ブルターニュ(北西)
  の古代巨石文化
  Mégalithique Civilisation
    de Bretagne nord-ouest
 
  

 
Dolmen de Pors-Poulhan 
  
(Plouhinec
/Finistère) 
 
 ドルメン、メンヒルという言葉の語源は、こ
の地の古語ブルトン語にあるという。石のテー
ブルや、石の柱を意味するという。
 新石器時代から青銅器時代へと、つまり紀元
前50~5世紀にわたって築造された巨石遺跡
である。
 ドルメンは古代の墓所というのが一般的な定
説となっているのだが、私は“絶対なるものの
降臨する場”であったと考えている。
 組まれたり立てたりした石が示す神々しいま
での聖性や神秘な美しさを、古代の人々が知っ
ていたことに驚かざるを得ない。
 
 
  

 
ブルターニュ北西部

   3 Finistère
   2 Côte-du-Nord
 
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 モエラン・シュル・メール
   ケルグスタンスのドルメン

 Moëlan-sur-Mer/
  Allée couverte

   de Kergoustance
 

      3 Finistère
       
 
 
 ドルメンというものは通常三石か四石で屋根
石キャップ・ストーンを支えるものだが、これ
が幾つか繋がったような細長いものがある。
 この様式のドルメンはブルターニュに多く、
屋根付通路
Allée Couverte と呼ばれる。
 その名の通り、墓というよりも、イメージは
聖道といった方が正しいように感じた。

 カンペールの東南、州境に近いモエランの町
を西側に出たあたりの、地方道に沿った麦畑の
向こう側に巨石の集団が見えた。
 支石の一部が崩れかかっているが、四石の巨
大なキャップ・ストーンをやや尖った石で支え
ている構造は、危なげでありながら或る美しさ
を秘めた鮮烈な印象を受ける。
 石に囲まれた通路は、一体何を目的として構
築されたのだろうか。
 
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 ケランドレジュ
   ケルコルドネールのドルメン

  Kerandrège/Allée couverte
      de Kercordonner
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 モエランの町から西南に3キロほど走った辺
りに、この小さな集落がある。その南の外れの
麦畑の中にこの豪壮なドルメンがあり、案内板
には“ケルコルドネールの古代遺跡”と書かれ
ていた。
 キャップ・ストーンは三石だが分厚い巨石も
あり、なかなかの迫力を示している。支石群も
堂々としているがやや丸味がかった石が多く、
全体的には優しい感じがする。
 ドルメンの通路入口正面から少し離れた位置
に、写真の様な一基のメンヒルが立っている。
 この位置関係には重大な意味が含まれていそ
うな気がするが、結局は何やらミステリアスな
メッセージが予感されるだけだった。   
 
 
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 ケルムール・ビアンドルメン
  Kermeur-Bihan/
    Allée couverte
      de parc Biourac'h
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 モエランの町から西へ向かい、Belon ベロ
ン川に突き当たる辺りにこの小さなケルムール
の集落がある。村は地図には全く載っていない
為、何回か人に聞きながらようやくたどり着い
た。集落で尋ねると、ドルメンへは更に15分
ほど林の中を歩かねばならないという。
 林を抜けた辺りの広々とした草原の奥に、こ
の圧倒的な巨石を連ねたドルメンの姿を発見し
た時には感慨無量であった。
 長さが16mもある豪快なドルメンで、キャ
ップ・ストーンは現在は6石だが、本来は9石
はあったものと思われるほどの規模である。
 石が崩れている箇所が多く、内部の通路をの
ぞく事が出来なかった。
 雑草が生い茂り、苔むして荒れ果てた風情に
も捨てがたいものがある。
 
 
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 トルシュ島ドルメン
  Île de la Torch/Dolmen 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 カンペール Quimper の西に突き出たラズ
岬から南へ延びる海岸線には、絵のような白砂
の浜がサン・ゲノレ
St-Guénolé の町まで続
いている。この島は町の少し手前にあって、江
ノ島のように現在は歩いて渡れるようになって
いる。
 波濤打ち寄せる島の先端の崖の上に、写真の
ようなドルメンが残されている。
 このドルメンが珍しいのは、仕切られた部屋
と廊下の様なものが付帯していることだろう。

 
Dolmen à chambre compartimentée と、
現地の案内板に記されていた。コンパートメン
ト部屋のドルメンという説明だ。
 屋根を覆うキャップ・ストーンは一つしか残
っていないのだが、どこまでが覆われていたの
かを想像するのは難しい。   
 
 
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 ポル・プーランドルメン
  Pors-Poulhan/
    Dolmen (Allée couverte)
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 先述の白浜海岸を北上して行くと、オーディ
エルヌの町の手前にこの瀟洒な住宅の並ぶ集落
がある。町の中心の高台部分に広い牧草地のよ
うな空き地があり、そこにこの何とも豪壮なド
ルメンが保存されていた。
 二つのドルメンが並んでいる様に見えるが、
中央部分が失われたものだろう。全部が繋がっ
た姿を想像すると、さぞや壮観であっただろう
と思える。
 キャップ・ストーンは扁平で壮大であり、支
石群もまた扁平で鋭い美意識の感じられる立石
ばかりだ。
 ドルメンとは屋根の巨石を支えること、その
ことに格別の意味があったのだろう、と思える
ような構造体である。
 
 
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  プーラン・シュル・メール
     
レスコニルのドルメン
  Poullan-sur-Mer/
  Allée couverte
de Lesconil
 
      
3 Finistère
       
 
 
