My favorite classic numbers 3

 

No.18 ギル・シャハム・プレイズ・フォーレ
    演奏:ギルシャハム (Vn)  江口玲 (Pf)
       ブリンストンスミス (Vc)
   
2003年演奏 レーベル:Canary Classics/コロンビア

  

左:The Faure Album      右:Schubert for Two   

1-4;ヴァイオリンソナタ第1番 作品13
5;ロマンス 作品28
6; 糸を紡ぐ女 作品80-2
7;
シシリエンヌ 作品78
8;子守歌 作品16
9;トスカナのセレナード 作品3-2
10;アンダンテ 作品75
11;月の光 作品46-2
12;初見視奏曲 
13-15;ピアノ三重奏曲 作品120
16;夢のあとに 作品7-1

前回に引き続きフォーレをお届けします。今回の方が有名な曲が多く
含まれています。フォーレを代表する夢のあとに シシリエンヌを 中心と
した小品と初期のヴァイオリンソナタ第1番と最晩年のピアノ三重奏曲
骨格に据えたシャハム自信作のアルバムといっていいでしょう。というのは、
彼の独立レーベル第1作目のアルバムがこれだからです。
彼の演奏は何処までも軟らかく、それでいて切れ味も抜群というおよそ
背反的な要素をいともたやすくやってのける天才ヴァイオリニストです。

シャハムの音色はフォーレの曲にベストマッチ。その上、サポートは、我が
江口玲 彼のピアノはこれまた抜群に上手い。サポートとして、これ以上
ないほどの素晴らしい(美しく、上手く、出張らない)ピアニストです。
彼が江口を連れて先日AOIで聴かせてくれたのは、ブラームスヴァイオリン
ソナタ
全3曲。これまた素晴らしい演奏で、当日江口さんに「ぜひこの曲でも
アルバムに録音して下さい」とお願いしてしまいました。(シャハムには
英語では通じそうもないので・・) 。なおこのアルバム中に収録した
「夢のあとに」は江口編曲の三重奏になっていて、他では聴けません。
柱となるヴァイオリンソナタ第1番ピアノ三重奏曲はもちろん曲も演奏も
素晴らしのですが、 江口のピアノが美しいロマンストスカナの
セレナード
月の光(ドビッシーのそれとは違う)が素敵です。
そしてなんといっても素晴らしいのが Vn ソナタ1番第4楽章ではないで
しょうか。2人の演奏がエンジェルの様に天国に導いてくれます。危い!
これを聴いて、シャハムファン・江口ファン・フォーレファンが1人でも
増えるといいなと思います。  
同様にシャハムの音色にフィットする作曲家はシューベルトでしょう。
ギターを相棒にまたちょっと違った雰囲気が味わえるのが下記アルバムです。
シューベルト・フォー・トゥー G.シャハム (Vn) G.セルシェル(G) 
 
2002年演奏 グラモフォン

彼とギタリスト;イョラン・セルシェルが奏でるシューベルトは単に耳
心地の良い癒し系クラシックであるどころか、聴き慣れた「楽興の時」
「アルペジオーネソナタ」を聴くと、その新鮮でふくよかな演奏に目の玉
が飛び出るほどに驚かされます。興味を持てたらこちらもどうぞ。 
                        2007.11.25 記

No.17 フォーレ;ピアノ五重奏集(室内楽全集 IV)
    演奏:JPコラール (Pf) /パレナン四重奏団
   
1975-78年演奏   レーベル:東芝/EMI

1-3;ピアノ五重奏曲第1番 作品89
4-7;ピアノ五重奏曲第2番 作品115
注)このCDの表紙絵はフォーレ室内楽曲全集 I-V に共通 です

本日はフォーレの隠れた名曲をお届けします。「知る人ぞ知る」にしておくのは
もったいない傑作です。しかし演奏者も少なく、私の知る限り、現在入手できるの
は、本盤のほか、より知名度の高いユボー/ヴィアノヴァ盤ロジェ/イザイ盤
くらいでしょうか。どれもフランス人の手によるものばかりで、ドイツ人がいかに
フランス系の曲を評価しないかがよく分かります。
この曲はユボー盤が最も知られているのですが、ユボー盤は私には弦の音が4人
バラバラで調和がとれていない感じがして、耳ざわりで好きではありません。
個人的にはピアノが上手なロジェ盤が好みなのですが、現在入手不可能のため、
ロジェ盤と遜色無い当盤を推薦します。

