My favorite classic numbers 7

No.42 Liszt Piano Works [Import]
    
演奏:Stephen Hough (Pf) 
    
1988-92  レーベル:Virgin Classics

A)  B)
A) Liszt Piano Works
1.メフィスト・ワルツ 第1番(S.514)
2.スペイン狂詩曲(S.254)
3.小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ(S.175-1)
4.孤独の中の神の祝福(S.173-3)
5.エステ荘の噴水(S.163-4)
6.ダンテ・ソナタ(S.161-7)


リストの作品は指が動くピアニストかどうかを見極める試金石みたいなものです。
以前No.23でアムランの2枚を紹介しましたが、アムランの2枚のリストも初めて
試聴した時には あり得ないほどに 上手いとおったまげましたが、このHoughのアルバムを
聴いて、またまたひっくり返りました。今まで聴きなれたはずの曲なのに こんなに
魅力的に聴こえる何か・・・マジックが隠されている・・まあ聴いてみて下さい。
といっても、ごめんなさい またまた手に入りにくい Made in Holland!でも690円ですよ
アマゾンで・・コスパで購入するわけではありませんが、5倍の値段でもおかしくない
音源です。きっとハフの虜になりましょうぞ。以前ハフのラフマニノフ(No.33)と2枚組
The piano album を紹介しましたが、うまさを確認するならリストのアルバムの方が
端的です。「震えるほどうまい演奏」そんな形容詞はそんじょそこらでは使いません。
ハフ-リスト これを味わうとこの美しさは間違いなく癖になります。このアルバムに限らず
UKからの輸入盤で何枚か出ているので、手に入る物をどれでも1枚ぜひ入手してみて下さい。
「ハンガリー狂詩曲」なんかもすごいけれど、美しい演奏をお望みなら「巡礼の年」をお薦め。

B) カツァリス・プレイズ・リストVol.1
1枚目(ジプシー&ロマンティック)     2枚目(アヴァンギャルド、ワーグナーへのオマージュ、哲学者)
1. ハンガリー狂詩曲第2番嬰ハ短調           11. 葬送前奏曲と葬送行進曲
2. ハンガリー狂詩曲第3番変ロ長調           12. 不運
3. ハンガリー狂詩曲第7番ニ短調            13. 灰色の雲
4. ハンガリー狂詩曲第5番ホ短調『悲愴的な叙事詩』   14. 悲しみのゴンドラ第1番
5. 2つのエレジー                   15. 悲しみのゴンドラ第2番
6. 愛の夢                        16. R.W. ヴェネツィア
7. ピアノのための小品第2番              17. リヒャルト・ワーグナーの墓に             
8. ピアノのための小品第1番 第4番           18. ピアノ・ソナタ ロ短調
9. ピアノのための小品第5番『ため息!』
10. ピアノ協奏曲第2番イ長調  
シプリアン・カツァリス(pf) ほか 録音:1973年7月〜2011年4月

この人(カツァリス)のこのアルバムも、これまた上手いです。このアルバム2枚組ですが、年代は
ばらばらで 本人選りすぐりの録音です。ピアノソナタロ短調に至っては1973年のモノラル録音です。
1枚目のアルバムは「陽」で 、この人の普通のうまさ(これも並ではない)を存分に味わえます。
2枚目はあまりに暗い。自分のお葬式の時にでも使って貰おうかと思えるほどに暗い楽曲が勢揃いして
ちょっと手を伸ばしずらいので、殆ど1枚目しか聴いていませんが、これもいい! ハフのすごさを
先に聴いてしまうと、驚くことはなくなるかもしれませんが、上手いと何回聴いても飽きないので
どちらもかけっぱなしリピートしちゃいますね。こちらは2枚組でもあり、若干お値段がはるのが欠点。
カツァリスのうまさを十分堪能できる1枚になっています。ジャケットの表紙も人を嘗めていて、思わず
買う気をそそる写真です。(ハフの方の表紙写真はあまりに前時代的)   2012.1.20記


