雰囲気が漂っていた。
   
Allée couverte と呼ばれる屋根
  付通路式のドルメンで、内部には
  幾つかの部屋が縦に連なり、天井
  には分厚い巨石が数個載っている。
   この形式は明らかに墳墓に通じ
  る羨道をイメージさせるのだが、
  実際に墳墓として建造された形跡
  は無い。
   つまり大半のドルメンの最奥の
  祭室とされる部分には、ほとんど
  の場合埋葬の痕跡は無いのである。  
          単体のドルメンが数個繋がったようにも見え、連続する部屋なのか通路なのか、ブ
         ルターニュにはこの形式が多く、全く謎の様式としか言いようがない。墳墓でないと
         すると、一体何なのだろうか。
                    

   
     
     ドル・ド・ブルターニュシャン・ドレンのメンヒル
       Dol-de-Bretagne/Menhir du Champ Dolent

                          
Ille-et-Vilaine
       
   モンサン・ミシェルに近いドル Dol の町か
  ら、南へ数キロ行った畑の中にこのメンヒルが
  どっしりと立っている。高さが9mあるので、
  かなり離れた場所からでもその存在を容易に確
  認出来る。
   メンヒルとしては並外れた高さであることを
  表現したいがために、家人に立って貰った写真
  を載せた。家庭アルバムからの抜粋を、御容赦
  願いたい。
   
   古代の人々がいかなる情念を抱き、いかなる
  方法でこの巨石メンヒルを立てたのだろう。古
  代巨石遺跡の前では、この疑念は永遠の謎にな
  ってしまいそうなのだが、天体観測のためなど
  といった陳腐な発想は聞きたくもない。
   そんなことのためなら、何もこれほどまでの
  巨石を用いる必要はなかっただろう。
   巨石であることに深い意味があったのか、或
  いは石を立てるという純粋な行為そのものに意
  義があったのか。いずれにせよ、古代の人々の
  宗教的な行為としての祭祀、或いは祭事であっ
  たのだろう。見えざる大きな力との交信であっ
  たり、崇敬の念の表現であったのかもしれない。
   後世には、世界中いたるところで墓碑として
  石を立てる、という風習が生まれる。石の持つ
  神秘的な永遠性や、立っていることで示される
  存在感や美しさ、が人々をひきつけたのだろう。
     

    
     
     サン・ジュストレアルのドルメン
       St-Just/Allée couverte du Tréal

                          
Ille-et-Vilaine
       
   サン・ジュス地区はレンヌ
  
Rennes とルドン Redon
  中間に位置しており、古代巨
  石遺跡の集中する広大な歴史
  地区である。
   数多くのドルメンやメンヒ
  ル、ケルンや列石が点在して
  いるのだ。それぞれの遺跡と
  しての質の高さも、特記され
  ねばならないだろう。
   私たちはサン・ジュスの教
  会に駐車し、そこから広範囲
  に広がる遺跡群を一筆書きに
  歩く作戦を立てた。

   最初に町からは最も遠いこ
  のドルメンへ向かって、草原
  や小麦畑を抜けて歩いた。爽
  やかで好奇心に満ちた、素晴
  らしいウォーキングだった。
   小高い丘の上の森の中で見
  つけたこのドルメンの迫力を、
        どうお話すれば良いのか見当もつかない。
         苔むした扁平な石の示す緊迫感、積み重ねられた巨石の重量感、そしてドルメン全
        体から湧き上がるような造形の示す圧倒的な迫力。
         私も家人も共に、完全に地べたにへたり込んでしまっていたのである。
                   

   
     
     サン・ジュスフール・サラザンのドルメン
       St-Just/Allée couverte du Four-Sarrazin

                          
Ille-et-Vilaine
       
   前述したトレアルのドルメン
  から、牧草地や耕地の畔をしば
  らく歩いて行くと、小高い丘陵
  に出る。
   見晴らしの良い高台部分に、
  この通路式のドルメンが突然現
  われる。
   石の質が片岩系であるために、
  扁平で鋭く尖っているものが多
  い。そのために、組まれた石の
  印象がまことに戦慄的であり、
  鋭い造形感覚の存在を信じたく
  なってしまうのである。
   青銅器時代の古代人にとって
  は、あくまで宗教的な意図しか
  無かったのだろうが、もしかし
  て、美しいモノを創造すること
  が絶対的なものへ近づける手段
  の一つであった、ということは
  無かったのだろうか。
   サン・ジュスのドルメンは、
  そういう可能性を信じてみたく
  なるほど美しいし、また現代の
  感性にも近いモニュメンタルな
  造形性に満ちている。
     

