チゴユリの仲間

分類

チゴユリ属(Disporum)は以前までユリ科に含められていましたが、最近の広義ユリ科植物の大規模な再編成によって現在ではユリ目コルチカム科(またはウヴラリア科)に含められています。
以前までは近縁とされていたアマドコロ属植物やユキザサなどとはのレベルで分けられてしまいました。

チゴユリ属植物は現在約21種(人により種の見解が違います)が知られています。属としては東アジアを中心に分布し、インドネシア西部、インド西部〜スリランカに飛び分布しています。

チゴユリ属の植物は日本に4種います。

1) チゴユリ Disporum smilacinum A. Gray

高さ30cm程度の小型の植物で、九州以北の日本、千島列島、朝鮮半島、山東半島、樺太に分布しています。白い花が放射状に開き、花柱子房の倍以上長いことが多いです。花被片は披針形で、長さは8-12mm程度です。茎は枝分かれしないか、しても1−2回だけで頻度も低いのが普通です。枝分かれする場合は、分枝より下に普通の葉はないか、あっても1−2枚程度しかつきません。

分枝頻度の高い集団をエダウチチゴユリ(D. smilacinum var. rotundatum)として変種区分する場合がありますが、中間型が多く明確に区別することはできないようです。

2) オオチゴユリ Disporum viridescens (Maxim.) Nakai

高さ50cm程度の中型の植物で、関東地方以北の日本と朝鮮半島、中国北部、ウスリーに分布しています。白い花は放射状に開き、花被片も披針形で、全体にチゴユリとよく似ていますが、花柱子房と同じくらいの長さで短いことと、茎の分枝より下に普通の葉が数枚つくことなどがチゴユリとの識別ポイントです。枝はよく分枝します。

3) キバナチゴユリ Disporum lutescens (Maxim.) Koidzumi

高さ50cmほどになる中型の植物で、紀伊半島、四国、九州の山地に分布していますが、特に四国では稀にしかみられません。花は黄色から黄緑色で、中途半端に開きます。花被片は披針形で、長さは15mm程度です。上の方についている葉の先が鋭尖頭になるのも特徴のひとつです。

4) ホウチャクソウ Disporum sessile D. Don

高さ20−50cm程度の小型〜中型の植物で、薩南諸島以北の日本、千島列島南部、韓国(チェジュ島、ウルルン島)、樺太に分布しています。白い花は筒型で、先のほうが少し開くだけです。花被片は倒披針形から倒卵形で、長さは20-30mm程度です。

ホウチャクソウは形態的変異が比較的大きく、変種や品種が認められることもあります。
ナンゴクホウチャクソウD. sessile var. micranthum)は薩南諸島に見られる変種で、花は比較的小さく、匍匐枝が地上を這い、花に強い匂いがあります。
オオバホウチャクソウD. sessile var. sessile f. macrophyllum)は日本海側地域や東北地方にしばしば見られる品種で、全体に大型になり、葉の長さが12cmを超えます。
ホソバホウチャクソウD. sessile var. sessile f. sessilifolia)は東海地方によく見られる品種で、葉の幅が細く、2cm以下になります。
ヒメホウチャクソウD. sessile var. sessile f. minus)は東海地方、紀伊半島、四国、九州の山地で見られる品種で、花糸に突起がなく、全体に小さくなります。前のナンゴクホウチャクソウを含むこともあります。

これらのうち、チゴユリとオオチゴユリは近縁で、ときに雑種をつくるそうです。
また、キバナチゴユリはホウチャクソウと近縁で、よく似たチゴユリとは系統的に離れるようです。

これらの他に朝鮮半島産のキバナホウチャクソウDisporum uniflorum Baker)が観賞用に栽培されることがあります。

生態

日本産のチゴユリ属植物の生活環は4種ともよく似ていて、どれも匍匐枝(ランナー)で栄養繁殖する地下で分離するタイプの多年生草本です。
どの種も比較的湿った土壌を好み、落葉樹林や針葉樹林の林床に生えます。 条件が良い場所では多数の個体が密集して集中斑(クランプ)と呼ばれる構造をつくることがありますが、それ以外の場所では比較的まばらに生えることが多いです。

春に地下部の芽から地上に茎を伸ばし、葉を展開して、すぐに花を咲かせます。花は虫媒花で、訪花昆虫はマルハナバチなどハナバチの仲間のようです。花は1週間程度で花被が落ちます。
花が終わる頃から地下部では匍匐枝を伸ばし始めます。匍匐枝は種によりますが、ホウチャクソウでは長いもので1mまで伸び、本数も10本以上になるものもあります。チゴユリでは短い匍匐枝(5cm以下)と長い匍匐枝(30cm程度)を環境によって使い分けているようです。
夏から秋にかけて黒い果実が成熟します。果実は漿果で、丸く、鳥などによって散布されるのではないかといわれています。中には1〜6個ほどの褐色の種子が詰まっています。
秋も半ばになると、地上部分やその年の根は急速に枯れていき、匍匐枝の先につけた新しい個体に栄養分を送ります。翌年の個体は芽と数本〜十数本の太い根、短い根茎に栄養分を貯めこみ、前年の個体と匍匐枝は冬までには完全に枯れてしまいます。そして、翌春には新しい個体が地上に展開することになります。

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