愛知県知事によるゴンドラ工事のための保安林内一時作業許可処分が、8月13日に出されましたので、これまで許可をしないよう求めていましたが、これを変更し、この許可処分の取り消しを求めることになりました。

平成16年(行ウ)第37号
原告 岡田みどり外4名
被告 愛知県知事

                  訴状(請求の追加的併合)

名古屋地方裁判所 民事第9部A1係 御中

                              2004年(平成16年)8月24日
                               原告ら選定当事者
                                  岡田 みどり
                      記
1.原告は訴状請求原因の第1項を取り下げ、請求の趣旨を次の通り変更する。
1)被告は、平成16年8月13日に財団法人二千五年日本国際博覧会協会に対して行った、別紙T、U、記載に関する森林法第34条第2項に基づく許可処分(16尾農第1225の1号)はこれを取り消す。
2)訴訟費用は被告の負担とする。

2.請求の原因
 1.被告は平成16年8月13日に財団法人二千五年日本国際博覧会協会に対して、訴状目録記載の事業について森林法第34条第2項に基づく一時作業許可を与えた。
 2.しかし、訴状でも記載したように本件事業は大規模にかつ永続的に本件保安林を改変するものであるから保安林解除によるべきであり、保安林を維持したまま一時作業許可を与えるのは違法である。
 3.本件では一時作業許可を与えてはならない旨の訴えを提起していたが、前記のように許可が与えられたので請求の趣旨を変更する。
                                          以上


                              平成16年8月20日
平成16年(行ウ)第37号保安林内一時作業許可差止請求事件

                     原告 (選定当事者)岡田みどり 外4名
                     被告 愛知県知事

名古屋地方裁判所民事第9部A1係 御中

                               岡田みどり

                  
準備書面

 土砂災害等について
 
当町内の「土砂流出防備保安林」であるところの「地番2−1」「地番237」は愛知県砂防課が平成15年3月に作成発行した「土砂災害危険個所マップ」(甲−1)(以後ハザードマップ)によると「土石流危険渓流」及び「急傾斜地危険個所」と呼ばれる土砂災害危険個所地でもある。このハザードマップを俯瞰すると 当町はまさに土砂災害危惧地に囲まれた町といえる。また「二千五年日本国際博覧会会場間ゴンドラ第7支柱建設予定地」は「土石流危険渓流」地に建設予定であることについても争いはないと思われる。

 この地域の地質は「砂礫層」であり空隙率が大きいため透水性が良い。よって保水力がない。シルト層、粘土層のレンズにより地下水の浸透が妨げられ湧出する。そのための崩壊がおこりやすい。現にこの町の森であるとはいえ「土砂災害危険個所マップ」で「土石流危険渓流」および「急傾斜地崩壊危険個所」と指定されていないのに規模の比較的大きな土砂災害がおこって土砂が数百リューベ下流に流出している箇所がある。(甲−2)(場所は甲−3の地図上*印)そこはかつての「名古屋瀬戸道路」建設のためのボーリング調査及び資材運搬のための簡易モノレール設置等が行われた場所であるので(甲−4)、これらによる「地中への刺激」がこの土砂災害の引き金になったのではないかとも疑われるが やはりこの町を取り囲む森が全般として本来頻繁に土砂災害をひきおこしやすい「体質」の土地柄である証拠といえる。又 この土地の土質は「貧栄養」で木々は育ちにくい。事実(甲−2)の土砂災害は4年ほど前におこったが未だにほとんどが裸地のままであり元の保水力を取り戻すのに他の土地の数倍(一説には60年)かかると言われる。保安林指定を受ける訳である。平成13年4月1日施行の「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(以後 土砂災害防止法)による「基礎調査」の結果 開発に対してさらに厳しい法の規制も生じることになる「土砂災害特別警戒区域」に指定されると思われるこの地に対し 安易に改変を許すのは原告ら周辺住民の人格権の侵害にあたる。(甲−5)

 今回の「二千五年日本国際博覧会会場間観客輸送ゴンドラ計画」(以後ゴンドラ計画)はその建設のため保安林でもある地番2−1および237の「土石流危険渓流」を合計0.1ヘクタール改変するものである。このゴンドラ建設による土砂流出対策として 事業者は「蛇かご」「しがら柵」を講じることにより万全としている(甲−6)が、土砂防止法による「山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体になって流下する自然現象をいう」という「土石流」の定義を鑑みれば本ゴンドラ計画は「水」に対し対策がなされたとはいえない。又 この広範囲の「土石流危険渓流」は原告らの住居のある「急傾斜地崩壊危険個所」とも交わっている。事業者は本ゴンドラ建設地は原告らの住む当住宅地とは尾根を挟んで反対側に位置し、かつ、その間に谷が存在するものであってその影響が原告らの住宅地に及ぶ事はないとしているが すでに土砂流出防備保安林に指定されており更に「土砂災害特別警戒区域」指定されると思われる「土石流危険渓流」地域に「水」に対する対策が不十分と思われるこのようなゴンドラ計画の実行は 安易な予想を許すものではなく人格権の侵害にあたる災害を招くものである。また 本住宅地自体が、かつては谷であり破損した瀬戸物(瀬戸市の地場産業は窯業)の捨て場であった場所を宅地造成したもので 土壌はサバ土という水捌けが悪く地下水を多く含む崩れ易い土という事実も安易な予想を許してはならないという当方の主張の根拠の一つである。「三陸南地震」(平成15年5月26日)で「高速土砂流動」が起きたが同様の造成地である。(甲−7)

 又 本ゴンドラ計画第7支柱建設予定地の沢の下流には「水の行き場のない池」があり(甲−3の↑)その際には当町1組の3軒の住宅がある。この池の水流経営は破綻しており現在でもすでにたびたび小規模ながら「水害」があり池があふれ出す。今後 貧栄養土の土質であるこの池の上流の地での0.1ヘクタールもの伐採はさらなる保水力低下を招き「頻繁な水害の長期の深刻化」がおこる。 又 支柱建設にコンクリートが使用されるため「池」に流れ込む水質がアルカリをふくんだものに変容する事も予想されている。(平成15年10月21日の愛知県環境影響評価審査会にて)

 このような原告らが所属する本町住民の生命および財産を損ねるゴンドラ計画は阻止されるべきであり このゴンドラ計画のための保安林内一時作業許可処分は許可されてはならない。

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