2005年4月5日 瀬戸市フェロシルト測定会 報告

●測定場所と数値(μSv/h:マイクロシーベルト/1時間)
 北丘フェロシルト野積み現場 入口 0.34(一番高い数値)
  同 ムシロで覆われた野積みの山 0.40(一番高い数値)
 蛇ヶ洞川(オオサンショウウオ生息地)0.16〜0.30
 aさんの田んぼ 0.18
 bさんの田んぼ 0.15(0.12〜0.2平均)


●現場の状況
 野積み現場は、奥の山側、沢すじの防災工事をしていた。
 (防災工事は更に3ヶ月延長が許可された。)


 砂利や大石を運び込み沢の護岸を造っている。
 以前に比べるとフェロシルトが幾分搬出されていた。
 (以後も搬出は続いている。)
 
●河田昌東さん(四日市大講師、元名大)による解説<内容は後述>
 専門的見地からの説明だったので、住民にとっては説得力があったと思う。
 汚染物質の放射性廃棄物がある限り、飛散すると同時に土壌や地下水を汚染し、生命体を傷つけていく。全撤去が望ましいが、それが不可能であるなら長期間に渡る調査が必要である。

■デジタルタワーの周りにも多量(14万t)のフェロシルトが埋められている
(2002年に判明。当時、市民の指摘により瀬戸市は放射線測定を行い、問題がないとしていた)。
 同日、測定を行う。蛇ヶ洞と同じくらいの放射能の高い数値である。フェロシルトがむき出しになっている部分もある(最大で0.39μSv/h)。植えられた松の苗木は多くが枯れている状態であった。松の替わりに、菱野まちづくり協議会は今後ヒマワリの種をまき、育てる計画とのこと。
 電気伝導度で沈砂池の水を計測すると、これまた異常に高い数値であった。
 近くの住民が何も知らないことが大問題である。
                             
↑薄い覆土しかされていないようだ。

↓「平成16年度瀬戸市緑の募金緑化補助事業 瀬戸市緑の募金委員会」の札がついた
  梅の苗木が並んで植えられていた。


●課題
・行政の危機感が全くない。(瀬戸市担当当局に、今回の測定会に同行してくださるよう要望したが、拒否された。)
・ 放射能を帯びたフェロシルトが廃棄物なのか製品なのか、行政当局は早急に判断すべきである。
・ 放射性廃棄物は厳重に管理すべきである。
・ 住民周知を早くすべきである。
・ 瀬戸市土地利用調整条例に基づき、住民周知を行い、悪質業者には罰則規定の適用も検討すべきである。


【フェロシルトについての解説】
 4月5日 下半田川町民会館にて 河田昌東さん(四日市大講師、元名大)による
フェロシルトについての解説。地元住民の方々をはじめ40名ほどが集まりました。

<フェロシルトについて> 
 石原産業は50年ほど前からチタンの製造を行っている。昔はマレーシアやタイな
どからチタン鉱石を輸入していたが、今はオーストラリアやカナダが主である。チタ
ン鉱石は、海岸に打ち上げられる砂であり、これを掘って持って来る。
 チタン鉱石に硫酸を入れて300℃で過熱。ここで溶けたものからチタンが取り出
され、残った廃硫酸(硫酸第一鉄FeSO4を含む)を消石灰(Ca(OH)2)石灰岩
(CaCO3)で中和したものがフェロシルト(酸化鉄Fe2O3と石こうCaSO4)で
ある。溶けなかったケイ酸(SiO3)、アルミナ(Al2O3)は同様に中和後、アイ
アンクレイという名前で産廃として処理される。このケイ酸、アルミナは土の成分で
あるが、フェロシルトは酸化鉄と石こうが成分であり、土ではない。植物は育たない。
かつては産廃だった。
 石原産業の三重県への申請によると、フェロシルトの生産は年間6万5千t。アイ
アンクレイは、同じくらいかもっと多いと思われる。アイアンクレイは昔は四日市の
海に流していたため、海が赤くなっていた。廃硫酸も海に流していた。ボートに乗っ
て調査したところ、pH2〜3というお酢よりも酸っぱい海だった。
 これらチタン鉱石の廃棄物の中に含まれるのがウラン、トリウムという放射性物質
である。
これらの物質は自然界にも2〜3ppmという濃度で存在する。いま、この場所(町民
会館)で計測してみると、0.09〜0.1μSv/h(マイクロシーベルト/1時
間)。チタン工業会によると、鉱物としては200ppmまでよいとされている。
 日本の法律では、通常自然界から1mSv(ミリシーベルト)/年の放射線を浴び
ているとし、これに更に1mSv/年を加えて、一般人は年間に2mSvを超えて放
射線を浴びてはいけないと定めている。これを1時間あたりに直すと、0.14μS
v/hとなる。
 自然放射線のレベルは、0.07〜0.15μSv/hである。花こう岩地帯は若
干高い。
花こう岩の中にはウランやトリウムが多いので0.2μSv/hくらいになることは
ある。しかし、0.3μSv/hを超えることはまずない。コンクリートのビルで測
ると0.2μSv/hくらいの数値が出るが、コンクリートに花こう岩の粉石が入っ
ているからである。フェロシルトは0.2〜0.36μSv/hくらいである。0.
3μSv/hを超えたら、何らかの人工的な汚染源があると考えなくてはならない。
昨日(4月4日)、可児市でフェロシルトが持ち込まれた地域の住民説明会(60名
ほどが集まった。業者はこれ以上搬入しないと言明)で、石原産業の担当者は0.0
2μSv/hであると言い張っていたが、自然界値より低い訳がない。


