【!ATTENTION!】
ここから先は主人公である男主以外に『Change the future』シリーズの男主も脇役的に登場します。
名前変換で『幼馴染の名前』に入力した名前が、ここでは『Change the future』男主の名前となりますので、ご注意下さい!
問題無し!という方のみ、↓スクロールしてどうぞ!
Wandering of the dragon
~side story2~
リゾートプールにて女子高生モンスター襲来を回避した俺と政宗は、あれから暫くは意外に穏やかな時間を過ごす事が出来た。
まあ、先刻の政宗の態度を、周りで様子を伺っていた他の女の子達も見てたからだとは思うが。
迂闊に声掛けられなくなった…ってカンジだろうか。
政宗とデートするには俺っていうお邪魔虫が付いてこないといけない…って事も分かった訳だしな。
それか俺に対する必要以上の政宗のスキンシップにドン引いた子達も居たかもしれない。
つーか政宗………流石にアレはねーよ……。
肩組むならともかく、男同士で肩抱くとかほっぺたくっつけるとか……。
公衆の面前でのアレは、ドン引かれて当然だっつーの。
暫くは好奇の視線がスゲェ痛かった。
でもまあ…そのせいというかおかげというか、その後はある程度の視線は感じるものの、ごく普通に遊びに来たダチ同士…くらいの環境は確保出来ていたんだが。
けどまぁ、どんな所にも上手な奴ってのは居る訳で。
というか、上手というよりもさっきの女子高生モンスターよりも高レベル・高スキル…そして獲物を狩るにはいくらでも上手く立ち回る事の出来る大人のオンナ…って奴が。
「どうかしら?お詫びをさせて頂きたいんだけれど。」
あー……正直な感想を言うとすれば、やり手のオンナって感じだわ、今回声掛けてきたのは。
俺は内心でそう思いながら、俺にもにこやかな笑顔を向けてくる目の前の2人連れのなかなかに妖艶な美女達へ視線を向けた。
だってこの2人、まず絡み方からして上手かった。
さりげなく俺達とすれ違うふりをして、すれ違った瞬間軽くぶつかって持っていたジュースを零し、それが政宗に掛かる様にしてきっかけを作る。
で、それを詫びる名目で『お食事でもいかが?』ときたもんだ。
さっきの女子高生モンスター達と違って、こちらは俺に対して愛想良く振る舞う事も忘れない。
まあ先刻俺を邪険にした女子高生達に対する政宗の態度が、あまりに剣呑だったのを見れば対策も変わろうというものだが。
しかし、いくら美女2人連れからのお声掛けとはいえ、俺は既に女の子との楽しいひと時…とかいうのも、いい加減どうでもよくなってしまっていた。
だってなぁ…そもそも政宗が目当ての女の子達を相手にしたって、俺には何のメリットもねぇし。
それに、政宗と一緒に居る事で、ずっと周囲の女の子達の視線に晒され続けてきた俺は、その環境自体にも疲れてしまって。
いや、確かに向けられている熱視線の先の対象は俺なワケじゃじゃないけど。
でも政宗と二人だけで居る限りは、常に女の子達の熱~い視線に晒され続けるって事で。
常日頃からそーゆーのに慣れていない俺が早々に音を上げるのは仕方のない事だろうと思う。
こーゆー事に嫌気がさすって……俺も歳とったって事だろうか。
でもそこまで枯れるような歳じゃないつもりなんだけどなー。
「Ah……No problem(大丈夫だ)。別に構わねぇぜ、コレ位。」
「でもそれじゃ申し訳ないわ。」
「Don't worry(心配いらねぇ)。この程度、気にするまでもねぇよ。」
「でも………。」
「ああ、もし気になるんなら、あのかき氷ってやつでも奢ってくれりゃいい。」
先刻の女子高生モンスターの事が堪えたのか、目の前の美女2人に対して政宗の態度もイマイチ乗り気じゃなさそうだ。
流石の政宗も面倒くさくなってきたか?
「え、ええ………それで良いなら構わないけれど……でもせっかくそちらも2人、こちらも2人なのだから、お食事位はご一緒しません?」
政宗にアプローチしてもどうにもならないと踏んだのか、今度は俺の方へ矛先を向けてくる美女2人。
いや確かにこれが普段だったら俺もホイホイ着いて行ったと思うけどさ。
でも流石に政宗目当てだって分かってるのに、その気になって着いて行くとか流石に無理だろ。
俺はあくまでも政宗を引っ掛ける為の手段の一つなだけなんだし。
いくら俺でもそこまでマヌケじゃねーぞ?
