Forest Elf
〜月の涙編〜
―― 第二話 ――





 ぴちゃっ…ぴちゃっ…ちゅぷっ…。

 覚醒したルカの意識がまず始めに聞いた音はこれだった。
 まだその大部分が白濁とした意識はまるで底なしの泥の中で動き回っているような鈍重さで、精彩を欠いていた。
(ぁっ……気持ち、いぃ……)
 漠然と、そういう意識がルカを包んでいた。
 ちゅぱちゅぱと音がするたびに、体内に蓄積されたものが快感を伴って排泄される。しばらくすると、その快感が胸の頂の方から伝わってくるということまで理解できた。
「ふぁ……?」
 ゆっくりと瞼を開くと、そこが家の中―――つまり、千年樹の幹の中の一室だということが解る。
 どうやら、ベッドに寝かされているようだった。背中に、ミスリル糸製のふかふかのベッドの感触があった。
「あら、お姉様。目、覚めた…?」
 ルミはぺろりと舌を覗かせると、唇に付着していた乳白色の液体を舐め取った。
「お姉様のミルクは、やっぱり絶品ね。ずーっと舐めてても飽きないわぁ」
「ぇ…っきゃぅんっ!!」
 悪戯紛れに、つんっ…とルミが突くと、それだけで頂から乳白色の液体がとろとろと漏れる。
(ぁぁ……まだ、ミルク出てるぅ……)
 自分の胸から溢れる液体を見ると、ルカは言いしれぬ恥ずかしさに苛まれるのだ。
 時折ルミが言う、『牛のようなおっぱい』という表現がまさに当てはまる、自分の胸。
 快感を伴って際限なく溢れる自分のミルクを見て、ルカは顔を真っ赤に染めて両手で顔を覆ってしまう。
「…でも、丁度良かったわ」
 ふと、ルミのそんな声が聞こえて、ルカはそっと指の合間からのぞき見てみた。
 今気がついたが、ルミは全裸だった。
 ルミはルカより、頭一つ分ほど背が低い。そのうえ、体つきはルカがしっかりとした女性の肉体的魅力を醸し出しているのに対し、ルミのそれは少女の体というのがしっくりくるような、悪い言い方をすれば貧相な体つきだった。
 胸も、小皿を貼り付けた程度にしか膨らんでいないし、腰からお尻にかけてのラインもお世辞にもなまめかしいとは言えない。
 もっとも、『そういう趣味』の人物の目から見れば、ルミの体つきはそれ相応の情欲を掻き出すことは明白であろう。そもそも、ルミに言わせれば、ルミの体つきの方が本来、エルフという種族に似つかわしいボディラインであって、ルカのそれのほうが異常なのだ。
 歩くだけでゆさゆさ、たぷたぷと揺れる巨乳は誰がどう見ても機敏な動きをするのに邪魔であるし、男達が目にすれば無用に情欲をかき立て、いたずらに身を危険にさらすことは火を見るより明らかだ。
 もちろん豊かなのは胸の質量だけではない。腰のくびれからふっくらと膨らんだ尻はいかにも揉みごたえがありそうな肉付きをしていて、そこからさらに太股にかけてむっちりとした女性ならではのふくよかなラインが続くのだ。
 エルフといえば華奢―――という常識を覆すような体つき。いやらしい言い方をすれば、男好きのする体とも言えた。
 ルミ自身、そういった体を持つ姉に多少嫉妬もしていた。だからこそ、自らの体を少しでもふくよかにしようと、豊胸薬などを造ってみたりしたのだ。
 結果的にそれは失敗に終わって、ルカを責めるための道具として使われたわけだが。
「え……っ…?」
 ルミの体を見たルカは、そういう類の声を漏らさざるを得なかった。
 というのも、妹の体に何か、見慣れないものがついていたからだ。
「ふふっ、凄いでしょ?これ…、この前サキちゃんにもらったお薬を改良して造ったのよ?」
 ルミはうっとりと目を細めながら、自らの足の間から生えている凶悪なデザインのそれを握りしめ、ルカに見せつけるようにして誇示した。
 それが、男性器の形であるということは、ルカにもわかった。少女のような体つきにはあまりにも似つかわしくない、仰々しい肉塊が、吟と臍の方を反り返っている。
「る、ルミ…ちゃん、それ…なに?」
 単純にその凶悪なデザインに怯え、狼狽えるような声しか出せない。
「これはね、お姉様を気持ちよくさせてくれる物よ」
 キシリとベッドを軋ませて、ルカに覆い被さってくる。
 息が荒い。ぜぇぜぇとまるで欲情した男のような目で、じっくりとルカの肢体を舐めまわした。
 ルカもまた、寝ている間に脱がされたのか、全裸だった。
「お姉様…大好きっ……♪」
「っ……ふっっ…!」
 ルカが、噎び声を上げる。ルミが背後から抱きしめるようにして、その双乳を揉みしだく。
 乳房に受ける圧力に押し出されるようにして、ぴゅるぴゅると先端からミルクが迸る―――を、ルミは指先で絡め取り、ふたたび乳首に塗り込むようにして擦りつけた。
