第33話 その瞳に未来は映ることなく(独立軍ルート)

(シナリオデモ)

セレイン「どうした?それは私の新しい機体だ。何か気になることでもあるのか?」

レラ「そういうわけじゃないけど……すごい機体だね、力を感じる」

セレイン「そうだな」

レラ「戦うための力、敵を倒すための力だ……。こんな力がアタシにあったら……」

セレイン「どうかしたのか?」

レラ「えっ?ううん、別に。あ、そうだ、こないだのシミュレーションの結果、どうだった?」

セレイン「お前の模擬戦闘のか?かなりマシにはなってきたが、まだまだだな。
実戦で後ろはまかせられん」

レラ「そっか……くやしいなあ。アタシ、操縦のセンスないのかな」

セレイン「そんなことはない。かなりいい方だと思うぞ」

レラ「だけどさ、ろくに訓練もしないで乗りこなす奴だっているじゃないか」

セレイン「あれが特殊なだけだ。世の中の民間人全部があんな連中なら、訓練学校はいらんし、
帝国に負けることもなかった」

レラ「じゃあ、アンタはどうなのさ。そんなに時間はかからなかったんでしょ?」

セレイン「私にはそれしかなかったからだ。命をかけて実戦で学ばなければならなかった。
その頃腹に空いた風穴の跡は今でもうずく。仲間はみんな死んだ。お前が重火器の扱いまで覚えたのと
同じことだ。お前がいた組織に機動兵器があれば、今頃お前も熟練パイロットか、あるいは土の下だろう」

レラ「なら、アタシだって、実戦で慣れればいいってことだろ」

セレイン「今は頼りになる連中が大勢いる。不慣れな人間が命をかけるのは意味がない。戦いたければ
早く慣れることだ」

レラ「……そうだね。戦いはまだまだ続くんだ」

セレイン「そういうことだ」


リッシュ「かーわいい嬢ちゃんだねえ」

セレイン「あいつの前で言ってみたらどうだ?銃弾をプレゼントしてくれるだろう」

リッシュ「クックックッ、そういう性格かよ。まるでお前のミニチュアじゃないか」

セレイン「貴様に言われたくはない。だいたい、なれなれしい態度はやめろと何度言ったらわかるんだ?
もう貴様の保護観察は終わった。私が一緒にいなければならない理由はない」

リッシュ「心外だな。これは親愛の情を表現しているつもりなんだが」

セレイン「迷惑だ。貴様がデッキに残るというのなら、私は他へ行く」


リッシュ「……自分と同じ道を歩いてる奴にいれこむのはわかるがな。俺たちがいるのは……
修羅場だぜ、セレイン、どこまで行っても、な」

シャリー「ちょっとあなた、ヒマなら手伝ってくれない?セレインにふられて、やることないんでしょ?」

リッシュ「いってくれるねえ、姉さん。そういうのは、思っていても口にはしないもんだ。
OZなら相手によっちゃ、大変なことになるぜ」

シャリー「残念だけど、私は整備兵じゃないし、ここはOZでもないのよ」

リッシュ「そりゃそうだ。だがな、俺はこういう雰囲気も嫌いじゃないぜ」

シャリー「そう。それで、手伝ってくれるの?くれないの?」

リッシュ「お手伝いいたしましょう。で、何をすればいいんだい、姉さん」


(マップ中、ジェリド撃破後自爆装置が起動するが、はずしに行ったレラが戻ってこない)

セレイン「なに?どうしたレラ、何かあったのか!?」

レラ「セレイン……あは、しくじっちゃったみたい……足、やられちゃって」

セレイン「戻れないというのか!?」

ブライト「なんということだ……」

セレイン「だめだ、出発は待ってくれ!私が連れ戻す」

ブライト「くっ、残念だがもう間に合わん……あきらめるしかない!」

セレイン「だめだ、だめだ、だめだ!発進を止めろ!!」

ブライト「無理なものは無理なんだ!つらいのは皆一緒だ。いつもの冷静なお前は、どこへ行った!?」

セレイン「あの娘は……私なんだ!」


ブライト「なに?」

セレイン「あれは私の昔の姿だ。目に映るもの全てを憎悪して、たいした力もないのに銃を取り、
そして……いつか自分が戦いの中で死んでいくと、それでもかまわないと……本気でそう思っていた頃の
私なんだ!」

アムロ「セレイン……」

セレイン「こんなところでッ!!」

(セレイン、ラーズグリーズで発進)

アムロ「よせ、セレイン!君もまきこまれるぞ!!」

クワトロ「ええい!」

セレイン「クワトロ大尉!?離せ!離してくれっ!」

クワトロ「かわいそうだが、君を行かせるわけにはいかん!いま、君に死なれるわけにはいかんのだ!」

セレイン「くそっ、離せぇぇぇーっ!!」

レラ「……セレイン?」

セレイン「レラか!?ああ、聞こえているぞ!」

レラ「ねえ、アタシもさ……いつか、セレインみたくなれるかなあ……」

セレイン「バカ、お前は私なんかより、ずっとマシな人間になれるさ。待ってろ、すぐ行ってやる」

レラ「うん……」

セレイン「レラ?……レラ!?おい、返事をしろ!!」

レラ「……」

セレイン「おいレラ!!応えろッ!!」

レラ「……お…母さん……?」

セレイン「レラ……!?何を……?」

レラ「……お母さん、アタシね、夢を見てたんだ……長い、長い夢……」

セレイン「しっかりしろ!おい、レラ!!」

レラ「……みんな、みんな死んじゃうんだ……すごく恐かったんだよ……」

セレイン「おいっ!!」

レラ「ああ、夢で……よかったなあ……」

(爆発)

