平成21年12月(師走)の短歌
ゆっくりと声に出しつつ板書する師は盲いなる吾を気ずかいて
(ゆっくりと こえをだしつつ ばんしょする しわめしいなる あをきずかいて)
譲られし路地会釈して盲導犬の歩を促せり住み慣れし町
(ゆずられし ろじえしゃくして もうどうけんの ほをうながせり すみなれしまち)
気さくなる友の話しを聞きながら ふと過ぎりくるさみしさのあり
(きさくなる とものはなしを ききながら ふとよぎりくる さみしさのあり)
冬型の気圧配置を告ぐる朝 埠頭の霧笛のまた響き来る
(ふゆがたの きあつはいちを つぐるあさ ふとうのむてきの またひびきくる)
ひたひたと真夜を静かに時雨降るひたひたと吾が心濡らして
ふんわりと芝生の上に雪乗せて少し早目の冬となり初む
(ふんわりと しばふのうえに ゆきのせて すこしはやめの ふゆとなりそむ)
降りて降る吾が膝埋むるどか雪を蹴散らす犬の引き綱強し
(ふりてふる わがひざうずむる どかゆきを けちらすいぬの ひきづなつよし)
ほてりたる頬に降る雪止まらせてまた雪除けのシャベルを握る
(ほてりたる ほほにふるゆき とまらせて またゆきのけの しゃべるをにぎる)
「あっしまった!」キー操作指が違えたり パソコンのデータ瞬時に消ゆ
(「あっしまった!」キーそうさゆびが たがえたり パソコンのデータ しゅんじにきゆ)
ためらわず召されし友の名を消しぬパソコンは小さき音を残して
(ためらわず めされしともの なをけしぬ パソコンはちさき おとをのこして)
追いかけっこ
この年も夜が明ければ二日となってしまった
なんだかめっきり「年」をとってしまったような気がしてならない
あれもせねば・・・
これもせねば・・・
そうそう、あれをしておかなければ・・・
そうそう、これもしておかなければ・・・
一向に私の一日は終わらないのに
時間だけが確実に過ぎてゆく
まあ、こんな年もあってもいいのか・・・
などと自分にいい聞かせながら
新しい朝を迎えることにしよう
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