……ここはどこだ? 僕は何をしていたのだ? いいや、それより――僕は誰だ? 何も知らない。 何も解らない。 何も、何も、何も……。 「――葉平様、葉平様。目を覚まして下さいませ」 ん? 誰だ……? 「気が付かれましたか、葉平様」 葉平? それが、僕の名前なのか? 「その通りでございます、九尾葉平様」 貴様は、僕が何者か知っているのか? 「はい。葉平様は、妖狐の中で最も高貴なる九尾の狐でございます」 九尾の狐だと? ……僕の尾は一本しかないではないか。 「葉平様は五十年ほど前、ある者たちによってほとんどの妖力を封じられてしまったので す」 ある者たち? 「葉平様の強大な妖力を怖れた善を称する妖怪どもでございます。あの者どもは、我々と 同じ妖怪でありながら、忍者と呼ばれる人間と手を組み、葉平様の力と知識を封印したの です」 ……そうか。そうだったのか。 「どうぞ、この扇子をお持ち下さい」 これは? 「私が探し出しました葉平様の妖力の一部でございます。これで妖力は九分の二。この力 を持って残りの封印を破りに参りましょう」 そうか。解った。 ところで、そういう貴様は一体誰だ? 「私は葉平様の忠実なる家来。白銀とお呼び下さい」 家来? シロガネだと? ……ふん。 名前が気に入らん。今日から貴様はセバスチャンだ。
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