My favorite classic numbers その11

No.66 A:「Mendelssohn Songs wothout Words」 
     Andras Schiff(Pf)
     録音 1986年 レーベル:LONDON  

    B:「Mendelssohn Lieder ohne Worte」
     Daniel Barenboim
(Pf)
     録音 1973年 レーベル: Grammophon

     C:「メンデルスゾーン 無言歌集」
     田部 京子
(Pf)
     録音 1993年 レーベル:DENON

A B C

 聴き覚えのある優しい曲が、星を散りばめたように並ぶ小曲集ですが、48曲全曲が揃
うアルバムは案外少ない。ここにあげたCD中でも全曲演奏はバレンボエムのみで、シフ
と田部さんのアルバムは、およそ半分の抜粋になっています。「無言歌集」と銘うつ以上は、
できれば全曲演奏がいいのにと思うのですが・・・ 
メンデルスゾーンの小曲は、自然な優しさ・憧憬・安らぎを特徴としており、その点シフの
おおらかで恣意的なところが全くない演奏は、図らずも作曲者のイメージするような遠き
日の思い出を演出するのに向いています。シフの演奏は昔からよく聴き込んだものなので、
うまいヘタを超えた「標準」となる演奏でした。バレンボイムは尾崎紀世彦ばりの風貌から
予想されるイメージとかけ離れた可愛い音色を出すのに驚愕。こんなに優しい音出すんだ!
じっくり聴き込んで見ると、甘い音色の裏に恣意的な演出が潜んでいるのですが、あまりそ
んな事は考えずに聴くのが良いでしょう。無言歌全曲が欲しいという人には一押しです。
田部さんを聴くまでは、無言歌はバレンボイムで決まり!と思ったほどです。録音の質も
お薦めできます。そして田部さん・・・何という繊細な演奏でしょう。初めて聴いた時は
こまやか過ぎる気遣いが、ファーストクラスに慣れていない一般客に過剰なサービスが与
えられた時のように疲弊してしまいましたが、一度細やかな気遣いに慣れてしまうと、その
サービスは天上の心地良さに変わり、その中にずっと佇みたい。ずっと浸っていたいという
思いに変わっていきます。他は何もいらない。あなたの作る音の中に包まれていたい。
深く深く音の森の中に沈んでいくのです。特に個人的に好きな曲は、19.3 狩の歌、30.1
瞑想、30.6 ゴンドラの歌・嬰ハ短調。ちなみにこのアルバムは、田部さんが一躍トップ
ピアニストとして評価されるようになった記念碑的アルバムでもあります。この体験を
皆様と共有できたら幸いです。   2017.6.26 記載

 

No.65 A:「ブラームス ハンガリー舞曲集」 
     Labeque 姉妹(Pf)
     録音 1981年 レーベル:DECCA  

    B:「ブラームス ワルツ集9「愛の歌」、ハンガリー舞曲より」
     B.Engerer & B.Berezovsky
(Pf) Live
     録音 2011年 レーベル:MIRARE  

A B

A:「ブラームス ハンガリー舞曲集」 
     1-21.ハンガリー舞曲集(4手のための) 全曲 1-21

B:「ブラームス ワルツ集「愛の歌」、ハンガリー舞曲より」
     
1-18. ワルツ集「愛の歌」 Op52a(4手のための)
     19-28. ハンガリー舞曲集(4手のための)1,2,4,5,6,8,11,16,17,21

 ブラームスのハンガリー舞曲集には、一般にオケバージョンが知られていますが、原曲はこれ
ピアノ連弾です。両方を聴き比べてみましたが、オケ盤は仰々しく、重い感じがして好感がもてません。
ピアノ連弾の方が快活で疾走感があって、ずっと素敵だと個人的には思っています。曲は全21番まで
ありますが、有名な5番を筆頭に聞き覚えのある曲は前半に固まっています。全曲揃っている演奏で
文句無しの定盤がなく、色々聴いてみましたが一押しがこれ、ラベック姉妹でしょうか。一昔まえに
これを選択したらミーハーと思われたかもしれません。ラベック姉妹は意外にも
今回初聴きでしたが、
20世紀末には人気を博したデュオで、ルックスとポップス感が受けてコンサートひっぱりだこでした。
この曲も2人の息が ぴたっとあって、全曲飽きずに楽しく聴くことができます。この曲の連弾では
有名どころではMベロフ&JPコラール盤、我らがデュオ・クロムランクなどがありますが、前者は
情緒不足の感が
あり、後者は情緒はいいのですが技術的にすこしもたつきが見受けられます。次の
CDを聴かなければ、ラベック姉妹の演奏はその両方を満たす十分満足のいく一枚で、決して
ブームだけでない素敵な一枚に仕上がっています。