「あー……えっと、その……俺ら友達と待ち合わせててさ。流石にそこまで人数居るのに俺らだけってのは……なぁ?まさむ――藤次郎?」
おっと!危うく政宗って呼ぶ所だった。
流石に『伊達政宗』なんて誰でも分かるような名前呼ぶ訳にはいかねーし。
俺は、人前では政宗が自治会長夫人達に名乗っている『藤次郎』で呼ぶようにしていた。
その俺の言葉に政宗も合わせるように頷いてくれる。
この言い訳で引いてくれるといいんだけど。
まあ、でもせっかくの機会をフイにするような真似は、このやり手の美女達がする訳もないか。
何つーかハンターみたいな目ぇしてるし?
おおう!これが肉食系女子って奴か?!
「あらそうなの?さっきからずっと2人だったみたいだけど……大分待ち合わせ時間より早く来たのかしら?」
そう言って艶やかな笑みを浮かべて見せる美女達に、俺はどう答えるべきか言葉を失う。
まあ、そうだよな。
ずっと政宗の事見てたとすれば、俺達が最初から2人しか居ない事くらい分かるか。
とはいえ、ここまできて今更ご一緒します…ってのもなぁ。
どうするべきかと隣の政宗に視線を向けた時だった。
「すまん、待たせたな!!」
何というか…キラリと光る汗すら爽やか効果を発揮するんじゃないかと思う程、笑顔の眩しいイケメンが俺と政宗の肩をポン――と叩く。
それに気付いて振り返った俺達の視線の先。
まるで長年の親友に対するような満面の笑顔を向けてくるその男の姿に、俺と政宗は驚きに目を見開いた。
「な――ッ?!」
「うっそ?!い、いえや―――」
「いやぁ大分待たせたみたいですまん!やっと見つけたぞ!」
「ちょ――ッ?!え?うそ?マジで?!」
「Wait a minute(ちょっと待て)!アンタッ!何でこんな所に居やがんだ?!」
「何でって…遊びに来たからに決まっているだろう?」
噛み付かんばかりの政宗を軽くいなすようにして手を振りながら笑顔を見せる男。
それは、どこをどう見ても東照権現――徳川家康にしか見えないんだが?!
俺は夢でも見てるってのか?!
「そういう訳ですまんな。ワシらは待ち合わせをしていてな。」
にっこりと――それでいて有無を言わせない迫力を秘めたその笑顔に、流石の美女2人も呆気にとられている様子だ。
まあ、そりゃそうか。
2人だけだと思っていた俺達に、本当に待ち合わせ相手が現れたんだから。
けど、当の俺達の方も美女達に負けず劣らず呆然状態で。
あまりに信じられない出来事に俺も政宗もそれ以上の言葉を失ってしまった。
「無事合流出来たか、いえや――元康?」
「ああ、。こちらだ。」
呆然としている俺達を尻目に、家康の背後から声が掛けられる。
その声につられるようにしてそちらに視線を向ければ、家康よりは僅かに小さいながらも、なかなかに引き締まった体躯の男がこちらに向かって歩いてくる。
俺と歳もそう変わらなそうなソイツは、政宗や家康とも又違った感じのタイプで。
政宗や家康ほど超絶イケメンって訳じゃないが、なかなかに男前の雰囲気漂う奴だった。
まあ、どっちかっつーと、イケメンっていうよりクールビューティー的な?
