18瀬監第138号 平成19年2月28日 加藤 徳太郎 様 瀬戸市監査委員 小島 隆史 同 早稲田 勝彦 同 川本 雅之 瀬戸市職員措置請求の却下について(通知) 平成19年1月30日付であなたから提出のあった瀬戸市職員措置請求については、 下記のとおり却下します。 記 第1 請求の趣旨 1 請求の趣旨 (1)瀬戸市監査委員は、瀬戸市長に対し、平成17年9月1日以降、同年12月末日 までの郵便入札による契約分のうち、道路工事及び下水道工事9件に関し、公共工事の 入札及び契約の適正化の促進に関する法律(以下「入札適正化法」という。)及び瀬戸 市談合情報対応マニュアル(以下「マニュアル」という。)に基づき調査を行い、公正 取引委員会に報告を行うよう必要な措置をとることを勧告せよ。 (2)瀬戸市監査委員は、瀬戸市長に対し、上記(1)の同期間、同工事9件について談合 による入札として、瀬戸市工事請負契約書に記載されているとおり、各工事請負会社 に対し損害賠償請求を行うよう必要な措置をとることを勧告せよ。 2 請求の理由 (1)監査請求に係る契約等 瀬戸市は、平成17年9月1日以降、同年12月末日までに、道路工事、下水道工事 について、郵便競争入札の方法により12件の発注をした。その結果は澤田建設(株)を 始め計11社が受注し契約をした。予定価格に対する落札価格の比率は最高98.6%、最 低96.1%である。 (2)名古屋地方検察庁による談合捜査等 ア 平成18年1月26日、名古屋地方検察庁は、瀬戸市役所に瀬戸市発注工事に関 する談合事件に関して家宅捜査を行った。その後の捜査により、郵便競争入札につい て入札に参加した工事業者が談合を行い、不当に工事価格をつり上げ、自由な競争を 不当に制限していたことが判明した。裁判において検察官は、平成17年以降、同年12 月末日までの郵便競争入札工事12件は談合が行われていると繰り返し指摘している。 このうち3件について談合罪が適用され、関係した業者は自ら談合への関与を認め、名 古屋地方裁判所において有罪が確定している。 イ 瀬戸市は有罪となった3件の工事を請負契約した2社に対しては損害賠償請求を 行い、工事請負契約額の20%の返還を受けた。 しかし、検察庁が談合として指摘した12件のうち残りの9件については、瀬戸市長 は明白な談合情報として調査し、公正取引委員会に報告し、工事請負会社に対し損害 賠償請求を行わなければならないが、これを怠り、何らの然るべき措置をとっていな い。 入札適正化法及びマニュアルは、談合に関して明白で確定的な談合情報でなくても 疑いのある情報でも調査を行い、その結果を構成取引委員会に報告することを義務付 けている。瀬戸市長は、「調査し報告することは必要がない」としてこれを怠ってい る。 検察が談合として指摘した9件の工事請負契約金額は総額274,995,000円で ある。瀬戸市工事請負契約書によれば、談合による入札の場合20%の損害賠償請求を 行うとしており、瀬戸市長は同様に9件9社に対しても各々損害賠償請求を行い、20 %分総計54,999,000円の返還を求める責務があるがこれを怠っている。 ウ よって、請求の趣旨記載のとおり請求を行う。 第2 却下の理由 1 公正取引委員会への通知について 住民監査請求の根拠となる地方自治法第242条第1項の法意は、普通地方公共団体 の住民が当該普通地方公共団体の違法、不当な財務会計上の行為又は怠る事実に限っ て、監査請求ができるのであって、この場合当該普通地方公共団体に対する違法、不 当な行為によって損害が発生し、あるいは発生するおそれのあることが必要である。 よって、本件「1請求の趣旨(1)」をこの観点から判断するに、請求人は、請求人の 指定する道路工事及び下水道工事9件について、瀬戸市長はマニュアルの手続きを経て 入札適正化法第10条に基づく公正取引委員会に対する通知を怠っていると主張するが、 たとえ怠る事実があるとしても、それは一般行政目的上の行為であって、それを直ち に違法、不当な財務会計上の行為又は怠る事実として認めることはできないので、地 方自治法第242条第1項に規定する住民監査請求の対象には該当しないというほかない。 2 損害賠償請求権の行使について 請求人が主張する瀬戸市工事請負契約書の書式は、監査請求の内容からみて、瀬戸 市が内規で定める「標準となるべき契約書等の書式を定める要綱」の第1号様式「工事 請負契約書(以下「契約書」という。)」と推認できるので、これによって本件「1請求 の趣旨(2)」を判断するに、契約書第35条第1項(別記)の規定は契約書第31条第1項各 号(別記)のいずれかに該当する場合に限って、初めて談合その他不正行為に係る賠償 金(以下「損害賠償金」という。)の請求権が発生するものであって、請求人が指定す る道路工事及び下水道工事9件について、請求人が提出した事実証明書からは、契約書 第31条第1項各号のいずれかに該当するとするような具体的な証拠は見当たらず、契約 書第35条第1項に定める損害賠償金の請求権の発生を認定することができない。 第3 結論 以上のとおり、請求人の瀬戸市長に対し、公正取引委員会への通知及び損害賠償請 求権の行使を求める監査請求は、いずれも地方自治法第242条第1項所定の要件を具備 していると認めることができないので、これを却下する。 