ゴンドラ支柱建設差止本訴 被告博覧会協会の5/25付書面
                                   平成16年5月25日
   平成15年(ワ)第5148号 索道7号支柱及びその前後の支柱建設差止請求事件
                               
                          原告 岡田 みどり外14名
                           被告 財団法人二千五年日本国際博覧会協会

  名古屋地方裁判所 3部合議係 御中                   
                         被告代理人弁護士 草野 勝彦  
                        同    弁護士 平野 好道
                        同    弁護士 丹羽 正明
                        同    弁護士 清水 浩二
                        同    弁護士 渡辺 直樹
                        同    弁護士 河合 伸彦

準備書面

第1 被告は原告の平成16年3月25日付準備書面に対し、次のとおり認否する。
 1 上記準備書面第1項の主張は争う。
   なお、平和で安全な生活を営む権利の具体的な法的根拠を明らかにされたい。
 2 同上第2、3項の主張は争う。
第2 同準備書面中に求釈明に対し、以下のとおり釈明する。
 1 求釈明(1)でオオタカの生息への影響を指摘しているが、原告らが支柱の建設を差し止める権利と関係がないと思われるので、権利との関係が明らかになり、必要があれば釈明する。
 2 同上(2)については、索道は博覧会終了後撤収予定である。
   なお、地域の植生等に対する影響と原告らの権利とは関係ないと思料する。
 3 同上(3)については、ヘリコプターの騒音と原告らの差し止めを求める権利との関係を明らかにされたい。その上で必要があれば釈明する。
 4 同上(4)前段の事実は否認する。なお、後段の主張は原告らの差し止めを求める権利とは関係ないと思われる。
 5 同上(5)調光ガラスを使用するプライバシー保護区間は7号支柱から10号支柱の間である(乙11)。
 6 同上(6)については、原告らの差し止めを求める権利と関係ないと思料する。

第3 土砂災害について
 1 原告らの主張するところは、整理されておらず趣旨が明確ではないが、土砂災害のおそれについては、次のとおり反論する。
 2 7号支柱については、土石流危険渓流の区域内であるが、支柱建設工事については、細心の注意を払って工事を行うものであり、土石流が発生することはない。
 この点については、平成15年12月8日付で、債務者は愛知県知事に対し、砂防指定地内行為許可申請を提出しているが、このうち7号支柱については、防災計画において
 「工事中・後における防災施設としては、砂防技術基準に準拠し、工事中400A、工事後100A(A:造成面積)の沈砂部を確保する。
工事中における土砂流出分は、支柱基礎の掘削部にて堆砂させる。
工事後における土砂流出分は、造成部下流に蛇かご工にて土砂流出を防止し、法面部については、土木マット(ヤシ繊維質)により土砂流出を防止を行う。
 また、土砂仮置場についても土砂全体を覆うよう土木マット(ヤシ繊維質)を設置し土砂流出防止を行う」
とする対策を講じている(乙7の2、8)。
 その結果愛知県から砂防地内における工事を許可されており(乙7)、「Sh−2−29」の地区に生ずるおそれがある災害についても、これが生じないよう万全の策が講じられているものである。
 3 また、7号支柱は、原告らが居住する地区とは尾根を挟んで反対側に位置し、かつ、その間に谷が存在するものであって(乙2)その影響が原告らに及ぶことはありえない。
 4 土砂災害危険箇所マップ(乙1)によれば、土石流が発生するおそれのある地域は紫(人家が5戸以上は塗りつぶし、1から4戸は枠のみ)色で表示され、これによって発生する土石流被害地域はオレンジ色または黄色の枠で表示されている。
 5 7号支柱のある地域は「Sh−2−29」であるが、その地域に土石流が発生した場合に生ずる被害地域は図面の右側であり、原告らの居住する地区(甲2の「210192」の左側の団地)とは全く関係ないものである。
 6 急傾斜地崩壊危険区域は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律によって定義される急傾斜地(同法第2条第1項「傾斜度が30度以上である土地」)のうち、都道府県地知事(ママ)がその中から「崩壊するおそれのある急傾斜地で、その崩壊により相当数の居住者その他の危害が生ずるおそれのあるもの及びこれに隣接する土地のうち、当該急傾斜地の崩壊が助長され、または誘発されるおそれがないようにするため第7条第1項各号に掲げる行為が行われることを制限する必要がある土地(いわゆる「誘発助長区域」)が急傾斜地崩壊危険区域として指定された区域である(同法第3条第1項 乙3)。
 従って、土砂災害危険箇所マップに「急傾斜地崩壊危険箇所」と記載されている箇所のうち、都道府県知事によって指定がされた箇所のみが急傾斜地崩壊危険区域である。
 7 土砂災害危険箇所マップには、上記指定がされた箇所について指定番号が付されており、原告らが居住する上之山町については、いずれもその指定がされていない(乙1)。
 よって、原告らが危険を主張する「110369」「210196」の箇所は、急傾斜地崩壊危険区域には指定されていないものである。
 8 債務者が7号支柱を建設する箇所は、急傾斜地崩壊危険箇所にも入っておらず、上記のような位置関係からこれによって原告らの居住する地区に崩壊等が起こることは考えられない。
 従って、原告らの主張には理由がない。

第4 プライバシーについて
 1 原告岡田宅とゴンドラとの最短距離は、平面上で270メートル、高さを考慮した直線距離では271メートルとなる(乙12)。
 この距離は裁判所を中心にすると別紙図面のとおりであり(乙4)、例えば三の丸NTTビルまでの距離とほぼ等しい。これを写真にすると乙5のとおりであり、この距離から室内をのぞくことは不可能である。
 2 環境影響評価追跡調査(予測・評価)報告書(その2)(乙6)において、ゴンドラを視認しうる位置からの景観予測がなされているが、原告ら宅よりかなり近いB、C地点(乙6 P155)からのゴンドラでもP158、159程度のものであり、ゴンドラから室内が見える可能性は(遮蔽シールドがないとしても)、ほとんどないというべきである。
 3 更に、ゴンドラには、搬器の扉側窓全面及び下部の扉には視界遮断フィルムを貼付し、窓上部には瞬間調光フィルムを貼ることになっている(乙9)。
 視界遮断フィルムは常時視界を遮断するため、下方向への視界が常に妨げられるほか、プライバシー保護区間として10号支柱から7号支柱までの間は瞬間調光フィルムにより視界が遮断されるシステムになっていることから、原告ら宅がゴンドラから見られることは全くあり得ない。
 よって、ゴンドラによって原告らのプライバシーが侵害されることは全くあり得ないものである。  

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