1.矢口高雄の「自選 釣れづれの記」 を読んで。
「釣りキチ三平」の漫画でおなじみの矢口高雄の「自選 釣れづれの記」(「つり人」の誌上に昭和50年〜平成2年8月号まで「釣りキチ三平・釣れづれの記」を連載したものから24編選んだもの)を読んでいたら、とても気になることが書かれていた。
昭和62.9月号に書いた"LAS(界面活性剤)を考える"と
昭和63.8月号に書いた"LASに熱い視線を"です。
合成洗剤の主成分であるLASが川にわずか10ppbの濃度で残っていると、稚鮎はそのLASの臭いを嫌がって逃げてしまう、忌避行動をとるというのだ。
これを読んで、エッ本当か!こんなことも知らずノーテンに30ン年以上も鮎釣りをしていたのか!ヤバイじゃないか! 胸がドッキンドッキンするのを感じた。
書いてあることの一部を割愛(・・・部)し、そのまま転載します。
すでに釣れづれの記を読まれている方は、濃度説明へジャンプして下さい。
本文に出てくる日高先生は、この研究で博士号を取得した。その後、九州共立大教授を務めておられたが、1999年4月紫川でアユ調査中に事故にあわれ故人(享年51歳)となられた。
若鮎の二手になりて上りけり
この句は正岡子規が明治二十五年に詠んだ「出合」と題する一句である。愛媛県松山市を流れる重信川と石手川が合流するあたりを、当時「出合渡し」と呼んでいたことから「出合」のタイトルとなったものであるが、つまり勢いよく海から遡上してきた若鮎の一団が、「出合渡し」の合流点に差しかかり、にわかに二手に分かれて、一方は重信川、一方は石手川へと遡っていくさまを詠んだ早春譜といえよう。・・・・
・・・近年こうした天然鮎の遡上が激減の一途をたどっていることは、鮎マニアなら誰でもしっていることであり、非常に悲しいことである。・・・
「近頃の鮎は性質が変わった」
「以前より小型化している」
「追いが弱くなった」等々・・・
そんな昨今の情勢のなかで、鮎マニアにとって耳よりな研究成果が発表された。六月一日の鮎解禁を目前にした、本年五月二十七日付、愛媛新聞朝刊に「天然鮎の減少は合成洗剤が原因」という記事が掲載されたのである。
記事の内容は―――愛媛大学農学部の日高秀夫先生を中心とした環境科学研究室の調査によると、
「家庭用合成洗剤の主成分であるLAS(界面活性剤の一種)が微量でも水流に含まれていると鮎がその臭いを嫌って近寄らない」ことが分かった。―――というものである。・・・
<この記事を読んだ矢口高雄はこのLASのことについて日高秀夫先生に電話して確かめ、論文やデータを送ってもらった。本文は以下のように続く。>
・・・室内の水槽による忌避試験である。そしてついに突き止めた結論は、
「鮎は合成洗剤の主成分であるLAS(界面活性剤の一種)が10ppb(十億分の一)単位のきわめて低い濃度でも敏感にかぎわけ忌避行動をとる」ということであった。
そして今年の四月末、この室内実験の成果を更に裏付けるための野外実験を行ったのである。その実験地として選ばれたのが、冒頭に掲げた正岡子規の俳句に詠われた「出合」の合流点の上流で、重信川と砥部川の合流点であった。
日高先生とその研究グループは、アブラビレと左のハラビレを切除した稚鮎五千尾を合流点の下流に放流し、合流点ではどちらの川に遡るかを調査したのである。・・・
・・・常識的に考えて川が二本に分かれている場合、条件が同じだと仮定すれば、鮎は流量の豊なほうを選ぶだろう。
・・・四月末ということを考えると、水温の高い川に遡るはずである。だが調査の結果は、全期間を通じて平均水温も高く流量の豊な砥部川河口右岸には一尾の遡上も見なかったというのである。そこが最も汚染が進んでおり、LAS濃度も高かったのである。