No.41 ます/リスト:シューベルト歌曲トランスクリプション

    
演奏:ホルヘ・ボレット(Pf) 
    
1981.11  レーベル:Decca

A  B

A) ます/ リスト:シューベルト歌曲トランスクリプション ホルヘ・ボレット演奏
  1:ます         7:聞け、聞け、ひばりを
  2:水車小屋の男と小川  8:水に寄せて歌う
  3:どこへ        9:郵便馬車
  4:さようなら      10:我が家
  5:さすらい       11:涙の讃美
  6:菩提樹        12:魔王

B) Godowsky/ Schubert transcription コンスタンチン・シチェルバコフ演奏
  Marco Polo 2003.10

  1. Passacaglia パッサカリア    10. Morning Greeting 朝の挨拶
  2. Faded Blossoms しおれた花   11. The Trout ます
  3. Impatience 焦燥          12. Cradle Song 子守歌
  4. Good Night おやすみ        13. The Brooklet 小川
  5. Wandering さすらい       14. The Young Nun 若い尼僧
  6. Hedge Rose 野ばら        15. Litany 連祷(リタニー)
  7. By The Sea 海辺で         16. Ballet Music For Rosamunde
  8. Love's Message 愛の便り       「ロザムンデ」よりバレー曲     
  9. To Mignon ミニョン       17. Moment Musical, Op.94, No.3 楽興の時

ABともにシューベルトを題材にした編曲物 Aはリストの編曲、Bはゴドフスキー編曲
シューベルトは稀代のメロディーメーカー、美しい主旋律を描く能力(つまりは「歌曲の王」)
にかけては、おそらく右に出る物がいない。そんなシューベルトの素朴で美しい、野草のような
メロディーに、(そのメロディーは大切にしているものの)装飾品をいっぱいつけ、じゃらじゃらの
貴婦人に仕立て上げる天才(?)リスト。これはこれで素敵なフランス料理に仕上がっているものの、
本当にシューベルトが好きな人にはなんだかなあという気持ちにさせられなくもない。
弾くのは ロマン派の代表リスト弾き:ホルヘ・ボレット、リストの作る世界をしっかり構築し
素敵な形にして我々に届けてくれる。 シューベルトの甘いメロディーをおしゃれに飾って、素敵な
パッケージングにした作品として楽しむことができる。
対して、ゴドフスキー 私に言わせれば編曲の神様。原曲に忠実ではない。でも原曲の本質をとらまえる
という意味では本質を見抜いている編曲。元の旋律から大きく外れることがあっても、リストよりも
むしろうるさくない。原曲の味をちゃんと残した作品になっている。弾くのは、ロシアの雄シチェルバコフ、
ゴドフスキーの作品を愚直なまでに丹念に誠実に弾きこなしていく。シューベルトの曲をシューベルト
らしく余り色を付けずにあくまでナチュラルに・・・ ただし1曲目のゴドフスキー作曲のパッサカリアは
技術的にも、曲想的にも別格。あのホロヴィッツに「弾くのには6本の腕が必要」と言わしめた難曲中の難曲。
シューベルトの未完成を題材に作曲したというが、シューベルトの名を借りただけのゴドフスキー色の強い
ゴドフスキー屈指の名曲。この曲を構造的に(建築物のように)構築して見せてくれたのがシチェルバコフ。
そこに繊細な色付けや匂いまでつけてみせてくれたのがアムラン。この曲にここまで表情をつけられる余裕の
演奏ができるのはアムランをおいて他にない。どちらも違った魅力のパッサカリアで、共に一聴の価値ありです。
Leopold Godowsky Sonata・Passacaglia Marc-Andre Hamelin hyperion 2001
                            2011.10.6記

 

No.40 Tranformation
    
演奏:Yuja Wnag (王 羽佳)(Pf) 
    