 ドゥアルヌネ Douarnenez の西に位置する
町で、ドルメンはその中間の林の中にある。
 写真で見る通り、最大の特徴は二枚の板石を
立てかけて尖頭状のアーチ
Arc-Boutée を組
むことで、通路を構築していることであろう。
 他には限られた類例しか存在しない、まこと
に貴重な遺構である。
 先端の尖った板石が使用されているので、や
や荒々しい印象を受ける。
 しかし、周辺の石組も含めた全体像は、まる
で現代アートの作品を見るようだった。
 モニュメンタルな美しさを備えた、五千年も
昔の石組の集団を前にして、ひたすら感嘆する
しか方法は無かった。  
 
 
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 ケリネック
   ケリネックのドルメン

  Kérinec/Dolmen
   de Chapelle de Kérinec
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 前記ドルメンの南3キロにケリネックの聖母
礼拝堂が在り、近くの森の中にこのドルメンが
眠っている。
 支石は数石見られるが、よく見ると天蓋石を
支えているのは三石であることに気が付く。ド
ルメンの原点と言えるかもしれない。
 重量感溢れる天蓋石、それを支える石組、そ
してそこに構成される洞内空間。いずれのドル
メンにも共通しているのだが、この造立に膨大
なエネルギーを注いだ古代の人々の意図は、果
たして墳墓のためなのか、あるいは聖霊が降臨
する祭祀の場だったのだろうか。
 同じ森の中に高さ3mのメンヒルもあった。
 
 
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 ブセック・カップ・シザン
   
ケルバラネックのドルメン
  Beuzac-Cap-Sizun/
    Allée couverte
     de Kerbalannec
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 ラー岬 Pointe du Raz のある Cap Sizun
ザン半島の中程、北海岸沿いに在る村である。
 村から4キロ程東へ行き、そこから海岸方面
へ向かうと農場へ突き当る。さらに北へ向かっ
て歩くと、この壮絶な
Allée couverte ドル
メンが見える。
 割と武骨な天蓋石が5枚連なっており、思わ
ず唾を飲み込ませる様なかなりの迫力である。
 内部は部屋が繋がったような通路状に構築さ
れており、単体のドルメンとは異なった長さが
謎である。部屋ではなく、なぜ通路なのだろう
か。根源的な疑問に、深まる思いは尽きない。
 
 
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 ブセック・カップ・シザン
     
リュゲネのメンヒル
  Beuzec-Cap-Sizun/
    Menhir de Luguenez
 
 
      
3 Finistère
       
 
 村の西2キロ地点から、北の海岸方向を目指
す。農家を回り込んでしばらく進み、トウモロ
コシ畑の畦道を歩く。
 対岸の岬
Cap de la Chèvr) が霞んで見え
る。生垣の向こうに立つメンヒルの先端が見え
たので畑の中へと入らせていただく。
 3m弱の高さの立石で、細長く丸みを帯びた
優しいメンヒルだった。
 一体、このブルターニュには何基のメンヒル
が立っているのだろうか。立てることにどうい
う意義があったのだろうか。この世の見えざる
大きな存在に対する畏敬、崇敬、の念の発露な
のだろうか。
 
 
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 カマレ・シュル・メール
    ラガチャーの列石

  Camaret-sur-Mer/
   Alignements de Lagatjar
 
 
      
3 Finistère
       
 
 ブルターニュ地方の西端に突き出た半島の一
つに、クロゾン
Crozon 半島がある。この先
端の町がカマレなのだが、このリゾートのよう
な美しい町の外れに、かくも壮烈な列石群が在
るとは想像もつかなかった。
 カルナックには及ばないまでも、東西・南北
各方向に1~3mの高さの石が、数百mもの長
で数列並んでいる光景は戦慄的だった。写真は
そのほんの一部に過ぎない。
 列石の不思議さは、実際に見てみないと判ら
ない。見れば見る程不思議に思えてくるから不
思議なのである。
 方向に意味があるとしても、規模が壮大過ぎ
るだろう。それとも、石を並べる行為そのもの
が重要なのだろうか。
 半島の先端である
Pointe de Pen-Hir ペニ
ル岬までは近い。
 
 
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  クロゾン
    ロストゥデルのドルメン

  Crozon/Dolmen de Rostudel
 
      
3 Finistère
       
 
 
 この町が中心のクロゾン半島には、巨石遺跡
が密集している。
 シェーブル岬への道の途中に在る遺跡で、夏
は生い茂る草木をかき分けてしばらく歩く。
 テーブル状の愛らしいドルメンで、西北部編
に掲載したサン・ナザール
St-Nazaire のドル
メンを想起させる。あちらはかなり改造された
ものと解釈したが、これ程までに辺鄙な場所で
見ると、この単純な構造は当初からのものとい
う気もしてくる。
 かなりの省略形のようだが、石を組むという
行為そのものに意味合いがあったのかもしれな
いと感じていた。
 
 
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 クロゾン
   ロマルコのメンヒル列石

  Crozon/File de Menhirs
      de Lostmarch
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 クロゾンの町の西南7キロに在る岬に近い集
落で、断崖に囲まれた小さな半島の付け根部分
に、大小の立石が繋がった遺跡があった。
 写真はその内最大のメンヒルで、高さは4m
弱である。干潮の桃色海岸を背景にした絶景の
地であった。
 他の石は比較的小粒のものが多く、同じ列石
でも
File であって Alignements とは区別
されているようだ。
 スコットランドなどにも共通するのだが、メ
ンヒルが海辺の断崖の上に立てられたケースは
とても多い。ドラマチックでスリリングに開け
た場面に、先人は一体何を望んだのだろうか。
 