鮎はLASの臭いを嫌がって忌避する―――という室内実験で得られた結果が、野外環境でもほぼ適用し得ることを実証したのが日高先生の研究の一大成果といえよう。・・・
・・・電話が終わってボクはしばらく茫然としていた。・・・
日高先生から貴重な資料が送られてきたので、その礼状にボクはこう書いた。「河川の汚濁を一瞬にして消してしまう魔法のクスリはないものでしょうか」と・・・
・・・しかし、それに対する日高先生の返事が素晴らしかった。
「人間が時間をかけて汚したものですから、人間の力でじっくりと時間をかけて浄化に取り組むのが王道ではないでしょうか」
この言葉が、ボクの心にズシリと重くひびいた。(昭62.9)
待ちわびた"鮎シーズン"到来である。・・・
そこで今回は、全国の鮎マニアにぜひ伝えたいボクの熱い胸の内を綴ることにする。いやこれは、鮎マニアのみでなく、全ての釣り人にお読みいただき、より深いご理解と、ご協力を賜りたいのである。・・・
・・・・LASとは、いわゆる合成洗剤の主成分である界面活性剤のことで、今日市販されている合成洗剤の三分の二がLAS系の洗剤なのである。・・・
今日、合成洗剤が最大の水質汚濁物質の元凶となっていることは、ボクごときが声を大にして言わなくても衆知の事実である。そしてそれが、水とは切っても切れない魚や、ひいては我われの人体にまで、多大の被害をもたらし続けているという事実である。
例えば、この稿でふれたが、近年鮎の天然遡上が著しく減少しているという現象である。昨年五月、愛媛大学農学部環境科学の日高秀夫研究員(現九州共立大助教授)の発表した研究成果によれば―――鮎は、家庭用合成洗剤の主成分であるLAS(界面活性剤の一種)が微量でも水流に含まれていると、その臭いを嫌がって忌避行動をとる。従って今日、日本の多くの河川で天然鮎の遡上が減っているのはLASが原因の一つと考えられる―――というものだった。・・・
・・・「鮎はLASの臭いを忌避するばかりでなく、汚染のひどい水域に放流した場合、死滅しないまでも、遡上しようという本来の習性を失ってしまうようだ」というのである。
これは鮎マニアとして聞き流すことのできないことである。遡上する習性を失ってしまうということは、同時に、鮎特有のナワバリの習性も、なかんずく鮎マニアを魅了して止まない、あの激しい闘争心までも失ってしまうのではないだろうか。
だとしたら、鮎マニアにとっては一大事である。第一、闘争心を失った鮎は、まず鮎ではない。いや、そんな悠長なことをいっている場合ではない。鮎釣りそのものが不可能になる。毎夏、多くのマニアを熱くさせてきた鮎釣りそのものが、成立しなくなるということである。
それはちょっとオバーな、マンガみたいな話じゃないか……とお思いの諸兄もいるだろう。しかし昨今、そうした兆候を思わせる会話が、鮎マニアの間でヒンピンと交わされていることをボクは何度も耳にした。・・・
・・・しかし、強烈な闘争心がなくなったの発言に果たしてどんな名解答があるだろう。ボクは"LAS"の存在を抜きには名解答を引き出すことができない。ましてや天然遡上の激減に対する回答は、"LAS"を含めた水質、環境汚濁以外に何物もないことは、日高先生の研究で明白である。・・・
・・・昭和二十五年にアメリカから輸入されたABS(合成洗剤の一種)がその最初であった。そして、国産品が販売されたのは昭和三十一年からである。折りしも日本は、戦後の復興から高度経済成長への道をまっしぐらという時期で、急速に家庭用洗濯機が普及していった時期でもあった。
そして、同時にこの時期はテレビの普及期でもあった。メーカーは、そのテレビをフルに活用した。真っ青な青空の下に、満艦飾に洗濯物をはためかせたCMを、繰り返し繰り返し家庭深く送り込んだ。
曰く、黄ばみのない真っ白な洗い上がり!!
見よ、油よごれはひとりでに食器からはじき出される!!
