朝飯を食べていると、化粧を終えた姉貴が、
「いってきまーす」
 と、そんな声を上げて出て行った。
 今日は日曜日、時計は9時半を指していた。
「……………」
 親父はまだ寝ている。食卓には俺と、それと流し台には母。
「デートかな…?」
 少し嬉しそうに、母が俺に聞いた。俺は目の前の1/4にされたフレンチトーストを頬張って、さぁ?と答えた。
「美希ね、最近女らしくなったと思わない?」
「弟の俺に聞くかよ、そんなコト…」
 母は嬉しそうだった。だが、正直俺も母の意見には同意見だった。
 姉貴は、前より綺麗になった気がする。勿論、俺との関係が始まる前に比べて、だ。
「明も、今日は出かけるんだっけ?」
「ああ、中間も近いし。友達ン所で勉強する」
 母はクスクスと笑んで、楽しそうに、
「男の子の家?」
 と、そんなコトを聞いてきた。
「当たり前だろ、なんでそんなコト聞くんだよ」
 少し苛立ちげに、言った。フレンチトーストの最後の破片を口に含む。
「ん、明も…男らしくなってきたなぁ、って…思ったから」
 母はそう言うと、再び洗い物を始めた。

 姉貴に遅れて30分。俺も家を出た。外は初夏の日差しが燦々と降り注いでいた。
 勿論、勉強しに行くというのは嘘だ。本当は姉貴とデート。
 名目は一応パジャマの弁償、ということだが俺自身はデートだと思っている。
 さすがに、めかし込んだ姉貴と一緒に家を出るのはマズいと思ったから、時間差で家を出て、そして待ち合わせることにした。
 二人で歩いているところを知り合いに見られても困るので、買い物に行くのは少し遠い街だ。
 家を出て3分ほど歩き、バス停。
 少し待ってバスに乗り、30分。
 降りた場所から少し歩いて、待ち合わせの公園に着く。既に先に家を出た姉貴が立ってるのが見えた。
 時折きょろきょろと辺りを見ては腕時計の時計を確認している。…すこし、焦らしてみようかなと、そんな悪戯が頭をよぎった。
 こそっと、姉貴から見えない位置に隠れ、とその姿を観察する。普段着とは明らかに違う服装、いわゆる『余所行き』というヤツだ。つまりはココイチの服という意味なのだが。
 しかし、それは分かる。一応デートなのだから。ただ、あの黒のサングラスは何かなと思った。明らかに似合っていない。
 まるでテレビアニメに出てくる大物タレントが町中で正体を隠すために変装しているような、そういう光景を彷彿とさせるサングラスだった。
 あれでは逆に目立ってしまうのではないか、といつもテレビを見ながら突っ込んでいたが、姉貴のグラサン姿を見るとまさにそうだと思う。
 本人は…、おしゃれのつもりなのだろうか?
「姉貴ぃっ!」
 もう少し、焦らしてみたい衝動に駆られたが、それよりサングラスの理由を聞きたいという好奇心が勝ってしまった。姉貴を呼び、軽く手を振った。
「っっっ!!」
 姉貴は少し顔を引きつらせると俺の所までダッシュで走ってきてボカッ、といきなり頭を殴った。