 
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 サン・ニック
   ムヌ・リエのドルメン

  St-Nic/Dolmen de Menez-Lié 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 クロゾン半島の付け根部分、南海岸近くに在
る寒村である。村の中心から東へ2キロ程斜面
を登った畑地の向こうに、このドルメンの上部
がチラっと見える。
 分厚い天蓋石を支えているのは、割と華奢な
石なのだが、この危うさみたいな緊迫感がドル
メンの魅力と言っても良いだろう。
 内部の空間には、どっしりと安定している構
造よりも、より聖なるものが感じられなくもな
い。単なる思い入れだろう、と同行の家内と笑
い合った。
 道無き畑の畦道を歩かねばならない。
 
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  プルーアルゼ
   ケルロアのメンヒル

  Plouarzel/Menhir de Kerloas
 
      
3 Finistère
       
   
 
 ブレスト Brest の西の町 St-Renan サン・
ルナンのさらに西の外れ、麦畑の遥か向こうに
天に向かって屹立する勇壮なメンヒルが見られ
る。道沿いの駐車場に車を停め、麦畑の間を歩
いて行くことが出来た。
 近付くにつれて、立石の表情が変化する。高
さは9mちょっとあるが、扁平な石なので正面
から見ると細長い洗濯板みたいに見える。だが
写真のように、真横から見ると、鋭利な刃物の
ように先端が尖った鮮烈な印象に変貌する。
 英国のストーン・サークルやブルターニュの
メンヒルの多くに、扁平な片岩系の石が用いら
れている。日本でも、庭園や板碑などの素材と
して重用されてきた魅力的な石である。
 ここのメンヒルは片岩ではないが、扁平な石
が選ばれたことは間違いない。とすれば見る方
向によって全く異なった様相を見せる石の神秘
性を、古代の人々も注視していたのだろうか。
 こんな巨石をどうやって運搬し、どういう方
法で構築したのかは想像の域を出ない。
 
 
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 ポルスポデール
   サン・ドネックのメンヒル

  Porspoder/Menhirs
      de St-Denec
 
 
      
3 Finistère
       
   
 
 ブルターニュの西端の海岸線に位置するこの
町の周辺は、ドルメンやメンヒルの密集する古
代の一大祭祀場であった可能性がある。
 林に囲まれた広大な畑地の中に、この印象的
なメンヒルが二基立っていた。耕された畑には
春まきの作物の芽が出ていた。
 写真では二基の石が近く見えるが、実際には
10mくらい離れて立っている。
 二基の石の微妙な傾斜の具合が、何ともたま
らない魅力である。日本庭園の石組や、生け花
のバランス感覚にも通じる美しさだと思う。
 こんな微妙な美意識が古代の巨石文化の中に
存在した、などと言う気は毛頭無い。全く次元
の異なった、別の目的や意識で立てられたに相
違ないからである。しかしそれにしても美しい
石組だ、と思えてならない。
 二基の石が重なり合う方角から見ると、そう
いうことが言えるのだが、正面から見ると二基
の石が門のような格好で立っている事に気がつ
いた。
 天体の動きとの関連を唱える説を否定するこ
とは出来ないし、絶対なるモノが入ってくるた
めの門、或いは結界という考えも面白い。もっ
とも、色々と考えられるところが最も面白いの
だ、ともいえる。
 
 
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  ポルスポデール
    
ケリヴォレットのドルメン
  Porspoder/Dolmen
       de Kerivoret
 
      
3 Finistère
       
 
 
 前述のメンヒルからそれほど遠くない場所に
在る大きな農場の一画に、羊の群れる緑濃い牧
草地がある。
 そこに一基のメンヒルが立っており、その向
こうに写真のドルメンがどっしりと座っている
ように見えた。
 五基の立石が方形に組まれ、一方が入口のよ
うに開かれている。
 そして、その上に巨大なキャップ・ストーン
が載っていた。メンヒルに使われるような、巨
大で扁平な石である。その重量感を支える為の
構造が示す石組が、地面から突き出したキノコ
のような存在感がある。
 この形式は、五石で支える単純なドルメンだ
が、安定感もあり重厚な構築物となっている。
 定説となっている墳墓のようにも見えるし、
神々の降臨する場所としても相応しい様に思え
る。    
 
 
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 ポルスポデール
    
プーイヨットのドルメン
  Porspoder/
    Dolmen de Poulliot
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 古代遺跡群の中では最も南に位置しており、
やはり広大な畑の最奥に立っている比較的小さ
いドルメンが見える。
 道の路肩に車を停め、畑の畦道を作物の芽を
踏まぬように注意しながら歩いて近付いた。
 ドルメンは三石でコの字型に支えた最も単純
な構造で、見るからにすっきりとした姿だ。
 正面から見ると、鳥居のようにも見えるし、
また何かを祭った祠のようにも見える。
 単純だが構築された空間は囲われていること
に意味があるのであり、神聖な部屋、或いは祭
祀の場所として造られたものだろう。
 小さいとは言っても、天井の高さは大人が立
って入れる程で、2m弱はある。
 
