【!ATTENTION!】



ここから先は主人公である男主以外に『Change the future』シリーズの男主も脇役的に登場します。
名前変換で『幼馴染の名前』に入力した名前が、ここでは『Change the future』男主の名前となりますので、ご注意下さい!

問題無し!という方のみ、↓スクロールしてどうぞ!







































Wandering of the dragon

~side story3~








「それで?独眼竜はいつからこちらに来ているんだ?」


運ばれてきたトロピカルジュースを片手に、家康が政宗に問いかける。
いやぁ……何か凄ぇな、トロピカルジュースと東照権現って組み合わせ。
でも家康の隣に座るは驚くでもなく、至って普通に2人の会話を眺めている。
コレってあいつら的には結構日常的な光景なんだろうか?
俺的にはかなり衝撃的光景なんだが。


「Ah………そうだな……こっちに来て結構経つな。」
「そーだなー…もう何ヶ月か経ってるしなぁ政宗がこっち来て。」
「そんなにか?じゃあ俺がこちらに戻るよりも遥か前から政宗殿はこちらに来てたという事になるな。」
「That's right(その通りだ)。家康、そういうアンタはどうなんだ?アンタはこっちに来てどれ位経つ?」
「ワシはと一緒にこちらに来たから、まだ一月(ひとつき)程だが……。」
「へぇ~?それにしちゃ凄ぇこっちに慣れてるみたいに見えるけど?それってやっぱのおかげ?」
「はは…っ!そうだな!だが向こうでも少なからずこちらの物に触れる機会もあったからな。少しは慣れていた…と言っても過言ではないかもしれん。」
「What do you mean(どういう事だ)?!話が違うじゃねぇか?!は俺と同じで向こうに飛ばされてたんだろうが?」
「あれ?そーだよな?確かさっきはあっちの世界…戦国の世に飛ばされて戻れなかったって言ってたよなぁ?」

家康の言葉に顔を見合わせて首を傾げる俺と政宗。
が政宗のように向こうの世界に飛ばされてこっちに戻れなかったんだとしたら、当然の事ながらこっちの世界の物なんか向こうに存在する筈ない訳で。
って事は家康だってこっちの世界の物に触れられる機会がある訳がない。
辻褄の合わない言葉に眉を寄せてみせる政宗に、家康はポン――と手を叩く。


「ああそうか!きちんと話していなかったな。実はが向こうに飛ばされていた時の事は…少しばかり事情があってな。」
「An?事情だ?」

「その事については俺が説明しよう、家康。」


政宗と家康の会話を引き継ぐようにしてが軽く手を上げてみせる。
そしてそのまま俺の方に向き直ると、は静かに口を開いた。

…だったよな?アンタなら分かると思うが、俺しかり政宗殿しかり…行き先が違うとはいえ所謂トリップというやつをした筈なんだが、俺の場合は政宗殿と少しばかり状況が違ってな。」
「状況が違う??」
「ああ。政宗殿はそのまま身一つでこちらの世界に恐らくは『放り出された』クチだと思うが、俺の場合は俺だけが向こうの世界に行った訳じゃないんだ。」
「一体どういう事だ?アンタ以外にも向こうに行った奴でも居たってのか?」
「いえ政宗殿、そういう訳ではありません。私の場合は、私のマンションの部屋のドアと家康の私室が扉で繋がってしまったのです。簡単に言えば部屋ごと向こうに飛ばされた――といった所でしょうか。」

政宗の問いにそう答えては微かに苦笑してみせる。
そしてそのまま隣に座る家康に視線を移すと、静かに目を細めて口元を綻ばせた。
何つーか……凄く穏やかな顔してんなぁ
家康を見るの瞳は凄く幸せそうなカンジがするんだ。
俺の気のせいじゃないと思うんだが。


