My favorite classic numbers その10

No.61 「LV Beethoven Complete works for violoncello & piano」 
     Jean-Guihen Queyras(VC)Alexander Melnikov (Pf)
     録音 2014年 レーベル:harmonia mundi

a) b)

a) 「LV Beethoven Complete works for violoncello & piano」 
     Jean-Guihen Queyras(VC)Alexander Melnikov (Pf)


 CD1  1: Variation op.66
     2: Cello sonata 1 op5-1
     3
: Cello sonata 2 op5-2
     4: Variation WoO 45
 CD2  1: Cello sonata 3 op69
     2: Variation WoO 46
     3
: Cello sonata 4 op102-1
     4: Cello sonata 5 op102-2

b) 「Beethoven: Complete works for cello & piano」 
     Pierre Fournier(VC)Friedrich Gulda (Pf)

     録音 1690年 レーベル:Gmammophon

b) は往年のチェロの貴公子フルニエと当時新進気鋭のピアニストであったグルダの名コンビ
フルニエにはこの録音と並んで、同年代のケンプとの銘盤もあるが、そしてそちらの方が
知名度も高いが、 自分が聴いて育ったグルダ
に愛着があるので、あえて今日はグルダ盤をご紹介。
誰が弾いてもいい曲は良い曲。生では、最近ピリスのピアノ伴奏でこの曲を時を開けて2度聴く機会が
あったが、流れるように美しい曲たちである。生は生として、話をフルニエに戻しましょう。
フルニエの音はあくまで優しく 格調高い。グルダは若いだけあってきびきびと対応しており
柔らかなアナログ音を求めるならケンプ盤の方がずっといい。どちらにしても、フルニエの演奏

この曲の自分の基本形であって、他の演奏家の評価の基準にはなるものの、逆に当人の演奏を評価する

ことは難しい。
a) そして今日はケラスとメルニコフの登場、このアルバムもフルニエの2枚のアルバムを踏襲して
ソナタ5曲のほか、モーツァルトからの変奏曲Op66、同じくWoO46、ヘンデルからの変奏曲WoO45を
順序こそ違え、収録している。 なお、WoO45の「見よ、勇者は帰る」は、いわゆる「優勝賛歌」として
知られている曲で、えっこれがヘンデル作曲ベートーヴェン編曲??とびっくりの曲。
それはさておき、聴き所はまず、ソナタ1番Op5-1。 この曲はチェロソナタ5曲の中でも 最も速い隠れた
傑作で、ケラスの弦の切れの良さ、メルニコフの伴奏能力の高さ、 2人のアンサンブルの上手さが
かみ合って息をもつがせずに流れていく、このアルバム1の出来映えではなかろうかと思う。
ソナタ2番Op5-2も同様に素晴らしく、有名な3番ははたしてどんな凄い演奏に成るのかと期待してしまう。
しかしながら、3番は1-2番で予想されるほど凄い演奏ではない。もともと曲の変化が最も激しく、
派手でもあるので、弾かれる頻度も高く、目立つ演奏が多い。もっとやってくれても良いかなと思うが、
この2人、決して激昂するわけではない。むしろクール&モダン なのである。都会的で、おしゃれで
一部の隙も見せない きわめつけタイトな演奏と表現したら理解して貰えるだろうか。ノスタルジックな
フルニエ& ケンプ盤と究極に真逆な印象である。グルダ盤は別次元の活きの良さが売りかもしれない。
ケラス盤は、久しぶりに他を寄せ付けない(比べるべきアルバムが無い)お薦めの最新盤という
印象でしょうか。このふたりの演奏、2017年2月に東京にやって来るという噂。このアルバムを聴いて
2人の 掛け合いを生で聴きたい(見たい)と思う方、佐野と一緒におっかけしてみましょうか。
                                2016.5.30記

 

No.60 「24 Preludes」 Martha Argerich(Pf)
     録音 1960年 レーベル:Gmammophon
    「24 Preludes」 Seong-Jin Cho(Pf)
     録音 2015年 レーベル:Gmammophon

B

A.「24 Preludes」 Martha Argerich(Pf)
     録音 1960年 レーベル:Gmammophon
 
 1-24. 24の前奏曲 作品28   28-30.3つのマズルカ 作品59
 25.前奏曲 作品45        31.幻想ポロネーズ 作品61
 26.前奏曲 遺作          32.舟歌 作品60
 27.スケルツォ 3番 作品39   33.英雄ポロネーズ 作品53
 