こんなキャッチフレーズが、石けんは汚れ落ちが悪い、黄ばんでいるのはその証拠であるとはいわなかっただろうが、少なくとも庶民にバッチリそれを印象づけたのは事実である。
しかして、昭和三十八年にはついに石けんの生産量を追い抜き、二回の石油ショックで一時的に落ち込んだ時期もあったが、依然として延び続けて今日に至っているのである。
「あたし、本当にテレビにすっかり誤魔化されていたような気がするの。・・・
・・・知ってたセンセイ。女って駄目ネ。テレビのやること、何の疑問も持たずに信用してしまうんだから。粉石けんでもすごーく落ちるのよ。ホントによく落ちるの。あたしびっくりしちゃった」
快活に笑う、彼女の笑顔は素敵だった。そして、テレビに誤魔化されていた、という彼女の言葉が、やけに脳裏に焼きついた。
ボクも同感である。
「白さと香り」
という某メーカーのキャッチフレーズは、確かに蛍光増白剤であり芳香剤に他ならない。特に蛍光増白剤は、あたかも汚れが落ちた感じを与えるカモフラージュといえるだろう。
そして今日のCMは、
「汚れをすみずみまで落とす酵素パワー」である。
このキャッチフレーズにも、明らかな誤魔化しがあるとボクは思う。・・・・・
・・・それよりも、この件に関してボクがいいたいのは、酵素よりも何よりも、圧倒的に強力な洗浄力を発揮しているのは、他ならぬ、"LAS"であるということである。ところがどうだろう。
わが社の合成洗剤には"LAS"という洗浄能力最強の界面活性剤が入っています。だから落ちるのです―――というキャッチフレーズを掲げたCMをご覧になった諸兄はおられるであろうか。
ボクはない。ボクが誤魔化しだと思うのはここである。これはメーカーが"LAS"の存在をひた隠しに隠しておこうとする作為であると、ボクには感じられるのである。そしてそれは、毒性を充分に承知しているからこそ繕う作為に感じられて仕方ないのである。
重ねて記すが、酵素などよりはるかに強烈な洗浄パワーを発揮しているのが、界面活性剤"LAS"なのである。
その"LAS"が現在鮎にひどい打撃を与えているのである。いや鮎ばかりでなく、水質汚濁、環境汚染の最たるものといえるだろう。
その意味では、合成洗剤メーカーは"公害企業"として糾弾されなければならないはずである。しかし、そんな声は巷のどこからも聞こえてこないというのが実情である。何故か。理由はいとも簡単な図式である。
公害を指摘し、告発すべきマスコミ(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌etc)の全てが、洗剤メーカーの支出する暴大な宣伝費で成り立っているからである。
ある記述によれば、日本最大の広告代理店である電通の取り扱い高第一位が花王で、ライオンもほぼ同額であるという。つまり両社は、広告代理店にとっても、ましてやテレビや新聞等のマスコミにとっても、超ド級のお得意さまであるということである。
かなり皮肉な提案だが「巨泉のこんなものいらない」という番組があるが、ボクからいえば合成洗剤はまさにこの番組の主旨にピッタリの標的である。しかし、こんな企画を立てたら、まずプロデユーサーもデイレクターもどこかへ消されてしまうだろうし、司会の大橋巨泉氏もそれこそ「いらない」となるだろう。
なぜなら、この番組は洗剤メーカーの提供だからである。
ハハハハ。笑い話とはこのことだろう。しかし我ら釣り人は力のない笑いで誤魔化してはいられない。こんな強力な壁があるならば、釣り人党を作って対抗しようじゃないか。
そう考えたボクは、「三平クラブ」(ボクの主宰する友釣りクラブ)のスローガンに、次なる一文を掲げた。
「三平クラブはパワフルで、プロポーシヨンのよい、大型の天然鮎を釣るために、合成洗剤はいっさい使いません!!」
いかがでしょう。鮎マニアのみならず、釣り人ならそうする義務がある、とボクは思うのだが・・・・・。(昭63.8)
ノーテン鮎師の心にもズキリときた。無知のままでいたらノーテン気楽に・・・だったのに。それでLASについて調べてみたら、いろいろと出ていました。それは2.LASとはどんなものか?調べてみた。にまとめます。
濃 度 の 表 し 方 | |
1 %(per cent) | 100分の1のこと。 1g(グラム)の物が100 ml(ミリリツトル)の水に溶けた状態。 |
1 ppm(parts per million) | 100万分の1のこと。mg/l と同じ。 1gの物が1000 l(リツトル)の水に溶けた状態。 |
1 ppb(parts per billion) | 10億分の1のこと。μg/l と同じ。 1gの物が1000 t(トン)の水に溶けた状態.。 |
1 ppt(parts per trillion) | 1兆分の1のこと。ng/l と同じ。 1gの物が100万 t(トン)の水に溶けた状態。 |
1円玉の重さが約1gです。1円玉10枚分の重さの合成洗剤が1000トンの水に溶けた状態が10ppbです。
家庭の洗濯機では1回に約20gの洗剤を使用します。それが10ppbの濃度まで薄まるには2千トンもの水が必要です。これは大変なことだと思いませんか?
