新たなる一歩−後編−





 いつかの占いで未来を聞いた。
 邪悪な光に包まれて未来が見えないと言われた。
 パイオニア2に乗る事によって不幸になるのかも知れない。
 それでも生を受けた以上、どこまで行けるかわからないけれど自分で選んだ道を進もうと決めた。
 封印が解けたとしてもあの人達なら止めてくれるに違いない。
 突然襲ってくる封印が綻ぶ痛みに幾度と無く耐えながら、パイオニア2の出航日を待ち望んだ。
 ハンターズ養成所で摸擬戦闘を繰り返しながら、この星の残り寿命と封印の状態を見比べてみる。
 パイオニア2での移動中はどの星からも力を得る事が出来ない筈だ。
 それに耐えるには封印されているモノに負けない力が必要になるかも知れない。
 今この場で封印が消滅したとしてもこの星の寿命を縮めるだけで事は治まるだろう。
 もし、パイオニア2内で封印が消滅したら・・・?
 考え始めると恐ろしくて堪らない。
 私一人のせいでパイオニア計画が失敗するだけでなく、何万という命を奪ってしまいかねないのだ・・・。
 悩んでいた。
 答えを出してくれる人は誰も居ない。自分で決断するしかないのだ。
 そうこうしている間にパイオニア1から安全確保完了の連絡が入ったようで、パイオニア2の出航日は来月と決まった。
 それでも悩んでいた・・・。
 不安に押し潰されそうになると、養成所へ出向き摸擬空間で何度も戦った。
 そんなある日、端末がメールの受信を告げた。
 ・・・あの時のヒューマーからのメールだった。
 「元気にしてたかい?とうとう出航日が決まったね!パイオニア2で会える事を楽しみにしているよ!」
 気付くと、端末を抱き締め頬を涙で濡らしていた・・・。

 パイオニア2は遠くから見てもかなりの大きさがあった。
 近付くにつれ自分があまりに小さな存在である事を痛感した。
 持ち込める荷物は多くはない。
 故郷を後にしてからは何も失う物が無い私は殆ど手ぶらでパイオニア2へと向かっている。
 既に長蛇の列が出来ていたが、一般民とハンターズでは入口も居住区もチェック方式も違うようで、あっさりと許可が下りた。
 ゲートを潜ると、ワープポイントが用意されていた。
 まったく同じ制服に身を包んだ軍人達が目を光らせている事を除けば、これからの長旅にささやかな淡い期待を持つ事も難しくはない。
 「さっさと入れ」
 かなり高圧的な態度でワープポイントを指差された。
 軍服を身に纏った彼らに対してどうしても好感は持てないと感じた。
 ワープポイントに全身を入れると自動でIDナンバーを読み取られた。
 IDナンバー毎に居住区が決まっているようだ。
 確認が済むと転送許可が下りる。
 起動スイッチを押され独特な浮遊感に目を閉じた次の瞬間、絶えようとしているとは言え自然の空気は優しく身体を包んでくれていた母星と隔てられた、金属質な空間に居た。
 続々と転送されてくる人々。
 早くこの環境に慣れなければならない。
 これから、私は新たな一歩を踏み出すのだから。
 未来の事は分からない。分からなくても良い。
 ただ全力で生き抜くだけ。
 「よ〜しっ!」
 気合を入れると、少ない荷物を抱き締め割り当てられた住居へ向かう。
 前を向いて堂々と生きて行こう。
 未来はきっと、自分の中にあるのだから。





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