   
     
     サン・ジュスクロア・サン・ピエールのドルメン群
        St-Just/Dolmens Croix St-Pierre

                          
Ille-et-Vilaine
       
   更に丘陵を町の方向へ向かっ
  て歩いていくと、潅木に囲まれ
  た草原の真ん中に数基のドルメ
  ンが集中的に構築されている。
   その中で一際目を引いたのが、
  このケルンを囲むようにして並
  んでいる立石群だった。石の高
  さは2m弱のものが多く、石質
  は前述のドルメンと同じものら
  しい。
   案内板にはドルメンと記され
  ているが、この部分に限っては
  立石群と呼ぶほうが正しいかも
  しれない。
   それにしても、この遺跡は、
  日本庭園の石組のイメージその
  ものではないだろうか。
   それも特に、造園界の鬼才と
  言われた、重森三玲の立てた石
  組のイメージにかなり近い。師
  が故郷の神社で親しんだ磐座や、
  大湯などの環状列石に日本庭園
  の源流を見ていたのは事実だ。
         立石の持つ神秘性や造形的な力強さに対する感性が、時空を超えて、近代芸術にまで
         継承されていることに驚嘆せざるをえない。
               

    
     
     サン・ジュスムーランの列石
       St-Just/Alignements du Moulin

                          
Ille-et-Vilaine
       
   クロア・サン・ピエールのド
  ルメンから更に、丘陵の尾根を
  サン・ジュスの町へ向かって歩
  く。なだらかな起伏の草原なの
  で歩きやすく、途中潅木の間に
  小さなドルメンやケルンが点在
  する広大な古代の遺跡の中心で
  ある。
   この列石は付近に風車小屋が
  あるのでこう呼ばれているのだ
  が、今までに見たことの無い不
  思議なものだった。
   石の質や形や大きさに統一感
  が丸で無いのだが、異質なもの
  同士が奏でるハーモニーにも似
  て、かえってとても創造的なモ
  ニュメントに見えるのである。
   古代の人々が、この妙な巨石
  の列に、どのような意志を込め
  て立てたのであろうか。均質で
  ないことに、むしろ何らかのメ
  ッセージが込められているとで
  もいうのだろうか。    
     

     
      
     エッセロシュ・オウ・フェーのドルメン
       Essé/Allée couverte de la Roche aux Fées

                      
Ille-et-Vilaine
          
   このドルメンと対面した時
  の衝撃を、どのように表現し
  てよいか判らない。予想だに
  しなかった程の圧倒的な石の
  量感が、感動を通り越して戦
  慄的ですらあった。
   高さは3m以上、長さは1
  枚の写真では写せない。画面
  の写真には、全体の半分しか
  写っていない。
   ロワールに住む“ドルメン
  博士”と異名をとるフランス
  人の知人が、これぞ一押しと
  紹介してくれた、ドルメン教
  の別格大本山である。
   内部には五つの部屋らしき
  区分が設けられており、あた
  かも住居らしき設計であり、
  絶対的な“何か”が住む場所
  としての象徴なのだと感じた。
   レンヌ
Rennes の南20Km
  壮大な原野の中に突如現れる。
     

   
     
     クロサックバルビエールのドルメン
       Crossac/Dolmen de la Barbière

                      
Loire-Atlantique
          
   ここはサン・ナゼール (St-
  
Nazaire) の北北東15Kmに位
  置する、クロサックの町外れに
  あるドルメン遺跡である。
   形状からは、通路式であった
  ものが崩落し、二つのドルメン
  に分かれてしまったものと思わ
  れる。
   天蓋石の残っているドルメン
  は、単体のドルメンとしても見
  事な形状である。特に重量感の
  ある天蓋石は、現地の案内板に
  
“Grand Table”と表記されるく
  らいの巨石だった。
   このロワール河口一帯には、
  数多くの遺跡が点在しているの
  だが、今回は時間の関係でここ
  以外では数箇所しか探訪できな
  かった。次回には、時間をかけ
  てじっくりと歩いてみるつもり
  である。
     

  
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