B. 「
Seong-Jin Cho」 Seong-Jin Cho(Pf)
     録音 2015年 レーベル:Gmammophon

 1-24. 24の前奏曲 作品28   26-29.Pソナタ 2番 作品35
 25.夜想曲 ハ短調 作品48-1  30.英雄ポロネーズ 作品53

先日、中村紘子が主催する浜松のピアニスト養成コースの卒業生であるチョ・ソンジンと
牛田智大の凱旋公演があった。中村紘子が「別格」と評価したチョ。見事にショパンコンクール
1等の座を確保した。ブレハッチに次いで2人目の愛弟子の快挙にさぞかし彼女も満足であったろう。
そのせっかくの公演の機会を3000円で聴けるのだから逃す手はないとの理屈をこねていざ浜松へ、
一人目の牛田君が演奏途中で音を立てて気絶転倒してしまうという(回復したらしい)大ハプニングには
驚かされたが、気を取り直して期待のチョ、曲目はここにある24の前奏曲と、アンコールはもちろん
英雄ポロネーズ。 牛田君が途中リタイヤした分、もう1曲アンコールしろよと言いたくなるほどの名演。
2010年のショパンコンクールは史上まれなほど高レベルと言われたが、その受賞公演を当時聴いたが
殆ど感激はなかった。前奏曲演奏の中で史上最も完成度が高いのでは?と思わせる演奏を生で目の前で
披露してくれたのだから、クラシックファンとしては大感激である。重くゆったりとした始まりから
急転直下速く、そして激しく、そしてまた可愛い音色に戻るという、目まぐるしく変わる展開が
特徴のショパンの前奏曲、ゆったりとしたところは堂々と、速いパッセージはかっちりと、優しい音色は
美しく、全てに神経を行き届かせて完成度の極めて高い演奏を聴かせてくれた。これは第1位 取るでしょう
完璧に仕上げてきましたね。私が浜松で聴いてきたものと全く同じ感激が味わえるというと嘘になりますが、
私の言っていることが分かって貰えるのがアルバムBのSeong-Jin Cho」。弾く力、解釈力、美音、
そして1音1音を大切にする心、説得力のある弾き回し、どれをとってもアジアの先輩、ダンタイソン
を彷彿とさせる素質があると思う。今後を期待したい。
と、さんざんチョの話をしてきて、主役は?と思い出せば、24の前奏曲といえば、一度はここに登場しない
わけにはいかない奇跡的なアルバムがA。弾くのがアルゲリッチなので、想像つくでしょうが、彼女には
この24の前奏曲 うってつけの曲目ではなかろうか。 緩急が著しくって、優しいところはとことん優しく
速いところは疾走感がばっちり、ひとつ間違うとめちゃくちゃになりかねない、そのぎりぎりの演奏を
してくれるのが、我らがアルゲリッチ。14番雨だれのしっとりした後は、15番の急転直下に走り抜ける曲
アルゲリッチの疾走感がたまらない。奇しくもメーカーは同じグラモフォン、そして最後の曲が同じ
英雄ポロネーズとくれば、チョのアルバムはアルゲリッチオマージュアルバムのようにもとれる。
完成度が素晴らしいチョ、動物的に躍動するアルゲリッチ、どちらの前奏曲も甲乙つけがたい。
半世紀を経過して競いあう名演であろう。                  H28.3.12記
 

No.59 「Complete Etudes F Chopin」 Louis Lortie(Pf)
     録音 1986年 レーベル:Chandos

A  B

A. Complete Etudes F Chopin Louis Lortie(Pf) 1986
  
 1-12.   12 Etudes, Op. 10
   13-24.  12 Etudes, Op. 25
   25-27.  3 Nouvelles etudes, Op. posth.