 ここで、計測の仕方が問題となる。行政や企業の使用している機器は、「固体シン
チレーションカウンター」と言って、ガンマ(γ)線しか測らないもの。この機器は、
応答が早い、安定性がある、広いレンジで測ることができるなどのメリットがある。
原発は事故に備えて常にモニターをしているが、これに使われているタイプである。
しかし、ウラン、トリウムからは、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)
線、すべてが出ている。本日、測定に使用した機器は「ガイガーカウンター」と言っ
て、β線、γ線の両方を測る。だから、倍の値が出るのは当たり前である。放射能に
よる汚染を調べる場合はこちらのタイプを用いる。α線は、特殊な機器でないと測定
できない。α線は飛距離は短いが体内に入ったときの影響はβ線、γ線の20倍と言
われている。これは、β線、γ線が身体を貫通するのに対して、α線は体内で近接し
た細胞に大きな影響を与え破壊し続けるためである。フェロシルトの飛散対策は絶対
に必要である。
 三重県内には放射能レベルが高い時代のチタン鉱石廃棄物を大量に捨てているので
心配である。処分場もいっぱいで三重県には捨てるところがない。
 フェロシルトは、土壌改良材として、又、埋め戻し材として、それぞれ違う袋で販
売しているが、中身は同じだと石原産業が説明していた。1袋15kgで7円50銭。
 三重県と石原産業はフェロシルト(水酸化鉄系汚泥処理剤)を用いた汚泥の沈降・
脱水処理を共同開発し、特許申請している。この実用化を心配している。
 公衆衛生学の立場からは、今後、住環境のあちこちに放射性物質が持ち込まれ、全
体の放射能レベルが上がってしまうことが大変心配されている。


《どう対応すべきか》
 
とりあえず、覆土は絶対に必要。飛散防止対策が必要。ムシロではダメ。→
流出防止対策も必要である。酸化鉄、石こうは水に溶けてくる。地下に浸透する。危険度を評価する必要がある。
 問題の場所を覆土したら造成地のように見えるだろう。20年も経てば土地の所有者も替わってしまうが、人が住んではいけない場所として管理し続けなくてはならない。水源地としての管理も必要である。



〔住民から、赤い水が蛇ヶ洞川を流れた後、藻が青色になっていたことについて質問〕

←フェロシルトが流れた後、川の藻が青くってヘドロ化していたという。この日は水も澄んで緑色の藻が美しい。

 大雨によって造成地のフェロシルトが流出し、蛇ヶ洞川に流れた後、緑色の藻が青い色に変わり、すくうとヘドロ状になっていた。また、ブルーがかった水が川を流れたのを目撃した者もいる。これはどういうことか。

(答)断定はできないが、藻が青くなったのは硫酸第一鉄の沈澱ではないかと思う。
硫酸第一鉄は青や緑色の結晶である。先に説明したように、フェロシルトは、廃硫酸液である硫酸第一鉄(FeSO4)に消石灰(Ca(OH)2)を加えて空気を吹き込み、反応させて酸化鉄(Fe2O3)と石こう(CaSO4)をつくり出すが、この反応を100%完全に行わせるのは難しい。そのため、硫酸第一鉄が残っているのではないかと以前から疑いは持っている。硫酸第一鉄は水に溶けやすく、有害物質である。

 

 
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