 
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 ポルトサル
   ギイギュイのドルメン

  Portsall/Allée couverte
      de la Guilliguy
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 ブレストの北西の海岸に、小さな港のあるこ
の町がある。干潮時には堤防の中が干潟になっ
てしまうような港で、零細な漁船と個人のヨッ
ト等どが繋留されている。
 港に突き出した岬の高台は急峻な崖地で、そ
の頂上にドルメンが在るという。
 背後の草原を横切って高台への坂道を登って
行くと、背の高い十字架が立っており、その少
し手前に写真のドルメンが保存されていた。
 細長い通路状の空間があり、現在は屋根石が
一個だが従来は数個はあったものと思われる。
 支石に扁平で尖った石が多いので、全体のた
たずまいからは鮮烈な印象を受ける。
 写真手前に写っている平石は、かつては屋根
石として支石の上に載っていた石のようだ。
 
 
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  コッマナムーゴウのドルメン
  Commana/
   Allée couverte
de Mougau
 
      
3 Finistère
       
 
 
 ブレストの東50キロ、アレー山塊の麓の町
である。町の教会でカルヴェール彫刻を見た後
に、町外れにあるこのドルメンを訪ねた。
 果樹園に隣接した牧草地の中で、黒っぽい色
の石の集団が小雨に煙って、凄絶な光景に見え
た。良く見ると見事な通路式ドルメンで、しっ
かりと腰の座った支石の上に五石の屋根石が載
っている。
 この形式のドルメンは、どう見ても墳墓だと
は思えない。手前に入口が有り、突き当たりは
祭室のような部屋に見えるが、中間はトンネル
状の通路になっている。
 この他に、南東部に在る
St-Just Essé
のドルメンを見れば、通路を出来るだけ長くす
る工夫が成されている様に思える。長いこと、
にどういう意義があったのだろうか
。 
 
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 プルエガット・モイザン
    ケルルーのメンヒル

  Plouégat-Moysan/
    Menhir de Kerellou
 
 
      
3 Finistère
       
   
 
 モルレーの東、フィニステール県の最東端、
自動車道路
N12 のインターのある村だが、人
口数百の辺鄙な集落だった。
 インターから地方道
D42 を南へ2キロ程行
った右手の牧草地の奥に、写真のメンヒルがす
っくと立っていた。
 余り好きではないのだが、古代の巨石にはニ
ックネームが付いている。日本での“観音岩”
とか“獅子岩”といった類で、観光名所の代名
詞のようなものだが、このメンヒルには“お婆
さんの糸巻”という別名がついているそうだ。

 高さが6mもある巨大なメンヒルで、ブルタ
ーニュでも屈指の存在と言えるだろう。
 写真は斜め左から撮ったものだが、真横から
見るともっと扁平になっており、パイ皮のよう
な片岩のこうした特性を、古代人は意図的に利
用していたように思える。
 詳しく調べた訳ではないので明確には言えな
いが、この周辺の地形を見ても畑地や牧草地の
続く高原で、岩山らしきものは全く見当たらな
い。石は遠方から、選別し運んできたものと思
われる。
 しかし、この一帯
Côtes d'Armor にはメン
ヒルが東西に十数基も分布している事から、古
代には石の産出場所が比較的近い場所に存在し
たのかもしれない。
 
 
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 ベリアンケランプールヴェン
   のメンヒル

  Berrien/Menhir
      de Kerampeulven
 
 
      
3 Finistère
       
  
 
 モルレーから南へ25キロ行った地点、アレ
ー山地の中心部にある小さな村である。前述の
ケルルーのメンヒルからは、県道
D42 で直接
行く事が出来る。
 メンヒルは、村から分岐する
D14 でユエル
ゴア方面へ3キロ行った場所にある公園のよう
な広場の奥に立っている。

 写真からは想像つかないが、高さが6mもあ
る巨石である。石の近くに立って見上げると、
その迫力は格別だった。
 メンヒルには二通りあるように思える。もち
ろん、使用された石質に大きく左右されるのだ
が、このメンヒルのように全体のヴォリューム
感を表したものと、見る角度によって変質する
片岩のような板石を用いてスリリングな緊迫感
を示したもの、とである。

 ユエルゴア周辺にはメンヒルの遺跡が数多く
集中しており、もっと多くの遺跡を訪ねたかっ
たのだが、時間や予定の関係で残念ながら果た
せなかった。
 それにしてもこれ程の巨石の多くを、4~5
千年も前(青銅器時代)の古代人が、何処から
どうやって運び出したのだろうか。全ての巨石
遺跡に共通する謎だが、ここでもしみじみと感
じてしまった。
 
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 サン・ゴアゼックカステル・
    ルッフェルのドルメン

  St-Goazec/Dolmen
      de Castel-Ruphel
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 ユエルゴアの更に南、オーヌ川 Aulne の南
岸に在る町である。町の南に丘陵状のノアール
山塊
Montagnes Noires が横たわっており、
一帯には巨石遺跡が集中している。
 丘陵の中ほどに石切り場が在り、その近くに
この不思議なドルメンがある。
 板石を斜めに組み、三角状のアーチ通路を構
築している。前掲のプーラン・シュル・メール
のドルメンに類似しているが、他に数例しか見
たことがない。
 ユニークだが、緊迫感に満ちた素晴らしい造
形で、丸で現代アートのようだ。
 一連の石は、この丘陵から切り出されたもの
かもしれない。
 