 今さらお示しする物ではない。ポリーニによって花開いたショパンのエチュード 初めて
聴いたときにはぶったまげて、1ヶ月そればかり聴いていたように覚えています。
これ以上の演奏は難しいであろうと、この曲を録音する後塵は相当の覚悟がいるであろうと
ずっと思っておりました。その思いは今もいささか変わるものではありませんが、時代が移れば
いつの日か新しい世界記録が樹立されるように、ポリーニの演奏を凌駕する演奏が出てくる
ものだと それも軽々と越えてくるような そんな感じの印象さえ感じる記念碑的演奏と
言っても過言ではないでしょう。最近のピアニストは彼の演奏をこの曲を勉強するときの
お手本にしている様です。ポリーニの演奏が機械仕掛けのぴりぴりだとすれば、ロルティの
演奏はビロウドの様に柔らかで心地よい。エチュードがこんなに聴きやすくてもいいのかしらん
と思ってしまうほどに・・・特に優れものはOp.10の1曲目2曲目、冒頭の音楽が始まった
とたんに、「ん、んんん!・・・誰これ」と感じさせるほどのテクニックと美しさ。
美しく弾くことと、技巧的に弾くことは高次元の所で必ずしも一体化しない。凄いけど飽きる
とか、凄いけど嫌いとか・・その一体化がこのアルバムの凄いところ、Op10-4.5黒鍵.11などの
速いパッセージにおける美しさと手を抜かないなめらかな正確さは何とも言い難い。
難を言えば、その聴き易さ。Op.25の方は、Op.10で感じさせるほどの凄さはない上に、
たとえば 「木枯らし」なんかは 優しく弾かれると木枯らしじゃないし・・・って 少し
インパクトに欠けてしまう。寒いというよりむしろ「痛いンだぁ!」というインパクトを
与えるなら、上手い下手はともかく、フランソワのようにがつんとしたパワーで弾いて欲しい
なあと思うのは欲張り過ぎ?  まあ、とにかく運悪くこのアルバム未体験の方、特にエチュードは
よく知っているけれど・・・このCDはまだ聴いたことがない、という方に、とっておきの一枚です。

B. 24 Preludes F Chopin  Louis Lortie(Pf) 1998 Chandos
    1-24. 24 Preludes, Op. 28:
    25. Prelude in C-Sharp Minor, Op. 45
    26-27. Andante spianato and Grande polonaise brillante, Op. 22
    27. Polonaise-fantaisie Op.61

 ここに書くに当たってビックリしたことがひとつ、ショパン弾きである彼がエチュードの
評価を得て、続けてこの録音に携わったと思っていたら、そうではなかった。エチュードの
録音から12年、満を持しての録音だったのですね。エチュードを感激していただいた方に
やっぱいいわ!って確認して貰うためのアルバム 前奏曲全曲 この全曲の演奏で最も有名な
ものにアルゲリッチ版がありますが、あのぴちぴちと活きの良い演奏も悪くないし、優しく
気品のあるブレハッチの演奏もとても好きですが、エチュード同様、これからのピアニストの
あこがれの 到達目標としてはこれしかないでしょう、という完成度、素晴らしさを体験できます。
前奏曲も素晴らしいが、その後ろの大好きなアンダンテスピアナートが、これまた美しい。
幻想ポロネーズも含め美しさに包まれて満足な時間が過ごせます。最近ロルティはファツィオリという
メーカーのピアノを好んで弾いており、これもその1枚。最近ではショパンコンクールでも、ヤマハや
スタインウェイと並んでファツィオリが選択できるようになり、段々メジャーになりつつありますが、その
先駆者的役割を担っているのがロルティです。エチュードでは(まだ)使われなかったこの楽器を、ここでは
その良さを全面に押し出して演奏しています。そう、彼の演奏スタイルこそ、ファツィオリの音色にぴったり
なのです。 エチュードもファツィオリで再演奏・再録音という噂があったので、この解説もその発売を
待っていたのですが、結局待ちきれずにここに登場となったわけです。
スタインウェイとヤマハで占めていたこの業界に、新しい風が入ってくるのは歓迎で、音色重視の
ロルティの演奏に花を添えています。もちろん、弾き手の違いが一番ではありますが、ピアノメーカー
主体で音色や響きを聴き比べというような、聴き方もおもしろいと思います。  H28.2.18改訂

 

No.58 「Me On wings of songs」 Konstantin Scherbakov(Pf)
     録音 2011年 レーベル:
Two Pianists