2010.1  レーベル:Grammophon

A  B  C

A) Transformation  2nd Album  2010.1  ピアノソロ
  1:ストラヴィンスキー ペトルーシュカ
  2:スカルラッティ   ソナタK380
  3:ブラームス   パガニーニの主題による変奏曲
  4:スカルラッティ   ソナタK466
  5:ラベル    ラ・バルス

B) Sonatas &
Etudes  1st Album  2008.11  ピアノソロ 
  1:ショパン     ソナタ 2番
  2:リゲティ     エチュード 4
  3:スクリャービン    ソナタ 2番
  4:リゲティ     エチュード 10
  5:リスト      ソナタ ロ短調

C) Rachmaninov    3rd Album  2010.4  
  アバド&マーラーチェンバーオーケストラ
  1:パガニーニの主題による狂詩曲
  2:ピアノ協奏曲 第2番

いやー彼女の人気と実力に驚かされます。2011.3.5 震災直前の四谷の紀尾井Hは彼女の演奏を聴こうと
いう人たちの熱気で溢れていました。プログラムは変更に次ぐ変更で当初予定のものは跡形もありません。
にもかかわらず、即日完売、当日も
満員というすごさは大きなコンクールで賞を取っていない、若干
24歳の女の子としては破格の出来事。すでにアルバムは3枚出していましたが、国内では協奏曲などで
演奏を披露したことはあるものの、その日彼女は日本初のソロリサイタルだったのです。
それほど彼女の演奏は待ち望まれ、そして生の演奏はその期待に違わぬどころか、予想を越えたすごさに
聴衆(私を含め)は圧倒され、しびれていました。
最終発表プログラムは、前半にラフマニノフのコレルリ変奏曲、シューベルトのPソナタ19番、
後半は魔物の饗宴をテーマにした演目<スクリャービン:プレリュード&エチュード、ムシルグスキー:禿げ山の一夜
(チェルノフ編)、メンデルスゾーン:夏の夜の夢(ラフマニノフ編)、サンサーンス:死の舞踏(ホロヴィッツ編)> でした。
中休み後にまたまた変更の、禿げ山→カルメン変奏曲(ホロヴィッツ編)に会場はまた小さなどよめき。
サンサーンス〜ビゼー〜アンコール大好きなヴォーカリーズ(それもコチシュ版)をはさんでアンコール4曲目のトルコ行進曲
(ヴォロドス編)は圧巻でした。あんぐりと開いた口が塞がらない状態のまま、にやけた笑いがとまらない
自分が居ました。「すごいものを見てしまった」こんな感情を抱いたのはツィメルマン以来でした。
もしアルゲリッチのデビューの頃のリサイタルに立ち会ことができたなら、きっとこんな感じだった
のではないでしょうか。その熱い思いはそのままサイン会の熱狂に引き継がれた。これほど殺到した
サイン会は紀尾井H始まって以来ではないかとのこと。
さてCDの話をしましょう。最初に手に取られるなら、まずは2ndアルバムがいいのでは。のだめにも登場の
指に悪いので弾くのをお薦めしないと言われる超難曲ストラヴィンスキーのペトルーシュカから始まり、2曲のスカルラッティを
箸休めに用いて、ブラームスのパガニーニ変奏曲、そして最難曲ラベルのラ・ヴァルスへと続く、大向こうを唸らせるような
選曲、長くしなやかな指、体育会系の筋肉、中国雑技団のような体のやわらかさをもって(猫の化身では
ないかと私は密かに思っている)
、鞭打つように、撥ねるように、リズミカルに、難曲をいともたやすく、
軽やかなタッチで弾ききっていくのは見ていて心地よい。CDで聴く
だけではつまらないので、ぜひ
YouTubeで、トリッチ・トラッチ・ポルカか、熊蜂の飛行、もしくはこのラ・バルスの演奏を見ていただくといい。
きっとあなたもユジャワンの虜になりましょうゾ。いや単なるスケベ親父の感想ではありません。
1stアルバムだって、なにせいきなりショパンのPソナタ2番から始まりますし、つなぎがリゲティですから
ぶったまげです。最新アルバムのラフマニノフ:パガニーニ狂詩曲が何とも瑞々しいくて素敵。低音の重さが
足りないとか、和声への理解が足りないとか言われる方もいますが、この若鮎のぴちぴち感にそんな
ものは不要です。躍動感が彼女の最大の魅力ですから、少なくとも若いうちは迷わず今のままつっ走って
貰いたいと思います。しばらくおっかけしてみたいと思います。今でも、ピリス伯母様のおっかけで
ありますが、一寸若くてかわゆいユジャワンに浮気してみようと思っています。  2011.4.5記