でも決してヒョロヒョロとした優男ってワケでもなく、しなやかに鍛えられた感じのする、好青年といったカンジだった。
「さて……そういう事で大変申し訳ないが、又今度誘ってやってくれ。今回は俺達との先約があるんでな。」
青年の切れ長の静かな瞳が美女達に向けられる。
その落ち着いた声音に、俺も政宗もハタ――と我に返った。
「そ、そういう事!悪いねーおねーさん達。」
「Ah…そうだな。See you(またな)!」
家康の連れらしい青年の言葉に乗っかって、俺と政宗は美女2人と距離を取る。
とりあえずこの状況は今の俺達にとっては渡りに船な訳だし、この機会を逃す手は無い。
流石の美女2人もこの展開にはぐうの音も出ないようだし。
俺達は、にへら――と愛想笑いを向けると、そのまま連れ立ってサンルーム仕様になっているカフェテラスの方へと歩き出した。
あそこなら区切られたテラスになっているから、周りを気にせず話をする事も可能だ。
それは家康の連れの青年も同じだったようで、俺がテラスを指差すとそのまま無言で頷いてくれた。
「それで?何でアンタがこんな所に居るんだ?」
夏の明るい陽射しを取り込んだカフェテラスの一角。
都合の良い事に一番端の奥まった所にある、周囲から切り離されたようなボックス状の造りの席が空いていて、俺達4人はそこに陣取った。
席に座る間すらもどかしいというように、政宗が目の前に座る家康に厳しい視線を向ける。
まあ、気持ちは分からんでもないか。
俺としても、まさかこんな所にゲームのキャラクターである筈の家康が姿を現すなんて思ってもみなかった事だしな。
あ…………とはいえ政宗も似たようなもんなんだっけか。
政宗にしてみたら、自分以外の向こうの世界の人間がこっちに居るって事が驚きなんだろうけど。
「まあ落ち着け独眼竜。それよりもまず、そちらの御仁を紹介してくれんか?」
そう言って家康が俺に視線を向けてくる。
その強い光を宿す瞳に見詰められて、俺は途端にピシっと背筋を伸ばす。
いやー……政宗もなかなかに凄ぇ眼力だけど、家康も政宗に勝るとも劣らない目力を持ってんなー。
流石は戦国武将。
いや、流石は後の将軍様…といった所だろうか。
「はぁ……アンタの肝の太さは相変わらずか……。」
「はははっ!そんなに慌てた所で事態が変わる訳でもなかろう?」
「…………OK……分かった。こいつは。俺が今世話になってる家主だ。」
「ほう?と言うのか?!」
「何だ?の家名に何かあるのか家康?」
「いや、ちょっと驚いてな。ワシが世話になっているの家名もと言うのでな。」
「?もしかしてアンタの隣にいる……。」
「ああ、そうだ。ワシの友、だ!」
そう言って全開の笑顔で隣の青年の肩を叩く家康。
それに僅かに照れたような素振りを見せて、と紹介されたその青年は政宗にペコリと頭を下げた。
「お初にお目に掛かります、伊達政宗殿。奥州筆頭たる貴殿にお目に掛かれて光栄です。」
「ほう?アンタも向こうの人間か?」
「いえ。私は元々こちらの人間です。色々と…まあ訳あって暫くの間あちらで家康に助けてもらっておりました。」
「色々?」
「はい………恐らくは貴殿と同じような事情で。」
のその切れ長の瞳が政宗を捉え、まるで何かを確かめるかのようにそっとそれが細められる。
そのの言葉と向けられる視線に、政宗は一瞬息を飲むと、静かに目を伏せた。
暫く考え込んでいた政宗だったが、1度だけ小さく溜息をつくと、をその隻眼で見定めるようにして見詰めながらゆっくりと口を開く。
どこか躊躇いがちに見えるのは俺の思い込みだろうか?
「俺と同じ………つまりアンタもあっちに行ってた…って事か。」
「ええ、その通りです。暫しの間私はあちらの世界から戻る事が出来ませんでした。」
「だが今アンタはこうして戻って来てる。」
「はい。ですが、その代わりに家康がこちらに取り残されてしまう事となりました。」
「成程な………これでアンタがここに居る理由が分かったぜ家康。アンタも俺と同じように、こっちの世界に放り出された…って訳か。」
「うむ、まあそういう事だ。今はワシもの元で世話になっていてな。何とか戻る方法が無いかと日々模索している所だ。しかし、独眼竜までもがこちらに来ているとは思わなかった。」
そう言って苦笑する家康。
「それに、まさかこんな所で会う事になろうとはなぁ。流石にワシも驚いたぞ!何やら騒がしいと思ったら独眼竜が居るのだからな!」
「あ!そうだ!俺ら礼言ってなかったじゃん政宗!!」
「An?礼だ?」
「さっき家康達に助けてもらっただろーが。逆ナンされてたのをさ。」
「ぎゃくなん??ぎゃくなんとは何だ?」
「ああ…家康、見知らぬ異性に声を掛けて交際を求めることをナンパというんだが、それを女性からするのを逆ナンと言うんだ。」
「そうか!ではまさしく、ぎゃくなんされていた所にワシらは出くわしたという訳だな?!」
あー……何かそーゆー言葉ですら家康が発すると何だか爽やかに感じられんのは一体何でだ?!
元から持つ爽やかさの違いか?そーゆー所か?!
そーゆー所が違うから、俺みたいなのはモテねぇのか?!
くっそ!何か政宗といい家康といい、無駄にイケメンオーラ振りまきやがって!
何か無性に腹立たしいというか……いや逆に何か妙に空しくなってくんだけど?!
兎にも角にも……25歳。
真夏のリゾートプールにて驚愕の出会いを果たしたのでした。