ドイツの森から…

Deutscher Wald



シューベルティアーデ風に

Concert comme Schubertiade



武久 源造(ピアノ)   稲富 祐香子(ソプラノ)   織田 準一(トランペット)   藤村 恵子(フルート)



1998年5月8日(金)19:00開演

香川県県民小ホール(アクトホール)

主催:四つ葉のクローバー実行委員会


主な演奏曲目

フルート独奏

シューベルト: しぼめる花による主題と変奏
Franz Schubert (1797〜1828): Variationen über Ihr Blumlein alle

ピアノ独奏

シューマン: 森の情景
Robert Schumann (1810〜56): Waldscenen

ソプラノ独唱

リスト: ローレライ
Franz Liszt (1811〜86): Die Loreley

トランペット独奏

武久源造: ロマンスのあとに
Genzo Takehisa (1957〜): Apres la Romance



この他、ドイツの森に因んだ曲を、出演者による話を交えながら演奏します。


ドイツの森

森、それは異なる世界が出会う場所。人間の文明と自然、現実とファンタジー、この世の営みと霊や妖精の世界等々。日本でもヨーロッパでも、人は時折森に出かけ、一人になって物思いに耽る。木々と語り、鳥たちの歌に聞き入り、動物たちと戯れる。ギリシァや日本など多くの国の神話が森を舞台に展開する。白雪姫も森にさまよい、こびとたちに救われた。ファウストも森で試練に会った。森で起こる様々な出来事は、人に何事かを悟らせ、ある意味で生まれ変わらせるのであろうか。

わが国は古来森に恵まれていた。我々は気軽な気持ちで森林を愛し、それを友としてきた。しかし元々荒れた土地の多かったヨーロッパ、特にドイツでは、森は懸命に守られねばならないものだった。それだけに人々の森に対する思いにも尋常ならぬものがあった。

19世紀はロマン派の時代。そして森はロマン派の文学や音楽の主要なテーマの一つだった。それは未知なる世界への入り口、人をたぶらかす悪霊の住処、この世ならぬ美女や英雄に会える場所、我々の<ロマン>の源泉……。

本日はいずれも森に縁の深いトランペットとフルート、そして「美女の歌声」によって、しばらくの間、皆様の心の森に遊んでいただければ、と思う。

武久 源造    


武久源造と香川

武久源造は、鍵盤楽器奏者として現在の日本を代表する一人である。これまでにチェンバロやオルガンを演奏したCDも数多く発売し、「ゴールドベルク変奏曲」を初めとして、いずれも極めて高い評価を受けている。こうした演奏活動以外にも、別紙のプロフィールに書かれているように、作曲活動を含む多方面での多才な活躍で知られている。私は1994年3月、東京の教会で、モンテヴェルディの声楽曲などを指揮する武久源造に接する機会があったが、その音楽をする喜びに溢れた指揮ぶりは、未だに印象に残っている。

さて、シューベルトがヴィーンに住んでいた当時、彼の音楽を楽しむために集まった知人や友人たちによって、シューベルティアーデと呼ばれた小さな音楽会が開催されていた。今回の「ドイツの森…」は、当時のくつろいだ雰囲気を、今日のステージで多少とも取り入れられればと考えて企画された。「武久源造と愉快な仲間たち」とでも題すべき今晩のコンサート、じっくりお楽しみいただければ幸いである。

武久源造が初めて香川の演奏会に登場したのは、1992年10月、高松の桜町カトリック教会での「トランペットとチェンバロとソプラノによる教会の響き」と題された音楽会である(織田準一、稲富祐香子との共演)。また、1997年1月には、善通寺の四国学院大学で、パイプオルガンの演奏会も開催している。また、武久源造と高松の関わり合いで、忘れてはならないのは、1993年よりフランス料理店「ラ・プロヴァンス」で毎年開催されているサロンコンサートである。小さな空間でフランス料理を賞味しながら、武久源造の生演奏に耳を傾けるという贅沢は、まさに夢のような一時である。通常はチェンバロ独奏のことが多いが、1995年は修復された貴重なフォルテピアノでの演奏、1996年には、フラウト・トラヴェルソの第一人者である中村忠との共演など、毎年聞き逃せない企画が続いている。これからも香川での演奏活動に期待していきたい。

最上 英明    


プロフィール

武久 源造 (ピアノ)

愛媛県松山市出身。 東京芸術大学大学院音楽研究科修了。 チェンバロを小林道夫氏、鍋島元子氏に師事し、オルガンを秋元道雄氏、月岡正暁氏に師事する。 1984年より国内外で演奏活動を開始する。 チェンバロ、オルガン、ピアノなど各種鍵盤楽器を駆使して、中世から現代までの幅広いジャンルにわたり、さまざまなレパートリーを持つ。