別記 (談合その他不正行為に係る解除) 第31条 甲は、乙がこの契約に関して、次の各号のいずれかに該当したときは、契約 を解除することができる。 (1)乙が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。 以下「独占禁止法」という。)第3条の規定に違反し又は乙が構成事業者である事業者 団体が同法第8条第1項第1号の規定に違反したことにより、公正取引委員会が乙に対 し、同法第7条の2第1項の規定に基づく課徴金の納付命令を行い、当該納付命令が確 定したとき。 (2)乙(法人にあっては、その役員又は使用人を含む。)の刑法(明治40年法律第45 号)第96条の3又は独占禁止法第89条第1項若しくは第95条第1項第1号に規定 する刑が確定したとき。 (3)乙(法人にあっては、その役員又は使用人を含む。)の刑法第198条の規定による 刑が確定したとき。 (談合その他不正行為に係る賠償金の支払い) 第35条 乙は、第31条第1項各号のいずれかに該当する場合において、甲が契約を 解除するか否かにかかわらず、賠償金として契約金額の10分の2に相当する額を、甲 が指定する期間内に支払わなければならない。乙が契約を履行した後も同様とする。 ※別記中、「甲」は瀬戸市を、「乙」は請負人を指す。 |
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参考
●私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO054.html
第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。
第八条 事業者団体は、次の各号の一に該当する行為をしてはならない。
一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。
第七条の二 事業者が、不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容と
する国際的協定若しくは国際的契約で次の各号のいずれかに該当するものをしたとき
は、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当
該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がな
くなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為の実行としての事業活
動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)における
当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務
の供給を受けることに係るものである場合は、当該商品又は役務の政令で定める方法
により算定した購入額)に百分の十(小売業については百分の三、卸売業については百
分の二とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じな
ければならない。ただし、その額が百万円未満であるときは、その納付を命ずること
ができない。
一 商品又は役務の対価に係るもの
二 商品又は役務について次のいずれかを実質的に制限することによりその対価に影
響することとなるもの
イ 供給量又は購入量
ロ 市場占有率
ハ 取引の相手方
第八十九条 次の各号のいずれかに該当するものは、三年以下の懲役又は五百万円以
下の罰金に処する。
一 第三条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をした者
第九十五条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、
その法人又は人の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたと
きは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各号に定める罰金刑を
科する。
一 第八十九条 五億円以下の罰金刑
●刑法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html
(競売等妨害)
第九十六条の三 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札の公正を害すべき行為を
した者は、二年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
2 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とす
る。
(贈賄)
第百九十八条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又
はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金
に処する。