No.39 Medtner The Complete Piano Sonatas [Import]
    
演奏:Marc-Andre Hemlin (Pf) 
    
1996.1-1998.4  レーベル:hyperion

A B  C

A) Marc-Andre Hemlin  ソナタ全曲 1996-1998 hyperion
B) Nikolai Demidenko ソナタなど 8曲 1992 hyperion(helios) 
C) Irina Mejoueva ソナタ 15曲 1992 Grammophon

ニコライ・メトネルは1880年生まれのロシア人作曲家兼ピアニスト。
ロシアのショパンと言われるほど、ピアノ曲を中心に地味ながらピアニスティックな調べを
持つ曲を多く遺している古典派に属する作曲家です。同年代のラフマニノフ(1873年生)のライバル
ともいえる人ですが、その知名度はまだまだです。 最近アムランを始め、何人かのピアニストが
好んで取り上げていますが、それでも、もっと有名になってもいいと思うほど、聞き込むにつれ
その奥深さ、静しつな調べ、曲の構成、完成度の高さ、何人をも寄せ付けない超絶技巧曲で
ありながらも、それとを感じさせない音楽性、すべてに素晴らしい楽曲群です。
ことに、ここにあげたピアノソナタ全曲はそのどれもが魅力的なものばかりで、粒ぞろいの
秀作といってもいいでしょう。この難しいソナタを全曲(4枚組)、いとも簡単そうに、それも
美しくかつ完璧に弾いて見せてくれるのは、さすがアムラン。こんな緻密で繊細で超絶的な
テクニックを持つ全集を出されてしまっては、ちょうどポリーニがエチュードを出した後の
ようにもう誰も後に継げません。
どの曲も素敵ですが、私個人は組曲「忘れられた調べ 第1集」(作品38) が大のお気に入りで、
お昼寝をする時の睡眠導入にいつもこの曲をかけて横になります。眼を瞑ると、深淵とした森の中
で静かにひとり佇む気分に浸れて、妙に心落ちつくのです。組曲1番の「回想のソナタ」の
静かな美しさも魅力的ですが、それと対をなす組曲6番のロマンチシズムもうっとりさせられます。
ソナタ1番(作品5)や8番(バラード風ソナタ)も同様のピアニスティックな調べが素敵です。
ちょっと暗めで取っつきが悪いかも知れませんが、ずーーーーーーーっと流していても
その中で心が落ちついてくる、あたかもカモミール茶のような魔力をもつ楽曲を、これ以上
ないほど緻密にクールに美しく表現して、これしかないかのごとく、ぴったりに仕上げてくれた
アムランに脱帽です。これらの曲は他の人が弾くとどうしてもうるさくなる可能性が高く、
特に編曲家兼ピアニストのソラブジから「20世紀最高のピアノ曲」と折り紙のついたソナタ
7番「夜の風」は最も印象的で、一度聴くと忘れがたい印象を持つ、メトネル屈指の難曲ですが、
下手に鍵盤をたたけばうるさくなるばかりの曲を、さらりとまとめて不気味さを残しています。
他の何人かと聴き比べても、異質の演奏です(メトネル本人がどの演奏を好むかは興味深い
所ですが・・・)。同様に、ソナタ9番は他のと少し違うロシア的匂いの強い激しい曲ですが、
ここでの技術も目を見張るものがあります。 全集ものは*特に知らない作曲家の全集ものは
買って大失敗というものが多いのですが、これだけは 一生ものかもしれません。