1991年よりCDをリリース。 うちシリーズ「鍵盤音楽の領域」T、U とオルガン作品集「最愛のイエスよ」、 J.S. Bach「ゴールドベルク変奏曲」および J.S. Bach「オルガン曲集 Vol.1」が「レコード芸術」の特選盤となり、高い評価を得る。

1991年にアトランタで開かれた「国際チェンバロ製作家コンテスト」では、審査員の一人として招かれ、 1997年4月には甲府で開かれた「第11回古楽コンクール」などで審査員をつとめた。 作曲や編曲にも携わり、発表された作品が好評を得る。 放送大学特別講師として鍵盤楽器の歴史を扱った番組に出演するなど、多彩な活動を続けている。


織田 準一 (トランペット)

香川県高松市出身。 高松市立高松第一高等学校を経て、東京芸術大学音楽学部を卒業。 東京芸大入学と同時に「上野の森ブラスアンサンブル」を結成し、国内はもとより、1990年、インド、アラビア諸国を、1992年にフランス、アフリカ諸国を演奏旅行で訪れる。 テレビやFM放送出演も多く、NHK衛星放送「ザ・マーチング」にレギュラー出演など精力的な活動をしており、1993年、サントリーホールにて結成20周年リサイタルを、今年3月には東京文化会館大ホールにで25周年リサイタルを開くなど息の長い演奏活動を続けている。

また、バロックトランペット奏者としての活躍も多く、ヨーロッパ各地で公演。 1992年にペーター・シュライヤー指揮のベルリンバッハ管弦楽団の日本公演にソプラノのエレーナ・ブリリョーワと共にソリストとして招かれ、日本各地で好評を博す。 その他、NHK−FM放送「錦町発たそがれコンサート」、「ホリデーコンサート」にソリスト&パーソナリティとしてレギュラー出演するなど幅広い演奏活動を続けている。


稲富 祐香子 (ソプラノ)

香川県大川郡白鳥町出身。香川県立高松高校を経て、東京芸術大学音楽学部声楽科を卒業。 竹内肇、中村義春、須賀靖元、毛利準の各氏に師事。 1977年、オーストリア給費奨学生として、国立ウィーン高等音楽大学に留学。 E.ドッティル女史、エリック・ヴェルバ氏の指導を受ける。 帰国後、東京、高松にてモーツァルトのモテット、ヘンデルのメサイア、バッハのマタイ受難曲、カンタータのソロを歌う。 1983〜86年、桜町カトリック教会、東讃三町オータムコンサートでのトランペット織田準一氏とのジョイントリサイタルに始まり、 1992年には武久源造氏を迎えて同教会にて三人のコンサートを開催。 1994年、高松、徳島にてソロリサイタルを開き、 1995年、大阪、尾道にてフォルテピアノ武久源造氏と共演。 その他、オペラ、ジョイントリサイタル、徳島文理大学定期演奏会など演奏活動を続ける。 1996年、坂出にて東京交響楽団コンサートマスター大谷康子、音川健二、勝郁子氏らと共にクリスマスコンサートに出演。 現在、徳島文理大学音楽学部専任講師。


藤村 恵子 (フルート)

香川県香川郡香川町出身。 高松市高松第一高等学校を経て、武蔵野音楽大学を卒業。 同大学の卒業演奏会に出演。 野口博司、甲斐道雄、佐久間由美子、植田典子、金田佳美の各氏に師事したほか、ローランド・コバーチ氏、ミシェル・デポスト氏の公開レッスンを受講。

1990年、秋山晶子氏とジョイントリサイタルを開き、 1992年にウィーン・モーツァルト・トリオと、 1994年にはザルツブルク・モーツァルト・アンサンブルと共演。 1996年、オータム・コンサートに出演、また、ソロリサイタルを開催する。 1993年よりNHK−FM放送「錦町発たそがれコンサート」に始まり、度々出演を重ね、1997年同番組「ホリデーコンサート」に織田準一氏と共に出演。 その他、ソロ、アンサンブルなどで積極的に演奏活動を行っている。 ハイドン室内管弦楽団志度団員、高松ウィンド・シンフォニー、香川フルート友の会、高松市役所吹奏楽団、クリシュナ・フルート・アンサンブル、アンサンブル・ミュゼットの各団体に所属。 現在、高松市高松第一高等学校音楽科講師。