「ってぇ…ッ!なんだよ!」
「あんたねえ、折角あたしが変装してるのに大声で『姉貴ぃっ!』なんて呼ばないでよ!」
 ああ、なるほど。サングラスは変装のサングラスだったのか。…なんで変装の必要が?
「なんで変装なんてしてるんだよ?」
「こんな恰好で、あんたと二人で歩いてるところを知り合いに見られたら変な噂が立っちゃうでしょうが!」
「だから知り合いの居ない遠くまで来たんだろ?」
「あんたの知り合いは居なくても、あたしの大学に通ってるのは車だってバイクだって持ってるんだから、どこで会ってもおかしくないの!」
 ぷんすか!そんなことも分からないのか、と姉貴が怒る。
 怒った姉貴も結構可愛いな、と思っていると、いきなり姉貴がニヤリと笑んだ。
「3回」
 勝ち誇ったような口調で、そんな言葉を呟く。
「なんだよ、それ」
「あんたを待ってる間、あたし3回も声かけられたのよ?」
 心底嬉しそうに、姉貴が言う。
「へぇ…、職質と宗教勧誘と、後一個はなんだろ…?」
「ふつーに男に声をかけられたの!!」
「ああ、道を聞かれたのか。3回も」
「っっっっ!!!」
 ぼかっ、とグーで殴られた。痛い……。
「ナンパ、されたの。それもあんたなんかより数倍格好いい人からね」
「…いや、世の中には物好きがいるよな、うん」
「……そのまま、ついて行くことだって出来たんだからね?」
 少し、声のトーンを落として、姉貴が言う。
「なんだよ、それ。妙に意味深な発言だな…」
「別にぃ…、ただ、あたしがこんなに気合い入れてきたのに、あんたが殆ど普段着に近い恰好で現れたから、すこし気が抜けちゃった」
「馬鹿、俺は友達ン所に勉強に行くっつって出てきたんだよ!普段着で出ないと怪しまれるだろうが!」
「そ、か。あたしも勉強しにいくって言えばよかった」
「姉貴は俺と違って元が悪いから、精一杯化粧して俺の普段着と漸く釣り合うくらいだから丁度いいんじゃ?」
 勿論、冗談だった。冗談だったのに、ゴンッ、と頭を殴られた。
「ってぇ…」
 さっき殴られた箇所だった為か、痛さは倍だった。コブができそうな勢いだ。
「はぁ、やっぱりさっきついて行けばよかった……」
「そんなコトになってたら、相手の男をぶん殴ってでも姉貴を連れ戻すさ」
「またそういう物騒なコトを…、あんたが言うと冗談に聞こえないのよね」
「俺はいつでも本気だよ。こと、姉貴に関してはね」
 はぁ、と姉貴がもう一度ため息をつく。
「いまさらだけど、やっぱりあんたビョーキだわ…」
 両手のひらを上げて、呆れるようなジェスチャーをして姉貴が歩き出した。
「早く行こ、こんなところで口論してたらそれこそ日が暮れるわ」
 似合わないサングラスをくいっ、と上げて、早足に姉貴が歩く。俺も小走りに姉貴に追いつき、その隣に行く。
「腕でも組むか?」
 すっ、と右手を曲げたが、
「冗談でしょ?」
 姉貴は鼻で笑って、それで終わりだった。