Bデミジェンコもロシアのピアニストで日本では有名でないかも知れませんが、聴いてみて
びっくりの大ピアニストです。技術は最高ですし、曲構成も曲想もしっかりできており、
アムラン以外のピアニストでもメトネルを聴いてみようと買ったのですが、これが大当たり。
多分メトネルを聴くのに一番スタンダードで佳い演奏家ではないかと思えるほどです。アムランより
ダイナミックで抑揚があり、曲による違いが楽しめます。先に挙げた「忘れられた調べ 第1集」
組曲6番からこのCDはスタートしますが、この色気はすごいです。もう少し、このピアニスト
買い込んでみようかと考えています。メトネル入門に最適なCDと思います。

現在日本を基地に活躍している若きロシアの音姫メジューエワの元気な演奏が聴けます。
彼女はメトネルを重要な作曲家としてよくリサイタルに取り入れています。アムランとは対照的な
感情が詰まったパワフルなメトネルを聴かせてくれます。*この人の顔にだまされてはいけません


No.38 Horowitz Plays Scarlatti
    
演奏:U. Horowitz(Pf) 
    
1962.11-1964.9  レーベル:CBS/SONY

A  B  C

A)U.Horowitz    ソナタ 17曲 1962-64 CBS/SONY
B)Ivo Pogorelich  ソナタ 15曲 1992 Grammophon
C)K. Scherbakov   ソナタ 16曲 2000 NAXOS

バッハと同年生まれのイタリアの作曲家ドメニコ・スカルラッティは555曲もの
キーボードソナタ(当時はチェンバロソナタだった)を書き、当時一世風靡した。
チェンバロ時代であったにも関わらず、きわめて現代のピアノの演奏にみあった
多くの技法を用いていることも特記される。その彼も、時代と共に忘れられつつ
あったところへ、20世紀最大のピアニスト・ホロヴィッツが好んで演奏したことで
再び脚光を浴びることとなった。その集大成とも呼べる記念碑的アルバムがである。
スカルラッティのソナタの持つ色気は、ホロヴィッツの好む所であったようで、
ほとんどのコンサートで大曲の合間に彼のソナタを挟んでいる。最近こそ色々な
ピアニストが彼のソナタを演奏するようになったが、その中でもどこが違うかと言えば、
ホロヴィッツの演奏は、他の人にない薔薇の香りが漂ってくるといえば、理解しやすい
と思う。昨今の何人かと比較すると、決して技術的にNo.1の演奏とは言い難いにも
かかわらず、今でもNo.1アルバムに押されるのは、その香り立つ色気ゆえであろう。

技術的に遙かに上手く、かつ情緒が乗った代表的演奏としてポゴレリッチ版(B)
ある。彼の演奏は打鍵が強いため、強弱がよりくっきりしており、そう言う意味では
よりチェンバロ的でなくなっているが、彼の他曲の演奏に比較すると毒気がなく、
安心してピアノソナタ・スカルラッティを聴くことができる。一聴に値するCDだと
思う。さて5月に久しぶりに来日したポゴレリッチをサントリーHに聴きに行った。
どんな演奏をしてくれるのかと不安と楽しみの中、演奏は始まった。その答えはすぐに
出た。 曲が完全に崩壊していたのだ。もとより原曲に忠実でない事でショパンコンクール
でもはじかれた問題児。当日の演奏はショパンCの比ではなかった。聴いたことのない
Pソナタ3番の前に、覚悟していたにもかかわらず、聴くもの皆首を傾げた。
途中帰宅組も続出。ピアノの師でもあった奥様に先立たれてから数年、彼はこれから
どこに向かって歩いていくのだろうか???