天から金粉が舞ってくるようなアルペジオで始まる第1楽章、天使が奏でる
ような美しい癒しのメロディーが印象的な第2楽章を持つ1番。ブラームス
室内楽曲にも劣らない最高傑作との誉れ高い2番。2番はどの楽章も完成度が
高く、第1・3・4楽章いずれもヴィオラが先導して主旋律を奏でていますが、
その旋律のいずれもが美しく、また各楽器の調和が見事です。こと疾走感のある
第2楽章(スケルツォ)から、崇高な美しさが薫る緩楽章( 第3楽章)への移行
が素晴らしい。 1番の第2楽章にしても、2番の第3楽章にしても、フォーレの
緩楽章は心の襞に寄り添ってくるような哀しいメロディーで、想いが引き込まれて
いってしまいそうになります。 聴くほどに側に置いておきたい1曲でしょうか。
「夢のあとに」や「エレジー」ほどの取っつきの良さはありませんが、「夢〜」を
聴いてフォーレが好きになった方にぜひ聴いていただきたい楽曲です。

お気に召したら、ピアノ四重奏曲1番&2番も聴いてみて 2007.10.23 記
次回もフォーレ続きます。

 

No.16 ラフマニノフ;チェロ・ソナタ 他
    演奏:リン・ハレル (VC) / V. アシュケナージ (PF)
   
1984年演奏   レーベル:デッカ/ポリグラム

1-4;チェロソナタ (ラフマニノフ)
5-6;チェロとピアノのための2つの小品 (ラフマニノフ)
7;ラフマニノフの主題によるメロディー (アルツシュラー)
8;ロマンス (ラフマニノフ)
9;ヴォカリーズ
 (ラフマニノフ)

このアルバムのメインはもちろん1-4のチェロソナタにありますが、有名で
ない5-7も聴き逃せないほどに美しい。抜群の技術を持った2人が、本当に
息のぴったりあったこのチェロソナタはお見事としか言いようのない出来です。
リンハレル
;今まで余り聴いたことが無かった演奏者だが、高音から低音まで
音色は美しく、迫力も十分、技術も満点です。対して
アシュケ、この人を
伴奏に迎えたら最高の演奏が期待できそうです。美しいし、確実だし、調和
を乱すことないし、不要にしゃしゃり出ないし、けれどしっかり弾いてくれる。
独奏には若干物足りないけれど、伴奏には贅沢すぎる。それも得意の

ラフマニノフとくれば、そのうまさも想像できそうです。でもそれ以上に
2人のバランスが素晴らしい。曲も最高に素敵なので、協奏曲2番が好きな
方ならぜひお薦めの1枚です。
BGMにかけていても、思わず集中して
聴いてしまうほどに、 何回聴いてもうっとりため息のすばらしい演奏です。

チェロとピアノのための2つの小品の第2曲もラフマニノフらしい美しい
メロディーだし、
アルツシュラーの曲の終わりにおける超高音の弦の音色は
チェロであることを忘れそうなほど。加えてピアノも負けずに美しい。
最後の
ヴォカリーズはこの中で最も有名な曲ですが、ここではハレル自身が
編曲したものを弾いていますが、やや劇的に欠ける静かな曲に仕上がって
います。ラフマニノフファン必聴の1枚です。    2007.9.20 記

 

No.16 リスト;超絶技巧練習曲集全曲
    演奏:横山幸雄 (Pf)   1998年演奏
    レーベル:
ソニーME

日本人きってのテクニシャンというより、世界でも指折りの技術であることが
この演奏を聴くと分かる。指の動きの早さと正確さと、そして美しく弾く
ということにかけては、この人の右に出る者がいないのでは?と思わせる
素晴らしい出来である。力強さが足りないとか、インパクトに欠けるとか、
いろいろクレームも付けられないことはないが 、とにかくこれだけの難曲を
こともなげに弾ききって、かつ美しい!!というのだから、それ以上何を
望むべきか。魅惑的な「マゼッパ」、神秘的な「鬼火」、ただただ聴き
惚れる「夕べの調べ」など、超絶技巧がこんなにも美しい曲であったのかと、
改めて感心させられるほど別次元の曲に昇華している。リスト本人はどんな
風に弾いたのだろうと、思いめぐらしてしまう。横山氏は自ら作曲もするが、
先日自作の曲を2曲八ヶ岳音楽堂で聴かせてくれた。これらもなかなか
どうして美しい旋律をちりばめたような曲たちで、この人は美しい音色を
最も大切にしているのかなあと考えていた。超絶技巧の演奏で有名なものに、
アシュケナージ版があるが、実はアシュケナージはリストをほとんど弾かない
ことで有名。これも全曲を弾いてはいないが、なぜかこの1枚が評価が高い。
なるほど、「鬼火」や「狩り」など横山より迫力があるが、演奏テクニックは
横山の方が2-3枚上かなと私は思います。横山も超絶技巧も、好き嫌いはある
でしょうが、この組み合わせは◎だと思うのでぜひお薦めです。

参考 リスト;超絶技巧練習曲集全曲他 V.アシュケナージ (Pf)  
  
1970年 ポリドール           2007.8.18 記

 

No.15 ラフマニノフ;ピアノ協奏曲第1・2番
    演奏:ツィマーマン (Pf) 小澤征爾 (指揮)
      ボストン交響楽団 
1997年演奏  
    レーベル:Grammophon