A  B 

A. Me on wings of songs 2011
 1;前奏曲 ホ短調 BWV 855a JS.バッハ/シロティ  2.歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」精霊の踊り グルック/フリードマン
 3.ピアノによる歌の装飾技法レクイエム K. 626: モーツァルト/タールベルク   4.無言歌集 第1巻 Op. 19b メンデルスゾーン
 5.歌曲集 S547/R217 歌の翼に メンデルスゾーン/リスト   6.無言歌集 第1巻 Op.102 第4曲 メンデルスゾーン
 7.3つの間奏曲 Op. 117 第1番 ブラームス    8.オルガン小曲集 BWV 639 S.バッハ/F.ブゾーニ
 9.コンソレーション 第3番 F.リスト       10.愛の夢 S541/R211 第3番 F.リスト
 11.14の歌 Op. 34 ヴォカリーズ  ラフマニノフ/コチシュ  12.夜想曲第20番 ショパン
 13.ベルガマスク組曲 月の光 ドビュッシー   14.3小品 Op. 11 第1番 前奏曲 リャードフ
 15.動物の謝肉祭 白鳥 サンサーンス/シロティ  16.夜想曲 ヘ短調 「別 れ」グリンカ
 17.夜想曲第2番 Op. 9 No.2 ショパン      18.4つの即興曲 Op. 90, 第3番シューベルト

 K.シチェルバコフの最近のアルバムに注目してみました。彼が新しいレーベルである「Two Pianists」に移って
はや3枚目になりました。その移行の最初のアルバムがこれ、「Me on wings of songs」! 全18曲から成
る、比較的よく聴かれる耳触りの良い曲たち。俗に言う「アンコール曲集」と言えば、そうともとれるような一見
あまい曲が目白押しです。しかし、彼の弾いてきた曲を追いかけてきた我々マニアックファンには、このアルバムに尋常
ならざる気配を感じ取ることができます。超のつく難曲をドライで正確なタッチと強い打鍵で弾きこなしてきた今までのス
タイルと真逆な、ある想いが、このアルバムには込められています。 開けば、To Nina, my fair lady, my love の文字
が、アルバム左側にきざっぽく刻まれています
。彼が感情を表出して、愛しい人に捧げた初めての私的なアルバムなのです
その選ばれた曲たちは、一見たびたび耳にする有名な曲たちなのですが、実は、これは彼がしかけた罠でもあるのです。
バッハ、
モーツァルトときて、表題のメンデルスゾーン「歌の翼にのせて」Me つまり私を乗せて、あなたのもと
に届けて」という意味でしょうか、美しいけれど甘さを抑えた少しドライな音色、実はこの曲たち、それぞれに最も難し
いアレンジが施されたものを彼は選んできています。世界で最も美しい曲の1つ、ラフマニノフのボーカリーズを聴い
てみましょう。選んだのはZ.コチシュの編曲。終わり間際の美しさが(難しさも)とても効果 的な演奏となっています。
ほかにも、リストのコンソレーション、ショパンの
夜想曲20番、サンサーンスの白鳥(これもシロティ版)などなど、癒
し系の曲が目白押しですが、中でもあまり有名でない
ロシアの作曲家グリンカの夜想曲「別 れ」が選ばれているのが嬉し
いですね。 もっと大勢の人に弾いて貰いたい作曲家です。最後、シューベルトの哀しい即興曲で締めくくられます。
なぜか、MP3デジタル版では、その後にベートーヴェン「エリーゼ」全曲(2分半)のボーナスがあります。いいなあ!
貴女に捧げる個人的なアルバム、美しいメロディーが 翼にのって貴女の心に届きますように! 祈りを込めて