「私は幸いにも部屋ごと向こうへ繋がった為、自身の部屋の中にあった物を向こうでも使う事が出来ました。ですので少なからず家康もこちらの世界の物に触れる機会があったのです。」
「成程な……それで家康、アンタはこちらの世界の事にも順応しやすかった…ってぇ訳か。」
「ああ、そう言う事になるな。だが流石にこちらに来て外の世界に触れた時は驚きの連続だったがな。」
「え?何で?」
「ああ、ワシがこちらに来たのは一月前位だと言っただろう?それまではワシはの部屋の中の物には触れる事はあったが、こちらの外の世界には来た事は無かったんだ。」
「だって2人の部屋…繋がってたんだろ?の部屋からこっちに来れたんじゃねーの?…………あれ?それならが『こちらの世界に戻れなかった』って話は辻褄合わねーよな?は?!どーゆー事?!俺全然意味分かんねーんだけど?!」

「落ち着いてくれ。今説明する。……家康の言うように俺の場合は家康の部屋に自分の部屋が繋がった訳だが、二つの部屋が繋がっていた間、俺の部屋はこちらの世界との繋がりを一切絶たれていたんだ。つまり、俺の部屋からこちらの世界の外界へ出る事が出来なかった。だから俺は『こちらの世界に戻れなかった』。」


よくよく話を聞いてみれば、そのあまりの内容に絶句するしかない。
マンションの部屋の唯一外界へ繋がる筈のドアが家康の部屋に繋がって、その上窓も一切開けられず、結果的にコチラの世界の外界への道を閉ざされた。
結果、家康の部屋を通って向こうの外界にしか出る事が出来ず、向こうの世界に放り出された――と。
そんな非現実的な――と思わないでもないが、如何せん政宗がこっちに放り出されている現状を考えれば、逆があってもおかしくは無いし、今更非現実的だの何だのと言うのもおかしな話か。
それにしても、は大変な目に遭っていたんだなぁと改めて驚かずにはいられない。
だって戦国だぜ?あのBASARAの世界だぜ?
俺がの立場だったらアッサリあの世行きな気がする。
正直俺はやって行ける自信なんて皆無だ。

「ワシらの事よりも独眼竜、お前の方はどうなんだ?ワシよりも早くこちらへ来ていたのだろう?何かしらの理由か、あちらへ戻る為の手段は見付けられておらんのか?」
「ああ………生憎とな。」
「そうか……だが、こうしてお互いこちらに来てしまった同士、何か共通の原因があるのかもしれん。何かを掴めたらお互い連絡を取るというのはどうだ?」
「そうだな………いつまでもに世話掛けっぱなしってのも何だしな…。OK、俺も何か分かったら連絡するようにする。」
「……………2人とも話はついたようだな。では何かあった時の為に連絡先を聞いておこうか。構わないか?」

そう言っては手にしていたボディバッグの中からスマホを取り出す。
ああ、こっちでは俺と…俺達2人が間に入ってやんないといけないもんな。
政宗と家康が直接こっちの世界で2人だけで…ってのはまだ色々と難しいだろう。
俺はの言葉に頷いて、同じくバッグの中からスマホを取り出した。
連絡先を交換し、お互い住所を聞いてみれば、思いのほか近場でちょっと安心する。
流石に遠方だと動くのが大変だからなー。
まあ考えてみりゃ、ここのプールに遊びに来てるんだから、そうそう遠い所に住んでるって事もないか。


「そういや家康、アンタ一月前位にこっちに来たって言ったな?その直前の事なら分かるだろ?何か奥州の事で耳に入ってる事は無ぇか?」

「奥州の事??」
「ああ、何でもいい。何か聞いてねぇか?」


思った以上に真剣な政宗の表情。
そりゃそうか。もう何ヶ月も向こうを留守にしてるんだ。
家臣や家族、領民……一国の主たる者、国の事を思わない日は無いに違いない。
でも、政宗は何の文句も言う事無くこっちで日々の生活を送っている。
だってのに俺は政宗の為に何もしてやれていない。
戻る方法を探してやることも、こちらに飛ばされた原因を探る事も何一つ。
俺は何もしてやれていない己の不甲斐なさに、俯く事しか出来なかった。
ああ………分かってたけどやっぱ俺って情けねえ奴でしかないんだ。