「あのさぁ…」
 チケットを買っていると、背中から不満めいた声が聞こえた。
「どうして…映画館なんか…」
「映画を見るから。デートといえば映画が基本だろ?」
 チケットを受け取り、釣りをもらう。
「で、デート…って…」
 コメントに困っている姉貴の手にぽん、とチケットを渡す。
「さて、面白い映画ならいいんだけどな」
「って、あんた映画の内容も知らずにチケット買ったの!?」
「一度見た映画なんてわざわざ見る意味はないだろ?」
「そうじゃなくて、だいたいのあらすじとか―――」
「姉貴、通行の邪魔だ。中に入るぞ」
 姉貴の手を引いて、強引に映画館の中に連れ込む。
 時計を見た、上映時間まで2分という所だった。




「あんまり、面白い映画じゃなかったな」
「そう?わたしは結構面白かったけどな」
 2時間後、腹が減ったと喚く姉貴を連れてファミレスに入った。
 喫茶店の方がいいかとも思ったがどこも若々しい男女で埋め尽くされていて、姉貴がそれを毛嫌った為だ。
 多分、姉貴は俺に奢らせるつもりなのだろう。メニューの中でもやけに高いサーロインステーキとランチセットを注文した。なんか癪なので俺も同じモノを注文した。
「だいたいあの船の爆発のシーン、どう考えたって死ぬだろ……」
「その辺は演出でしょ?人が生き残れないくらいの大爆発で、それで生き残ったんだから場が盛り上がるんじゃない。爆発が小さなもので生き残ったって、そんなの当たり前の事じゃない」
 ナイフとフォークで、ステーキを切り分け、口に運ぶ。
 俺には上等な肉の味は分からないが、ステーキは十分に美味しかった。
「いやさ、俺が言ってるのは生き残り云々じゃなくて、あの爆発でも生き残れたその理由みたいなのが欲しいと思うんだよ。意味もなく主人公側にだけ奇跡が連発して助かるってのは、納得いかない」
 舌休めにランチセットのスープを口に運ぶ。飲みやすさを重視しているのか、スープの温度は些かぬるめだった。
「まぁ、でも…セットにも金はかかってなさそうだったし…。その割には面白かったかな」
 再び、スープを口に運ぶ。と、目の前では姉貴がなにやら必死にがちゃがちゃと音を立てていた。
 無骨な手つきでナイフとフォークを握り、意味もなく音を立てながら肉にナイフを突き立てて切ろうとしているのだが、ぎこちない。危なっかしい。
「…姉貴、不器用だなぁ…」
 呟いた。ガギィ、と一際大きな金属音が聞こえた。ぴっ、と肉汁が飛び、ステーキの一部がテーブルの上にべちゃりと落ちた。
「ナイフとフォークも使えないのか?そんなんでよくステーキなんて頼んだな」
「う、うるさいわね!!この店が安い肉使ってるから…切れないのよ!!」
 ダンッ!と姉貴が逆手に握ったフォークを鉄板に叩きつける、と、そのくびれの部分から見事に折れて―――
「ひッ―――!」
 ちょうど側を通っていたウェイターの頬をかすめてカッ、と壁に突き刺さった。…惜しい。いや、危ない。
「も、申し訳…ありません!!!!」
 ウェイターは引きつるように、そんな謝罪の言葉を残して足早に去っていった。
「えっ、あ…違っっ…」
 途端に狼狽え、かぁぁと顔を紅くする姉貴。勿論俺は他人のフリ。



「はぁ……」
 ため息混じりに、姉貴がパフェをスプーンで突く。
 店のサービスが良いのか、姉貴の罵声が凄かったのか、ウェイターがいい人なのか、それとも臆病だったのか。
 頼んでもないパフェが食後に来た。勿論持ってきたのは件のウェイターだった。
 これで勘弁してください、と言わんばかりに俺と姉貴の前にカップル用のジャンボパフェを置いて足早に去る。勿論伝票には何も書かれていない。
「姉貴と一緒だと、食費が浮いて助かるな」
 当然、姉貴一人では食べきれないだろうから俺も一緒に食べる。
 タダだと思うと、パフェは余計に美味しかった。
「…みんな、こっち見てるよぉぉ………」
 姉貴は少し前屈みに、顔を隠すようにして、それでもパフェを食べる。甘いモノは姉貴の大好物だ。
「そりゃ、まぁ…ウェイター脅してパフェ食ってる女なんて…滅多に居ないモンなぁ…」
「わたしは別にあの人に言ったワケじゃ…、パフェなんて持ってこなくてもいいのに…」
「なら断れば良かったのに。そんなつもりで言ったんじゃありません〜って」
「ううぅ、パフェの魅力に心を奪われたのよぉぉ…」
 姉貴は泣きそうな声を出しながら、それでも最後までパフェを食べた。
 そして、結局というかやっぱり、会計は俺がすませる事になった。



 昼飯を食べた後、いよいよ本命のパジャマを買いに行くことになった。
 日差しは熱いが風は涼しい、そんな町中を姉貴と二人、並んで歩く。
 ファミレスでの一件がよほど堪えたのか、姉貴はあまり元気がない。
「そういや、パジャマってどこに売ってんだっけ」
 昔、パジャマを着ていた頃は親が適当に買ってたものを着ていた。自分で服を買うようになってからはパジャマ代わりにTシャツやハーフズボン、ジャージなどを使うようになっていた。
「てきとーに、…デパートでもいってみましょ」
 姉貴は投げやりに、そんな言葉。
 早速、デパートを探すことになった。



