マンモス供養大法会
 
弔 辞
    2005年1月30日    海上の森を守る会 加藤 徳太郎

 環境をテーマにした特別博覧会に過ぎない万博を、あたかも大規模博覧会であるかのように見せかける虚飾にまみれた愛知万博。
 今を去る17年前、1988年10月に巨大公共事業三点セットの起爆剤として突然打ち上げられた愛知万博。
 ヨーロッパ、アメリカでは滅びゆく恐竜として各国市民、政府から見放されてしまった万国博覧会。
 そんな万博にユーラシア大陸を駆け巡ったマンモスのあなたが1万8千年の眠りをかき乱され、臨終の地シベリアから無理やり引きずり出され、自らの胴や脚を置き去りにされて、愛知万博の会場で見せ物にされることは、痛苦の思いで満ちていることと思います。
 ましてや万博協会や一部大マスコミによってカネで買われたとあってはなおさらのことでしょう。88年以来、会場候補地は豊田市八草地区から始まり、二転三転しましたが、クワハラ、ナカヤ、スズキと引き継がれたグリーンロード沿いの黒いキリに包まれた土地利権の地で愛知万博は開催されようとしています。会場用地買収に先頭で駆け回ったハセガワという人は、今は副知事になったというではないですか。結局はカンダさんも、ナンダカンダと言われながら、土地利権の呪縛からは逃れなかったんだということです。
 万博のために、実に多くのものたちが安住の地を追われ、亡くなりました。海上の森では、会場調査のためとして大規模なボーリング調査が事前に行われ、シデコブシが調査の邪魔になるとして切られてしまいました。海上の森の中でも森らしい眺めのできる場所として高く評価され、貴重な大木に育っていたサクラバハンノキも道路工事の邪魔になるとして切り刻まれ、根こそぎ切り倒されてしまいました。私たちは無惨な姿になったシデコブシやサクラバハンノキを少しでも元気になって育てばと下の場所に埋め戻したりしていますが、うまく戻ることはありません。
 古墳、古窯の埋蔵文化財の調査のためとして、シマジタムラソウは人知れず移植されたままです。人知れず生き延びているのでしょうか。
 ホトケ沢に住むホトケドジョウは、いつの間にか、工事によって万が一のことがあってはならないと捕まえられ、移住させられてしまいました。豊川に移された仲間は全滅したと聞き及びます。慎重を期すなどと気の利いたふりをするなら、移植させずに工事を中止するか変更すれば、ホトケドジョウの命を落とさせずに済んだのです。
 会場外の駐車場用地で見つかったダルマガエルやカヤネズミも、無理やり用地内の別の場所へ移しかえられたり、追い出されてしまいました。
 ムササビの生息地も、いないはずの万博会場内に見つかって困っていたこともありましたね。クレーンにとまったムササビを見たと言ったり、瀬戸会場の建物の上を飛び回っていると、今は喜んでいるようですが、ムササビではなくリスと言って専門家と称する人まで現地調査をさせていたのは、つい2年前のことではなかったでしょうか。今度は、リスをムササビと見間違ってはいないでしょうね。
 専門家の方が調査をすると、何年捜して
も会場内にはムササビやオオタカがいない
はずになってしまうのは
何故なのでしょうか。           クサナギオゴケもなかなか見つけてもらえずにいましたが、やっと見つけてもらえたら万博工事が始まり、あっという間に誰かに踏み付けられてなくなってしまったのですよね。
 そういえば、ゴンドラ支柱の建設地直近にあるカザグルマも調査で見落としていましたね。あわててマーキングをしたようですが、あれでは踏み荒らされそうで気掛かりです。モンゴリナラの木もゴンドラ駅舎や支柱を建てるために、ずいぶんと切り倒されました。青少年公園では切り倒した1万本の木のうち、2000本がどこかに移し植えられたとのことですが、ゴンドラ建設工事ではモンゴリナラの木は切り倒されたままのようです。
 会場への取り付け道路も何故こんなにいるのか、大きな幅に拡げなければならないのか不明ですが、便乗して造られています。湿地や水路が無くなり、造り変えられてしまいました。あっという間に、ギフチョウ、ハッチョウトンボ、ゲンジボタル、サギソウ、トウカイコモウセンゴケ、スズカカンアオイの良好な生育地、生息地は破壊されてしまったのです。まだ周辺に似たような場所があり、私たちの仲間を見ることができるから影響は少ないと万博協会は言うのです。
 あぁ、なんという環境への配慮でしょうか。
 「自然の叡智」をテーマに掲げた愛知万博に虚飾を見るのは、数々のこうした自然破壊の事実があるからなのです。
 ユカギルマンモスよ、あなたは知っていますか?あなたが掘り出されたとき、どうか安らかに展示されるようにと祈り、万博会場に播くことを託されたユカギルの大地の土を中村事務総長がどうしているか。検疫法を逃れ、法を侵してまでもポケットにしのばせて、中村事務総長が日本に持ち込んだシベリアの土。
 名古屋の地では、野宿労働者のひとたちが、無理やり公園から追い出されています。万博を口実に住む場所を追い出されているのは、万博会場で安住の地を追い出された数々の動植物と同じ立場と言えます。大地の中で眠っていたあなたがシベリアの地から無理やり追い出されたことは、やはり同様の立場です。
 愛知万博のウソを見破り、はぎ取ることは、今日、ここに集い自然破壊を憂う私たち市民の務めではないかとの思いを強くしています。
 最後に託された詩を代読いたしまして、弔辞とさせていただきます。

        
さんか
      愛知万博惨歌
                
とうげさきち
 いずれの時にか万博詩人 峠佐吉より
            章一郎くんへ贈る詩  

 父を返せ。母を返せ。
 森を破壊せるブルドーザーの下にたおされし
 キッコロの父と母を返せ。
         
おきな
 ああ哀れ モリゾー翁。ブルドーザー
 に追われしあまりに記憶なくせし
   

 親を亡くしたキッコロを連れ万博PRに
 さまよい出るは哀れなり。
         
わらし
 ああ哀れ キッコロ童子。
 ちのみご
 乳呑児のまま 父と母の愛を奪われし。                
 森を追われ 記憶をなくし 
      
まなざし
   うつろなる目線となる                                     
 モリゾーと連れ立ち万博PRに
 
むじゃき
 無邪気げに さまよい出ずるは哀れなり
 エコカー、エコバス、エコプロジェクト。
 会場で進めるメーカーあり。
 エコと叫べど 自然破壊の万博は変らず。
 エコはエセなり。自らのエゴとなりぬ。
 森を返せ!
 父を返せ!
 母を返せ!
 父、母の愛を返せ!
      
みじ
 愛知万博 惨めなり。

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