(2007年8月6日 読売新聞)
海上の森・案内板「待った」
土地所有者「自然の姿壊す」抗議
愛知県困惑
愛・地球博(愛知万博)の会場となった愛知県瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」で、
自然歩道の案内板をめぐって同県と土地所有者が対立している。県は歩道利用者から
の要望を受けて設置を計画したが、土地所有者から「本来の自然の姿でなくなる」と
抗議を受け、設置を見合わせている。「話し合いで解決したい」とする県に対し、土
地所有者は自然歩道の一部を立ち入り禁止とすることも検討している。
海上の森の自然歩道は、愛知万博のパビリオン「瀬戸愛知県館」を改修した県の学
習交流拠点施設「あいち海上の森センター」から、森中央の休憩所「里山サテライト」
までの約3キロで、森の中を流れる吉田川沿いのコースと尾根を伝うコースがある。
2006年度は4〜5万人が訪れ、環境団体の自然観察会や同センター主催のツアーでも活
用されている。
ただ、草木が生い茂っているため、途中で道順が分からなくなることがあり、同セ
ンターが今年3月から6月にかけて行ったアンケートでも、「道に迷って豊田市の方へ
行ってしまった」「案内板がなく、不安になった」といった意見や苦情が寄せられた。
このため、同センターは案内板の設置を決め、7月末から分岐点など約10か所に支柱
を立てた。ところが、森の中に約370平方メートルの土地を所有する無職男性(60)から、
「観光地でもないのに、案内板を立てるのは不自然。森の本来の姿を壊すべきではな
い」と抗議があった。
所有する土地の一部が歩道にかかっていることから、男性はその部分を板などで囲
み、「関係者以外、立ち入り禁止」と書いた札を掲げる考えだ。県によると、男性の
所有地が通れなくなると、川沿いのコースは使えなくなるという。
同センターの浦井巧所長は「できる限り、自然の姿のままにしておきたいが、利用
者の利便も考える必要がある。話し合って理解を求めていくしかない」と話している。