B. Eroica 2015
 1-17.エロイカ変奏曲
 18-20.Pソナタ 悲愴
 21-23.Pソナタ 熱情

 K.シチェルバコフ最新のアルバムです。でもこのアルバムおもしろいのは30年前の録音「エロイカ変奏曲」と
最近の録音、Pソナタ「悲愴」「熱情」を パッキングしたことです。もう一つ言えば、30年たった今の演奏技術が
30年前より劣化していないどころか、進化していることです。先日彼の来日公演(東京)でPソナタ熱情と月光を
後半のショパンと共に聴いてきました。今まで聴いたどの熱情よりもど迫力の演奏を聴いてしまった、というのが
率直な感想でしょうか。熱情はピアニストの殆どがトライする曲なので、聴き比べる回数も多い訳ですが、その中でも
頭ひとつぬきんでた、記憶に残る演奏というのは並大抵の演奏ではありません。熱情にノックアウトされて、後半の
ショパンはあまり印象に残りませんでしたが(笑)、生シチェルバコフ聴きに行く価値おおありでした。記念にこの
エロイカのアルバム、サインをいただいて帰ってきましたが、エロイカが30年前の演奏だということは、解説を読むまで
知りませんでした。エロイカは個人的には好きな曲ではないので、専ら後ろ2曲を聴いています。熱情が好きな方、
一度はこのアルバムも聴いてみて下さい。迫力ありますよ。第3楽章最後など圧巻です。生だともっと圧倒されます。
この演奏を知っているから、前作「Me」に ビックリするんです。 ギャップが・・・
自分はまだ聴いていませんが、シチェルバコフさんベートーヴェンの全交響曲のピアノ版(リスト編曲)全曲録音とやら
をしでかしたことでも有名です。全曲録音したのは、同じくテクニシャンの誉れ高いカツァリスくらいでしょうか。
驚くほど安価で全曲セットが購入できるので、ベートーヴェンファンの方は一度聴いてみて下さい。

C. Soiree Russe 2012
 
1-16.展覧会の絵 ムソルグスキー
 17. エレジー Op.3-3 ラフマニノフ
 18. 前奏曲 Op.23-6 ラフマニノフ
 19. 前奏曲 Op.23-3 ラフマニノフ
 20. エチュードタブ  ラフマニノフ
 21-23 Pソナタ 7番 プロコフィエフ

 Soiree Russeとは、ロシアの夜会のことです。地元ロシアの曲を並べたものです。展覧会の絵で始まり、ラフマニノフ、
そしてプロコの戦争ソナタまで、これもパワー全開のアルバムです。先発、展覧会の絵はまだ大人しいかもしれません。
ラフマニノフを挟んで徐々にパワーアップ、プロコで全開という感じでしょうか。 展覧会の絵もすばらしいですが、
ラフマニノフやプロコのパワーで弾いて貰ったらもっとおもしろかったかもと思います。いつまでもばりばり凄い者に
挑戦し続けるシチェルバコフ、ゴドフスキー全曲録音というとてつもない ライフワークをまもなく完成させようという
ところ、このエネルギーはどこから湧いてくるのでしょう。


No.57 「一會(いちえ)集」 宮田 大(Vc) , ジュリアン・ジェルネ (Pf)
     録音 2014年 レーベル:
N & F

A  B

A:「一會(いちえ)集」 宮田 大(Vc) , ジュリアン・ジェルネ (Pf)
  1-3  フランク:チェロ・ソナタ イ長調(チェロ版)
  4    ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
  5   フォーレ:エレジー Op.24
  6    黛 敏郎:BUNRAKU チェロ独奏のための (1960)
  7     尾高 尚忠:夜曲 (1942)

B:「First」 宮田 大(Vc), 柳谷良輔 (Pf)
  1-3   ポッパー:ハンガリア狂詩曲
  4-6   ドビュッシー:チェロ・ソナタ ニ短調
  7-9   R.シュトラウス:チェロ・ソナタ ヘ長調 Op.6
  10    ラフマニノフ:ヴォカリーズ
  11    リムスキー=コルサコフ:くまんばちの飛行

