#20 守護者の魂
21−22話への盛り上げとしてひじょうに気持ち良く見させてもらいました。
話はおおむね原作にそっており、それをアニメでどう表現するかという事につい
ても申し分なくカッコよかったと思うので、今回は素直に面白かったポイント2つを簡
単に上げておきます。 お分かりと思いますがむしろこの後こそ感想がたいへんなのだと思うので軽めです(^^; 一つ目は、純粋に戦闘の面白さ。 体格とか早さとか、機械鎧の不調とかで圧倒的に不利なエドが、体ももちろん動か しながら思考回路フル回転という感じで戦っているのがものすごく小気味いいので す。動作の描き方もものすごくキレイ。「まるでサル」みたいに逃げ回るエドも。 やっぱり一番好きなのはアルのダミーを使って隙を作るところです。 「俺が一人じゃないってこと、忘れてるぜ」 そのあとの微妙な目配せ(まばたきの後ほんのちょっと視線を48の後ろへやる)の 加減なんか、極限状態でよくこんな芝居が打てるなあ!と。 そしてダミーを錬成したタイミングはその前に槍を錬成した時であるはずで、そうだ とすると槍の錬成そのものがダミーアルのさらにダミーだった、わけですよね。 天才はこういうことがナチュラルにできるんやなあ!ホレボレします。 ところがどっこい48は兄弟だった、というのも原作で出た時は驚きました。こんな のもアリか!ですよ。 とにかくこの作品兄弟だらけなんですが、この人たちの存在も、スカー兄弟と同じく 、エドとアルの在り方の比較対照、アニメでははっきりとアンチテーゼとして書かれ ていきます。これは21話感想で書く予定。 そして最後は「いやなやつ」と同じ方法で48弟を倒すエド。なりふり構うか、というわ けです。48弟の「よくも兄者を!」という叫びはたしかにスカーを連想させます。 そしてエドはアルのために、「一緒にするな」と叫んでいた相手の技をあえて使って でも生き残る。ということはまたひとつスカー側に近づいたという意味を持ちますよね 。これからの展開を考えると皮肉です。 あ、48はエドが両手パンで錬成する技術に驚かなかったことも確認しておきたい です。賢者の石の力によって、錬成陣無しの錬成も可能であることを彼らは知って いたのだと思われます。 ふたつ目はもちろんアルに対する「つくりもの」疑惑です。 来ましたね。せっかくだからここんとこ、ねちねちとやっていただきたい! 実は原作の病院屋上仲直りのシーン、私はちょっと消化不良が残っています。ア ルがこのとき抱いた疑惑ってそんなことで解消できるほどのものだったんだろうか と。ね。期待してますから。>ボンズさま アルの連れの金髪の小僧が兄だと知ったとたんに「お前を鎧の姿にしたのもその アニキってわけだ」というのは勘が働きすぎだと思うのだが66。まあそれは置いて おいて、66に詰め寄られて自分の存在そのものに揺らぎを感じてしまうアル。 エドの「お前に言えなかったことがあるんだ」発言に加えて、 リゼンブールでアルが友達の顔を思い出せなかったときのウィンリイの表情がなんかもの 言いたげだったのが非常に気になります。つまり「アニキもまわりの人間も、みんな してお前を騙しているのかもしれないんだぜ」、に対応する疑惑です。 ラストカットの思わせぶりぶりなリゼンブールのショットも合わせて気になります。 さあ、「アル作り物疑惑」を否定する要素がだんだん削られてきています。これをど う生かしていくか。肉体を失い魂にも疑問符が付いたとき、人間が人間であること を――アルがアルであることをどう証明するのか。 ていうかですね、私最近思うんだけど、ぶっちゃけアルはホントにエドによってつくら れた人工物でも構わないんじゃないかと。鎧の体、ニセモノの魂でそしてそれでも 僕はアルフォンス・エルリックだといえるものが彼にできたらホントに強くなると思う んだけどな。エドも同じですが。 アルを人間だと信じるのと同じように、48をも人間だというエドの言葉を聞いて高ら かに笑う48兄。 「人としての心どころか体まで失った今になって人間扱いされるとは!」 …歓喜の笑いにしては純粋さに欠けた笑いだと思いました。やはりそれほど単純 なものではない、ということが21話でわかります。 人は何を持って人たりうるのか。「鋼」の大テーマのひとつ、そのヒントが次回以降につなげられます 。 あとはひとことずつ箇条書きで。 ・少佐に兄弟のことを報告し、彼らを救出する提案をするロス少尉。 第五研究所という、軍にないはずのもの、上層部が隠しているものをあらわにしようとすることになるとしたら、 公的な処分云々はともかくとしてもどこかから目をつけられることはこの時点で覚悟しての行為です。 ロスは、おとなとして、「軍」=「おとな」の影の部分に切り込もうとしています。 「どうしておとなになるの?」「おとなに勝てるのは、おとなだけだからだよ」 といっていたのは『ナディア』ででしたっけ。 ロスはここで、職業軍人でありそしておとなである自分の役割を見出しています(18〜19話参照)。 ・66とアルの漫才は二人のやや距離を広げた位置関係が絶妙におかしい。展開 が読めても笑える。すばらしい。 ・66はバリーの時よりも女装した時よりもこの鎧の時がもっとも中身に似合った、 そしてチャーミングな外見をしてると思う(笑)。 ・「俺昔からあいつとケンカして負けたことないんだ」 「そんなことない、兄さんは僕を愛してくれている」 はっはっは。ブラコンもここまで行けば突っ込みようがない。 恥も外聞もなく兄さんとの愛を叫ぶ14歳男子ってありえねえ。こんなんだからトモダチいないんだと思う(笑)。 次回予告:「紅い輝き」 20話はかなりきっちり原作によっており、21話からの展開はそこから爆発的に発 展するようです。20話はその前段階を固めたのだと。すばらしいツナギでした。さあ 次へまいりましょう。 (2004.03.08記) |