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「何?」
 何か言いたげに見た俺に気付くと、先に向こうが問い掛けてきた。
「あ、うん。昨日親戚に結婚式なかった?」
「あっ、知ってる。うちのおじさんの結婚相手、板垣のお姉さんなんだってね」
「やっぱり?」
「え? じいの姉ちゃんの旦那が倉田のおじさん?」
 孝史が驚きの表情でつついてくる。
「だけど、何で分かったの?」
「だって、おふくろさんと 美咲 みさき そっくりじゃん」
「え? そう」
 恥ずかしそうに、顔をなでてる美咲の額を、俺は軽く小突いた。
「じゃ、お前ら親戚になったんだ」
 後ろから話し掛けてきた孝史に、美咲とふたりで振り向いて、顔を見合わせて笑ってしまった。
「今の喋りじじくせぇ」
「じいに言われたくないね」
「うっせー!」
 俺はかばんを振り回す。美咲がくすくす笑っている。倉田 美咲は、同じ機械科の二年。
 数少ない女生徒の一人。飾らない性格で、俺とは結構仲がいい。
「あ、そうだ。可愛い子いたでしょ?」
 美咲の質問に、教室に入る手前で足が止まってしまった。
「え?」
「私のいとこ。外山……」
「杏?」
 俺の台詞に、先に教室に入って廊下側の一番後ろの自分の席に、かばんを置いた美咲がきょとんとする。
「なんだ、しっかりチェックしてるんだ。抜け目がないなぁ」
 からかうように笑った美咲に、少々気がとがめた。
「いや、そうじゃなくて……その杏と俺、付き合ってんだ。二ヶ月くらい前から」
「聞いてないよぅ」
 美咲じゃなくて孝史が側から口を尖らせる。
 そう、だって誰にも言ってない。自分の名前カッコ悪くて、知られたくなかったし、 わざわざ自分から言い出すのも妙だし、あえて口にしなかった。
 バイトが休みでも、デートらしいことほとんどしてないから、町でばったり知り合いに会うこともなくそのまま。
 コンビニに買い物に来る同級生も、そんなことに気付く気配もなく、周りで知ってたのは、店長くらいかな?
「なんだ、そうなの? やっぱ、面食いなんだね」
 美咲は俺が今まで黙っていたことを怒るどころか、笑って受け止めてくれた。なぜだかホッとした。
「何がどうしたって?」
 美咲の言葉に、近くにいた男子生徒が話に入る。
「じいにもついに特定の彼女が出来たらしいぜ」
「おっ、マジ?」
「やった!」
「え? なんで?」
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