【There is nothing permanent except change.】

<2>

海堂は困っていた。

そもそもあんな約束を柳と交わしたのはいいが、一体柳は何の用があるのだろうか。
柳は乾の知り合いである、だとしたら今日のことも乾に関することなのだろうと思うのだが、それならば何故自分なのかと思う。
乾のことなら、確かに海堂は乾と一緒に練習もしてきたし高等部に入ってからも何かと面倒見てもらっている。しかし、乾と親しい誰かに頼んだ方がいいと思うのだ。何も海堂よりも手塚やら不二やら大石やら2年の方がよく知っている筈だ。

そう考えると授業にも身が入らず、海堂は授業で教師に指されて慌てたのであった。
勿論、その怒りの矛先は柳ではなく乾に向けられるのである。

「クシュッ!!」
「なんだ、乾風邪か?」

乾、くしゃみしている場合ではない。



待っているうちは長いのに、あっという間に放課後はやってくる。

海堂が玄関先に向かうと、なにやら女子が騒がしい。

−ねえねえ、正門前に立海大付属の人がいるって?−
−マジ?何で神奈川がこっちにきてんの?−
−何かね、涼しげなひと〜−
−どっかのね、若旦那か番頭みたい−

立海大の制服、涼しげ、若旦那か番頭・・・これらから繰り広げられる想像で海堂にはすっかり誰だか分かってしまった。

(何で、正門に居るんだ!?)

待ち合わせ場所など決めていなかったからだ、ということはすっかり想像の範囲外にある。海堂はとりあえず急いで靴を履くと正門までダッシュした。



(やっぱり・・・)

海堂が正門に着くと、柳は数人の女子に囲まれていた。

「ああ、海堂君。失礼、待ち人が来たのでこれで」

柳は走ってくる海堂の姿を見ると、そう女子達に声を掛ける。
女子達は不思議そうに海堂と柳を交互に見た。名残惜しそうに声を出すものの、海堂が女子の方に視線を向けると皆逃げるように散らばっていく。

「すんません、待たせました」
「いや、待ち合わせ場所を決めなかった俺が悪い」

その通りだ。
海堂と柳の2人は、正確には柳といると周囲の視線が突き刺さるようで気まずい。

「あの・・・それじゃ何処にいくんですか?」
「とりあえず、ここを出ようか」
「そうっすね」

柳と連れ立って歩く海堂。



「なんか、以外な組み合わせっすね」
「わかんねーな、わかんねーよ」

そんな2人の後姿を見ながら、たまたまその場にいた桃城と越前が不思議なものを見たかのように眺めていたのであった。



「柳の奴・・・何を考えている」

そして乾も、別な位置から2人を気にしていたのであった。

04/05/15up

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