新たなる一歩−前編−
この星は、私達に全てを吸い尽くされて寿命が尽きかけているらしい。 そうは言っても、深刻に思い煩っているのは一握りの高官達だけ。 一般人にはイマイチ現実味がないように見受けられる。 初めて都市に足を踏み入れた時にはそう感じていた。 そも、星の寿命とは一体何なのか? 私達がこの星から何を吸い尽くしたと言うのか? そんな疑問が深刻な問題から現実味を失わせているのも事実のようだ。 それでもそんな安穏さをも飲み込んで行く勢いでこの星の寿命は尽き果てようとしているのが分かる。 この星の力・・・私の心も体も、その力によって支えらているのだから・・・。 テクノロジーが進んだ現代にも、非科学的な占い、呪い、まじないは存在する。 テクノロジーの進化によってこの世に生を受ける事になったニューマン・アンドロイド達もまた、面白可笑しく占いに興じ呪いを恐れる。 今日も公園の端に設けられた怪しげな占い師が居ると言う仮説テントに並ぶ人影は、老若男女様々だった。 「ココって当たるらしいけど、胡散臭いよね〜」 「ソレが又良いのよ〜」 「占イトハ非科学的デスガ面白イデスネ」 総じて和やかなムードに包まれている。 アンドロイドは人型を取ってはいてもやはり異質さが目に付き、見間違う事はない。 ニューマンは長い耳が目に飛び込んでくる。 その中の誰かが笑い混じりに占い師に質問した。 「私達の未来は?」 パイオニア計画。 それは寿命の尽きかけたこの星を捨て、新たな星を探して移民する計画。 自分達の都合の良いように様々に星の環境を変え、要らなくなったら捨てる。 まるで私達ニューマンと同じね・・・そう思わなくもなかった。 いずれは全ての人が移民する。 私の体に刻まれた封印は新しい力がなければ維持出来ない。 それでも第一陣に乗る勇気はなく、二陣のパイオニア2に乗ろうと決めた。 パイオニア1が旅立つ少し前にパイオニア2への乗船手続きをした。 その施設で心惹かれるポスターに出会った。 ハンターズスーツと呼ばれる衣服に身を包んだ男女が武器を構えている。 「君も新しい土地を目指してみないか!?」 そんな文句と共に。 同じ移民するなら、自分で動いてみたい。 科学的に作られた私達ニューマンの命は限りが計れない・・・。 封印の事を忘れる為にも動いていたい・・・。 ハンターズの事をもっと知りたい。 どうしたらなれるのか? ハンターズになる為には適正テストを受けなければならないらしい。 日程が迫っていたが、なんとか手続きを取る事が出来た。 ・・・これも運命だったのかも知れない・・・。 そして当日。 まずは希望を取るらしい。 「種族から聞くのねぇ・・・」 ニューマンは人間よりも特化した生命体として作られた。 人間の出来る事はそれなりに出来るし、人間よりも優れた部分もある。 それでも人間の上位に立つ事が出来ないのは寿命が不安定だからだ。 「ニューマン。女」 と記入する。 次の項目は戦う場合においてのポジション。 戦い・・・?? 新しい地には既に何者かが住んでいる事は誰にでも想像はつく。 けれど、いきなり闘う事を前提にしている事が不安に思える。 「とりあえず、前衛は怖いから後衛かな・・・」 その他にも取り留めのないような心理テストのようなものが続く。 次々と答えを選びながらあの日見たポスターを思い出した。 あの女性が構えていたような、大きな銃を持ってみたい・・・。 あの男性のように体に馴染んだ大剣も素敵だったな・・・。 全てを記入した紙を提出してしばらく待つと番号順に呼ばれて新たな選択を迫られる。 「どの職業を希望しますか?」 全12種の中から私が選べる職業が2種類示される。 説明書きとして装備可能武器も載っている。 大剣は前衛だからこの際却下して・・・。 残るはフォース?? 何々?テクニックに長ける。 それは良いからあの大きな銃は?? 訝しげに担当員を見つめると、 「ニューマンの方はレンジャーを選ぶ事は出来ない規則です」 と、のたまった。 なんですってぇ〜〜!? 希望も未来もあったもんじゃない・・・。 それでも後衛の方が合ってる気がして、フォースを選らんだ。 ・・・レイニュエール・・・良い響きじゃない? 筆記の次は実技のテスト。 フォースとしての能力があるかが試される・・・らしい。 ある程度の講習を受けた受験者は希望業種毎に並んでテストを待つ。 フォースとしてのテストを受ける事になった私は、ケインと言う武器を持たされて他業種数人と模擬空間を進んで行く。 データとして作られた敵が出ると聞いたけれど、なんともおぞましい空間に即席パーティは皆早くも逃げ腰になっている。 「この先の部屋にエネミー反応が有ります」 ナビゲーションシステムが機械的に告げてくる。 