2千トンの水 = 風呂桶(300g) 6,667杯分 になります
これは、毎日風呂を沸かしたとして18年分になります。
日高先生の研究発表以来、他の研究者もLASについて調べた結果では6ppbでも忌避行動をとることが確認された。
2.LASとはどんなものか?調べてみた。
矢口高雄の「釣れづれの記」を読み、LASのことを調べてみて、非常にショックを受ける事実にぶち当たりました。
鮎に憑かれて30ウン年の酔狂オヤジにとっては、合成洗剤が鮎などに影響を与えるということも大変だと思ったのですが、それよりもっとショックだったのは、LASなど6種の合成界面活性剤(=合成洗剤)がPTPR法の「第一種指定化学物質」(354物質)に指定されていたという事実でした。
PTPR法の「第一種指定化学物質」に指定されたということは大変なことで、環境省、厚生労働省、 経済産業省が「人の健康や生態系に有害な化学物質」だと公式に認めたということだからです。
何も知らずに、最近のアユはおかしいよね・・・、川がだめだよ・・・とか何とか云いながらノーテン気楽に鮎釣りをしていたほうが、気楽だったような気がしています。
作成2003/02/15 2003/03/07 3.の相模川稚アユ遡上の<勝手な推論>に追記
順序は適当ですが、調べて分かったことを1.〜6.にまとめました。
1.LASとは
2.LASを含む6種類の合成界面活性剤がPRTR法の「第一種指定化学物質」に指定されていた。
3.鮎など川の生物への影響はどうなのか
4.水質基準ではどのように決められているか
5.下水処理でLASは分解除去できるか
6.洗濯用合成洗剤に添加されている蛍光増白剤は問題がないのか?
いろいろ調べてみた結論は、鮎師だけでなく釣り人は合成洗剤を使ってはいけない!です。
1.LASとは
陰イオン系界面活性剤 ≪アルキルベンゼン系≫の一種で、化学用語ではlinear
alkylbenzene sulfonates(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)という、名前が長いので略称でLASと呼ぶ。
LASはタンパク質と結合しやすく、また皮膚から浸透し体内へ入る、その性質のために肌荒れ、湿疹、アトピーなどがおきるといわれている。
洗濯用合成洗剤、台所用合成洗剤の主成分で、パッケージに「直鎖アルキルベンゼン系」などと表示されている。
かって、ABS(分枝型アルキルベンゼンスルホン酸塩)が、河川、排水路の泡公害で問題になり、泡があまり立たないLASなどが多く使われるようになった。
LASは、皮膚障害を初めとする人体・環境汚染のナンバーワンと言われており、最近では単独で使用せず、他の合成界面活性剤と併用するようになってきた。
石鹸と合成洗剤については、次のHPで分かりやすく説明されています。
石けん百科 みおつくし探究レポート洗剤
家庭用の合成洗濯洗剤、台所用合成洗剤の「家庭用品品質表示法に基づく表示」が一覧表で見れます。
2.LASを含む6種類の合成界面活性剤がPRTR法の「第一種指定化学物質」に指定されていた。
人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む)があり、環境中に広く存在する(暴露可能性がある)と認められる354の化学物質が指定されました。
安全な物、無害な物は「第一種指定化学物質」には絶対に指定されません。
○有害性(ハザード)+暴露可能性に着目して選定 されました。
※有害性=人の健康、動植物の生息・育成、オゾン層破壊 に有害。
家庭用の合成洗剤や化粧品に一般的に使用されているLASを含む6種類の合成界面活性剤がPRTR法の「第一種指定化学物質」の354物質のなかに指定されていたのです。
それと、「化審法」(経済産業省管轄)にもとづきLASなどの「化学物質安全性(ハザード)評価シート」が作成されていたのです。ハザード評価シート(概要)は下の表の○をクリックしてください。
物質No. | 指 定 物 質 名 | 備考 、 別名 | 略 称 | ハザード 評価シート |
24 | アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩 | (直鎖型)(C10〜14) | LAS | ○ |
166 | N,NジメチルドデシルアミンNオキシド | 化粧品使用名 ラウラミンオキシド | AO | ○ |
