共通ルート第28話 それぞれの戦う意味

ブライト「事情は聞いた。…アクセル、とにかく、
ご苦労だった」

アクセル「…ああ」

ユリカ「ほんとに、よかったです! アクセルさんが戻ってきて
くれて!」

アムロ「僕も喜んでやりたいが、さすがにそうもいかない。
…話してくれるか?」

アクセル「かまわない。…何から話そうか」

クワトロ「シャドウミラーとは何か…でいこう。
君の正体についても、それでわかる」

アクセル「…地球連邦軍特別任務実行部隊」

シロー「聞いたことがないな」

コウ「俺もです」

バニング「俺もだ。…名前からして、特殊部隊の類だろう。
ティターンズのようなものか?」

アクセル「こっちの地球連邦軍にはない。…だが、俺たちのいた
地球連邦軍には存在したんだ、これがな」

万丈「ギャリソン、みんなにお茶の用意を。…少し
長くなりそうだからね」

ギャリソン「かしこまりました」


アクセル「…地球圏で、大きな戦争があった。異星人の侵略、
人類の内紛などから起きた戦争だ」

アムロ「1年戦争とは違うのかい?」

アクセル「ああ。一時は地球が異星人に占拠された
時もあったんだ、これがな」

京四郎「おいおい、地球が異星人に支配されたことなんて
一度もねえぞ」

アクセル「だから、俺たちのいた世界の話だと言っている。
黙って聞け」

ジャック「続けてドーゾ」

アクセル「それでも地球圏は、持てる力を結集して
敵に打ち勝ち…平和を手にした。信じられないかもしれないが、
この時、連邦とジオンは手を取り合って、敵をせん滅している。
それこそ、アマダ少尉とアイナさんみたいにだ」

シロー「すごい。こっちでは、これで精一杯なのに」

アイナ「ええ…」

アクセル「その時のジオン総帥は…シャア・アズナブル」

アムロ「なに…?」

クワトロ「……」

ユリカ「でも、シャア・アズナブルって…」

アクセル「こっちの世界では、星の屑作戦の実行中に行方不明に
なっているはずだ。だが、俺のいた世界ではそうでは
なかったんだ、これが」

甲児「ちょっと待ってくれよ。お前の話だと、別世界ってわりには…
知ってる名前がずいぶん出てくるじゃねえか」

アクセル「兜甲児はDr.ヘルを倒したあと、自作でUFOを
造れるほどの技術者になっている」

鉄也「どういうことだ?」

万丈「こういう時は説明していただこう」

イネス「説明しましょう。これは平行宇宙…いわゆる
パラレルワールドね。これを語るには、まずは
『シュレディンガーの猫』のお話を…」

(中略)

健一「もっとわかりやすい…たとえみたいなのはないんですか?」

アムロ「そうだな。…たとえば僕が1年戦争の時、V作戦に
巻き込まれていなかったら…たぶん、今僕はこの場には
いないだろう。その『もしも』の世界のことさ。
…違いますか? フレサンジュさん」

イネス「概念はあってるわね」

アクセル「そうだ、その『もしも』の世界のうちのひとつから
俺たちは来た。…その証拠にシャア・アズナブルは
若くして総帥となり、アムロ・レイはア・バオア・クーで
…戦死している」

バニング「大尉が…?」

アムロ「それが、シャドウミラーが僕のことを曹長と呼んだ
理由か。あの頃の僕の階級は、確かに曹長だった」

アクセル「話を元に戻そう。この協力体制によって…
やがて平和な時が訪れた。だが…」

大介「長くは続かなかった…違うかな?」

アクセル「惜しいな。結果的にはそうなったが、流れは違う」

マリア「どういう意味?」

アクセル「ゆるやかな腐敗さ。戦争はしません、平和に暮らしましょう。
その言葉を隠れみのに、連邦は…いや、
世界は少しずつ腐敗していった」

プロスペクター「なるほど。確かに1年戦争が終結してしばらくは、
ひどいものでしたな。…結果、連邦はティターンズという
組織を生み、大きな悲劇につながっていくわけですから」

カミーユ「……」

ロザミィ「お兄ちゃん?」

アクセル「ヴィンデル・マウザー…地球連邦軍特別任務実行部隊
シャドウミラー隊隊長は、その世界を憂いた。
だから…クーデターを起こした」

コウ「世界が絶えず争っている世界を作るために?」

アクセル「そうだ。戦争の結果は、決して出してはならない…
そのあとに待つものは、平和という名の腐敗が待つだけだからだ。
…闘争が日常である世界なら、それは永遠に起こらない」

ルリ「そんなの、理論上に過ぎないと思いますけど」

アクセル「理論上と言うよりは、確率の問題だな。
平和な世の中より、闘争を日常とする世界の方が、
腐敗が起こる可能性は低い。…それどころではないわけだからな」

五飛「……」

ヒイロ「その考えは、間違ってはいないかもしれん。だが…
正しくもない」

チボデー「無責任な言い方かもしれねえけどよ、それならそっちで
勝手にやってくれと思うがね」

サイ・サイシー「そうだよ。なんでこの世界にやってきたのさ?
だいたい、どうやって?」

ノイン「…次元転移装置…というものか?」

アクセル「正解だ、ノイン教官殿。…別次元を飛び越せる
シャドウミラーは…敗れたからだ」

一平「…お前がいた世界の…連邦軍にか?」

アクセル「…ゲシュペンストmk-Vを隊長機とした、
ゲシュペンスト隊の前にな」

ブライト「ゲシュペンスト隊…? そうか、3機しか造られて
いないはずのゲシュペンストをシャドウミラーが大量に
保有している理由は…」

アクセル「正確には量産型だが、性能的に大差はない。
こっちの正式採用機がドラグーンなのは、向こうでの
教訓を生かし、内部工作でゲシュペンストの正式採用を
見送らせたからだ、これが」

