打倒 コントラバス!(その2)
11月22日
 そんなわけで仕事が終わったあと、68000円の方のベースを買おうと決心し
”あと、もろもろの付属品も含めりゃこれだけあれば足りるわよね”
と8万円をおろして勇ましく楽器屋に出かけたあたし。そして、昨日名刺をもらった店員さんを呼び、さっそく弾かせてもらうことに。

 しかし、袋から楽器を出してもらい、
「はい、どうぞ」
と差し出された弓は、高校時代使ってなじんだジャーマン・ボウ(ボウ=弓です)ではなく、フレンチ・ボウだった。当然持ち方も全く違う。
「あれー?弓はこのタイプなんですかあ?」
 思わず口に出してしまったあたし。困るなあ。いくら込み込みセットでお得とは言っても、弓が使い慣れてるのと違うんじゃ意味ないじゃないか。今からこっちのタイプの弓の持ち方をマスターするのもめんどくさいし。しかし、楽器・弓・松ヤニ・ソフトケースともろもろ一式入ってこのお値段なのだし、まあいいか。ジャーマン・ボウはそのうち買い足すとするか。文句は言うまい。

 何はさておき、弓に軽く松ヤニを塗ってあれこれ音を出してみた。だが、何となく納得できない。そこでためしに84000円の方のコントラバスを弾かせてもらったところ、明らかにこちらの方が音がよかった。あと、楽器本体の細部の作り込みも84000円のやつの方が丁寧だし。やっぱり理由もなく値段に差があるわけではないんだね。
 
 当初の予定が狂い、84000円のコントラバスに心が動いているあたし。
”うーん、でもこれじゃ赤字だよう。今日これから弘前行くためのお小遣いの中から差額を出さないと買えないよう(そう、この時あたしは弘前大FDC創立記念パーティーに行く直前であり、電車の時間まで2時間以上あったから、コントラバスを買ってから旅に出ようとしていたのだ。いったいナニやってんだか笑)。でもここで妥協して68000円の弦バスを買ったら、あとあと後悔しそう・・・”
 優柔不断なあたしである。う〜ん、う〜ん、う〜ん。そしてその後、さらにそれぞれ3回ぐらいづつ弾き比べてはますますドツボにはまり、店員さんがアキれるのを物ともせず悩みまくる。

 そうしておよそ20分後−

「こっちにしますっ!」
 あたしが選んだのは、84000円の方のコントラバスだった−はうう、弘前でのお小遣が少なくなっちゃった。弘前での飲み会どれかひとつあきらめるしかないなあ。でも、長年の憧れをかなえることができたのだもの。我慢するしかないか・・・

 そんなわけで付属品−コントラバス用スタンドも合わせて買い、しめてキャッシュで88120円を支払って、宅配で家に送ってもらうことにした。配達は翌々日とのこと。
 ”パーティーが終わって弘前から帰る頃にはもう、コントラバスが届いているのね。楽しみだなー”
 そんなことを考え、足取りも軽やかに青森行き夜行列車”はまなす”に乗るべく、JR札幌駅へと向かったのだった−

 え?エレアコ?ああ、そういえば最初はその目的で店に行ったんだっけね。そんなもんどっかにふっとんでっちゃったよ(笑)。それと、ダルブッカも買いたいなんて話もしてたよな。それもコントラバスを見た瞬間忘却の彼方へ追いやられてしまった(教授さんごめんなさい)。もうこんな派手な買い物はしばらく控えたいと思うあたしなのであった。


11月26日
 そしてついに、そいつはやって来た。あれほど憧れ、でも値段的にも置き場所的にも無理よねと自分に言い聞かせてはあきらめ、だけど楽器屋のショーウインドーで見かけるたびに
”ああ、いいなあコントラバス”
とひそかにタメ息をついてたあの楽器が、もうあたしの目の前にあるのである。うふふ、うふふ。カオが自然にほころぶ。弘前にいる間中こいつに会うのが楽しみでしかたなかった。あ、もちろん弘前も楽しかったよ。懐かしい仲間と再会し、パーティーをめいっぱい楽しみ、そして前夜祭のAFも何とか無事にまとめて
「来年はコントラバスを持ち込んで生演奏しますっ!みんな期待してねー」
と大胆にも宣言しちゃったしね。さーて、ひさびさ(9年ぶり)に練習するか!
 と、コントラバスのカバーに手をかけた瞬間、「ををっ!?」とちょっと驚いてしまった。この手の安いセット売り楽器にありがちな布一枚のぺらぺらケースではなく、きちんと中綿が入ったそこそこクォリティの高いケースだったのだ。
 ”この値段で中綿の入ったケース!?すげえ。中綿入りケースなんて、普通に買ったら35000円くらいするはずなのに。おトクだ。得すぎる。あたし、だまされてないかしら・・・”
 好きな物がお買い得価格で買えたことを喜ぶよりも、そんなことを考えてしまう心配症なあたしなのであった。

 そして、スタンドに立てて改めてまじまじと楽器を真正面から見てみる。うーんすてき。部屋のインテリアとしてもけっこうイケるし、楽器本体のカラーも、多くの人が思い浮かべるであろう赤茶色ではなく、ちょっとアンティーク家具調な深いワインレッドがかった茶色なのもまたよし(それにしてもバカでかいインテリアだな笑)。そして、練習に入るとは言ったものの、新品の楽器なのでチューニングがぐっちゃぐちゃ。それでまず念入りにチューニングを合わせるのだが、いったん合わせても少ししたらまたすぐ下がってくる。それで、弾いてはまたネジを巻き上げるを何回も繰り返し、チューニングが安定するまで何日か待つ日々が続くのであった。


11月27日
 今日は奥から加湿器を出してきた。ギターやバイオリン、そしてコントラバスといった木製楽器には乾燥は禁物。しっかりした楽器屋さんには必ず店内に加湿器がセットされているし、ショーウインドーに飾られた楽器のかたわらには、水を張ったコップが置いてあったりするのだ。それであたしも楽器ルームに加湿器を置くことにする。うーん、すごい。ずぼらなあたしがマメにこんなことするようになるなんて。

 まあったく、楽器にこんなに気を使うくらいならもっと身だしなみに気を使えってのよな(笑)。