チタン鉱石問題に関する対応方針
平成3年6月6日
科学技術庁
厚生省
通商産業省
労働省
チタン製造工場からの廃棄物の一部で通常より高いレベルの放射線が検出された本問題への対応については、科学技術庁、厚生省、通商産業省及び労働省の関係4省庁で協議し、平成2年9月7日に「チタン鉱石問題に関する基本的対応方針」を取りまとめた。この方針においては、当面の措置の実施について示したが、それ以後、工場、処分場についての詳細な調査を実施するとともに、それを踏まえて安全評価等を実施した。
この結果、以下のことが明らかとなった。
@ 工場、処分場の敷地境界では空間放射線量率はバックグラウンドレベル程度となっていること、排気、排水とも原子力施設に係る濃度限度を十分下回っていること等から、公衆の被ばく線量は一般公衆の実効線量当量限度である1mSv(ミリシーベルト)/年以下である。
A 工場、処分場の従業員の被ばく線量は、作業環境中の空間放射線量率等から評価した結果、一般公衆の実効線量当量限度である1mSv/年以下である。なお、鉱石を建屋に保管しており発じんしやすい環境にある工場の従業員を対象にホールボディカウンターによる計測を実施するとともに、各工場において従業員(退職者も含む。)等2,500人以上を対象に健康診断を実施したが、異常は認められなかった。
B 過去の処分場については、通常想定されうる跡地利用の可能性を考慮しても安全上問題がない。
C 今後の廃棄物の放射能レベルについては、使用鉱石の放射能レベルを低減すること等により、十分安全なレベルまで低減することが可能である。
以上を踏まえ、今後とも安全性を十分維持するために本件に関する最終的措置の検討を行い、関係4省庁で協議を行った結果、この度、チタン鉱石問題に関する最終的措置として、「チタン鉱石問題に関する対応方針」を以下のとおり取りまとめた。
1. 講ずるべき措置等
(1)工場
@ 空間放射線量率の測定を定期的に実施し、記録すること。
A 敷地境界において通常のバックグラウンドレベル程度に保つとともに、通常のバックグラウンドレベル程度を超える場所については、人がみだりに立ち入らないようにすること。
B 鉱石、廃棄物について、飛散・流出防止、吸入防止のための措置を講ずること(輸送中も含む。)。
C 敷地境界における大気、排水について、その放射能濃度が法令(「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づく規則及び告示)で定める濃度限度を下回っていることを、定期的に確認すること。
D 作業環境が法令(電離放射線障害防止規則)に定める基準を下回っていることを、定期的に確認すること。
E 鉱石、廃棄物について空間放射線量率の測定で通常のレベルより高い値が測定された場合には、そのつど放射能濃度の測定を実施し、そのレベルが法令(電離放射線障害防止規則)で定める基準を下回っていることを確認すること。
F 使用鉱石については、輸入のつど空間放射線量率等の測定を実施し、その放射能レベル・使用量を管理し、廃棄物の放射能レベルをできるだけ低くするよう努めること。
G 工場外に持ち出す廃棄物は、廃棄物に起因する空間放射線量率の目安が、0.14μGy(マイクログレイ)/h以下であるものに限ること。このため、持ち出す前に空間放射線量率の測定を行い、これを確認し、記録すること。(注)
(2)旧処分場(過去にチタン製造工場から廃棄物が搬入された処分場であって、現在埋立て中のものを含む。)
@ 地方公共団体は、廃棄物の流出のないこと、跡地利用の状況等旧処分場の状況を把握し、特に、大規模に跡地利用される場合には、科学技術庁及び厚生省に事前に通知すること。
A 事業者は、埋立てが終了している旧処分場で覆土が50cmに満たない場所は、跡地利用の可能性等を考慮しつつ、原則として50cm程度の覆土をすること。
B 現在埋立て中の旧処分場で、通常のバックグラウンドレベルを超える場所がある場合には、暫定的に
(1)A及びBに準じた措置を講じつつ、可能な段階で早急に覆土すること。
(3)今後廃棄物を搬入する処分場
今後、廃棄物に起因する空間放射線量率が0.14μGy/h以下の廃棄物を搬入する処分場については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、適切に処分すること。
2. 測定結果等の届出
事業者が、上記の測定及び確認等を実施したときは、定期的にその結果を地方公共団体を経て関係4省庁に届け出ること。
(注)目安とする0.14μGy/h以下のレベルは、その場に1年間365日居続けた時、外部被ばくによる実効線量当量が一般公衆の実効線量当量限度である1mSv/年以下となるレベルである。
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