もう一枚(C)のコンスタンチン・シチェルバコフは知られていないので少し紹介。
1963年ロシア生まれだから今年で47歳。20歳の時に第1回ラフマニノフ国際Cの
優勝者で、現役ピアニストの中でも(アムラン、ハフと並ぶ) 指折りのテクニシャン。
淡々と美しく弾く彼のスカルラッティはポゴレリッチよりはずっと古典的で、しなやかで
かつ正確、そのうえ優美で文句のつけようがない。B・Cともに直輸入版しか無いのが
残念だが、ホロヴィッツのスカルラッティを聴いて、もう少し彼の優美なソナタに染まって
見たいと思った方は、捜しても聴いてみる価値があるCD。値段も張らないのでお薦めです。
ちなみに、この3アルバム、重なる曲が全くないのもすごい。いかにスカルラッティが
素敵なソナタを数多く作曲したかが分かります。BGMにもいいですよ。 
                          2010.8.17記載

No.37 Mitsuko Uchida: Live in Concert
    
演奏:Mitsuko Uchida;内田光子(Pf) 
    
1991.5.12-17 演奏  レーベル:Decca

DISC1 モーツァルト
1.幻想曲 ハ短調 K.475 
2. ピアノ・ソナタ 第14番 ハ短調 K.457
3. ロンド イ短調 K.511
4. ピアノ・ソナタ 第18番 ヘ長調 K.533/494

DISC2 モーツァルト
1. 幻想曲 ニ短調 K.397
2. ≪メッカの巡礼≫による10の変奏曲 ト長調 K.455
3. ピアノ・ソナタ 第15番 ハ長調 K.545
4. ピアノ・ソナタ 第17番 ニ長調 K.576

5. アダージョ ロ短調 K.540

題名にはありませんが、Kナンバーで分かるとおり、このライブコンサートは全曲
モーツァルトです。1991年モーツァルトイヤーにサントリーホールで行われた
演奏を録音した(スタジオ録音派の)内田光子としては珍しい2枚組ライブCD。
神が降りてきたと一部リスナーに評価されている演奏ですが、でも彼女のライブは
これが特別なものではありません。いつもが神憑り的なのです。だから日本人が弾く
クラシックコンサートとしては、あり得ない即日完売となるのです。
その演奏を大変良質な(さすが日本)録音で臨場感たっぷりに聴かせてくれる
嬉しいアルバムです。会場に居合わせたが如く内田光子のモーツァルト世界に浸る
ことができる。この幸せをなんとしましょう。
内田光子のモーツァルトのアルバムは、録音が古い物ばかりで、今の彼女の演奏
と比べかなり凡庸に思います。もう一度ソナタ全曲を再録してくれるのをファンは
願っている訳ですが、叶わぬなら、コンサートに行くか(と言っても英国在住の
彼女は滅多に日本で弾いてくれない)、こういうCDを狙うしかないわけで、
最近の(といっても1991年)彼女のモーツァルトが聴けるとなれば、垂涎もの
といえましょう。この演奏は最近の彼女の弾き方そのものですが、同じモーツァルト
弾きとして名高いピリスやグルダはもとより、本人の残した昔のスタジオ録音とも
全くちがう素晴らしいモーツァルトを聴くことができます。単純なモーツァルトの楽譜
だからこそ、逆にこれだけ行間に演奏者の個性や気持ちを入れ込むことができるのだと、
こんなにも違うのだと、とにかくこれは聴いてみていただかないと説明不能です。
特に楽曲が 幻想曲2曲とロ短調のアダージョを含む後期の深遠なソナタがセレクト
されているので、 魂の入った演奏に耳も心も吸い取られていくような気がします。
これを聴かずしてモーツァルトも内田光子も語れませんゾ。モーツァルトファンならば
だまされたと思ってお財布をはたいてみて下さい。決して後悔はさせません。
                           2010.5.15記
  

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