「どうした?何か心配事か?」
「あ、いや何でもねぇ。気にしないでくれ。」


俯いた俺に気付いたが心配そうに眉を寄せて声を掛けてくれる。
それに小さく笑って、俺は政宗と家康の方へ視線を向けた。
言える訳ねぇよ――こんな情けない自分の事なんか。


「ふむ……奥州の事か……。いや、期待に沿えずすまんが特には何も。何しろワシの奥州に関する一番新しい情報と言えば、ワシがこっちに来る二月(ふたつき)程前に独眼竜、お前と会っただろう?あの時のものだからな。それ以降の事は何も聞き及んではおらんし…。」

「は?!俺がアンタと会ってたって?」
「ああ、西国の統治についての話をしに来てくれただろう?」

「Wait a minute(ちょっと待て)!一体何の話だ?!」


ほんの少しばかり自身の事で落ち込んでいた俺の耳に、政宗の怪訝そうな声が届く。
それに目の前のも気付いたようで、家康と政宗2人の方へ訝しげな視線を向ける。
俺もその視線に釣られるようにして2人の方へ視線を向けた。

「何の話と言われてもな………覚えておらんのか?」
「覚えているも何も………。」

「………家康、恐らく政宗殿は本当に身に覚えが無いんだろう。」
「どういう事だ?、お前も知っているだろう?独眼竜が訪ねてきてくれた事。」
「ああ。だが、本当にこちらの政宗殿は覚えがないんだと思うが?」

「………………、アンタ何か心当たりでもあるみてぇだな?」


2人の会話を聞いていたが暫く考え込んでいたと思ったら、2人の会話に割って入る。
の冷静な瞳が政宗と家康2人と、そして俺を捉える。


「恐らく、家康が会った政宗殿とこちらの政宗殿は別人だ。」
「ど、どういう事だ?!ワシの会った独眼竜と、この独眼竜が違う人物だと言うのか?!」
「多分な。これから話すのは俺の予想でしかないが……恐らく間違ってはいないだろう。その前に………に確認しておきたい事があるんだが。」

「えッ?!俺っ?!!」

不意にに手招かれて、俺は政宗と家康をその場に残し、と少し離れた観葉植物の置かれている所へと移動する。


「2人に話す前に聞いておきたいんだが……政宗殿にゲームの話をしているか?」
「え?!」
「この世界でのBASARAの存在を…ゲームの存在を話した事があるか?こちらの世界の人間にとっては、政宗殿も家康も…アクションゲームのキャラクターとしての認識を持たれているという事を話しているか?」
「い、いや話してねぇ。こっちの世界には過去に別人の『伊達政宗』が居たって話はしたけど……ただ、別の世界の同じ名前の別の人間だって話した位で……。だから政宗は単純にタイムスリップしたんじゃなくて別の世界の未来に飛ばされてきたんじゃねぇかって話しかしてねぇ。」
「なるほど……了解した。まあ、流石に言えないよな……お前達の生きてる世界は作られたゲームの世界かもしれない――なんてな。」

実際俺はその世界に現実として居た訳だが――そう言っては小さく苦笑する。
ゲームの世界観を持つリアルな世界……そう表現しては目を細めた。
成る程、『作り物のゲームの世界』じゃない『ゲームの世界観を持つ世界』か。
そういう『別の世界』って考えりゃ、俺が説明した別の世界の未来に飛ばされたってのとも辻褄が合う。
俺の言葉に納得したように頷くと、は再び俺を席の方へと促した。


「話は済んだか?」

「ああ。では話を戻そう。政宗殿が家康と会った記憶が無いと言う話だったが……恐らくそれは別の世界での話だからだろう。」
「別の世界??以前が言っていた『が知る世界と似て非なる世界』というやつか?」
「その通りだ家康。政宗殿も良く聞いて頂きたい。恐らく家康と政宗殿の居た世界は別のものだ。」
「だが俺も家康も互いの事をよく知ってるぜ?違う世界の人間なら面識だって無ぇ筈だろうが。」