先日八ヶ岳で宮田さんのコンサートを聴いて、素晴らしい若者が育ったと驚きの想いをしたことが
まだ脳裏に焼き付いている。久しぶりの大物、世界に互せるチェロ奏者の誕生である。 そのまま
伸びていただければ、ヨーヨーマも夢でない。そんな人気も実力も兼ね備えたナイスガイである。
彼の2ndアルバム「一會集」フランクのソナタを聴いて欲しい。彼の素晴らしさが 、ここに集約している。
技術はすでに指折り、そして曲の細かな息遣いが醸し出せるセンス、曲のスピリットを深いところで
捉えた演奏がこの年でできている所がなんといってもすごい。よく知っている聞き慣れた(聴き飽きた)曲でも
あるフランクのソナタをこれだけ何回も繰り返し聴く気にさせてくれるすごさ、曲の持っている魅力を
引き出すうまさ、第二・第三楽章の開始まもなくあたりの低音のソロはバイオリンでは無理で
チェロならではの良さを引き出してしびれる。黛さんの文楽も魅力的だし、尾高さんの夜曲も初めて
聴いたが いける。 コンサートで聴いたのはラフマニノフのチェロソナタ、相棒は同じくジェルネ
大好きな第4楽章の歌(カンターヴィレ)が素晴らしく、開放的な気持ちに誘われた素晴らしい演奏であった。
本当にこれからが楽しみな青年である。もし、コンサートがあったら、今一押しの演奏家といえましょう。
 1stアルバム「First」も悪くない。特に最初のポッパーのハンガリア狂詩曲がいい。リストの同曲を下敷きに
しているので、初聴きの曲ではあるが馴染みはいい。難し過ぎるところもかっこよく演奏して素晴らしい。
しかし 最初のアルバムだけあって、アレもこれも一枚に入れたいっていう気持ちが強すぎるのか、まとまりがない。
そのうえ、ピアノの音がおかしい。特にポッパーの出だしの所など ピアノが全面 に出るところが気になる。
柳谷さんのピアノが下手だと行っているのではない。どこで集音しているのかなあ 。拾っている音の広がりが
おかしい。肝心のチェロの方はいい音で入っているので、とても残念な気がする。 「一會集」も同じレーベル
だが、その当たり修正されている気がする。それと、 「一會集」では自分の弾きたいものを弾いている個性が
表現できている。コンサートでは いろいろな曲を弾いてもらいたいが、CDではある程度まとまりあるほうが
聴きやすい。もっともっとオタクに 走ってもよいので、こゆいアルバムを作っていただきたい。 H27.8.21 記

 

No.56 F.Liszt「超絶技巧練習曲」 小菅 優(Pf)
     2002年3-6月録音 レーベル:
ソニーME

A  B

A F.Liszt「超絶技巧練習曲」 小菅 優(Pf)2002年3-6月録音 
 1-12. 超絶技巧練習曲 リスト

B Liszt & Schumann  小菅 優(Pf)2000年8月録音
 1-3. 巡礼の年補遺「ヴェネツァとナポリ」 リスト
 4.   アレグロ Op.8 シューマン
 5-7. 幻想曲 Op.17  
シューマン

A 時々は日本の演奏家も紹介していきましょう。内田光子はちと別 格にして、次いで上手な
日本人ピアニストは小菅優ではないでしょうか 。「超絶技巧」は彼女の代表的CD、これが
NHKの番組「情熱大陸」で取り上げられて一躍有名になった(らしい)。こういうHP紹介を
やってますと、自ら弾く能力はなくとも、聴く耳だけは肥えてきて、一聴してハイレベルなCDを
全てとは言いませんが、聴き分けられるようになってきます。すばらしい! この躍動感
明るさ そしてテクニック この演奏 優さん18歳の時です びっくりですね 18歳で Sサイズで
ここまで弾けるんですね 流石に年季の入った演奏では ありませんが、こういう極めて難しい
とされている楽曲を、難しいと感じさせず、その曲のもつ良さを全面に出すことができる
ほらこんな素敵な曲よ 弾いていてとっても楽しくって 、幸せなの!っていう演奏者の
気持ちが伝わってくる演奏 そういう演奏にはめったにお目にかかることはない。
曲も曲ですから 自称世界のヴィルトゥォーゾ達が選んで弾いています(それでも全曲演奏は
多くありません)。もっと密な演奏 もっと厳しい演奏は いくつかありますが、 この曲を
こんなに魅力的に弾いてくれる人は少ないでしょう。はじける若さを感じ取って下さい。

B 超絶技巧をさかのぼること2年弱 優さん 16-17歳の演奏で これもぶったまげますね
年齢を聞かずに聴いていただいても、十分いや十二分にすごい演奏です。特に 本人大好きな
シューマンの幻想曲が と言いたいところですが、私個人はやはりリストの3曲に聞き惚れました。
この曲、年季の入った演奏よりぴちぴちした明るい勢いのある演奏があう楽曲ですね。幻想曲は
もう少し年季が入った演奏の方がいいかなと 今春、彼女のコンサートが聴きたくって、土曜日の
外来が終わったあとで横須賀芸劇までベートーヴェンの31番とショパンを聴きに行ってきました。
今、32歳 ベートーヴェンチクルスをひっさげての全国ツアーの最終リサイタル。大人っぽく
なったけど、もっと個性ってもいいんじゃないかなあと思うのは自分だけ? もっとしたたかに
年齢を重ねてくれた方が、聴く側はおもしろい カツァリスみたいに・・・   H27.7.15記

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