「でも、よく考えたら…パジャマなんてもう要らないかも…」
 デパートの寝間着売り場に来たところで姉貴がそんな事を言い出した。
「はぁ?今更何を―――」
「だって、今普通にTシャツとかで寝てるけど…別に不自由してなかったし…」
 そういうことはもっと早く、せめてファミレスを出てデパートへ向かう前に言って欲しいと思った。
「ま、でも…折角来たんだし、明に何か買ってもらおうかな」
 急に、姉貴は声のトーンを上げて『おねだり』の発言。目を細めて、まるで獲物を狙うかのような目で俺を見る。
「お、俺はそんなに金持ってきてないぞ?」
「分かってるって、バイトもできない受験生がそんなにお金もってるわけないもんね。まぁ、2,3万で勘弁してあげるから感謝しなさいよ」
「2,3万って………」
 ひょっとして、俺はハメられたんじゃないのか、とその時に思っても、もはや後の祭りだった。
 別にそこまで姉貴の買い物に対して金を浪費する必要は必ずしもないのだが、しかし…やっぱり惚れた弱みというものなのか、欲しがる物はできるだけ買ってあげたいという、男の性が…。
 少しだけ、ミツグ君達の気持ちが分かった気がした。

 夏服売り場から寝具、下着コーナーまで。そのほかにもほぼデパート中を連れ回されること3時間。
 女の買い物とはかくも長いものなのか。呆れるのと同時に関心すらした。
「明、男のくせにだらしないのね」
 と、姉貴は2分前にそう言い残してどこかに消えていった。俺は疲れたのでデパート内ベンチで小休止。
 受験勉強というものはかくも体力を奪うものなのかと痛感した。少し外に出て、数時間歩き回っただけだというのに足が棒のように痛かった。
 そういえば女もハイヒールとかを履いていると足が痛くなるそうだが…、はて、姉貴は今日はどんな靴を履いてたかな?
 丁度、そんな事を考えてたとき、見慣れたスニーカーが目に入った。
「ほら、どっちにする?」
 姉貴は巨大なマイクの様なアイスクリームを両手に持って戻ってきた。片方は色からしてミント、片方はストロベリーだろう。
「…姉貴、さっきパフェ食ったぞ……」
「3時間も前の話じゃない。要らないなら両方ともわたしが食べるわよ」
「…じゃあ、ミント」
 姉貴の手から、ミントのアイスクリームを受け取る。そして姉貴も俺の隣に座った。
 別に腹は減っているというわけではなかったが、それでも普通にアイスは美味しかった。
「…………………………」
 アイスを舐めながら、暇だったので適当に辺りを見回してみた。
 運がいいのか悪いのか、たまたまベンチの前は女性物下着売り場。無意識のうちにとんでもない場所を選んでしまったものだ。
 自然と、そっちの方に目が行ってしまう。
 すらりとした体型のマネキン人形が様々な下着をつけてポージング。
 はっきり言って俺には詳しい下着の事など分からない。メーカーやブランドの事なんかもさっぱりだ。
 それでも、俺は一つの、黒い下着をつけたマネキンに心を奪われた。
 ああいうの、ガーターベルトというのだろうか。はてさて…姉貴がつけたら似合うかな、と頭の中で適当に合成映像を作ってみる。
「ふぅん、あんたあんなのが好きなんだ」
「っっっっ!?」
 慌てて振り返った。姉貴もじーっ、と俺が見ていたマネキンを見ている。というかおそらく俺の視線の先を読まれたんだろう。
「な、何言ってんだよ…別に好きじゃ……」
「へぇ、その割には食い入るように見てましたよ?お客さん?」
 にへら、と姉貴が意地悪笑み。つんっ、と指先で俺の額を突く。…何故か、顔が熱くなってきた。
「言っとくけど、あたしはあんなの着ないからね?」
 釘を刺すように言うと、姉貴はアイスのコーンをがりがりと食べる。俺も慌てて、半溶け状態のアイスを食べることになった。