 
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 グールヴァン
  クレアック・ガイックのドルメン

  Goulven/Allée couverte
    
de Créacq-Gallic
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 ブレストから北東に進み、北の海岸線に出た
辺りにこの小さな町が在る。干満の差の大きい
砂浜や干潟が続いている。
 町の南東1
キロほどの田園地帯、牧草地の中
にこのドルメンが在る。
 支石が一列に数基並んでいるのだが、屋根石
は一つだけしか載っていない。
 倒石も多く、元は通路式のドルメンであった
と想像される。かなり改修されているのかも知
れないが、立っている石の表情に古代の風情が
感じられて嬉しかった。
 屋根石の載った部分は五支石で、通路の最奥
部が残っているのだ。
 写真の一番手前の石は扁平な巨石で、おそら
くは屋根石だったものだろう。
 
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 ポル・ムールギニルヴィ
     のドルメン

  Porz-Meur/ Dolmen
     de Guinirvit
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 先述のグールヴァンの町から、海岸沿いに東
へ18
キロ走る。プルエスカ
Plouescat の手
前の湾に突き出した岬付近に、この小さな別荘
地の集落が在る。
 ドルメンはここに在るのだが、これほどまで
に風変わりな場所に在る巨石遺跡は、後述のコ
アラン島以外には見た事が無い。写真のように
浜辺の、それも砂浜の波打ち際に造られている
のである。
 満潮時には冠水するらしく、岩肌にびっしり
と青海苔が付着している。
 ストーン・サークルのようにも見えるが、中
央部分は屋根石の落ちた通路式ドルメンの一部
だろう。
 こんな場所に構築されたドルメンが、今日ま
で保存されてきたことだけでも奇跡に近い。
 青く澄んだ海と輝く白砂が清冽な印象だが、
このドルメンの周辺だけが格別なオーラを放っ
ているように感じられた。
 
 
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 プルエスカ
   カム・ルイスのメンヒル

  Plouescat/Menhir
     de Cam-Louis   
 
 
      
3 Finistère
       
  
 
 モルレー Morlaix の北西、大西洋岸の静か
な町である。古代巨石遺跡の町で、町のテリト
リー内には前述のドルメン
含め、主だった遺構
だけでも5基のメンヒルと2基のドルメンが数
えられるのである。その内の印象に残った3基
のメンヒルを御紹介する。

 ここでは最も著名なメンヒルで、町の北端の
岬の先端に立っている。突き当りの集落サン・
テダンに車を止め、奇妙な形の岩の間を抜けて
歩いて行く。
Anse de Cam-Louis カム・ルイ
スという入り江辺りで、メンヒルの先端が次第
に見えてくる。
Cam-Louis というのは愛称
で、正式には
Menhir de Kergoarat-St-Éden
という集落の名を付けて呼んでいる。

 高さが7mもある堂々たる立石で、石の形状
は断面が菱形に近い四角錘だろう。
 ここでも、海辺の高台に在って、開けた海に
向かって立っている。
 メンヒルの周囲に大小の倒石が見られたが、
サークル状にメンヒルを囲んでいるように見え
た。英仏海峡を挟んだ英国の、コーンウォール
地方に分布するストーン・サークルを思い出し
ていた。サークルの中心に石を立てているので
ある。
 
 
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 プルエスカ
   クアナンドルのメンヒル

  Plouescat/Menhir
     de Couinandre
 
 
      
3 Finistère
       
   
 
 町の東南部、国道の南側の農家の背後に小高
い茂みがあり、その一画にこのメンヒルが立っ
ている。雑草が背の高さ程繁茂していたので、
写真を撮るのに苦労した。
 高さは4m程だが、下から見上げる格好にな
るので、高さ以上に天を衝くイメージが強かっ
た。
 斜面に立っているので、いろいろな角度から
眺めることが難しかったのだが、どうやら扁平
な石ではなさそうだった。この海岸線一帯では
片岩は産出しなかったのだろう。

 それにしても、こんな名も無き石くれを古代
人が建造して以来、4千年近くもこの場所に立
ち続けて来たのかと思うと、人間たかだか百年
の命、大切に使わねばといつになく神妙になっ
ていた。石の持つ神秘性、絶対性、永遠性の功
徳といったところなのだろうか。

 ここから直ぐの別の農家の裏山にどう読めば
良いのか判らない名前の通路式ドルメンがある
が、かなり地中に埋まってしまっていた。
 
 
Allée couverte de Créac'h-ar-Vrenn とい
う名前がついているそうだ。読めない。
 
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 プルエスカイルヴィのメンヒル
  Plouescat/Menhir de Irvit 
 
      
3 Finistère
       
   
 
 町から北へ、海岸の町 Kerfissien に向か
う地方道
D330 を2キロ程行くと、麦畑の中
を東へと続く農道との交差点に出る。未舗装の
地道で分岐には案内板は一切無かった。
 車を表通りの窪地に止め、感を頼りに歩く事
5分で写真のメンヒルを探し当てることが出来
た。
 麦畑を背景にして路傍に立つ姿は慄然として
いた。と言うのは、写真でもお分かりの様に、
最上部にくびれた部分が有り、まるで長い髪の
女性のように見えてしまったからだった。
 おまけに、その下に和服の袖のような出っ張
りがあるので尚更だった。
 見た途端から通俗的なイメージに支配された
のか、冷静にメンヒルを観察出来ずにいたが、
角度を変えて眺めている内に落ち着いてきてい
た。
 高さ4mのキリっとしたメンヒルで、断面は
丸味を帯びてはいるがほぼ方形に近い。珍しく
見る角度によって大きく形状が変わる、という
特性を持ち合わせていない立石で、こういうも
のもあるのかと思いつつ、基本的には石を“立
てる”という行為そのものに意義があったのだ
ろうか、とまた元の根源的な疑問へと戻ってし
まっていた。