タップ「そんなにすごいのかよ、ゲシュペンストって」

アクセル「ドラグーンは、コスト面、性能面…すべてにおいて
優等生だった。だが、数々の失敗作を経て最終的に
ゲシュペンストシリーズは恐ろしい伸びを見せる。
低コスト、高性能の量産機に1機で戦況を
変えられる究極の機動兵器…そのほとんどが
ゲシュペンストを元にしている」

ライト「だからゲシュペンストを連邦正式採用機にするわけには
いかなかったわけか」

アクセル「そう…だが、ドラグーンにも誤算があった。
試作D兵器がここまで残ったことによって、こちらの
予想よりも、はるかに優れた機体に仕上がって
しまったことだ」

ケーン「試作D兵器って…俺たちのドラグナー1、2、3だよな?
残ったって…どういうことだよ?」

アクセル「試作D兵器は、ろくな戦闘データも取れないまま、
大破、完全廃棄となった」

リンダ「ケーンは!?」

アクセル「パイロットの名前は、ケーン・ワカバではなかったはず。
他の2機もだ」

ライト「なるほどね。俺たちはそっちでは民間人のままってわけか」

ユリカ「それで、シャドウミラー隊ごと、こっちの世界に飛んできた
わけですね!」

ブライト「規模は?」

アクセル「ゲシュペンストmk-Vだけで2000機」

ヒカル「うそぉ!」

アクセル「…と言いたいところだが、実際こちらに来れた数は
1割にも満たない」

リョウ「え? なぜだい?」

アクセル「空間転移ならまだしも、時空転移ともなると、
まだまだ不安定で、不確定要素も多い。大半は時空のねじれに巻き込まれて
消滅した。…俺の記憶喪失も、その時の影響だと思う」

カトル「なんてことだ。その程度の数に、地球連邦も異星人も
いいように振り回されたというんですか?」

トロワ「しかし、逆に言えば、シャドウミラーは単独では大した力は
もっていない…」

バニング「今回、ギガノスやマリーメイアと組んだように、
他の勢力の力を借りなければ厳しいようだな」

デュオ「寄生虫みたいな組織だぜ。…となると、
兵士の数もそんなにいないんじゃないのか?」

アクセル「人間でない兵士ならゴマンといる。Wナンバーと呼ばれる、
人造人間だ。心を持たず、指令のみ忠実に実行する…人形だ」
(W17…シリーズ最高傑作。いつか決着をつけねばならん)

アキト「連中の目的は…この世界を?」

アクセル「最終的な目的ではない。シャドウミラー隊、
いや、ヴィンデルの真の目的は、この世界をテストケースとして、
増強した軍事力を持って…元の世界に復讐することだ」

日吉「テストケース…そのために」

小介「いろんなところに潜入して、情報を操作していると
いうことですね?」

アクセル「そういうことだ。シャドウミラーは各組織に俺のような
スパイを送り込んでいるんだ、これが」

めぐみ「そのスパイを通して、情報や技術を入手しているってわけね」

アクセル「ああ。ネルガルやアナハイムにも入り込んでいるはずだ」

エリナ「なんてこと、すぐに連絡して調査しないと!」

ニナ「この騒ぎの中で? とっくに逃げ出しちゃったんじゃないかしら」

アクセル「そして…リオン大元帥暗殺は、小バームに入り込んだ
工作員の仕業だ」

一矢「…なんだと!?」

アクセル「間違いない。なぜなら、指示をしたのは…
俺だからだ」

一矢「お前はっ!」

アクセル「ぐっ!」

一矢「お前のせいで、地球とバーム星は…! 父さんは!」

ドモン「落ち着け、竜崎!」

レイン「彼がしなくても、別の人がやるだけよ!」

一矢「かもしれない…だけど!」

アクセル「……」

リリーナ「でも、これで地球とバーム星の戦争が陰謀によるものだと
立証されたのです。和平の可能性が出てきました」

ノイン「プリベンターの方で裏付けをとってみましょう」

ボス「ところでよ、こいつをこのままロンド・ベルに参加させて
いいのか」

マリア「別にいいじゃない。何か問題あるの?」

エリナ「シャドウミラーのスパイだった男よ!?」

ハヤト「そりゃ、この前までの話だ。それともなにか、俺たちを
助けるために自爆したり、今回助けに現れたのは、
芝居だとでもいうのか?」

ベンケイ「ハヤト…」

ブライト「こうしよう。…彼は投降してきたものの、まだ危険性がある。
ここはロンド・ベル隊の監視下に置く」

アカツキ「やれやれ、どいつもこいつもみんな甘ちゃんだこと」

レイカ「スパイ容疑ということなら、あなたも同罪だってことを
お忘れなく」

ビューティ「なにしろ、自分の正体を隠してロンド・ベルに潜入したって
ことは、アクセルと同じだもんね」

万丈「アクセルくんと違って、ここまで正体がバレてた
スパイも珍しいけどね」

アカツキ「好きにしてくれ。まったく…失敗したよ」

アクセル「相変わらずの部隊だ。…だが、それがいい」


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