〜Fate Silver Knight〜 

〜出撃〜



「あ、やっと来たわね」
「イリヤ、一体、どうなってるんだ?」

シグルド達と共に部屋を訪れると、そこにはすでに、イリヤ、ライダー、ギルガメッシュがいる。
どうやら俺達が、一番最後のようである。微笑むイリヤに、俺は説明を促した。

「うん、説明をするわ。それじゃあ座って」

ポンポンと、自らの横の席を叩き、そこに座るように促すイリヤ。
すでに円状のテーブルを囲むように、ギルガメッシュとライダーは座っており、ヒルダさんとシグルドも並んで座る。
俺はイリヤの隣に座り、テーブルの上に広げられた地図に目を向けた。

先ほども見た古めかしい地図。その描かれた森の右下と左下の部分に、それぞれ二つと一つ、チェスの駒が置かれていた。
二つ並んだ方の駒を指差し、それをチョンと突っつくイリヤ。

「今、反応があるのは……この三つよ。なんだか様子を見る限り、この二つは争っているみたい」
「争っているって、味方……なのか? まさか、遠坂が――――」

一抹の期待を込めて、俺は問うが、それに対して、イリヤはそっけなく首を傾げた。

「多分、違うと思うわ。侵入者が誰であるか、魔力の質や量で、ある程度は特定できるけど、今ここにある反応は、紛れもない英霊のものよ」
「――――そうか」
「それで、もう一つの方は……こっちはよく分からないわ。魔力量は明らかに英霊だけど、なんだか異質なものが混じってるみたい」

眉をひそめながら、イリヤは左下にあるチェスの駒を指差す。
地図の左下――――北を上にして描かれるそこは、位置としてはこの城の南西。
森で一泊した廃墟の南側に、それは置かれていた。

「なんにせよ、相手が単体でいる今がチャンスよ。すぐにライダーとシグルドは城を出て、この相手を倒してきなさい」
「――――出るのは構わないが、状況はどう確認するんだ? 通信方法があればいいが」

確かに、今なら孤立している相手を叩けるかもしれない。
しかし、城を出て遭遇するまでに、相手も合流するかもしれないし、別方向からの進入もあるかもしれない。



「通信方法ね。それなら大丈夫。私とライダーで行うわ」
「イリヤと……ライダーが?」

ライダーに視線を向けると、紫紺の髪を揺らして彼女は深く頷いた。
その顔には、薄い笑み。どことなく捕らえ所のない表情は、何を考えているのか皆目見当がつかなかった。

「令呪を使ったのよ。範囲限定や期間限定での行使は、かなりの能力を施行できるから」

この森林内で、互いに思ったことを伝えれるように、令呪を使ってその能力を得たらしい。
もっとも、森の外では使えないし、効果も持って一週間か、そこららしいが。

「ともかく、状況は常に私からライダーに伝えるわ。あなたはそれを聞いて動きなさい」
「――――了解」

イリヤの言葉に、手短に応答すると、シグルドは席を立つ。
それに応じるように、ライダーも席を立った。どうやらすぐに、城を出るようだった。
状況がどう動くか分からない以上、できるだけ早めに動いたほうが良いと判断したのだろう。

ライダーが部屋を出て行き、遅れて、シグルドが部屋を出ようとする。
その直前、彼は席に座った俺に歩み寄ると、肩をポンと叩いてきた。

「ヒルダを頼む。君が守ってくれ」
「俺が、ですか? 俺よりギルガメッシュに頼んだほうが、良いんじゃあ……」

その言葉に、シグルドは目を細め、何となく憮然とした表情を見せた。

「言って聞き入れてくれるとは思えないからな。君の役目だ……頼んだぞ」
「あ、ちょっと……」

返事を待たず、シグルドは部屋を出て行ってしまった。
あとに残されたのは、二人のメイドと、俺、イリヤ、ギルガメッシュと、ヒルダさん。

「――――よろしくお願いしますね。士郎さん」
「…………」

なぜか、イリヤの視線がいたい。ムッとした表情で俺をもの言いたげに睨んでいた。
そんな事とは露知らず、ヒルダさんは、ニコニコ顔で俺に笑いかけてきた。

何気なくも気品のある仕草で紅茶を飲むギルガメッシュは、どうやら事に関わるつもりは無いようである。
……気苦労が増えそうな護衛になりそうだ――――そんな予感がして、俺は目を閉じて、ため息をついた。

〜幕間・剣の舞、槍の瀑布〜
〜幕間・闇の森、光の神〜

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