「まずは俺達が部屋内に入るから、サポートしてくれ」 パーティの先頭を歩いていたハンターを職業として選んだ男性が振り返って言う。 一緒に突撃するのはアンドロイドの女性でやはりハンターを希望したようだ。 レンジャーを選んだらしい男性が、小型の銃を構えて頷きを返す。 私も固い表情のまま頷くと、仮に使えるようにされている補助魔法、シフタ(攻撃力増加)とデバンド(防御力増加)を唱える。 軽い疲労感の後目を開けると、即席の仲間が赤と青の光を纏っている。 どうやら成功したらしい。 「さんきゅ!」 短い礼と共に小部屋へと突撃する仮ハンター達を追って仮レンジャーも走り、少し遅れて仮フォースの私も部屋内へ走り込んだ。 ・・・見たことも無い生命体が私達を歓迎しているかのように両手を上げて襲い掛かってきた。 「うわぁっ!」 先頭切って戦っていた仮ハンターの男性が、エネミーの一撃をまともに受けたらしく、倒れている。 こんな時は・・・。 「レスタ〜!!」 傷付いた体に力が蘇る。 日常生活でも使えたら、擦り傷も怖くないのに・・・。 思わずそんな事を考えてしまったのがいけなかった。 後ろを取られた!と思った時には既に遅く、頭上に大きな鎌のような腕が見えた。 (避けられない!) 目の前が赤くなる事を疑いようもなく思わずケインを握り締めてギュッと目を閉じた。 バシィッ!! 鈍い音がした。 「走れ〜!!」 来る筈の赤い世界ではなく、痛みでもなく、与えられたのは不思議な言葉。 何故か不思議に思うよりも先に体が動いていた。 ほんの数瞬前迄私が居た場所に敵の巨大な腕が振り下ろされている。 助かった!と思うよりも、補助魔法をかけなければ!と体が動く方が先だった。 そんな戦いをいく部屋か続けた。 最初はぎこちなかったチームワークも、何とかモノになってきていた。 「みなさんもパイオニア2に乗るんですか?」 そんな質問をしてみた。 その質問自体が不思議だったらしく、みんなに首を傾げながら 「他に何があるんだ?」 と逆に質問されてしまった。 この星の寿命が尽きようとしているのが明白な以上、これ以上寿命を縮める手伝いをするのは愚の骨頂だ。 一般人には雲の上の官僚達もその位の事は判っているようだった。 新しい星で、第一歩を踏み出し、安全を確保する為に自らを危険な地へと向かわせる。 誰かを守る。 自分の生活を守る。 パイオニア計画には多くの軍部関係者が先陣を切るが、何か問題があればハンターズにもお呼びがかかるだろう。 その時にハンターズの名を貶めぬ様戦わなければならないのだ。 いつもチームを組めるとは限らない。 強くならなければならないのだ。 ・・・武者震いが来た。 私の求める力がココにあると確信した。 模擬空間とは言え戦場であるこの場所で、戦いとは違う会話が出来るようになったのは余裕なのか虚勢なのか・・・。 それでも強くなろうとする同じ目標を持った人達との会話は心が弾んだ。 自身も戦いながら戦場の様子を感じられるようになっていた。 自分だけの事でなく、仲間達の状態にも焦らずに目を向けられるようになっていた。 気付くとテストが終わっていた。 「パイオニア2は大きな船だけど、所詮は限られた場所だからきっとまた会えるな」 正式にヒューマー(ハンター・人間・男性)になった彼がふと呟いた。 「ハンターズは同じ区域に収容されるでしょうから嫌でも顔を合わせるのではないですか?」 皮肉混じりにヒューキャシール(ハンター・アンドロイド・女性)になった彼女も呟いた。 「収容って何だか嫌な響きだなぁ〜」 首を竦めてレイマー(レンジャー・人間・男性)になった彼迄呟く。 3人の後ろを歩いていたフォニュエール(フォース・ニューマン・女性)になった私はそんな彼らを見て、 「皆さんとは是非又お会いしたいです!」 と思わず力説してしまった。 体に残る封印のことも有り人との関わりが苦手だったが、彼らならこの封印が解けたとしても何とかしてくれるような気がしていた。 彼らになら、殺されても良いと感じた。 「まだ早いだろうけれど・・・」 ヒューマーが支給された真新しいハンターズスーツの包みを開け、微笑みながら個人端末を取り出し何やら打ち込み始める。 ヒューキャシールもレイマーも頷くと同じ行動を取る。 ここに至ってようやく気付く。 「ギルドカード!?」 ヒューマーが顔を上げて端末の送信スイッチを押した。 「これがあれば必ず会えるしね!」 慌てて端末を探し出し言葉を打ち込む。 「フォニュエールのナルです。冒険のお供に是非お連れ下さい」 データの送受信を確認して、今しばらくの今まで通りの生活へと戻って行く。 「また、パイオニア2でね!」 |