「そこが難しい所なのですが……。」

そう言って語り出したの言葉に、2人だけでなく少なからずゲームだのトリップだのと言う事情を理解している筈の俺でさえも言葉を失う。
つまりはこう言う事だ。
ゲームのBASARAの世界観を持つ世界から枝分かれした、それぞれ別の世界に存在していた政宗と家康だとは言うんだ。


「実を言えばおかしいとは思っていたのです。向こうで私は一度政宗殿とお会いしております。ですが先程家康に紹介された際に政宗殿は私の事をご存じないようだった。最初はあちらで私と出会うよりも前の時間軸の政宗殿なのかもしれないとも思いました。あちらで私と出会う前の政宗殿であれば私をご存じないのも止むを得ない事。ですが思い出したのです……向こうでお会いした政宗殿は、明らかに私の事をご存じでは無かった。……つまり今お会いしている政宗殿がこちらで1度私に会った記憶があり、その後に戻られてあちらで再び私と再会したのだとしたら、あちらでお会いした時に私に対して何かしらの反応があった筈です。でもそれも無かった。となれば、私が飛ばされた家康の元居た世界…あそこでお会いした政宗殿と、今ここでこうしてお会いしている政宗殿は別の次元、別の世界の方という結論に達します。」


滔々と自らの見解を展開していく
俺はその内容に驚くと同時に、湧き上がる空しさを感じていた。
何でかって?そんなの決まってる。
自分自身の無能さに対する空しさだ。
と俺は飛ばされてきたであろう向こうの世界の人間――それも戦国武将を受け入れているという時点で同じ境遇に置かれている。
だってのに、と俺のこの違いは何だ?
片や、冷静で思慮深く尚且つ鋭い観察眼に情報分析能力・考察力を持つ優秀なリーダータイプ、片や感情的ですぐに凹むヘタレで単純・凡庸な劣等生。
同じ立場・境遇にある筈の俺達はこんなにも違う。
政宗だっての元に行けていたなら、どれだけ心強かっただろう。
俺がほどの力を持っていたら、政宗にどれだけ頼もしく思ってもらえただろう。
もしかしたら今頃は政宗を元の世界に戻せてやっていたかもしれない。
なのに俺は政宗に何もしてやれないだけでなく、がこうしてすぐに看破してみせた事すら全く分からなかった。


「Oh my goodness(なんてこった)!」


政宗の声がふと聞こえて、俺は俯きかかっていた顔をあげる。
視線の先には片手で頭を抱えて天井を見上げている政宗の姿。


「つまりは俺か家康、どちらかが帰る方法を見つけたとしても、それが両方で通じるかどうかは分からねぇって事じゃねぇか。」
「そう悲観する事もなかろう独眼竜。ワシらはお互い違う世界から来たとはいえ、少なくともの世界の過去に存在していたというワシらと違い、ワシとお前は互いをそれと認識出来る位近い世界に居た筈なのだからな。」
「ああ、そうだな……少なくともこっちの世界よりはアンタの世界は俺の居た世界に近いんだろうからな。」
「もしかしたら多少の時間的な前後はあるかもしれませんが、お2人はおよそ同じ時間軸に居られたのではないかと。失礼ですが政宗殿、こちらに飛ばされる直前は何を?」
「Ah……あん時は武田とやりあってたぜ。」

「信玄公とか?!」

「いや、俺は真田幸村と死合ってる最中にこっちに放り出された。あの時はちょうど雷雨でな、俺としちゃかなり有利な状況だったんだがな…。突然落雷に撃たれて、次の瞬間目を開いたら真田幸村はおろか、見覚えのない所に放り出されてたって訳だ。」


なぁ――?そう言って政宗が俺に視線を向けてくる。
その力強い瞳に見詰められて俺は小さく息を飲んだ。
何だってお前はそんなに優しい目で俺を見るんだよ政宗?
俺はと違って何もしてやれない、ダメダメな奴だってーのに。
そんな風に見られたら俺………どうしていいのか分からねーよ……。



?」



無言のまま言葉を返さない俺に訝しげに政宗が眉根を寄せる。
次の瞬間、俺はその場から勢いよく駆け出していた。




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