平成19年5月11日
神田正秋愛知県知事殿
増岡錦也瀬戸市長殿
愛知県珪砂鉱業協同組合御中
印所・紺屋田の森 古窯址保存を求める陶芸家有志の会
鉱山開発から里山を守る会
紺屋田・印所の森を歩く会
瀬戸市民ネット
拝啓、貴職に於かれましてはますますご清栄の段、お喜び申し上げます。
平素は瀬戸市内の環境保護にご尽力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、愛知県瀬戸市紺屋田町・東印所町で愛知県珪砂鉱業協同組合が珪砂採掘を推し進めている珪組第五鉱山にて瀬戸市埋蔵文化財センターが古窯の発掘調査を行っています。
この古窯は5月10日付け中日新聞において「瀬戸に最大級の穴窯跡」として紹介され、紺屋田A窯跡、これまで市内で発見された平安ー室町時代の穴窯跡では最大級、陶器量産拠点の一つだったと考えられる、鎌倉時代の窯跡、工房、陶器片が一括して出土したことは、古瀬戸の陶器生産の過程を知る上で貴重な資料になる…等々とされています。
この古窯からは京都国立博物館所蔵の重要文化財である四耳壷と同じく突帯紋のある破片が出ています。またそれが意図的に釉薬をかける画期的な技術が確立した時代のものであると考えられることから、瀬戸の陶芸家を中心に古窯の保全を求める署名活動が広く行われ、すでに平成17年2月8日に要望書と1741名の署名とが瀬戸市長らに提出された経緯があります。このように本件の古窯は考古学の専門家のみでなく、陶芸家や地元市民、さらに報道機関からも注目を集めてきたものです。
ここで文化財保護法を紐解くと、その第3条においては政府と地方公共団体の責務として「文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない」と定められています。
さらに第4条においては国民の心構えとして「一般国民は、政府及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するために行う措置に誠実に協力しなければならない」としたうえで、その2項において「文化財の所有者その他の関係者は、文化財が貴重な国民的財産であることを自覚し、これを公共のために大切に保存するとともに、できるだけこれを公開する等その文化的活用に努めなければならない。」としています。
これをうけて埋蔵文化財の調査の結果、重要と認められる遺跡はこれを保存するほか、書類でしか保存することのできない遺構についても一般公開が広く行われています。現地においては珪砂の採掘が行われていますが、採掘のために古窯を除去する必然性は明らかでなく、また急峻な地形もすでにないことから一般公開に差し支える問題はほぼ解消されています。
ついては現地の古窯の一般公開をされること、ならびに古窯の現地保存のためにこれまでの取り組みを再検討されることを要望いたします。5月16日までにご回答賜りますようお願い申し上げます。
敬具
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