県の環境影響評価審査会を傍聴して

 万博撤去アセスと04年度モニタリング調査報告に関する愛知県の環境影響評価審査会は、7/22、8/2、8/10と3回開催。協会と県が残置施設があいまいなままアセスを強行しようとすることについて、紛糾。最後まで納得できないとする委員もいたが、「博覧会協会が整備した施設について全部撤去する計画で環境影響評価を行っているが、今後、残される施設が明らかになった段階で、工事計画が変更となった場合においても、工事最盛期の工事量が増大しないよう、工事の平準化を図ること。」との文言を入れた
答申が出された

「やる気がないのですね」 
 第1回の会議では、委員から「全部撤去するという前提で進めてきたアセスなのに、残す施設があるという。その評価がアセス書に示されていない。施設を残すことで、景観や動植物への影響があるので、それを評価しなければならない。次回までに資料を出してほしい」との意見が出されたが、
第2回に県が用意した資料には、「本環境影響評価の根拠である旧通産省のアセス要領では、解体工事による影響までを対象としており、解体工事が終了した後の影響は対象になっていない。だから残置施設による影響は評価しない。残置施設は、今後整備される都市公園事業に含まれるが、都市公園事業はアセスの対象事業にはなっていない。『21世紀にふさわしい公園づくり委員会』に諮り景観等に配慮してすすめたい。」というものだったため、これには納得できないとする多くの意見が出され、紛糾した。博覧会協会は、瀬戸会場は住民から見えるが、青少年公園は中に入らなければ見えないので、撤去アセスでは景観の要素ははずしたとも説明。しかし、委員からは「リニモの駅から迎賓館が見えるではないか。そのような言い訳はしないでほしい」「施設を一部だけ残すことによってかえって悪い景観が生まれることもある」と当然の指摘がなされたりもした。協会が跡地利用(残置施設)は県の意向だからと逃げ、県は公園整備事業の中で配慮するというだけ。委員からは「跡地利用は都市公園として県がやるというなら、県が責任を持つべき」との意見も出されたが、終始明確な答弁はなかった。ある委員からは「やる気があればどのようにでもアセスはできる。やる気があるのかないのかの問題。やる気がないのですね」。

道路建設を危惧する住民を不安にさせる発言
 第1回の会議では、会場間ゴンドラ7号支柱撤去後の保安林の復旧について、気になる発言があった。「松を植えると書いてある。確かに成長は早いが、松だけを植えてパッチワーク状に残るのは、本来の森の回復とは言えないのではないか」といった意見が委員から出され、これに対し、協会は「土砂流出防備保安林であり、法律上、松、杉、ひのきを植えなさとの制約がある。ご意見はごもっともだが、このように書かざるを得ない」と回答。委員が「松は植えるが、法律はそれ以外を植えてはいけないとは書いていない」と再度尋ねると、協会は「専門の先生にお話もうかがった。林野庁とも相談する。松を植えれば済みましたとは考えていない」と答えたのだが、その後、別の委員から「この辺の森はしばしばゼロにリセットされて更新してきた。伐採されないことが問題である。本当はゴンドラの下50m幅で伐採してほしかった。アカマツはたいていうまく育たないのでかえってそれでよい。本来何もやらないのがよい」との意見が出され、また別の委員が「そのご意見に賛成。それほどたいした面積ではない。周辺からタネが飛んできて森林に戻っていく」と同調する場面があった。今回の保安林内でのゴンドラ支柱建設による改変は単なる伐採ではなく、「一時作業許可」の違法性も争われた大規模な土砂の移動を含む改変である(加えて違法工事で図面よりも大きく改変)。しかも、このあたりは貧栄養の地質のため、回復には数十年かかるといわれる(専門家によると安定した森林と呼ぶには百年は必要とも)。7号支柱近くには、2000年の名古屋瀬戸道路のボーリング調査の際に走らせたモノレールのあった辺りで、その後の東海豪雨で発生したと考えられる土砂崩れの跡が、未だに土砂がむき出しである。地元住民の皆さんは、かつて大反対をした名古屋瀬戸道路と同じルートを通るゴンドラが、道路建設につながらないようにと注視している。本年発表された県の「建設部門の社会資本整備方針」には、地域高規格道路の計画路線として、名古屋瀬戸道路は明記されている。

 
そもそも要素に入っていない!!
 ゴンドラ周辺について評価書を見てみたが、ゴンドラ支柱近く及び改変の影響を受ける位置に確認されているはずの絶滅危惧種・カザグルマ、シラタマホシクサが、撤去のアセスにもモニタリング報告にも、どこにも名前が見当たらない。また、ゴンドラ6、7号支柱の解体工事は10?12月に行い、オオタカの繁殖期を回避しているので、オオタカは要素から除外としているが、この辺りはオオタカがハンティングなど高利用する空域であり、与える影響は避けられないので、要素に含め評価を行うべきではないのかなどの疑問を感じたが、これらについては1.2回の審査会の中では質疑はなかった。

 
「今まで何をやってきたのか」
 第2回の会議で、協会の「今回が最後のアセスの審査で、今年度のモニタリング調査については来年度、発表だけはする」との説明に対し、「今年度のモニタリング調査は来年度発表されるので、肝心な万博開会中にかかわる環境への影響について、自分たちか、もしくはしかるべき審査機関がチェックできなければ、これまでのアセスの意味がない。これで終わりではなく、今後のアセスの審査について明確に示すことが必要である。そうでなければ非常にむなしい。今まで何をやってきたのか」と委員が追及。アセスの趣旨からして当然の指摘だが、県も協会も明確な答弁をせず。

 
アセスを通っていない大観覧車、水素ガスステーション、大皿
 8/10の審査会では、地元5市3町の連名で残してほしいとの要望が出ている大観覧車は、アセスを通っていない施設なので、これを残すことには問題が生じるとの指摘も委員から出された。しかし、「観覧車を残すのは大きな問題なので、残すと決まったら、協会がどこまで責任を持ってやるのかを何らかの形で発表してほしい」とある委員が念押しして収束した。
 瀬戸会場の水素ガスステーションもアセスも何もなく突然できたものである。大皿もアセスを通っていない。これらは、アセス書の会場施設の絵の中に存在自体が書かれてもいない。アセスをしていないので、ないことになっているようだ。きちんと撤去されるのか心配である。 (Y)

 
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