 買い物を終えてデパートから出てみると既に夕方を通り過ぎ、日が落ちようとしていた。
 日中の日差しも消え、心地よい風がヒュウと吹いた。
「すっかり遅くなっちゃったわね〜…」
 紺色の空を見上げて、姉貴が呟く。既に月が出て、ちらちらと星すら見え始めていた。 朝10時頃家を出て、姉貴と合流して、2時間映画を見て昼飯を食って、約2時。
 ということはだいたい6時間近くデパートの中をうろついていたことになる。
 そして、大きな紙袋が俺の両手にそれぞれ一つずつ。もはや何を買ったのかすら覚えていない。
 ただ、分かることは俺自身の買い物はただの一つも無く、財布の中からは昨日おろした5万円の代わりに何枚ものレシートが入っているということだ。
「はあ…疲れた……」
 精神的にも、肉体的にも。
 立っているのも辛い、そのままデパート前のベンチに腰掛ける。
 とにかく早く、家に帰って寝たいと思った。
「どうしよっか、ご飯食べて帰る?帰ってから食べる?」
 姉貴は一人元気だ。うらやましい…。
「飯食う元気もねぇよ…さっさと家に帰ろうぜ」
「…あんたねぇ、いくら受験生だからって体力無さ過ぎじゃない?」
 確かに、姉貴の言う通りかもしれない。だが、一日人の買い物につき合わされるというのもなかなかに疲れるものだと思うのだが…。

 姉貴と二人、バス停でバスを待った。姉貴は次の便で帰り、俺はその次の便で帰る。当然、時間をずらして帰るためだ。
「はぁ…」
 姉貴がため息をつく。そのまま、俺の方を見た。
「なんだよ?」
「別に、…なんでもない」
 ぷい、と姉貴は視線を逸らしてしまう。…沈黙が流れる。
「やっぱりさぁ…これってデートだよね?」
 ぽつりと、姉貴が呟く。
「俺は一日そのつもりだったけど?」
「……少しは、否定しなさいよね…」
 つまらなそうに、呟く。曲がり角を曲がって、バスが来るのが見えた。
「でも、まぁ―――」
 すっと姉貴が立つ。紙袋を両手に持って、振り返った。
「楽しかったから、いいかな」
 目を細めて、笑みを浮かべながら姉貴はバスに乗り込む。
「当たり前だろ、こっちは5万円も使ったんだ」
 バスはしばらく俺を待つような、そんな素振りを見せたがやがてただの見送りだと判断したのか、ぷしゅーっとドアを閉めるとそのまま走り去った。
「さて、と」
 時刻表を見てみる。次のバスまで20分もある…、これだから田舎はキライだ。
 20分間、何の気なしにバスを待つか、それとも何か暇つぶしをするか…。
「……………」
 通りの向かいに、本屋が見えた。
「ふむ…」
 ふと、ある考えが浮かんだ。というより何故デパートに居る時点で気づかなかったのかという問題なのだが。
 財布の残りは僅か、バス代を差し引いて残るのは……まぁ、本の一冊買えないコトもないだろう。
 20分の過ごし方は決まった。


 家に帰ると、キッチンのテーブルの上に置き手紙が載っていた。
 親父達は外食に行ってるらしい、メモがくしゃくしゃになっているのを見る限り、先に見た姉貴が丸めて捨てて、その後テーブルの上に戻されたものだろう。
 脱衣所の明かりがついているから姉貴は多分風呂だ。もう、襲う元気もない…。
 帰りに買った本を姉貴の部屋に放り投げて、俺はそのままベッドに倒れ込んだ。
 意識はすぐに、飛んだ。




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