 もう一基のメンヒル
Menhir de Kergoarat
は町の西側の民家の間の草地に立っていた。 
 
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 サン・ポル・ド・レオン
     ケリヴァンのドルメン

  St-Pol-de-Léon/
     Dolmen de Kerivin
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 モルレーの北西20キロにある地方都市で、
その南一帯は広大な農耕地になっている。
 このドルメン遺構は、入江からの段丘の上、
葱畑の向こうに残されている。
 対岸はカランテック
Carantec という町で
ある。
 二枚の天蓋石が残っており、内部は通路
にな
っている。典型的
Allée couverte (通路式ド
ルメン) なのだが、現地の案内板には、昔は土
に覆われた塚
Tumulus だったと表記されてい
る。別名
Dolmen à Couloir とも呼ばれたそ
うで、この辺りの用語の定義は一定していない
ようだ。凡例がまことに多様なため、様々な呼
ばれ方をするのは致し方ないところだろう。
 
 
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 プルエゾック
   バルヌネの大ケルン

  Plouézoc'h/
   Grand Cairn de Barnenez
 
 
      
3 Finistère
       
 
 
 モルレーの真北15キロに在る、ブルターニ
ュでは最も著名な古代ケルン遺跡である。
 ケルンは石を積み上げて造った巨大な石塚の
事で、横穴式の石室が11箇所も設けられてい
るのだった。
 写真の手前に写っているのが石室の一つで、
入口は反対側にあるのだが、現在入口は塞がれ
ていて入ることは出来ない。石室はドルメンの
構造と同じであり、ドルメンの上にピラミッド
のように石を積み上げた構造になっているので
ある。
 それにしても、石の塊の何と言う量感だろう
か。凡その大きさは縦20m横60mで、二つ
のケルンが連結した形になっている。
 ケルンも墳墓だとされているが、これも単純
にそう信じるには不思議が多過ぎる。やはり神
の降臨を願った祭祀の場、としか思えないので
ある。
 
 
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 トレドルトゥーラル・ラン
    のメンヒル

  Trédrez/Menhir
     de Toul-al-Lann
 
    
2 Côtes-du-Nord
       
   
 
 ラニオンLannion から D786 号線を西南へ
8キロ行き、ロックモー
Locquemeau 方面へ
の十字路を過ぎて直ぐ右手の牧草地の中に、す
っくと立つこのメンヒルが見える。
 正式な入口は無いが、立入禁止の様子も見ら
れないので、柵の脇からちょいと失礼した。

 立石の近くに寄って見上げる迫力は、遠くか
ら眺めたものとは大違い。やってみなければ、
絶対に感じられないものである。
 このメンヒルの高さは4m、巻き尺で測った
わけではないが、同行の家人を前に立たせると
明確に計測出来る。
 石の形状はほぼ四角柱であり、眺める方向に
よる変化は余り見られない。スリリングな形状
を好む小生にとっては、やや物足りなく感じら
れてしまう。しかし反面、全体のどっしりと安
定した重量感は、地面に根を生やしたような存
在感を生んでいる。
 堂々とした見事なメンヒルと言えるだろう。

 直ぐ近くの森の中にもう一基メンヒルが在る
らしいのだが、駐車する場所が無かったことな
どで探すのを断念してしまった。
 古い資料に載っていたロックモーの町のドル
メン
Dolmen de Roscoualc'h は、雑草に覆
われ完全に崩壊していた。
 
 
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 トレブールダン
   ラン・ケレレのドルメン

  Trébeurden/
   Dolmen de Lann-Kerellec
 
 
    
2 Côtes-du-Nord
       
 
 
 ラニオンの西、海岸に沿った景勝地に開けた
町である。この町にも巨石遺跡が集中的に残さ
れている。
 町の北側に、文字通り「ドルメン通り」とい
う名前の道が在り、或るお屋敷の庭に写真のド
ルメンが保存されていた。
 夏期の別荘なのか、窓は全て閉ざされ住人は
見えなかったが、見学のための門扉は開かれて
いた。
 左右に各二石、奥に一石を“コ”の字型に立
てて、上に板石を載せてある。単純なドルメン
にも見えるが、立地条件や周辺に散在する石の
断片から、通路式ドルメン
Allée couverte
一部が残ったもの、と考えられる。
 
 
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 トレブールダントエノのメンヒル
  Trébeurden/Menhir de Toenno 
 
      
2 Côtes-du-Nord
       
 
 
 町の北端にトエノという小さな漁港が在り、
その海岸に写真の様なメンヒルが立っている。
 干満の激しい海岸らしく、満潮時には海水が
ここらまで来るのだろう。
 石は高さ2m程の愛らしいものだが中央で割
れており、あたかも大小の石が密着しているよ
うに見えた。
 大した意味は無いのだが、色々見てくると、
たまには冗談ぽい発想も良いかということで、
陳腐過ぎるが私たちは“夫婦岩”と名付けるこ
とにした。心成しか、寄り添っているように見
えるから不思議である。
 美しい景色の中に立つ、心に残ったメンヒル
だった。
 
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 グランド島ドルメン
  Île-Grande /
   
Allée couverte de Ty-Lia
 
 
      
2 Côtes-du-Nord
       
 
 
