【There is nothing permanent except change.】
<7>
「突然、何を言い出すんですか!?」
予想通りの反応。けれども今時の高校生にしては珍しいその反応に柳は新鮮さを覚えたのだ。しかし、海堂にはその柳の質問の意味はわかるも意図は掴めない。
「で、どうなんだい?」
「それが、あ、柳さんに何が関係あるんですか」
「関係は、ある」
その次に来る言葉は柳にしか読めなかった。
「海堂君、俺は君が気に入った。俺と付き合うつもりはないか?」
「蓮二、どういうつもりだ!!」
ガタリ、と言う音がして海堂が振り返ればそこには乾が居た。
「乾先輩!?」
「貞治がここで来る確率、100%」
突然の展開に思考がついていかない海堂。
柳の発言に思わず立ち上がった乾。
そんな2人を眉1つ動かさず、交互に2人の顔を見比べる柳。
「蓮二、何のつもりだ」
「貞治、ここで騒ぐと店の迷惑になるぞ」
そういわれて乾が周囲の状況に気がつく。
周りが女性しかいないこの店に、制服姿の高校生がいること自体人目を引くのだ。
その上乾が大声を出したのだからいくら奥まった席だとは言え、周囲の視線が3人に集まっていた。
「やれやれ、騒ぎになってしまったな。海堂君、貞治、ここを出るぞ」
「俺、払います」
伝票を持った柳に海堂が立ち上がる。
「気にすることはない、騒がせた侘びだ」
「でも」
海堂が何か言う前に柳は伝票を持ってさっさと会計に向かう。
海堂も、乾も柳の後を追って店を出た。
乾も柳も、そして海堂も道すがら誰一人言葉を発する者はいない。
声を出してしまえば、何かが崩れそうな予感がして言葉を自重しているのは明らかだった。
辿り着いたのは、誰もいない小さな公園。ここでなら周囲を気にしなくてもいいだろうと言うことになった。立っているのも無粋なので、近くにあったベンチに3人で腰掛けた。席順は左から柳・海堂・乾と2人に挟まれた海堂は小さく身を縮ませている。
傍から見れば、長身の男3人が1つのベンチに身を寄せ合っているその姿は異様であるのだが、当人達はそんなことなど構っている必要はない
そんな中、最初に沈黙を破ったのは、乾。
「蓮二、どういう事だ!」
「聞いての通りだ、他意はない」
「蓮二!」
冷静さを失っている乾。変わらぬ柳。
こんな、声を荒げて、冷静さを失っている乾を見たことなどない。海堂は目の前で繰り広げられているのが自分のことであるにも関わらず、ただ2人のやりとりを見ているしかなかった。海堂本人も柳から言われた言葉が脳内を壊れたCDのようにリピートを繰り返していた。
(付き合うって…その、友達なんかじゃねえよな…それって…)
海堂の脳内に柳と付き合っている自分の姿が現れた。
確かに、柳とは初対面だが最初は緊張したものの、こうして話も出来たし知識も豊富である。けれども、それはそれで、自分と柳が恋人同士のように付き合うということが海堂には想像しきれなかった。そもそも同性どころか女の子ともまともに付き合ったことのない海堂であるからそれは仕方の無いことといえば、無いことではあるが。
(何で、乾先輩が来たとき…俺安心したんだ?)
それにしても柳の意図はやはり掴めない。
自分の気持ちも掴めない。
海堂の中で何一つ解らないまま、様々な疑問が山のように積み重なっていく。
その答えを知るのは、もうそろそろ。
04/05/17up
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