ぱすてるチャイムContinue Lu Monde 

たいせつなともだち



軽い女の子の重みが、身体にのしかかる。どこか日常とは一線を臥した光景に不思議と緊張したのか、喉が震えた。
鮮やかな若草色の髪、どこか子供のような、あどけなさを残す……半裸の少女。
彼女は、いつものように、邪気のない微笑を浮かべながら、俺に抱きついてきた――――。

「ナギー、ハグ♪」

…………そこで唐突に、俺は正気に引き戻された。
ナツミの肩に手を置くと、ぐいっと押し返す。このままでは。貞操のピンチだぞ、俺。

「ハグ〜」
「こら、いきなり何をするのかな、このナツミさんは」

なおも抱きつこうとする、ナツミ。どうも俺が押し返したのが、ナツミには不満だったらしい。
ハグハグ言いながら、擦り寄ってくるナツミを、俺はぐいぐいと押しのけた。
もう押し返す部分は、肩だけではない。頭や腰、胸にも手を当て、押し倒されないように俺も必死だった。

「はぐするのさ、ナギー!」
「は・な・れ・ろって……!」

そうして、押しつ押されつ……30分ほどが経過した。しかし、改めて考えると、いったい何をやっているんだろうか、俺は。
ベッドの上で子供のプロレスのように、ドタバタと暴れるのは、さすがに高校生にもなって恥ずかしいと思うが……。

「あはは、はぐはぐ〜♪」
「…………」

ナツミは、思いっきりご機嫌のようだ。俺はため息をつき、抵抗をやめる。すると、あっという間にナツミが抱きついて、そのままベッドに二人して倒れこんだ。
華奢な体が密着し、柔らかい胸が当たって、さすがに落ち着かない。まったく、ナツミ相手に何を考えてるんだ、俺は……。

「あれ、もう終わりなのさ?」
「もう終わりって……少し落ち着け。いったい何がしたいんだ、ナツミ」

覆いかぶさるナツミを見上げながら、俺は質問をする。しかしこの体勢――――普通は男女逆になるんじゃなかろうか?
俺に覆いかぶさるナツミは、羽織っていたシャツもヨレヨレで、前をぜんぜん隠せてない。
視界の隅にどうしても映ってしまう、小ぶりなふくらみと、桃色の頂点。暴れて汗をかいたせいもあって、その光景はいっそう誘惑的に見えてしまう。
そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、ナツミはとことんまでナツミらしく、微笑みながら小首をかしげたのである。

「なにって……勉強も終わったみたいだし、ナギーと遊ぶつもりだったのさ」
「はぁ……」

ということは、今までのは単にじゃれてるだけなのか……妙にかんぐりすぎた俺は、自分自身に苦笑を漏らす。
ま、そうだよな。ほかの女子ならいざ知らず、ナツミが俺を誘惑するなんてこと、ありえないか。

「分かったから、服を着てくれ。そしたらいくらでも遊んでやるから」
「?」

俺は視線をそらしながら、ナツミに服を着てくれるように頼んだ。だが、どうやら視線を逸らしたのは、まずかったらしい。
ナツミは自分の格好を見下ろして、にかっ、とそれはそれは楽しそうに笑った。

「ひょっとして、ナギー……意識してるのさ?」
「あのなぁ……この状況で意識しないやつは、よほどの聖人君子か、ホ○くらいだぞ」
「ふむふむ、ナギーは○モではない、と」

なにやら納得したように、ナツミはコクコクと頷いた。しかし、いったい何時になったら……どいてくれるんだ?
さすがにずっとこの体勢はきつい。ナツミに組み伏せられているとはいえ、少し動けば互いに体の当たる距離だ。これ以上の刺激はごめんこうむりた――――、

「って、おい! どこ触ってるんだよ!」
「どこって、見れば分かるのさ」

さわさわとした感触が、太ももをなでる。ナツミの手が、部屋着を着た俺の太ももあたりから、その付け根に…………!
まずすぎるぞ、それは……今度こそ本当に、貞操のピンチだ! ああ、だけど身体を動かすこともできない――――。

「ほ〜、ナギーのここ、ビンビンに張ってるのさ」
「ぅぅ……」

母さん、俺は高校生にもなって……同級生の女の子に身体を悪戯されてます……。
というか、そんな状況でも、スーパー状態の俺の息子を褒めてやりたいくらいです。

「もう勘弁してくれ……」
「あはは、恥ずかしがることないのさ」

いろんな意味でボロボロな俺。ナツミはというと、興味心身に服の布地越しに、俺の股間をいじくり回している。
その表情に恍惚の色はなく、ただ単に、新しいおもちゃを見つけた子供のような表情が見え隠れしていた。
俺は苦笑し、ナツミのしたいようにさせることにした。ほっとけば、そのうち飽きて開放してくれるだろ。

「ね、ナギー」
「……ん?」

股間とその周辺を撫でるナツミの手を、ほんの少しむず痒く感じながら、俺はナツミの声に耳を傾けた。
正直……俺は、ナツミの事を恋愛対象としてみていない。それはナツミも同じだろう。だから――――、

「このまま……えっち、してみるのさ?」
「――――?」

続けて言ったナツミの言葉は、ひどく現実離れしていて、ありえないことだと、頭が判断してしまったのだ。
見上げる俺の視線と、見下ろすナツミの視線がかみ合う。どこか純粋な色を湛えるナツミの瞳が、この時とても、綺麗に見えた……。


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