 ラニオンの町の西北に続くバラ色海岸西端に
は、本土から少し離れた沖合いにこの島が浮か
んでいる。だが、現在は橋が架かっており、車
で容易に渡ることが出来る。
 島の北側の少し荒れ果てた草むらの中で、こ
の見事な通路式ドルメンがひっそりと、しかし
どっしりとした存在感を堂々と示していた。
 半分草に埋もれた支石はやや迫力不足だが、
扁平な巨石が三枚屋根石として載っている姿は
量感に満ちている。
 ここも、典型的な通路式ドルメンの一つであ
り、奥深く通じている狭い通路はミステリー・
ゾーンへの入口のように見える。
 古代の人々はいったい、何が入っていくこと
を想定していたのだろうか。   
 
 
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 トレブールダン
  プラジュー・メニール
       のドルメン

 Trébeurden/
   Allée couverte
      de Prajou-Menihr
 
 
      
2 Côtes-du-Nord
       
 
 主要道 D788 の北側、前述のグランド島へ
と渡る
D21 号の西側との一画は、ぽっかり
と空いた草地になっており、そこに写真の豪壮
なドルメンが保存されていた。
 明らかな通路式ドルメンで、奥行きは15m
ある。華奢な支石に載る、6枚のキャップ・ス
トーン天蓋石は、薄目だが大きな板石である。
これだけの一枚石はそう有るものではない。
 古代人は何故かくなる通路を、巨石を用い汗
水流して構築したのだろうか。
 明らかに“何か”が通るための
Couloir
下なのである。
 
 
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 プルームール・ボドゥー
    ケリヴォンのドルメン

  Pleumeur-Bodou/
    Dolmen de Keryvon
 
 
      
2 Côtes-du-Nord
       
 
 
 トレガステル Trégastel 方面へ D788 を進
むと、直ぐにケリヴォンへの分岐点となる。反
対側の路傍、海岸側の草むらの中に、写真のよ
うな小さなドルメンが隠れるようにして建って
いる。
 三基の支石によって、巨大な屋根石を支えて
おり、ドルメンの原点のような構造である。周
辺の雑草を刈り取ったのだが、写真の状態が精
一杯だった。「海外旅行で草むしりする奴も居
まい」と言って私たちは笑い合った。
 崖の奥続きに石組の遺構が見えるので、ここ
も通路式ドルメンの一部が残っているのかもし
れない。    
 
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 トレガステル
   ケルグントゥイユのドルメン

  Trégastel
/Allée couverte
       de Kerguntuil
  
 
 
      
2 Côtes-du-Nord
       
 
 グランド島からバラ色海岸を北上すると、周
辺の島への渡し舟の出る港で知られるこの町が
在る。
 町の手前の草むらに囲まれた藪の中に、やや
離れて二つのドルメンが点在している。
 五支石のドルメンと、写真の通路式ドルメン
である。横長に支石を並べてあり、屋根石が三
枚載っており入口は右側である。
 通路式の構造が良く判る写真なのだが、反対
側は藪に接していて見ることが出来ない。
 この姿を見ると、通路の長く奥深いことに意
味があったのだろうと思えてくる。
 屋根の高さは1m30程で、決して壮大な規
模ではない。しかし、構造体がほぼ完璧な形で
保存されているのが素晴らしい。
 
 
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 ルノット島ティ・リアのドルメン
  Île Renote/Dolmen de Ty-Lia 
 
      
2 Côtes-du-Nord
       
     
 
 トレガステルの町の北端にこの島が浮かび、
現在は橋で繋がっているので、ちょっと見た限
りでは半島のように見える。
 島の中でドルメンを探したのだが、在ると思
っていた案内板は見当たらなかった。実は個人
の邸宅の庭内に在るため、原則としては公開し
ていないのだった。
 島の遊歩道からは、細い生垣の間を入って行
かねばならず、ようやく発見出来た。
 天板が一枚だけになってしまっているので、
やや迫力に欠けるが、支石がこじんまりと整っ
た通路式ドルメン
Allée couverte である。
 いつまでも保存して頂きたいものである。
 
 
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  サン・ケ・ペロス
    クレック・キレのドルメン

   St-Quay-Perros/
     Allée couverte
      de Crec'h-Quillé
 
      
2 Côtes-du-Nord
       
 
 
 ペロスの南8キロ、主要道 D788 から少し
東へ入った住宅地の中に在る。
 規模の大きな通路式ドルメンで、天蓋石は写
真の迫力のある一石だけしか残っていないが、
16mもある通路はとても雄大である。
 最も特徴的なのは、写真の場所から左にT字
型の通路が延びて入口を構成していることだろ
う。アイルランドで見られた
Passage Tomb
通路付墳墓
に似ているかもしれない。
 通路に並行したケルンのような盛土も見られ
たが、用途は判らなかった。
 どんな大きさの天蓋石が載っていたのかは、
想像するだけでも胸が躍る。
  
 
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  ケルボール
    メナル・ロンペのドルメン

   Kerbors/Dolmen
     de Men-al-Rompet

      2 Côtes-du-Nord   

   
       
 
 
 
 トレギエ Tréguier の北東、 Jaudy ジョデ
ィ川とトリュー川
Trieux に挟まれた半島の
中心にプルービアン
Pleubian の町が在る。
 町の西の端に在る集落で、北海岸に近い空地
にこの遺跡が保護されている。
 長さが8mの通路が付いたドルメンで、この
地方特有のピンク色をした花崗岩が使われてい
る。地元では“巨人達の石”と呼ばれている。
 やや荒廃はしているが、重量感と力強さを持
った石が積まれていて壮観である。
 村の中心からは案内の標識が完備している。
 
 
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 コアラン島 (ランモデ)
    西のドルメン

  Île Coalen (Lanmodez)/
     
Dolmen de Ouest  

        2 Côtes-du-Nord

   
       