「ぁぅんっっ! ぁっ…ふぁっぁぁっっ…やぁぁっ…おっぱい…ダメぇぇえっ…!」
 もどかしげに手のひらを柔く握り、それで唇を隠すような仕草で、ルカは悶える。ルミが乳肉を捏ねるたびに、胸の奥の方からビンビンと弦を弾くような確かさで快楽が背骨を駆け抜け、体がバネのように勝手に跳ねる。
 それでも、乳を揉むルミに抵抗するように、両手で手首を掴み、動きを阻害しようとした。
「………お姉様、ミルクが出ちゃうの…嫌なの?」
「ふっ…ぁ………」
 ルカは、小さく頷いた。
 確かに搾乳、射乳による快感は凄まじい、が妹の手で、妹の目の前で乳を搾られて感じてしまうというのが、ルカには抵抗があった。
(恥ずかしい―――)
 と、思うのだ。
 牛のように乳を搾られるという行為と、それに快感を得てしまっている自分が、だ。
「…わかったわ、じゃあ―――」
 了承の声が、耳元で聞こえた。同時に、何かの呪文を呟く声も。
 刹那―――
「きゃぅッ!?」
 軽い、悲鳴のような声が出る。変な圧迫感のようなものが、胸の先の方から感じられた。
(な、…何…?)
 既に胸への刺激でトロトロになりつつある頭で、なんとか思考力を振り絞り、ルカは自らの胸の方を見た。
 白く膨れた果実の先端、ピンク色の蕾のように突出したそこの筒の部分に、何か小さな、光の輪のようなものがキュウと巻き付いていた。
「良かったわね、お姉様。これでもうミルクは出ないわよ?」
 くすくすくす…耳元で妹の笑い声が聞こえる。
 確かにルミの言うとおり、乳首の先にリングのように巻き付いているそれはミルクの漏洩を防いでいるようだった。
「ふぁっ……んんっっぅ!」
 双乳への、ルミの愛撫は続く。ぴりぴりともどかしげな快楽が乳房の中心からわき上がり、突起の方へと向かう。が、それらが出るべき出口はリングによってふさがれている。
「ぁぁぁっ!やっ!るみ、ちゃ…苦しっっ…!」
 一分と経たないうちにルカの乳房は張るように膨れあがる。ルカは呼吸を荒げ、哀願するような目で、ルミを見た。
「なぁに?お姉様。ミルク出るの嫌なんでしょう?」
 ルミは、態と惚けた。意地悪な笑みを浮かべたまま、ぱんぱんに張ったルカの乳房をつつきまわし、弄んでいる。
「んっっふっ、ぅぅぅ…!」
 まるで快感の量に比例するように、乳房を中から圧迫するミルクは増え続けているようだった。
 気持ちいい―――が、同時に苦しい。
 今にも裂けそうなほど、乳房は張りつめていた。だが、先端を光のリングのようなものに締め付けられているため、射乳はできない。
「ぁぁっぁっ…ぅ…だ、めぇ…おっぱい、苦しい、のぉ…おねがぃ…ミルク、出させてェ……っ」
「あらあら…お姉様がミルク出すの嫌って言うから、栓をしてあげたのに」
 意地悪な、ルミの言葉。ルカは目尻に涙をにじませて、
「そんなぁっ…だって…こんなんじゃっ…おっぱいパンクしちゃうっっ…!」
 ルカは、戦慄き、震える喉で、ルミに訴えた。
「ルミちゃ…お願いなのぉぉ……早くっ…」
「くすっ、我が侭なお姉様…」
 ルミは微笑むと、胸への愛撫をやめ、体を起こす。
 そして、ルカの眼前に自らの股間に息づくそれを突きつけた。
「ひっ…!」
 反射的に身を引こうとするルカの頭を掴んで、止める。
「…お姉様、舐めて」
「ぇ…そんなっ、やっ………ッ!」
 拒絶―――しようとするエルフの姉の頬に、無理矢理先端を押しつける。
(あ、熱ッ……!)
 自らの頬におしつけられるもののあまりの熱さに驚くルカ。
 ルミは尚、ルカの頬にこすりつけるように腰を小刻みに動かしてくる。ルミの息は荒く、湿っている。
 瞳には、欲情と、焦燥が滾っているように見えた。
「ねっ、お姉様…舐めて欲しいの。ルミがイッたら…お姉様のおっぱいも、解放してあげる」
「っ…で、でもっっ…」
 ルカは躊躇した。
 過去、ルミと閨を共にして、互いの秘部を愛撫しあったことはある。
 しかし今、妹の股間に息づいているそれは明らかに男性器そのものだ。
 いかにも凶悪なデザインのそれに、口で直に愛撫を行うなど―――。
「お姉様、早く………!」
「ッ…あ、ふっっ!」
 ルミが急かすように、巨乳を握りしめる。
「………っ……」
 ルカには、選択肢はなかった。
 辿々しい動作で、静かに、ルミの股間に息づく剛直の先に口づけをした。
 
 

 
 
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