  
ツィマーマン 協奏曲1・2   アシュケナージ 協奏曲1〜4

ツィマーマン2回目の登場ですが、そろそろラフマニノフを出したいなと
思うにつけ、このアルバム(写真左)がどうしても出てきてしまいます。
一般に最も定評があるのがアシュケナージ盤で(といっても、アシュケでも
2つあって、ひとつはプレヴィン・ロンドン響(写 真右)盤、もう一つが
ハイティング ・アムステルダムコンセルトヘボウ管盤。後者はまだ聴いた
ことがなく、2番などは後者を推す方も多いのですが)、4曲揃っての
プレヴィン版は買いやすいこともあって、まずこれをたっぷりと聴いて
いただくのが良いのではないでしょうか。アシュケはいつも優等生すぎる
演奏で、音大御用達なんだけれど、どうしてもインパクトに欠ける。
でも曲を聴くのには本当はそれが良いのかもしれません。演奏者が前に
出ることなく、曲が曲として存在する演奏はある意味ですごい。ロシアの
暗さがにじみ出た音色、これはこれで文句無く素晴らしい演奏。

対してツィマーマンの演奏の灰汁の強いこと。「これだけ弾けます」ってな
具合で、ピアノの音をオンにして早いパッセージの部分はここぞとばかりに
ばしっと弾いてみせる。2番第1楽章冒頭の部分はアシュケはアルペジオで
弾いているために若干インパクトが弱く、遠くで暗い音色が響いていると
いう色調なのに、ツィマーマンのそれは地下室で鋼鉄の扉を叩くほど切実に
厳しく響いてくる。 アシュケで曲をマスターされた方はぜひツィマーマンの
この演奏を聴いて下さい。きわだった音の粒立ちの良さにおったまげます。
どちらが好きかはまた別の話。でもはっきり言えることは、ツィマーマンの
演奏はBGMには向いていないということです。圧倒的な音で迫ってきて
聴き手を引きつけてしまいます。正面に向いてしまうのです。
ぜひ、聴き比べて見て下さい、絶対おもしろいですよ。同じ曲がおうちに
2枚あっても、これならいいと思います。

「ラフマニノフ;ピアノ協奏曲全曲集」アシュケナージ演奏 
1970-71年 ポリドール           
2007.7.17 記

 

    

No.14 フランソワ ラヴェル ピアノ曲全集 1・2
    演奏:サンソン・フランソワ(Pf) 1967年演奏  
    レーベル:東芝EMI

  

第1集              第2集
1. 亡き王女のためのパヴァーヌ   1. 夜のガスパール
2. 水の戯れ            2. 優雅で感傷的なワルツ
3. 古風なメヌエット        3. 前奏曲
4. 鏡               4. シャブリエ風に  
5. ソナチネ            5. ボロディン風に
6. マ・メール・ロワ        6. 組曲「クープランの墓」         
7. ハイドンの名によるメヌエット  

2枚組ではないが、両方で1組という2枚。フランソワのアルバムはたくさん
あって、根強いファンが多いのだなと感心させられる。彼の演奏は一口で言えば
即興的、ジャズ的。だから音色は軽やかで、リズミカルで音色が華やかで、
でも失敗もあって、雑なところもあって・・好き嫌いが出ます。曲のできも
様々で、アシュケナージポリーニのような鉄壁な音楽にはほど遠いですが、
それはそれ、ワインを傾けながら飲むおしゃれ感覚にマッチするというなら
右に出る人はいません。この人でないと聴けない演奏がいっぱいです。
「水の戯れ」「鏡」「ソナチネ」も美しい。でも、特にこの人のうまさを
聴き比べたかったら、「優雅で感傷的なワルツ」がお薦めでしょうか。
この曲は、他の誰のを聴いてもあまり好きでなかったのですが、変わりました。
フランソワとラヴェルは相性がいいですね。特にこの人は、ワルツがいいと思い
ます。ワルツの艶はこの人ならでは。私個人はワルツを好んで聴かないのですが、
彼の軽やかなリズムなら◎ですね。とてもおしゃれです。
シャブリエ風に
同様にフランスのエスプリに満ちていて、クラシックの域を越えています。

組曲「クープランの墓」 なんか、ほとんどジャズ化して最高に素敵です。
彼はショパン・ラヴェル・ドビッシーを得意としてきました。個人的にはその
中でラヴェルがベストマッチだと思っているのですが、
ショパンの演奏も多く、
出来不出来がありますが、どれも
天才的な才能と、これはと感じさせられる
光る演奏を聴くことができます。ショパンも同様にワルツ集がお薦めです。
マズルカ全集もややむらっけありですが、ワルツの範疇にはいる曲だけ
あって、
美しいリズムを楽しむことができます。

「ショパン:ワルツ集」サンソン・フランソワ 1963 東芝EMI
                            2007.6.15 記

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