 
 
 
 ランモデはプルービアンの東の集落で、この
島へ渡る最短距離の場所だった。
 干満の差が激しいので、干潮時には船を使わ
なくとも、島へは歩いて渡れるとの事だった。
干潮の時間を見計らって砂州を歩き、割と短時
間でこのドルメンにたどり着く事が出来た。
 波に洗われたのだろうか、かなり崩壊が進ん
でいる。だが、明らかに通路式ドルメンの遺構
のように思えた。
 前述の
Porz-Meur の浜辺のドルメンに似
ている。天蓋石が喪失しているので想像するし
かないが、打ち寄せる波の中に浮かぶドルメン
はどんな姿をしていたのだろうか。
 
 
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 ロギヴィー・ド・ラ・メール
    メルのドルメン

  Logivy-de-la-Mer/
    Dolmen de Mélus
 

        2 Côtes-du-Nord

   
       
 
   
 
 トリュー川を隔てたペンポル Paimpol 側の
半島の北西端に在る集落である。行政上の区画
としては、半島の北側は全てプルバスラネック
Ploubazlanec という町に属している。

 ロギヴィーの集落に入って直ぐに西海岸方向
に向かうと、ドルメンへの案内板が出てくる。
 家並の最後に車を止め、畑の畦道をしばらく
歩くとこの豪壮なドルメンが見えてくる。

 花崗岩の分厚い天蓋石が九枚も並ぶ様は、何
とも壮観で感動的だった。
 全体の長さは15m弱位だろう。長い通路を
覆った通路式ドルメンであり、それぞれの天蓋
石を数石づつの支石が支えている。
 天蓋石にはかなり分厚い石が用いられている
のに、ドルメン自体の高さが低く感じられるの
が不思議だった。だが、それは、周囲の雑草が
繁り過ぎていることと、ドルメン全体がやや地
中に埋まっているからだった。
 通路の両端は壁石で塞がれており、内部への
入口は南側側面の中央部分に設けられている。

 家人が写った写真を使用させて頂いたのは、
ドルメンの長さや規模が分り易いのではと思っ
たからで、何卒ご容赦のほどを。
 
 
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 カンタンロッシュ・ロング
    のメンヒル

   Quintin/Menhir
     de la Roche longue
 

       2 Côtes-du-Nord

   
       
 
 
 
 サン・ブリウー St-Brieuc の南西に、カン
タンという面白い名前の城下町がある。
 城の南側を南西に向かって進むと、左手に広
大な牧場が見えてくる。
 “長い石のメンヒル”という名前の通り、背
の高い石が牧草地の端に立っていた。7mはあ
ると思われ、根元が細くなっているので不安定
な感があるが、実際にはさらに地中深く埋まっ
ているのだろう。
 地面から突き出たように堂々とした石は何と
も魅力的だが、倒れないのが不思議なほど不安
定に見えるこのような石にも違った緊迫感があ
る。
 こんな巨石を、何のために手間ひまかけて立
てたのだろうか、という疑問がここでも難題と
なった。立てた石に意味があるのか、立てると
いう行為そのものが目的であったのだろうか。
 
 
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 ラニスカランド・ド・
    リスキューのドルメン

   Laniscat/Dolmen
     de Lande de Liscuis
 

      2 Côtes-du-Nord

   
       
 
 
 
 カンタンから更に西南へと30キロ行った地
点に在る町で、この貴重な遺跡は近年開通した
国道
N164 のバイパスの南側に在る。
 かなり山林の中を歩かねばならないが、全域
に三基の通路式ドルメンが保存されている。
 写真はその内の一基で、片岩を立てて通路を
構成した上に、同じ片岩の天蓋石を載せた標準
的な様式である。天蓋石は一枚しか残っていな
いが、石の特性が、独特の繊細なイメージを創
出している。やや箱型に収まった単純さが気に
なるところだが、付近に同様のドルメンがあと
二基集中していることは特筆するべきだろう。
 
 
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 フレール岬ドワ・ド・
   ガルガンチュアのメンヒル

  Cap Fréher/Menhir
     le Doigt de Gargantua
 

      2 Côtes-du-Nord

   
       
 
   
 
 サン・マロ St-Malo の北に続くエメラルド
海岸の西端にこの岬があり、半島の東の先端に
ラ・ラット要塞
Fort la Latte がある。
 駐車場から岬の要塞へと続く遊歩道の中程あ
たりに、エメラルド海岸を背にしてこのメンヒ
ルが立っていた。
 直訳すれば“大食漢の指”という、妙な名前
が付いている。3m弱という高さのそれ程大き
な石ではないが、「指」なら話は別だ。
   
 このメンヒルの特徴は、立てられた石がほぼ
角柱であることだろう。自然石であるはずなの
だが加工されているようにも見える。
 多くのメンヒルが扁平な巨石であることを思
えば、この立石は風変わりなメンヒルであると
言える。もう一つの特徴は、立石の根元に石組
のある事である。ストーン・サークルの中心石
の様でもあり、ヒンドゥーのリンガ石のように
も見える。
   
 遠く沖合いの英仏海峡を眺めながら、対岸の
英国コーンウォールとの関連を想った。大陸を
追われたケルト民族が渡った海であり、現在で
も共通する文化圏の中にある。
 それよりも、遥かケルト以前の旧石器時代か
ら海峡を挟んで、共通した巨石文化が存在した
事実は注視されなければならない。   
 
 
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