 全曲演奏に拘らなければ、一番のお薦めはエンゲラー&ベレゾフスキー盤です。実にいい。この
上手さはほとんどベレゾフスキーの演奏能力の高さに因るものですが、ふたりの弾き方が全く違うのに
それがプラスに働いている希有な演奏 ライブときいてなおビックリです。互いに違う個性を尊重し
あって初めて成り立つことです。 エンゲラーの多彩で豊かな音色に、ベレゾフスキーのテクニカルな
演奏が乗っかって、それがぴたりとあっている。ハイテクベレゾフスキーが、先輩エンゲラーの楽想に
ぴたりと寄り添って曲を作り上げているのが成功の秘訣であろうと思います。残念なことに全曲でなく、
半分にあたる10曲収録なのですが、でも十分この曲の色気を楽しむことができます。演奏の一部を
ユーチューブで見ることができますが、(年齢を超えた)恋人同士のような仲の良さが伺えます。
こんな相性もいい、テクニックもある連弾のコンサート、生で見たかったなと思います。残念ながら
エンゲラー2012年に他界してしまいましたので、もはやその夢はかないませんが、このアルバムは
2011年録音ですから本当に最後に近い物となります。この盤にくわえて、ぜひユーチューブで
画像でもご堪能いただければと思います。  2017.5.12 記載

No.64 「Ravel」 
     Roger Muraro(Pf)
     録音 2003年 レーベル:Musiques

CD1
01:前奏曲
02-07:クープランの墓
08-10:ソナチネ
11-13:夜のガスパール
14-18:マ・メール・ロワ

CD2
01:亡き王女のためのパヴァーヌ
02:水の戯れ
03-07:鏡
08:グロテスクなセレナーデ
09:古風なメヌエット
10:ハイドンの名によるメヌエット 
11:ボロディン風に  シャブリエ風に
12-19:高雅にして感傷的な円舞曲
20:ラ・ヴァルス

 前項デュモンやロルティのラヴェルはこの上ない素晴らしいものだと思いきや、このムラロの
CDを聞いてびっくり、まず驚くのは音色の持つ色気。パリのお洒落な空気が漂うこの演奏は、
他の人と何が違うのだろう。ピアノの音はどちらかというと細く、ショパンやベートーヴェンには
向いていない。ラベル・リストにピッタリな感じだが、この人の18番はメシアンらしい。
ラヴェルの1群の曲の中でいつも評価に使われるのが、スカルボとラ・ヴァルスであろう。
ムラロのスカルボはもちろん上手いのだが、ポゴレリッチのそれに比べて繊細すぎてオドロ
オドロしさが足りないかもしれない。びっくりするのはパヴァーヌ、もちろんいい曲なのだが、
一群のピアノ曲の中では一番簡単な一つで、こんなの誰が弾いても差が出ないだろうと思っていた
自分に反省。マ・メール・ロワも同様、箸休め的に思っていたこれらの曲が驚くほどの色香に
染まって、うっとりさせられる。タッチの違いでこんなにも変わるものだと感心至極。
クープランしかり、ソナチネしかり、ラヴェルの描いたスコアを最も素敵な形で表現してくれる、
我々はそこに居合わせるだけでいい。そのほとばしる音の泉を全身で享受できる。その音の中に
佇むだけで幸せを感じることのできる音楽はそう多くない。フランス人の作った歌をフランス人が
奏でた香り満載のアルバムと言っていい。この香りを表現してくれたピアニストは過去において
フランソワぐらいではないだろうか。無論、演奏の正確さはムラロの方が格段に上だが・・・
                           2017.3.15 記載

 

No.63 「Ravel Complete Piano Music」 
     Frncois Dumont(Pf)
     録音 2012年 レーベル:Piano Classics

 CD1  1-5: Miroirs 鏡
     6-8: Sonatine ソナチネ
     9:
Menuet en ut diese
     10:Menuet antique 古風なメヌエット
     11: ハイドンの名によるメヌエット
     12-17
: Le Tombeau de Couperin クープランの墓
     18: Prelude 前奏曲

 CD2  1-3: Gaspard 夜のガスパール
     4: A la mainere de ...Chabrier シャブリエ風に
     5: A la mainere de ...Borodine ボロディン風に Menuet sur le nom d'Hydn 
     6: Jeux d'eau 水の戯れ
     7: Serenade grotesque グロテスクなセレナーデ
     8: La Parade パレード
     9-16: Valses nobles et senntimentales 優雅で感傷的なワルツ
     17: La Valse ラ・ヴァルス
     18: Pavane 亡き王女のためのパヴァーヌ