セレイン「あ……」
「くっ……レラァァァァァァァァーーーーッッ!!」


クワトロ「艦長、セレインは収容した」

ブライト「あ、ああ……よし、発進させろ!」


(エンドデモ)

大作「そんな、そんなのってないですよ!どうして助けてあげなかったんですか!?」

銀鈴「……」

鉄也「このバカガキが!俺たち全員、あそこで死んだ方がよかったってのか!?」

大作「僕はそんなこと言ってません!」

銀鈴「やめなさい、大作くん!」

鉄也「同じなんだよ!あの状況じゃ、そうするしかなかったんだ」

大介「鉄也くんもやめるんだ」

ブライト「くっ……誰だって……死ぬんだよ……」


沙羅「……もう誰も、あんたを苦しめたりしない。だから、ゆっくりとお休みよ、レラ」


セレイン「あいつには、私とは違う道を選ばせてやりたかった……。もっと他にも、生きる道はあるのだと、
教えてやりたかった。私と同じようには、なってほしくなかったんだ……」

アンナ「セレイン……」

セレイン「あいつは、こんなところで死んじゃいけなかった。あいつを殺したのは私だ。
私がレラを殺したんだ!」

リッシュ「おい、落ち着けよ。お前らしくないじゃねえか」

セレイン「黙れ!お前たちに何がわかる!?」

(バシッ)

セレイン「つっ……」

甲児「おい、女の子に何すんだよ!」

セレイン「いい、かまうな」

甲児「でもよお……わ、わかったよ。にらまなくたっていいだろ」

リッシュ「まったく、お前がこんなつまんねえ女だと思わなかったぜ。
お前はもっと強いと思っていたんだがな」

セレイン「…………」

リッシュ「お前は、自分のやってきたこと、自分の生き方を後悔しているのか?違うだろ、
後悔なんかしてやいないんだろうが?」

セレイン「……ああ」

リッシュ「なら、あいつもそうだったさ。自分で生き方を決めて、その通りに生きた。後悔なんかして
なかったさ。しかも、あいつはお前に会えたんだ」

セレイン「だけど……だけど私は……」

リッシュ「もういい、セレイン、もういいんだ。精神安定剤でももらって、少し休んでこいや。
今のお前は、見ちゃいられん」

セレイン「……そうだな、そう……させてもらおう……」


甲児「大丈夫かよ、あいつ。あいつがあんなになってんのは、見たことないぜ」

アンナ「……セレイン……泣きそうというよりも……苦しそうだった……」

リッシュ「わかるのさ、自分でな」

甲児「なにがだよ」

リッシュ「心が壊れていくのが。セレイン=メネスって女は、多分ずっと、そうやって生きてきたんだ。
大切なもんをなくすたびに、心を削り取りながら、な」

アンナ「でも、そんなの……悲しすぎる……」

リッシュ「だからさ。あいつはなくした自分の姿を、あの娘の中に見てたんだ」

甲児「自分のようにはしたくなかったって、そういうことか……」

リッシュ「ああ。なに、まだこの程度でつぶれっちまうほど、ヤワじゃねえさ。なにしろ、俺が惚れた女だからな」

甲児「よっくいうぜ、まったく。だいたいてめえは、ついこの前まで敵だったんじゃないのかよ」

リッシュ「だからわかることも、あるってことさ」

アンナ「でも、私も大丈夫だと思う。だって、私たちが最初にあった頃のセレインなら、きっとあの子の
ことを、そんなふうに考えなかったもの。大丈夫、私はそう信じるわ」


(感想)
……こうして、薄幸の少女は、短い生涯を終えたのでした。

独立軍ルートのレラは、ラーズグリーズを目にすることも出来るし、
リッシュとも、会話シーンはないけれど、遭遇しています。
こういった点からも「64」の本流は、独立軍ルートなのかなって思います。
レラが、リッシュのことをどう思っていたのかはわかりませんが、それにしても、
リッシュ、鋭いです!やはり、わかる男は違いますね。
レラの死後、リッシュがセレインを殴るシーンがあるのですが、その時の効果音が、
かなり痛そうだったんですよ。甲児じゃなくても言いますね、「女の子に何すんだよ」って。
でも、それだけセレインのことを心配してたんだと思うんですよ。
レラが、もう1人のセレインだとわかっていたリッシュだけに。

ひとつ気になったのは、リッシュがシャリーのことを「姉さん」と呼んだこと。
チボデーガールズ(…だったっけ?)って、リッシュより年上?
「あねさん」じゃあないですよね…?

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