251 | ビス(水素化牛脂)ジメチルアンモニウムクロリド | 化粧品使用名 クオタニウム、 ポリクオタニウム |
DAC | ○ |
307 | ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテル | 化粧品使用名 パレス、ラウレス、 セテス、ステアレス (C12〜15) |
AE, POAE |
○ |
308 | ポリ(オキシエチレン)オクチルフェニルエーテル | 化粧品使用名 オクトキシノール | OPE | ○ |
309 | ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル | 化粧品使用名 ノノキシノール | NPE, POEP |
○ |
(No.307, 308, 309は非イオン系界面活性剤で水に溶けてもイオン化しない。)
第一種指定化学物質354物質のなかには、当然ですが、ダイオキシン、PCB、ノニルフェノールなどの環境ホルモンなど多くのあぶない物質が指定されてされています。
合成洗剤メーカーは「生分解性は良くなっている」として6種類の合成界面活性剤をリストからはずすように政府に求めましたが政府は「生分解性の実験に(メーカーが)使用しているバクテリアは馴らされているものなので、自然界にいるものとは違うので実際には分解されていないとしてメーカー側の要求を退けました。」
第一種指定化学物質の[選定のための具体的な項目]は、次の(ア)(イ)(ウ)です。
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register 環境汚染物質排出移動登録)法は正式には「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」といい平成11年に制定され平成13年4月より施行された環境省が管轄する法律で、十の関連法があります。
人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、事業所からの環境(大気、水、土壌)への排出量及び廃棄物に含まれての事業所外への移動量を、事業者(常勤者21人以上の事業所)が自ら把握し国に対して届け出るとともに、国は届出データや推計に基づき、排出量・移動量を推計し、公表する制度です。
指定物質選定の基本的考え方は、
事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的としている(法第1条)。
このPRTR及びMSDSの対象化学物質となるのが
「第一種指定化学物質」で
@当該化学物質が人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがあるもの、
A当該化学物質の自然的作用による化学的変化により容易に生成する化学物質が@に該当するもの、
B当該物質がオゾン層を破壊し、太陽紫外放射の地表に到達する量を増加させることにより人の健康を損なうおそれがあるもの、
のいずれかに該当し、かつ、
Cその有する物理的化学的性状、その製造、輸入、使用又は生成の状況等からみて、相当広範な地域の環境において当該化学物質が継続して存すると認められる化学物質
で政令で定めるものとされている(法第2条第2項)。
[選定のための具体的な項目]は、
MSDSとは、354の第一種指定化学物質および発癌性のある12の第ニ種指定化学物質又はそれを含有する製品を他の事業者に譲渡・提供するさいに、その物質の性情・取り扱いに関する化学物質等安全データシートを事前に提供することを義務づける制度です。
6種類の界面活性剤又はそれを含む洗剤などの製品を事業者の間で取引する場合には、化学物質等安全データシートを事前に提供することが義務づけられているほど、有害性のある物質だということです。
水産用水基準(有害物質)〔昭和58 年3 月、改正平成12 年12 月〕では |
陰イオン界面活性剤=検出されないこと 非イオン界面活性剤=検出されないこと と改定されました。 |
水産用水とは、「魚その他の水生生物の正常な生息および繁殖が維持され、その水域における漁業操業が支障なく行うことができ、かつその漁獲物の経済価値がそこなわれることのない水」であり、水産用水基準とは、水産用水の水質の許容限界基準を定めたものである。
水道水よりも魚を育てる水の基準が100倍も厳しいのはどういうわけ?