もう少しラヴェルでおつきあい下さい。Lortie盤についで、ラヴェル全曲演奏シリーズです。
見事な演奏・見事な録音・そして見事な並び順、完璧です。Lortie盤に満足していると、こういう
新しい素晴らしい演奏を聞き逃してしまうかも。演奏者はフランス出身のフランソワ・デュモン、
優秀な演奏者が揃ったと言われる前々回のショパンコンクール入賞者である。 それにしても
優勝者ではないし、これを聴く前は良い評価をされている人が居ても 、どうしてもたかをくくって
しまいますが、若いのにどうしてどうして、この進化ぶり・完璧ぶりはすごいです。ラベルピアノ盤
1枚選べといわれるとこれでしょう。Lortieの演奏と比較すると、華やか繊細で、聴くものを魅了する。
良い意味での線の細さは最高級、色気もいっぱいだが、決して色気に溺れているような演奏ではない。
ガスパールのスカルボ4分過ぎ位の演奏がいまいち引っかかることを除けば、演奏はほぼ文句無く、
しなやかに弾いているので 、BGMとしてもうるさくない。近年の録音技術はますます向上している
ので、音きちにとってもいいアルバムだと思います。 鏡で幕をあけ、ラ・ヴァルスで幕を閉じる。
いいですね、そして眠りにつく前にお休みのアンコール曲がパヴァーヌ としゃれている。
                               2016.12.28記


No.62 「Ravel's Complete Works for Solo Piano
」 
     Louis Lortie(Pf)
     録音 1988年 レーベル:Chandos



 CD1  1: Pavane 亡き王女のためのパバーヌ
     2-7: Le Tombeau de Couperin クープランの墓
     8
: Serenade grotesque グロテスクなセレナーデ
     9: Jeux d'eau 水の戯れ
     10-17: Valses nobles et senntimentales 優雅で感傷的なワルツ
     18: La Valse ラ・ヴァルス

 CD2  1-3: Gaspard 夜のガスパール
     4: Menuet antique 古風なメヌエット
     5: Menuet sur le nom d'Hydn ハイドンの名によるメヌエット
     6: A la mainere de ...Borodine ボロディン風に
     7: A la mainere de ...Chabrier シャブリエ風に
     8: Prelude 前奏曲
     9-13: Miroirs 鏡
     14-16: Sonatine ソナチネ


ラベルのピアノ独奏全曲録音は、CDの2枚組でちょうど収まるという、発売元にとっても、
弾く側にとっても好都合の事情もあって、歴代のピアニストもよく録音されている。
その全部を聴いた訳ではないが、その中でも傑出したものと言えば、このロルティ盤であろう。
ファツオリという、結構きらびやかな音が出るピアノにしては、決してきらびやかではない。
本当に渋く、基本に忠実に、(いい意味での)音の教科書があるとすれば、こうでしょうという
感じ。でも音は研ぎすまされて美しい。 早さも、間隔も、強弱も、タッチもこれしかないでしょう
と思える王者の演奏。その上に録音も良い。最近、またいくつかラベルのピアノ独奏全曲の
素晴らしい演奏がいくつかできてきていますが、ポリーニが練習曲(ショパン)の礎となった
演奏を残してくれたように、このCDが最近の演奏の礎になったことは間違いありません。
なんと予想外にパバーヌから始まります。1枚目の最後が、圧巻のヴァルス 。2枚目の頭が
ガスパールで、ラストが鏡〜ソナチネという変わった布陣。
パバーヌ・・もっと可愛くっても
いいんじゃない? 鏡ももっときらきらしてもいいんじゃない? ヴァルスもっと激しくても
いいかも。でもヴァルスの大切なことは、ワルツのリズムが底辺に崩れずに流れ続けること。
けばいヴァルスはいっぱいあるけれども、ワルツのリズムが一貫して聞こえてくる演奏はそう
多くない。何回も聴いていると、どの曲も本当に基礎が安定していて、耳応えがいい。不要な
きらきら音すぎる鏡も、感情過多のパバーヌも、おどろおどろ過ぎのスカルボも無い変わりに
ぶれない美しい品のいい薄化粧のラベルがそこにある。ラベルのピアノ演奏の範としても
お薦めです。ただひとついただけないのは、ジャケットの写真くらいかな。本人の顔に
クレームをつけているわけではありませんが、 ちょっとSerenade grotesqueでしょ。
この写真 普通選ばないですよね。
ひきつづき ラベル ピアノ独奏全曲 行きますね。いくつかお気に入りを紹介する前に
どうしても抜けないアルバムがこれです。

                                2016.9.20記

 

No.61 以前は back でご覧下さい