水道水の水質については、国立医薬品食品衛生研究所の「水質基準」というホームページがありました。(現在は水質基準というホームページは行方不明で、「水道水質データベース」は社団法人日本水道協会ホームページに移されていました。2003/07/25)
その中の、厚生労働省健康局水道課の「水道水質データベース」に原水、処理水などの測定データが公表されています。
5.下水処理場や個別浄化槽でLASは分解除去できるか
陰イオン界面活性剤が汚水処理槽の微生物などによって分解除去されるには5日間ほどかかります。
活性汚泥方式の下水処理場以外ではほとんど除去できずに、未分解のまま川へ出て海まで流れ込むというのが事実のようです。
下水処理場の場合
(1)散水ろ床方式(微生物群を定着させた砂利等の上に生下水を散布し、砂利等の表面の微生物による生分解によって有機汚濁負荷を低減させる方式)では除去出来ない。処理水は陰イオン界面活性剤の濃度が高いまま排出される。
(2)活性汚泥方式(汚泥状の微生物群を生下水に混和して曝気・攪拌することで、有機物を生分解させ、有機汚濁負荷を低減させる方式)陰イオン界面活性剤は生分解されないが、活性汚泥の菌体タンパク質に強く結合することで生下水から除去され、処理場排水は河川水なみの濃度までなる。
合併処理浄化槽(個別の家に設置された汚水浄化槽)では、陰イオン界面活性剤を生分解するのに5日位かかるので、5日分の汚水を浄化槽に溜めておけないので、陰イオン界面活性剤は未処理のまま排出される。
*H13年4月からし尿だけを浄化する単独処理浄化槽の新設は禁止されましたが、それまでに設置された600万個が今も使われています。今も単独処理浄化槽の家庭からは台所や風呂の排水が未処理のまま河川に排出されています。
合併処理浄化槽への切り替えに補助金がでます。市町村役場に問い合わせしてください。
単独処理浄化槽と合併処理浄化槽 (全国浄化槽団体連合会)
自然の河川、湖沼などで、LASが70%分解するのに28日もかかるそうです。30日かかるという報告もあります。
(日本の川で最も流程の長い利根川でさえ、その源流の水が海に達するのに数日しかかからないそうです。したがって、排水溝・側溝や川に流された合成洗剤はほとんどが分解されないまま海まで流れ込んでいるのです。)
6.洗濯用合成洗剤に添加されている蛍光増白剤は問題がないのか?
蛍光増白剤の使用について
蛍光増剤白剤とは蛍光染料、蛍光塗料のことで、目に見えない紫外線を吸収して、目に見える青白い光(蛍光)に変えるため、青色の光が白布の黄色を打ち消し、見た目の白さが増して衣料を白く感じさせるものです。
蛍光増剤白剤は、蛍光染料、蛍光塗料ですから洗濯物の表面に付着して、繊維の黄ばみを覆い隠してしまいます。一度着いた蛍光染料、蛍光塗料は1年くらいは取れないそうです。
食品衛生法という法律では、
食べ物への添加は一切禁止されている。(かって、カマボコなどを白く見せるのに使用された時期がある)
食べ物を包装する包装資材への使用も禁止されている。
食べ物に関連するもの、紙コップ、紙の皿、ナプキン、台所のふきんなどは使用禁止です。
薬事法では、
生理用品、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、乳児用肌着、よだれ掛け、紙おむつなどは使用禁止。
薬局方では、
ガーゼ、脱脂綿が使用禁止です。
肌に直接触れるものへの蛍光増白剤の使用は、
薬事法や薬局方で使用禁止になっています。
蛍光増白剤ってこんなに危険なんですね。
蛍光増白剤が入っている洗濯用合成洗剤で洗濯すると、洗濯物の表面に蛍光増白剤が付着して真っ白になります。
あなたは、蛍光増白剤が付着して真っ白になった肌着を着るのは、安全だと思いますか?
最後に
厚生労働省、経済産業省、環境省、農林水産省のいずれもが、LASなどの合成界面活性剤や蛍光増白剤は安全ではない(=有害、危険)と言っているが、安全でない(=有害、危険な)合成界面活性剤や蛍光増白剤を使用した家庭用洗剤は販売され続けている。
こういう法律や政令で決められた事を見ていると、てんでばらばらで訳が解らなくなってきます。
それではどうすれば良いか、賢明な皆さんはお判かりですよね。
鮎師の皆さん、 合成洗剤を使うのは止めましょう。とくに蛍光増白剤入りの合成洗剤は危険です。